Monday, June 16, 2025

税制改正上院バージョン公開「899の運命は?」

前回のポスティングを「次回のポスティングをドラフトする頃にはもしかしたら上院バージョンの話しができるような状況になってるかもね」って締めくくったけど、本当にその通りになりました!米国時間の金曜日に結局出なかったんで月曜日は怪しいなと思って移動中にもかかわらず朝から目を光らせたんだけど、ちょうどJFKに着いた直後Air Train降りるタイミングで公表を知った。

Air Train降りてApple Pay使えるようになったからマシだけどチョッとアナログな感じの改札出てE Trainに向かう途中のエスカレーター降りたところで一旦Tim Hortens(覚えてる?パートナーシップ使って米国株主が367に抵触しない形でカナダにInversionした話し)でコーヒー買って超ザっと目を通してから地下鉄に乗ったけど、大概において思ってた通り。ビジネス界が望んでいた163(j)/174/168(k)は下院と異なり恒久化、チップ・残業代・自動車ローン金利等のトランプ選挙公約はそのまま盛り込まれてた。

チョッと驚いたけどある意味やっぱり・・・だったのはSALT控除。現状の$10Kを下院法案では$40Kに引き上げてたけど、$30Kくらいにされちゃうのかなって思って恐る恐る読んだらナンと$10Kのまま。え~、下院にはCAやNYのDistrict議員がいるけど、上院は各州2名でCAやNYの高税率州の共和党上院議員はいないから仕方ないのかもしれないけど挑戦的。上院にしてみれば何で規律のない歳出を繰り返す州の税収を部分的に連邦が負担する必要があるのかってことで特に州個人所得税ナシのフロリダ州のRick Scottみたいに「(SALT控除は)ゼロがいいんじゃないかな」っていう世界になる。ただ、法文とは別に公表されている解説で「SALTは議論を呼ぶ検討なので取り合えず$10Kにしておくけど最終ではない」って一応コメントされてるんで調整が付いてないってことだね。

で、何と言っても読者のみなさんの関心がここ数週間急激にアップしているOpportunity Zone...、じゃなくてsection 899はどうなったでしょうか。

Section 899上院法案バージョン

こちらもほぼ想定の範囲内だったけど基本的な制度設計は同じ。一読して気づいた「お~こうきたか」みたいな点をいくつか。落ち着いたらもう少しジックリ読んで詳細解説してみたいけど今日は取り急ぎハイライト。それにしても規則内容は同様なんだけど法文の構成・順序が全く変わってるんで面食らう。下院法案の癖が抜けるまではチョッと調子でない。

Offending Foreign Country

下院法案ではUnfair Foreign Tax制度を導入してる国を「Discriminatory Foreign Country」って定義してたけど、上院法案ではこれが「Offending Foreign Country」に。DiscriminatoryとOffendingってConnotation的にどっちがマシなんだろうか。普段Offendingって言うと人を不快にさせる、またはルール違反っていう双方のニュアンスで使うけど、確かにそういわれてみるとUTPRやDSTでアメリカを不快にさせて、アメリカの視点からは国際法違反って考えるとうまくひとつの単語で複数のニュアンスを詰め込んだ表現かもね。

Unfair Foreign Tax

1月21日下院法案Mark IIに少し戻った感じでExtraterritorial TaxとDiscriminatory Taxの各々がまず定義されてるけど、Extraterritorial Taxに関しては定義後半に「UTPR」は含まれる、「DST」に関してはDiscriminatory Taxの定義そのものの1つとして明記されてるんで結局それらの制度を持ってたらそれでNG。あれDPTは?って思ったけど一読した限りではPer Se Unfair Foreign Taxから脱落したみたいだ。でも世界中の税制調べた訳じゃないけど、DPTって英国とオーストラリアだろうからUTPRやDST持ってたらDPTが救われても意味ないね。

「Extraterritorial tax」と「Discriminatory Tax」で異なる対処?

おそらく設計的に一番アレって思うのは下院法案では「Extraterritorial tax」でも「Discriminatory Tax」でもどっちか採択してたら対処は同じだったけど、上院バージョンは「Discriminatory Tax」だけの問題国に関しては付加税を活用した対処はなくApplicable Personに直接間接に50%超(議決権または価値ベース)所有される米国法人にSuper-BEATが適用されるだけの対処に見える。法文読む限りそうなんだけど100%自信ないんで明日もう少しスッキリした頭で読んでみたい。一方「Extraterritorial Tax」を持つ国は従来通り付加税とSuper-BEATの双方で対抗されるように見える。この差はExtraterritorial Taxは持ってないけどDiscriminatory Taxはあるっていう国にのみ関係ある話し。もっと意訳するとUTPR持ってる国はDSTがあろうとなかろうと下院法案通り双方の対処法対象で、DSTはあるけどUTPRはありませんって国はSuper-BEATのみってことになる。

Applicable Date

適用にもう少し時間を設けて問題国が自国の制度を変える猶予期間を確保するのがベターっていう話しが出てて、この点は潜在的な下院法案からの変更点になり得るっていう点は前回のポスティングで予想したけど、その通りになった。Applicable Date(国毎・暦年ベース)やApplicable PersonがFiscal Yearのケースの適用開始年度を決める際の例の3つの日のうちの一つ「899可決から90日後」っていうのがナンと4倍に延長され「899可決から一年後」ってなった。これで仮に既にUnfair Foreign Taxを持ってる国に関しては2027年1月1日がApplicable Dateになるね。

「On or After」 v 「After」

以前のポスティング「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた通り下院法案ではFiscal YearベースのApplicable Personに対する付加税およびSuper-BEAT適用初年度は例の3つの日(下院では899可決から90日、問題国のUnfair Foreign Tax可決から180日、Unfair Foreign Tax適用開始日)の一番遅い日の「後(After)」に開始するFiscal Yearってなってた。付加税%を決める際のApplicable Date決定目的では「on or after」だったんで4月1日にUnfair Foreign Taxが適用開始で(仮にその日が3つのうち一番遅い日とする)3月決算の場合は一年後の4月1日に開始するFiscal Yearが最初の適用年度になるはずだった。さすがにApplicable Dateと規則がパラレルじゃないのはおかしいって思ってかどのFiscal Yearから適用かの判断時も「On or after」に変更されている。ただ、上述の通り、3つの日のひとつ「899可決から90日後」が「一年後」に変更されてるんで、この日が(例えば2026年7月5日)が一番遅い日になることが多く、その場合は4月1日問題は生じない。

付加税%は15%打ち止め

下院法案では付加税のCAPを付加税が足された後の税率を参照して規定していた。具体的には結果として計算される%は法定税率プラス20%がCAPとされてた。今回は付加税%そのものが15%で打ち止めになるって規定されている。下院法案と同じく条約適用の納税者には条約レートがスターティングとなる。したがって源泉税が条約でゼロ%の場合は15%で終わるけど条約ないと45%だ。

「Portfolio Interest Exemption」

米国債やボンドの金利源泉税が高くなって米国への投資に悪影響っていう懸念に対応するためか、下院Budget CommitteeのFootnoteにPortfolio Interest Exemptionは付加税の対象じゃないって記載されてたけど、Budget CommitteeのFootnoteは法律ではないんで法文上の明確化が望まれて、もしかしたらこれも上院でアップデートされるかもっていう点は前回のポスティングで触れたけど、その通り法文で対象外って明確になった。これでボンドは一安心。また199Aのパススルー所得控除の対象としても追加されてたDirect CreditのBDCが受け取る利子がPortfolio Interest Exemptionの要件を満たしている場合、それを原資に支払う配当も同様に対象外となった。

っていうことで若干のTweakの上、上院でも温存っていう予想通りの結果だけど15%打ち止め、可決から1年、とか随所に緩和措置がみられたね。取り急ぎでした。