Wednesday, May 16, 2007

日米社会保障協定(4)

一時派遣規定とスペシャル・ケース

前回までのポスティングで「一時派遣規定」の一般的な適用をカバーしたが、今回は「スペシャル・ケーース」、すなわちチョッと変わった事実関係に対する一時派遣規定の適用に関して触れる。実はこの辺りの質問は極めて多い。

1.第三国経由で米国に駐在する場合は?

日本から直接、米国に派遣されるケースばかりでなく、第三国から「横滑り」で米国に派遣される場合でも、米国派遣がその時点から5年を超えないと見込まれる場合には一時派遣規定が適用される。

2.一旦帰任したが再度米国駐在する場合は?

一時派遣規定の適用は派遣期間が5年を超えないと見込まれる際に適用が可能だが、一回5年近い派遣を終えて帰任した後に再度米国赴任を命じられるようなケースも想定される。規定上は帰任後少なくとも6ヶ月してからの再派遣であれば、新たな派遣として追加5年間の例外規定適用を認められる。また、特別な理由がある場合には6ヶ月以内の再赴任に対しても弾力的な対応も可能という社会保険超の非公式なコメントもあるので、ケース・バイ・ケースで社会保険事務所、保険庁に相談するべきである。

3.米国にて転職した場合は?

もともと駐在員として派遣されてきた者が米国内で転職する場合には、例え転職が5年以内に行われる場合でも、「派遣」という状態ではなくなり、一時派遣規定の適用は転職後には認められない。その場合は、通常のルールに基づき、米国にてFICAを支払うこととなる。

4.グリーンカード保持者または米国市民権を有する者に対する取り扱いは?

協定下の取り扱いは国籍、永住権有無に関係なく「派遣時の見込み」に基づいて決定される。したがって、グリーンカード保持者または米国市民権保持者であっても日本の親会社に雇われ、米国への派遣が5年以内と見込まれる場合には一時派遣規定が適用される。対象者の国籍は問われない。一方で、米国に駐在して当初の派遣予定期間内にグリーンカードの申請をするようなケースの対応に苦慮している企業も多いようだ。グリーンカードの申請を米国現地法人がサポートする場合には該当者を期間限定なく雇用し続けるという意思表示となることから「5年を越えない派遣」という当初の見込みが変更されたこととなる。その場合、適用証明書に記載される派遣期間内は一時派遣規定をそのまま適用し続けることができる(派遣時の見込みに基づく決定となるためーこの点に関しては前回のポスティングを参照)、その後は無期限で米国滞在が見込まれると取り扱われるため、基本的に延長申請には事実関係、意思表示に不整合が生じ、不適切だと思われる。

5.米国の派遣先が100%子会社でない場合でも一時派遣規定の適用は可能か?

一時派遣の趣旨はあくまでも日本の雇用者が「派遣」を行うということであり、受け皿となる事業主体の形態は問われない。例えば、資本関係の全くない米国の事業主体にトレーニング目的で従業員を派遣するようなケースでも、他の要件を満たしている限り一時派遣の取り扱いが適用される。したがって、派遣先が日本親会社の駐在員事務所、支店、子会社以外の事業主体でも一時派遣規定を適用することに問題はない。