Thursday, May 17, 2007

日米社会保障協定(9)

日米社会保障協定に係るシリーズが長くなってしまったが当ポスティングにて現時点では最後としたい。

今回のポスティングでは、協定の「一時派遣規定」に基づき、FICAが免除されてはずだったにも係らず、雇用者側の手違い等でFICAが源泉されてしまったケースにおけるFICAの還付申請に関してまとめておく。FICAの還付手続きは、Fビザ、Jビザで米国に滞在している者が(ビザの目的に照らし合わせて合法的に)給与を受け取る場合によく見受けられる処理である。Fビザ、Jビザ所有者は一定の条件を満たすことによりFICA源泉から免除されるが、雇用者側で誤ってFICAを源泉してしまうようなケースは比較的よく起こる。ちなみに会計事務所でもFビザで雇用したトレイニーの給与から長期間FICAを源泉していたという笑えないジョークのような話が現実にある。トレイニーに係るケースも、日米社会保障協定に基づき免除されるべきFICAを源泉してしまったケースも、FICAの還付申請手続きは同様である。

還付申請の方法は大別して次の2つである。

1.雇用者による「Form 941(Payroll Return)」の修正

FICAはもともと雇用者が源泉して納付することから、還付に関しても雇用者側でForm 941の修正バージョンである「Form 941C」を提出しFICAをIRSから取り戻すという手続きが望ましい。IRSから還付を受けた上で、対象となる従業員に誤って源泉してしまったFICAを返却するという手順である。この方法を取ることにより、個人各自が還付申請をする必要がない、また雇用者負担分のFICA(FICAマッチ)に関しても還付を受けることができるというメリットがある。Form 941Cは四半期毎に定期的に提出されるForm 941を次に提出する際に添付するという形で提出を行うのがよいだろう。Form 941Cを単独で提出してしまいIRS側の処理がうまくいかなかったケースがあるからだ。

Form 941Cの提出方法はもう一つある。雇用者の名前でForm 843を作成し、それにForm 941Cを添付するというものだ。いずれの方法でも最終的な効果は同一である。

2.各従業員が「Form 843」を提出して還付申請

雇用者による還付申請が望ましいにも係らず、何らかの理由で雇用者が還付申請を行わない場合には、従業員各々がForm 843を提出してFICAの還付申請を行うことが認められる。その際にはForm 843上のLine 5にて事情説明を行うが、その際に、「過大源泉したFICAを従業員に補填していない(the employer has not reimbursed any of the erroneously withheld FICA to the employee )」、また「雇用者として別途FICAの還付を申請していない(the employer has not filed a refund claim for any of the erroneously withheld FICA)」という旨のStatementを雇用者から入手し、添付する必要がある。これは同じFICAに関して二重に還付申請が行われることを防ぐためである。また、適用証明書のコピーを添付するのも還付処理手順の迅速化に役立つ。

各従業員がForm 843を提出する方法で還付されるのはあくまでも従業員の給与から源泉されたFICAのみであり、雇用者によるFICAマッチはこの方法では還付を受けることはできない。その意味でも前述の「雇用者によるForm 941の修正」の方が望ましい方法であると言える。