Wednesday, January 7, 2009

2008年度申告(深刻?)シーズン開幕

IRSは2008年度の個人所得税申告に係る「Fact Sheet FS-2009-1」を発表し、いよいよ申告シーズンが正式に開幕した。申告シーズンと言うと聞こえが柔らかいが、会計事務所的に言えばこれは「ビジーシーズン」となり、僕たちにとっては響きが異なる。

ビジーシーズンとなると「最低でもこれだけはチャージ時間をタイムシートに入れること」「クライント関連以外の内部ミーティングは禁止」等のお達しが出て、正月気分は一瞬にして吹き飛ぶ。2008年は超不景気だったので「監査部門」のビジーシーズンは単に仕事の量が多いという通常の負荷に加えて、Valuation、Going Concernその他の問題が山済みとなりより一層大変だろう。

また派遣員の方の給与処理等を担当する部門は11月後半からビジーシーズンに突入しており、年末年始の一瞬ホッとするものの、そのまま引き続き4月までビジーシーズンが続く。この点、同じタックスでも法人担当とはサイクルが若干異なる。しかし、一般に言えるのはここ数年、忙しくないシーズンというのは無くなり、普通の状態でもかなりビジーシーズンで、申告シーズンは「モア・ビジーシーズン」というのが実感だ。ちなみに、「申告」シーズンをPCで変換したら「深刻」シーズンと言う漢字が最初の候補だった。あながち外れてもない。

*Fact Sheet FS-2009-1

Fact Sheetそのものに特に目新しい情報は盛り込まれていないが、2008年度に適用される新しい規定等が平易に説明されており「アンチョコ」として使える。

2007年度の申告では納税者および会計事務所を困らせた年末ぎりぎりのAMTパッチも今年は余裕のタイミングで可決されており、ここ何年かと同レベルのAMT Exemptionが設けられている。AMTパッチに関しては2007年後半に何回か触れているが、基本的な問題点に関しては2007年12月14日の「混迷極める米国議会のATM対策」を参照のこと。このAMT Exemptionの増額は例年通り、一年間のみ有効な時限措置であり、つまりその場しのぎの「付け焼刃」である。オバマ政権となってもAMTの撤廃は一朝一夕で実現する気配もなく、今後も毎年の「パッチ」で乗り切ることになるのだろうか。

また、サブプライム問題を反映して住宅関係の新たな恩典が新らたに規定されている。これらの規定はBail-Out Billである「金融安定化法」に盛り込まれているものであり、詳しくは「金融安定化法に盛り込まれた多数の税法改正(1)」、「同(2)」、「同(3)」を参照のこと。

住宅関係の新たな規定は大きく二つあり、ひとつめは実質、財務省からの無金利ローンの性格を持つ「First Time Home Buyer」クレジット。そしてもうひとつは、従来は「個別控除(Itemized Deduction)」しないと取れなかった不動産に係る固定資産税が「標準控除(Standard Deduction)」を計上している納税者にも限度額内で費用化を認めるという規定だ。限度額は夫婦合算で$1,000、他のケースでは$500となる。この規定の対象となるのは米国の不動産のみであり、日本その他の海外不動産に対して支払われる固定資産税は対象とならない。もちろん個別控除を取る場合には不動産の所在地は関係ない。この点は従来通りである。

他は比較的例年通りの控除額の物価スライド調整のような情報が並んでいる。いよいよ今年も申告シーズン、いやビジーシーズンの到来だ。