Sunday, October 5, 2008

金融安定化法に盛り込まれた多数の「税法改正」(2)

金融安定化法に盛り込まれた多数の「税法改正」を続ける。

*適格ストックオプションとAMT

ISOと呼ばれる適格オプションは行使時に通常課税されず、株式の売却時に全額がキャピタルゲインとして課税されるというメリットがある。しかし、これは通常税金の算定の話しで、AMTの算定目的では行使時にスプレッドが課税処理されるという落とし穴がある。適格オプションを適格のままとするためには行使後すぐの売却ができないため、行使後の株式価格変動リスクが高い。

行使時にAMTは支払ったものの最終的に株式を売却する段階で株価が下落していると、AMTの払い損となる。AMTはその後の年度の税額を減額するクレジットとして使用できるが、使用額に限度がある等、必ずしも直ぐに還付されるとは限らない。今回の法律では過去に支払ったISOに係るAMT還付を加速させる。

*売上税の個別控除

連邦の個人所得税を算定する際には州の所得税をItemized Deduction(個別控除)項目とすることができるが、州所得税の代わりに売上税を計上してもよいという規定がここ数年時限立法的に適用されていた。もともとは2004年に可決された「American Job Creation Act」に始まり毎年延長されていた規定で2008年には失効しているはずであったが、期限が延長され2009年まで適用されることとなった。

この規定は主に州個人所得税がない、またはあっても税率が低い州に居住する者に影響が大きい。

*不動産税と標準控除

不動産絡みであれば何でも恩典を与えようとしているようで節操がないように思える規定であるが、個別控除額が「Standard Deduction(標準控除)」よりも低く、標準控除を計上する個人がReal Property Tax(不動産税)を支払っている場合には、$500を限度額として標準控除額が増額される。夫婦合算申告のケースでは限度額が$1,000に増額される。

*住宅ローンの債務免除益

住宅ローンの残高が金融機関による差し押さえその他の手段で減額された場合に発生する債務免除益を非課税とする規定は2009年末で失効するはずであったが(The Mortgage Forgiveness Debt Relief Act)、これが3年間延長され、2012年までOKとなった。

*キャピタルゲインのIRS報告義務強化

証券会社等のブローカーは顧客が売却した株式等のキャピタルゲインに係る情報を毎年IRSに報告する義務を負う。ただし、従来は報告義務があるのは売却価格のみで、所得コスト等の「Basis」を報告する義務はなかった。この点に関しては2007年5月25日の「証券会社による株式取得コスト報告案」というポスティングで詳細に触れているが、この程、取得コストの報告が漸く義務付けられた。ただし報告義務は2011年に取得された株式からとなる。社債等他の証券に関しては2013年(Mutual Fundsは2012年)取得のものからが対象となる。