Sunday, October 5, 2008

金融安定化法に盛り込まれた多数の「税法改正」(1)

*金融安定化法

ウォール街金融機関の「Bailout(=救済)」である「Emergency Economic Stabilization Act (金融安定化法)」が10月3日にようやく可決され法律となった。巨額の公的資金で「Toxic Asset (=有毒資産)」と表現されるようになった住宅ローン等の不良債権を買い取るというものだ。

買取時の資産評価その他のプロセスは複雑となるが、そのプロセスを通常では考えられないような短期間に実行しなくてはならず、当然財務省のリソースだけでは足りない。したがって、外部のプロと契約を進めているようだが、これらのプロは救済される当人であるウォール街から集まってくることになる。実際に救済が成功し、経済危機から脱出できることができるのかどうかは誰にも分からない。新車購入時に自動車ローンを組むことができるバイヤーがローン申請者の80%(2007年)から60%(現在)にまで低下しているという話しがあるように、確かにクレジット・マーケットは何とかしないと今後の展開はかなり暗いものとなる。したがって議会としても何かアクションを取る必要があり、今回の金融安定化法の成立となった。

*金融安定化法に盛り込まれた税法改正

金融安定そのものに係る部分に関しては既にメディア、ブログ等で詳細に報道、分析されているのでここでは特に触れないが、この法律のもうひとつの側面に関して触れてみたい。というのも、この金融安定化法には、金融安定とは直接関係のない数多くのエネジー関連の法律、また税法改正が盛り込まれている。通常であればトップニュースとなるような税法改正も含まれているが、金融危機のニュースに掻き消されているような感じもするので、ここで日本企業、日本企業の派遣員等に関係が深そうな項目のみを取り出して簡単にまとめておく。

今回盛り込まれた税法改正の多くはどこかのタイミングでいずれにしても法制化しないといけなかったものだ。通常であれば、これらの多くの減税措置をどのような歳入増でオフセットするかという点で長期の議論が重ねられるはずであった。緊急に可決させる必要が生じた金融安定化法に入れ込んでしまうことにより多くの議論がないまま勢いで可決されてしまった。

*AMTパッチ

個人所得税のAMT問題に関しては過去に何回か触れてきた。根本的な是正を実行すると巨額の歳入減となることから毎年付け焼刃的に問題が大きくなるのを回避してごまかしてきているのが「AMTパッチ」だ(「混迷極める米国議会のAMT対策」を参照)。昨年はAMTパッチが12月末ギリギリに立法化されて申告シーズンに悪影響を与えたが(「AMTパッチ漸く可決」「IRSのAMTパッチ対応Update」参照)、今年はタイミング的には余裕で可決された。これで年末調整グロスアップで多額のAMTを支払い、確定申告で還付というような面倒な手続きを取る最悪の事態は回避された。

2008年のAMTを算定する際に利用できる「Exemption」金額は夫婦合算申告ベースで$69,950(2007年はAMTパッチ後$66,250)、独身者申告で$46,200(同$44,350)、夫婦別申告で$34,975(同$33,125)となる。