Wednesday, December 19, 2007

AMTパッチ漸く成立

一週間程前の2007年12月14日に混迷を極めるAMTパッチ法案をめぐる上院・下院の攻防に関してポスティングしたが、今日12月19日遂にAMTパッチ法が両院を通過した。後はブッシュ大統領の署名を待つばかりの状態となり、実質AMTパッチが成立したことになる。

*AMTパッチは歳入オフセットなしで成立

民主党が過半数を握る下院と、独立系の議員2人でバランスが決まる上院、共和党の大統領間での攻防の焦点は、単年だけでも500億ドルに達すると言われるAMTパッチによる歳入減を他の増税でオフセットするかどうかという点であった。下院は執拗に2回もオフセットありの法案を通しているが、上院と大統領の支持を取り付けることができず、最終的には議会が冬休みに入る前日の今日、上院の改正案(オフセットなし)に同調する形で法律が成立した。せっかく下院を牛耳っているにも係らず、民主党のパワー不足感が露呈したような結果に見える。

ブッシュ大統領はオフセットありの法律が手元に送り込まれたら拒否権を発動する勢いであったが、最終的にオフセットがない法律が通過したため、喜んで署名することとなり、このまま早ければ明日にでも法律として成立するであろう。

*AMT基礎控除額

2007年9月10日、12月14日のポスティングでも触れたがAMTを算定する際には「AMT基礎控除」が認められる。AMTパッチはAMTの税率を下げるとか、AMTの適用を中断するといった方法ではなく、AMT基礎控除を増額するという形で実現される。

2006年のも同じようなAMTパッチが法律化されたが、その際には夫婦合算申告ベースで基礎控除額は$62,550であった。2007年はこれが$66,250となる。また独身者に関しては2006年の$42,500が$44,350に増額されている。

*IRSは早速システム対応に着手

IRSは遅かれ早かれAMTパッチが法律化されることはもちろん予期していた。秋には両院の税務委員会から「AMTパッチは必ず通すつもりだ」というレターも受け取っている。しかし、当たり前の話であるが法律が通らないことには税金を処理するコンピュータシステム等の更新ができない。

法律が両院を通過したという報告を受けIRSは直ぐにニュースリリース(IR-2007-202)を発表した。リリースによると直ぐにプログラム修正に着手し、申告シーズンへの影響を最小限に食い止めるとされている。

また、大統領が法律に署名後、ナント72時間以内で影響がある申告書様式12種類の改訂版を公表し、申告書作成ソフトウェア会社等がいち早く新様式に対応できるようにするとしている。72時間以内に新しい様式ができるというのはかなり早い。実はもうドラフトができていていつでも発表できるようになっているのであろう。

ただし、AMTは多くの「コア」システムに関係する計算となり、ニュースリリースには「IRSは申告書処理の遅れが最小限となるよう、果敢に可能なオプションを検討していく」とも書かれていることからやはり処理の遅れは最小限に食い止めるとは言え発生するらしいことが分る。どのようなオプションを果敢に攻めるのかはニュースリリースを読んだだけでは分らないが、おそらく、AMTポジションとならない申告書は早い段階から処理を受け付ける等、時間差攻撃のようなことを考えているのではないかと推測する。余計に処理がややこしくなり、間違ったNotice等が発行されないことを祈る