Monday, December 24, 2007

「公的ねんきん」日本vアメリカ(2)

宙に浮いた年金問題よりも以前に話題となった問題に「国民年金未払い」がある。閣僚、政党の幹部も含めて多数の未払い者が続出した事件である。国民年金は20歳以上の全員に所得の有無に係らず義務付けられているそうだ。その割には徴収のメカニズム自体に税金のような強制感がなく知らずに未払いの学生が多数いても不思議ではない。

*米国でも社会保障税は二つのカテゴリーから成る

米国でも社会保障税は基本的に「給与所得者」(税金等を源泉徴収してくれる雇用者がいるケース)対する「FICA」と、「自営業者」に課せられる「SECA」の二つから成り立っている。位置づけとしては「FICA = 厚生年金保険料」「SECA = 国民年金」と言えるが日本の仕組みとは相当異なる。

まず、年齢による強制加入はない。FICAは給与所得があれば必ず支払うことになるし、SECAも自営業(パススルーからの所得分配も含まれる場合もある)から所得があれば必ず支払うこととなる。自営業に関しては費用を差し引いたネット所得が年間$400以上の際にのみ支払いが求められる。すなわち、所得があって初めて支払いが発生するものであり、普通に考えれば所得が全くない場合には支払いが困難であることを考えると分かりやすい仕組みであると言える。

*国民年金は確定申告時に支払いが義務化

FICAの支払いは日本の厚生年金保険料同様に雇用者が天引きするので、雇用者が納付を滞納でもしない限り支払いは自動的に行われる。一方、SECAは源泉徴収する者がいないので自己申告となる。しかし、所得のある国民全員が確定申告を行う米国では、SECAも確定申告書上で算定し、所得税と同時に納付することになっている。確定申告書では当然、自営業からのネット所得を申告することになることから、その金額を基に一定税率を掛けてSECAを確定するのは極めて合理的なシステムだ。税務調査の際には自営業所得の内容が精査され、当然SECAの金額も調査の対象となる。

*FICAもSECAも税率は同じ

日本では国民年金にのみ加入している者は厚生年金保険料(国民年金も含む)を支払っている者よりも低い金額を納付することになるのが普通であると理解している。一方米国ではFICAもSECAも同じ税率に基づく。具体的にはFICAは公的年金部分6.2%、メディケア(高齢者の医療保険のようなもの)1.45%となる。また公的年金部分には課税標準に上限があり上限額は毎年物価スライドされる(2007年は$97,500)。またFICAに関しては雇用者が従業員負担額と同額を納める「FICAマッチ」という制度がある。

SECAにも同じ考え方が適用されるのであるが、FICAと異なり雇用者がいないため、自営業者自らが「従業員部分」と「雇用者によるFICAマッチ部分」の双方を自ら負担することとなる。したがって、税率はFICAの倍、公的年金12.4%、メディケア2.9%、計15.3%となる。このうち12.4%に関しては課税標準にFICAの公的年金部分と同額の上限が設けられている。本当の雇用者であれば雇用者マッチ部分の金額は法人税(または雇用者の所得税)から費用控除することが認められるため、SECAの1/2がみなし雇用者分として自営業者の所得税算定時に費用控除される。また、SECA算定時にはネット自営業所得に92.35%を乗じる。これはSECA算定目的でも雇用者マッチ分(15.3%の1/2 = 7.65%)を差し引いた後の金額を課税標準とするためである。

このようにFICAとSECAの間の整合性はかなりの精度で保たれていると言える。次のポスティングでは米国版「ねんきん特別便」に関して触れる。