上院Procedural Vote通過
土曜日にFinance Committeeの税法部分を含むMega-Bill上院アップデートバージョンが公開された。時を同じくしてG-7が米国にはピラー2を適用しないっていう旨の声明を出した。そして先ほど上院のProcedural Voteは51対49で通過している。このProcedural Voteっていうのは未だ交渉が続く中でのテスト投票みたいな位置づけに過ぎないけど、トランプを含む共和党リーダーシップによる党内調整の成果が上がっていることを示す。共和党上院議員の反対は2名。ここ数日のRon Johnsonとトランプの交渉結果Johnsonは賛成票を投じたけど、Thom Tillis(R-NC)とRand Paul(R-KY)が反対。大物のMedicaid問題は未だに交渉中で最終投票まで予断を許さない状況。夜を徹した審議の後、月曜日に決議って言うのが最速。トランプはThom TillisにカンカンでPrimary Challengeの気配。
上院法案改訂版では899勇退
Bessent長官の要請を受けて土曜日に公開された上院法案アップデートバージョンからは899は消えている。1月20日の大統領令、同時899下院法案提出、Mega-Billの一部として元々別法案だったSuper-BEATを合体させて登場、上院法案でも温存、米国内ではWall Streetタイプ以外からはサポートが多く米国Chamber of Commerceって日頃硬派だけど米国の主権、米国企業を域外課税から守るっていう政権・議会の気概・決意を高く評価、等の経緯でいよいよ可決前夜となり899の攻撃力が最高潮に達していた。覆いかぶさるように英国、EU、カナダ等の企業側からのプレッシャーも大きくなり耐え切れずOECDはピラー2は米国企業には適用なしに同意、G-7も同様の旨の声明を出す。イエレン長官の時は議会とコーディネーションゼロだったけど、今回の流れは行政府と議会が一枚岩で対処し、米国的には「国家主権侵害」っていう神学的に(?)許容できないGlobal Tax Deal、特にUTPR、の米国企業への適用を覆した。899は可決以前に大効果を発揮してデビュー前に勇退。
チョッと不思議なG-7声明
G-7の声明は米国財務省が主張していたSide-by-Sideアプローチを是認するっていうことだけど「US Parented Group」にピラー2適用がないって書いてあるんで、インバウンド企業の米国所得に対してはその親会社国でIIR適用があり得るんだろうか。財務省のアプローチは米国が課税する所得にピラー2は触ってはいけないっていうスタンスだったはず?
とは言え本丸は米国企業だろうから、少なくともそこにはSide-by-Sideでピラー2の適用ナシっていう点は合意済み事項。声明に記載されているその判断に至る理由は米国財務省の主張通り。すなわち意訳・要約すると「米国の制度とピラー2を分析検討した結果、米国の制度はピラー2と同格に強固で、Inclusive FrameworkによるBEPS対策のここまでの進展を守るためSide-by-Side(米国は米国ってことでピラー2には干渉されないアプローチ)がベストだという共通認識に至った…」云々って感じかな。もしそれが分析なんだったら今までの話しはなんだったの~って感じはする。
米国の制度はいつから何をもってピラー2と同格に?
米国のBase Erosion対策って1932年の元祖Anti-Deferralのsection 367(興味あったら昔のKiller B特集読んでみてね)、1962年のSub F(元祖CFC合算課税)、2017年のGILTI・BEATとか常に主権国家としてまた自国市民に説明責任がある議員たちの立法っていう範囲で先端を行ってるんでこの分析結果自体に驚きはないけど、でもこれらの「同格に強固な」米国の制度はピラー2議論開始時点で既に存在してた。この点に関して「上院法案をもってして同格に至った(?) 」とも取れる興味深い文言が合意声明に含まれてるけど、GILTIやFDIIからQBAI(みなしルーティン所得)の適用が消えた点やGILTIバスケットのFTC枠計算時に金利を配賦しなくても良くなる、みたいな調整で急に同格になったんだろうか。増してや未だ法案の状態で数週間前までは同格に強固じゃなかったけど上院法案で立派に成長したっていうニュアンスだとしたらこれもチョッと不思議だ。この部分は法案が可決したらもう少し考えてみたい。
結局のところピラー2の目的は?
そこで感じざるを得ないのは、以前から何回かポスティングで触れたと思うけど、元々ピラー2って目的が必ずしも明確じゃなくて、そのため強固なPrinciple・規律に裏付けされたルールじゃないっていう点がルールが結構派手に二転三転する根本的な問題っていう点。ピラー2で何を守ろうとしてるのかが分からないんでそのベストな手段を定義するのが難しい。今回簡単に米国不適用に至った終焉もそれを象徴してる。何年か前のポスティングだったと思うけど、この手の国際合意系の話しは結局のところ大国のパワープレー(中国に至っては言葉ではサポートを繰り返しながら実質無視に近かった?)っていう点に触れたけど、最後までそんな実態がFull Displayだったね。ただPragmaticな解決としては逆にこれしかないだろうから合意判断はポリティカルには合理的だし高い評価に値する。
さらに考えてしまうのはPEやALPの守護神だったOECDがUTPRがExtraterritorialじゃないとか条約に準拠しているとか本当に信じてたとは想像し難く、いくらBEPS 2.0でTaxing Rightsを再配分するつもりだったとしても親会社の所得を形式的に子会社の手で課税するって言うだけで急に所得のBenefical Ownerが子会社になる訳ではないし、そんな所得移転が可能だったら実態基準(Substance over form)とかの概念を自ら否定してることになる。これらはクロスボーダー課税にDeepに精通してなくても簡単に理解できる矛盾で、OECDはクロスボーダー課税のExpertだろうから実はいざとなったら法的にディフェンスは難しいっていう認識が根底にあったとしてもおかしくない。そうなるとUTPRは国際課税制度の強固な概念に裏付けされた規則ではなく、国際合意として「赤信号みんなで渡れば…」(一時流行ったね、これ)みたいなアプローチになってた感じもあったよね。
チョッと意地悪な見方でピラー2の「目的」変遷をおさらいすると、EU憲章の関係でEU内で強固なCFC課税導入が難しく、アイルランドとかハンガリーみたいな低税率国が存在していたEUがOECDと「Global Tax Deal」をマスカレードして自己都合でミニマム税導入を希望(これはもちろん公にそう言って登場してきた訳じゃないんで推測の域は出ない)。当初、米国があんまり相手にしなくて一旦暗礁に乗り上げてたところに2021年にバイデン政権が発足して、米国法人税28%に引き上げを実行するに当り他国との競争が不利にならないようイエレン長官がOECDに「21%!」のピラー2ミニマム税を提案。これも単純な自己都合。交渉は息を吹き替えすけど、米国では結局議会の同意を得られず頓挫…。迷惑~。
国際合意に付き物のこんな感じのパワープレーで事は進んでいき、知らない間にUndertaxed Payment Rule(元祖Undertaxed Payment Ruleだったら米国でも未だ議論の余地はあっただろう)が同じ頭文字だけど別物のUTPRにすり替わってたり不透明なルール策定があったりしたけど、その間、対外的なキャッチフレーズ的にピラー2の目的は「Race to the bottom終止符(Tax competition禁止)」(結局別の形のCompetitonが出現)とか、「Level Playing Field(最後まで誰と誰のFieldの話し?っていうのが不明確)」とか、これらと似てるOverarchingなテーマ「Fair Share」(Fairnessは見る者で尺度が異なるんで基準が良く分からず単に美徳にアピール?)とかもあった。
主目的っていう観点から考えるとピラー2は「BEPS」っていうフレームワークでの話しだから当然Base ErosionやProfit Shiftingを取り締まるのが主たる目的なはず。でも不思議と、特に後年、ピラー2のこの視点・目的はあんまり強調されなくなってたって言うかルールが対応困難なほど複雑化していく中で機械的な話しが主になり「木を見て森が見えなくなっていった」気がする。「クレジットは還付可能だったら云々とか、現金譲渡はOKだけど20年繰越はNGとか…」。Base Erosion取り締まるんだったら「真犯人」の米国を取り締まらないと話しにならないと思うけど、土曜日のG7声明では「米国独自のシステムは十分にピラー2に同格」で「Side-by-SideでBEPSの目的達成」っていうこと。え~米国に適用なしのグローバルのBase Erosion対策???。っていうことはこの目的は結局のところ当初から2次的だったのかもね。
まあEU的にはEU内で導入できたからそれはそれでその部分の目的達成っていうことなんだろうか。米国企業は今回の合意で凄いアドバンテージを得たんで他国は不利になるんではとか、大げさな話しでは「米国企業にInversionするのがいい(苦笑)」みたいな話し(プラニング?)が早くもチラホラ聞かれるけど、米国のBase Erosion対策が同格だったら心配ないのでは?
OECD合意やG7声明は誰に適用?
G7声明等で更に不思議に思ったのは7か国に関しては当事者でCongress制度の米国以外のメンバーはParliamentary制度だろうからそこで合意すれば法的にそうなるって決まってるのかもしれないけど、Inclusive Frameworkとかどうしちゃったんだろうか。140(だっけ?)国のコンセンサスを得てできた制度だとしたら、この声明を寝耳に水的に聞いた多くの国はどうしたらいいんだろうか。EUだけ見ても27か国のほとんどはG7じゃないんで899なくなったんで企業はうれしいとしても、G7 以外の各国政府は急に「米国は対象じゃないことにしたんでよろしく」って言われてチョッと釈然としないものもあるのでは?
釈然としない位だったらいいかもしれないけど、本当に全員従うんだろうか。「やっぱり27か国の意見調整ができなかったんで米国にも適用せざるを得ない」みたいな話しって可能性ないのかな。その頃は米国に899はない。となると伝家の宝刀891?いきなりその日から付加税ダブルで配当源泉60%(一旦条約は無視と仮定)とかなると「これだったら899が恋しい~」とか言っても後の祭り。でも、このタイミングで899撤回して、それで合意実行しない国が出てきたらそれらの国が合意時にコンセンサスを表明していようがしてなかろうが今度こそ容赦ない感じはあるよね。891は891で条約との関係とかテクニカルには難しいチャレンジが多いけどね。
DSTは?
米国が主権国家として一番許せなかった敵はUTPRだから、合意が実行される前提だと899の導入目的は達成かもしれないけど、ピラー2との比較でターゲットとしてはジュニアなDST対処はどうなっちゃうんだろうか。数日前の報道ではDSTも撤回合意があり得るような報道もあったけど、間が悪いことに899撤回と同時にカナダはDST敢行発表。トランプはカンカンでBessent長官は301(出た~!)で通商対抗も辞さないって。891の話しは未だ聞いてないけど通商だけなのかな。まあDSTってチョッと関税チックだからそれでいいのかもね。
New-New-BEAT
Super-BEATがなくなってNew-BEATだけで安心って思ってたらまたしても逆転劇でNew-New-BEAT登場(Micheal LewisのNew-New Thing思い出すね。シリコンバレーのJim Clarkの話し(Netscape!))。上院法案読んでてビックリだったけど、BEAT税率は14から下がって10.5%なのはいいとして、後はマイナーなテクニカル修正ばかり。え~「High-Tax Exception」が見当たらない。何コレ~。ってことでまた変わるかもしれないから週末は更なる法案修正に注目しましょう。
Sunday, June 29, 2025
Thursday, June 26, 2025
「OECDピラー2は米国に不適用」最終合意・目標達成で899はお役御免?
昨日、財務省幹部がOECDおよび主要各国が米国の主張を聞き入れてGlobal Tax Deal米国不適用に合意するだろうっていう報道に関して触れたところだけど、さっき財務長官のScott BessentがX(昔のTwitter)で正式の合意に至ったコメントを公表した。昨日のポスティングで言うところの「Bombshell」進展。
Xのコメントによると「OECDのピラー2は米国企業には適用されない最終合意に至った。今後数週間から数か月掛けてOEDC-G20 IFと協力して当合意を実施することになる。このような歴史的な合意を実現した各国との協働・コラボに感謝する」とのこと。Michael FaulkenderやRebecca Bauchの主張から想像するに米国企業だけでなく、米国が課税対象とする所得にはピラー2の適用はあってはならないっていうのが米国のポジションだったし、Scott BessentのポストでもUTPRではなくピラー2全体が米国には適用がないと明言してるんで、UTPRばかりでなく外国法人の米国子会社にIIRの適用も認められない(通常のCFC課税はOK)ってことだろう。QDMTTは各国の勝手って考えられるけど、OECDが先導しているQDMTTが米国GILTIより優先っていうのは今後は米国と各国の交渉になる可能性がある。
更にScott Bessentは別ポストで「数か月におよぶ他国との協議の結果、米国の権利を守るためのG7共同声明を発表する。トランプ大統領が1月20日に就任と同時に発令した2つのExecutive OrdersはOECDのGlobal Tax Dealから米国の国家主権を守るよう財務省に指示したことが起点となり当合意の道を開いた。大統領のリーダーシップにより米国市民に吉報が届いた」としている。
Section 899法案は?
Section 899法案に関しては「当展開により審議中のMega-Billからsection 899を撤回するよう下院・上院に提言した。G7との当合意はグローバル経済に確実性・安定性を提供し、米国の成長・投資等を更に強化する。このような合意を可能にした(強要した?)section 899の審議にかかわる下院Ways and MeansのJason Smith委員長および上院Finance CommitteeのMike Crapo委員長の多大な努力に敬意を表したい」ということ。
現時点で下院・上院の反応はないけど、上院はByrd Bath最終フェーズでProcedural Voteが差し迫る中、Byrd審判のParliamentarianに言われていろいろな修正を入れているんでもしかしたら899撤回、または内容がソフトタッチに文言修正される可能性はある。今のところScott BessentからDSTにかかわるコメントはないけど、プレスではこっちも合意間近っていう報道もあったんで何かあるかもね。
ただ、上院法案で付加税%がUTPRだけに適用されていた点からも分かる通り、国家主権的に一番許せないと感じられていたのはUTPRだから大概において目的達成ではあるだろう。DSTの取り扱いが不明確な場合や今後も変な税法が出てこないとも限らないんでsection 891が90年間Codeに居座ってるようにsection 899も法律として残る可能性はあるけど、適用がなければそれはそれで自由にどうぞって感じだね。OECDもモデル条約やBEPS 1.0くらいまではよかったかもしれないけど、ピラー2とかどう考えてもExtraterritorialでチョッとやり過ぎだったんじゃないかな。
っていうことで取り合えずNew-BEATは触れたし、Super-BEATは深堀する前にMootな感じ。これで今晩は少し睡眠とってその後地道に上院・両院のMega-Bill動向大枠にフォーカスします!
Xのコメントによると「OECDのピラー2は米国企業には適用されない最終合意に至った。今後数週間から数か月掛けてOEDC-G20 IFと協力して当合意を実施することになる。このような歴史的な合意を実現した各国との協働・コラボに感謝する」とのこと。Michael FaulkenderやRebecca Bauchの主張から想像するに米国企業だけでなく、米国が課税対象とする所得にはピラー2の適用はあってはならないっていうのが米国のポジションだったし、Scott BessentのポストでもUTPRではなくピラー2全体が米国には適用がないと明言してるんで、UTPRばかりでなく外国法人の米国子会社にIIRの適用も認められない(通常のCFC課税はOK)ってことだろう。QDMTTは各国の勝手って考えられるけど、OECDが先導しているQDMTTが米国GILTIより優先っていうのは今後は米国と各国の交渉になる可能性がある。
更にScott Bessentは別ポストで「数か月におよぶ他国との協議の結果、米国の権利を守るためのG7共同声明を発表する。トランプ大統領が1月20日に就任と同時に発令した2つのExecutive OrdersはOECDのGlobal Tax Dealから米国の国家主権を守るよう財務省に指示したことが起点となり当合意の道を開いた。大統領のリーダーシップにより米国市民に吉報が届いた」としている。
Section 899法案は?
Section 899法案に関しては「当展開により審議中のMega-Billからsection 899を撤回するよう下院・上院に提言した。G7との当合意はグローバル経済に確実性・安定性を提供し、米国の成長・投資等を更に強化する。このような合意を可能にした(強要した?)section 899の審議にかかわる下院Ways and MeansのJason Smith委員長および上院Finance CommitteeのMike Crapo委員長の多大な努力に敬意を表したい」ということ。
現時点で下院・上院の反応はないけど、上院はByrd Bath最終フェーズでProcedural Voteが差し迫る中、Byrd審判のParliamentarianに言われていろいろな修正を入れているんでもしかしたら899撤回、または内容がソフトタッチに文言修正される可能性はある。今のところScott BessentからDSTにかかわるコメントはないけど、プレスではこっちも合意間近っていう報道もあったんで何かあるかもね。
ただ、上院法案で付加税%がUTPRだけに適用されていた点からも分かる通り、国家主権的に一番許せないと感じられていたのはUTPRだから大概において目的達成ではあるだろう。DSTの取り扱いが不明確な場合や今後も変な税法が出てこないとも限らないんでsection 891が90年間Codeに居座ってるようにsection 899も法律として残る可能性はあるけど、適用がなければそれはそれで自由にどうぞって感じだね。OECDもモデル条約やBEPS 1.0くらいまではよかったかもしれないけど、ピラー2とかどう考えてもExtraterritorialでチョッとやり過ぎだったんじゃないかな。
っていうことで取り合えずNew-BEATは触れたし、Super-BEATは深堀する前にMootな感じ。これで今晩は少し睡眠とってその後地道に上院・両院のMega-Bill動向大枠にフォーカスします!
Wednesday, June 25, 2025
OECD米国の要請聞き入れ準備?
前回のポスティングで触れたBBBを積んだB2 Bomberが太平洋方面に発射したっていうのはオトリで実は本当のB2はその名の通りStealthに逆方向の東に向かっていた。往復30時間空で給油しながらイラン山奥に爆弾落として見つからずに返還。イラン山奥の核施設攻撃ってTom CruseのTop Gun 2の話しそのもの。Top Gun 2の撮影は米国軍が特別に相当な期間に亘り指導や協力したって話しで、ジェット(映画ではB-2 Bomberじゃなかったよね)に撮影用のEquipment積んだり相当Realっていうことだったけど、まさかストーリーそのものがRealになるとは…。しかも映画と異なり敢行されたのは新月に近い闇の中だったっていうことだから凄まじい作戦。まさにOperation Midnight Hammer。作戦完了までリークがゼロだったのも驚き。
NYCではSocialistの候補が民主党Primaryで市長候補に選ばれた。対戦相手の元NY州知事Cuomoに対するRebukeになるけど、要は一般市民のCuomoのようなPolitical Classに対する不満・不信感の表れって感じがする。NYC民主党市長候補は超Leftでトランプ政権とは真逆だけど、Establishmentに対する不信感っていう部分はなんか似てるよね。まだGeneral Electionで決まった訳じゃないけど、既にフロリダやテキサスに引っ越す企業や人がまたしても増えるのではって言われている。
で、話しは本題に入るけど、899の可決が濃厚になりUKやEuroのビジネス界が「テクニカルな話しは何でもいいから899の適用がないような制度に変えること」っていう要請が強まってる点は前々回触れた。企業だけでなく米国財務省からも強い要請があり、またDe-fundリスクの影響もあってなのか分からないけど、OECDは米国の言う通りにするっていう流れになっているって財務副長官Michael Faulkenderのインタビューでコメントしたという報道。内容は分からないけど財務省の要請は米国の所得にUTPRどころかピラー2の適用はしないことっていうものだったからOECDがそれを正式にルール化するっていうことなんだろうか。そして各国が追従?また欧州各国はDSTも撤回するっていう噂も同時に報道されている。近日中にBombshell(?)発表があるかもね。その場合899が仮に可決されても適用対象がない状況になるかも。さらに言えばOECDやDST国が撤回を確約する場合には899自体不要論も出てくるかも。まあ899あっても適用なければ実害はないし、将来変な税制が出てこないとも限らないんで法律として持っておくのは米国的にはダウンサイドはないしWall Streetタイプの懸念も当面ない。Mega-Bill上院審議前夜に凄い展開。財務省も負けずにStealthだね。
NYCではSocialistの候補が民主党Primaryで市長候補に選ばれた。対戦相手の元NY州知事Cuomoに対するRebukeになるけど、要は一般市民のCuomoのようなPolitical Classに対する不満・不信感の表れって感じがする。NYC民主党市長候補は超Leftでトランプ政権とは真逆だけど、Establishmentに対する不信感っていう部分はなんか似てるよね。まだGeneral Electionで決まった訳じゃないけど、既にフロリダやテキサスに引っ越す企業や人がまたしても増えるのではって言われている。
で、話しは本題に入るけど、899の可決が濃厚になりUKやEuroのビジネス界が「テクニカルな話しは何でもいいから899の適用がないような制度に変えること」っていう要請が強まってる点は前々回触れた。企業だけでなく米国財務省からも強い要請があり、またDe-fundリスクの影響もあってなのか分からないけど、OECDは米国の言う通りにするっていう流れになっているって財務副長官Michael Faulkenderのインタビューでコメントしたという報道。内容は分からないけど財務省の要請は米国の所得にUTPRどころかピラー2の適用はしないことっていうものだったからOECDがそれを正式にルール化するっていうことなんだろうか。そして各国が追従?また欧州各国はDSTも撤回するっていう噂も同時に報道されている。近日中にBombshell(?)発表があるかもね。その場合899が仮に可決されても適用対象がない状況になるかも。さらに言えばOECDやDST国が撤回を確約する場合には899自体不要論も出てくるかも。まあ899あっても適用なければ実害はないし、将来変な税制が出てこないとも限らないんで法律として持っておくのは米国的にはダウンサイドはないしWall Streetタイプの懸念も当面ない。Mega-Bill上院審議前夜に凄い展開。財務省も負けずにStealthだね。
Saturday, June 21, 2025
上院法案「New」BEATと「Super」 BEAT (2)/891も再浮上
Mega-Billは広範囲な分野を全て取り込んだ1‐Track法案 としては1月当初に予想されてたよりも相当早いスピードでここまで漕ぎつきた。このスピード達成の背景・チャレンジ、下院と上院のインセンティブの差異その他、選挙結果が判明した去年の11月直後に「2024年11月米国選挙結果と米国税制 (3) 「予算調整法2回どう使い分ける?(2)」およびその前の2回のポスティングで詳細に触れてるんで議会動向を理解するためぜひ復習(?)しておいて欲しい。
ちなみにもう一つのBBBは世界中のBloggerとかが米国の軍資材の移動を刻々と追って多くのレポートがあるけど、BBBを搭載しているB2 BomberがMissouriの基地から太平洋経由で移動を開始するっていう話し。実際にFardowを攻撃するかどうかは未定とのこと。B2 Bomberってレーダーに感知されないエイみたいな形した「Stealth」爆撃機のはずでどこに居るか分かっちゃいけないはずなんだけどどうやって分かるんだろうね。ちなみにMissouriに格納されているのはStealthなんで空調が良く効いた大きなハンガーに待機してる必要があるからなんだって。
う~ん、あんまりエスカレートさせたり米国が関与すると中国やロシアとかも黙ってないだろうし、バイデン政権下で不法に米国に入ってきた1,000万人の中にはイランの反米グループが含まれてても分かんないって話しで米国、特にNYC、はテロに巻き込まれるリスク大っていうことで地下鉄に乗るのを控える人とかが出てきて身近な生活にも影響が出てきてる。夏の間はSouth DakotaのBlack Hillsにでも疎開してStarlinkでInternet Connectionして過ごす?
Section 891も再浮上
一点上院法案のsection 899を語る際に下院法案との比較で特筆に値いする点にsection 891の再浮上がある。Section 891に関しては1月20日政権発足と同時に発令された大統領令で触れられてたんで2月の「「Global Tax Deal」対抗・報復措置」で簡単に内容を説明してるからそちらもぜひ参照して欲しい。
この期に及んでsection 891の議論が息を吹き返してるのは上院法案section 899にsection 891とのコーディネーション規定が盛り込まれてるのがひとつの理由。この部分は後日、独自のポスティングでカバーしたいけど、メッセージとしては既に(90年も…)法律として存在するsection 891は仮にsection 899がなくても独立して、しかも議会が何もしないでも大統領の裁量でトリガーする用意があるってことだろう。Section 891はそれはそれで適用には条約との関係を含むテクニカルな問題・チャレンジはあるとしてもBack-Stop的には怖い。
「上院はsection 899の適用1年延長とか付加税CAPを15%にしたりしてくれて優しいね」的なSweet Dreamsを見てる外国企業がいるとしたらその観測は甘い。下院法案の付加税・Super-BEATの使用にお墨付きを与えた上で適用を現実的に調整し、更にsection 891の適用も辞さないっていう構成はむしろ冷徹(?)で怖い気がする。Sweat dreams are made of this(Eurythmics!)だね。人類の本能的なDesireやHappiness。最近の世の中みてると昔のPop Songsの歌詞って結構言い当ててるのが多いなっていう発見が多い。多分最近の曲もいい歌詞あるんだろうけど、残念ながら聴く量が少ないんで個人的な馴染みが少なく理解が追い付いてないです。昔の歌詞がいい当ててるって、つまり人は変わんないね~ってことだよね。
Global Tax Dealで各国の選挙とか民意と直接関係なく世界中の税制をUniversalにRule、そして逆らう国の所得は親会社の所得でも子会社レベルで懲罰課税(UTPR!)っていうのはTears for Fearsの「Everybody Wants to Rule the World」の域かもね(大げさ?)。でもこれからの世の中、特に各国市民個人のチョイスや自由を真剣に考える場合、たかが(されど?)タックスくらいの世界で終わればいいけど、権力っていうのはそのNatureから必ず(英語で言うところの)1インチ許すと1マイル譲歩することになるんで、次々とドミノ式に権力が拡大される(これは歴史が証明している人間のサガと言え、個人レベルで自己中心的かどうかっていう話しを超えた単純な現実?)。そうなると主権国家単位の選挙とか民意は余り意味がなくなり、グローバルリーダークラスがトップダウンでグローバルレベルでポリシーやルールを決めることになる。この流れは特に2016年以降Brexitやトランプ1.0を受けて顕著になったコンセンサスベースの統治アプローチで、従来の民主主義(基本的に一般Peopleの民意ベース、いわばPopulism?)と異なるもの。どっちが長期的に世界のためにいいかは個人的には分からないしグローバルリーダーには各分野のExpertが多いだろうから各々のアプローチにプロ・コンがあると思うけど、この点がまさしく2024年の米国選挙のファンダメンタルな争点で、少なくとも2024年の段階では一般PeopleはPopulism的にMAGAをサポートした結果になっている。
なぜこの点を繰り返し書くかって言うと、米国のこのマクロ背景が分からないと、米国が(政権発足初日に)Global Tax Dealに強硬な反対表明、VPバンスによる2月のMunich Security Conferenceにおける演説、イロンマスクが巨額の私財を投じたX(元ツイッター)買収、とかの一連の流れが直観的にコネクトしないんじゃないかなって思われる点。特に米国外からレガシーメディアを通じて米国を見てるとあんまり伝ってないかなって思うことが多い。ポリサイは僕の専門外なんで読者のみなさんには他のソースで多様な視点を取り入れて各々で考えて欲しいけど、米国の生活を通じた肌感覚ベースの観測。今後の動向を観測したり米国に891や899系のアプローチする際、少なくとも米国の反発はピラー2のテクニカルな問題以上っていう点は理解しておく必要がある。
Section 891に関しては、昨日、Council on Foreign RelationsっていうイベントでMichael Faulkender財務副長官が「(審議中の)899ばかりでなく891の適用可能性」も示唆した上「891を使うか899を使うかはさておき、米国税法(今回の税制改正以前のSub F、GILTI、BEAT等)のBase Erosion対策はピラー2と同様な強固水準にある(したがってこれ以上、米国所得にピラー2を適用は不要)っていう認識をOECDが持つ必要がある点は明確に伝えている」と発言したと報道されている。敢えてSection 891に言及しているのはタイミングがタイミングだけに上院法案と行政府のコーディネート的に興味深いよね。
上院法案New-BEAT
で、Section 899上院バージョンの付加税・Super-BEATっていう2つの対抗策のうち、一旦付加税はまあまあカバーしたつもり。とは言えsection 899とFIRPTA源泉とかはかなり複雑だから一旦落ち着いたら(いつ?)更なる詳細に触れるね。これは元々FIRPTA(Substantiveな課税規定)およびFIRPTA源泉規則(徴収メカニズム)が込み入ってるところに、更に複雑なsection 899をOverlay(「上塗り」とでも訳す?)するデザインなので仕方がない。
Overlayって言えばsection 899のもう一方の対抗策に当たるSuper-BEATも通常BEATのOverlayだけど、下院法案時点では通常BEATは2025年までの現状BEATと同じだったんでOverlayによる差異を話せばそれで済んだところ、上院法案では通常BEATもNew-BEATに生まれ変わったんでまずはそちらを良く理解しないと「Super」の話しに至らない。ってことでNew-BEATの話しをし始めたのが前回。BEATミニマム税率アップ、クレジット使用温存、そして概念的にはMake Senseするけど導入された点は歳入Scoeringの観点からチョッとビックリのHigh-Tax Exceptionに触れた。
支払利息の資産計上
上院法案では通常のBEAT適用時の「Base Erosion Payment」の定義をアップデートしてる。BEATミニマム税を語る際の「Base Erosion Payment」の正確な位置づけが分かんないと定義の重要性が伝わり難いんでBEATミニマム税のベーシックを復習しておく。
上院法案New-BEATにしても従来の元祖BEATにしても基本的な構成は同じ。すなわちBEAT用に計算されるBEAT課税所得にBEAT税率(今は10%)を掛けてR&Dクレジット、一定要件下でLow-income housingおよびエネジークレジットの80%をマイナスした税額が暫定BEAT税額(FTCでマイナスすることはできない。これはBEAT導入当時租税条約違反ではと指摘されていたデザイン)。これと通常法人税(FTCを含む全てのクレジット後)を比較して暫定BEAT税額が高ければ超過額がミニマム税になるという仕組み。
BEAT課税所得は通常の「課税所得」に「Base Erosion Tax Benefit」および「(通常法人税計算時に繰越NOLを使用している場合は)使用したNOLに占める(NOLを生み出した課税年度の)Base Erosion %相当額」双方を加算した金額。この定義の一つの副産物はスターティングポイントが通常の課税所得なんでゼロ未満(すなわちマイナス)にはなり得ないって点。例えば単年課税所得が100で(80%制限前の)繰越NOLが1,000ある場合、BEAT課税所得を算定する際の加算はゼロからステートする。マイナス900ではない。一方、過年度からの繰越NOLを適用する前の段階で単年課税所得がマイナス900の場合、スターティングポイントはマイナス900だ。この点はBEAT導入当初は異なる解釈もあり得たけど、AMTと異なりパラレルに所得を別計算するのではなくBEATはあくまで加算計算ってことで最終規則でもその旨が確認され今では当たり前の計算として定着してる(当時の議論懐かしいね)。したがって、過去NOLでその後プラスに転じた課税年度はBEAT抵触の確率が上がる。
Base Erosion Tax BenefitはBase Erosion Paymentのうち該当課税年度でDeductionに計上されている(またはReinsuranceやInversion企業のCOGSとかに関してはReductionに計上されている)金額でBase Erosion Paymentに基づく償却を含む。Base Erosion %は該当課税年度のBase Erosion Tax Benefit/Deduction総額(プラスReductionがBase Erosion Tax Benefitになっている場合はその金額もプラス)」。
Base Erosion Paymentは外国関連者への支出のうちDeductionになる性格のもの、償却資産(有形・無形を問わず)取得対価、Reinsurance(これはDeductionではなくReductionなので追加規定が必要)、そしてInversion企業のCOGS等(COGSもReductionなのでReinsurance同様追加規定が必要)。
これを見て分かる通りBase Erosion Tax BenefitとBase Erosion PaymentはかなりCloseな概念。Base Erosion Paymentは支出がBEAT課税所得の加算項目かどうかの性格付け、Base Erosion Tax Benefitはその上でどの課税年度に加算するかっていう「タイミング」Issueって考えると分かり易い。またBase Erosion PaymentおよびBase Erosion Tax Benefitには各々例外その他の追加規定がある。
で、上院法案のNew-BEATだけど、Base Erosion Paymentの定義に支払利息にかかわる新たな規則を追加している。具体的には米国外関連者に対する支払利息が資産計上されていても(Deductionしているケース同様に)Base Erosion Paymentにするというもの。ただし当新規規定有無にかかわらず従来からBase Erosion Paymentに該当する支出および資産計上が税法上強制されるsection 263(g)(Straddle取引にかかわる支払利息資産計上規定)および section 263A(f)(一定要件を満たす長期工事資産建設ファイナンスにかかわる支払利息資産計上規定)は例外。ボトムライン的には税法に強制される訳ではなく納税者の選択で支払利息を資産計上してもDeductionしたケース同様にBase Erosion Paymentになるっていうこと。Base Erosion Tax BenefitやBase Erosion %の定義もこのBase Erosion Paymentにかかわる定義改訂とシンクロされている。Inversion企業やReinsuranceを除き原則Base Erosion PaymentやBase Erosion Tax Benefitが「Deduction項目」に限定されるっていう点は後述のSuper-BEATにも大きく関係する概念になる。
BEAT適用対象法人
New-BEATでは適用対象法人の判断法も厳格化している。従来は1)RIC、REIT、S-Corp以外のCorporation(米国内外問わず)、2)過去3年間平均Gross Receiptが$500M以上、そして3)Base Erosion %が3%以上(銀行および証券ディーラーは2%以上)っていうものだった。このうち3のBase Erosion %を全員一律で2%に引き下げている。え~せっかく苦心して2.99%にしてたのに~!って嘆きたくなるかもしれないけどSuper-BEATはもっと怖い。
っていうことでNew-BEATだけでカメさんのスピードみたいだったけど次回からはNew-BEATを受けての上院法案section 899のSuper-BEAT。
ちなみにもう一つのBBBは世界中のBloggerとかが米国の軍資材の移動を刻々と追って多くのレポートがあるけど、BBBを搭載しているB2 BomberがMissouriの基地から太平洋経由で移動を開始するっていう話し。実際にFardowを攻撃するかどうかは未定とのこと。B2 Bomberってレーダーに感知されないエイみたいな形した「Stealth」爆撃機のはずでどこに居るか分かっちゃいけないはずなんだけどどうやって分かるんだろうね。ちなみにMissouriに格納されているのはStealthなんで空調が良く効いた大きなハンガーに待機してる必要があるからなんだって。
う~ん、あんまりエスカレートさせたり米国が関与すると中国やロシアとかも黙ってないだろうし、バイデン政権下で不法に米国に入ってきた1,000万人の中にはイランの反米グループが含まれてても分かんないって話しで米国、特にNYC、はテロに巻き込まれるリスク大っていうことで地下鉄に乗るのを控える人とかが出てきて身近な生活にも影響が出てきてる。夏の間はSouth DakotaのBlack Hillsにでも疎開してStarlinkでInternet Connectionして過ごす?
Section 891も再浮上
一点上院法案のsection 899を語る際に下院法案との比較で特筆に値いする点にsection 891の再浮上がある。Section 891に関しては1月20日政権発足と同時に発令された大統領令で触れられてたんで2月の「「Global Tax Deal」対抗・報復措置」で簡単に内容を説明してるからそちらもぜひ参照して欲しい。
この期に及んでsection 891の議論が息を吹き返してるのは上院法案section 899にsection 891とのコーディネーション規定が盛り込まれてるのがひとつの理由。この部分は後日、独自のポスティングでカバーしたいけど、メッセージとしては既に(90年も…)法律として存在するsection 891は仮にsection 899がなくても独立して、しかも議会が何もしないでも大統領の裁量でトリガーする用意があるってことだろう。Section 891はそれはそれで適用には条約との関係を含むテクニカルな問題・チャレンジはあるとしてもBack-Stop的には怖い。
「上院はsection 899の適用1年延長とか付加税CAPを15%にしたりしてくれて優しいね」的なSweet Dreamsを見てる外国企業がいるとしたらその観測は甘い。下院法案の付加税・Super-BEATの使用にお墨付きを与えた上で適用を現実的に調整し、更にsection 891の適用も辞さないっていう構成はむしろ冷徹(?)で怖い気がする。Sweat dreams are made of this(Eurythmics!)だね。人類の本能的なDesireやHappiness。最近の世の中みてると昔のPop Songsの歌詞って結構言い当ててるのが多いなっていう発見が多い。多分最近の曲もいい歌詞あるんだろうけど、残念ながら聴く量が少ないんで個人的な馴染みが少なく理解が追い付いてないです。昔の歌詞がいい当ててるって、つまり人は変わんないね~ってことだよね。
Global Tax Dealで各国の選挙とか民意と直接関係なく世界中の税制をUniversalにRule、そして逆らう国の所得は親会社の所得でも子会社レベルで懲罰課税(UTPR!)っていうのはTears for Fearsの「Everybody Wants to Rule the World」の域かもね(大げさ?)。でもこれからの世の中、特に各国市民個人のチョイスや自由を真剣に考える場合、たかが(されど?)タックスくらいの世界で終わればいいけど、権力っていうのはそのNatureから必ず(英語で言うところの)1インチ許すと1マイル譲歩することになるんで、次々とドミノ式に権力が拡大される(これは歴史が証明している人間のサガと言え、個人レベルで自己中心的かどうかっていう話しを超えた単純な現実?)。そうなると主権国家単位の選挙とか民意は余り意味がなくなり、グローバルリーダークラスがトップダウンでグローバルレベルでポリシーやルールを決めることになる。この流れは特に2016年以降Brexitやトランプ1.0を受けて顕著になったコンセンサスベースの統治アプローチで、従来の民主主義(基本的に一般Peopleの民意ベース、いわばPopulism?)と異なるもの。どっちが長期的に世界のためにいいかは個人的には分からないしグローバルリーダーには各分野のExpertが多いだろうから各々のアプローチにプロ・コンがあると思うけど、この点がまさしく2024年の米国選挙のファンダメンタルな争点で、少なくとも2024年の段階では一般PeopleはPopulism的にMAGAをサポートした結果になっている。
なぜこの点を繰り返し書くかって言うと、米国のこのマクロ背景が分からないと、米国が(政権発足初日に)Global Tax Dealに強硬な反対表明、VPバンスによる2月のMunich Security Conferenceにおける演説、イロンマスクが巨額の私財を投じたX(元ツイッター)買収、とかの一連の流れが直観的にコネクトしないんじゃないかなって思われる点。特に米国外からレガシーメディアを通じて米国を見てるとあんまり伝ってないかなって思うことが多い。ポリサイは僕の専門外なんで読者のみなさんには他のソースで多様な視点を取り入れて各々で考えて欲しいけど、米国の生活を通じた肌感覚ベースの観測。今後の動向を観測したり米国に891や899系のアプローチする際、少なくとも米国の反発はピラー2のテクニカルな問題以上っていう点は理解しておく必要がある。
Section 891に関しては、昨日、Council on Foreign RelationsっていうイベントでMichael Faulkender財務副長官が「(審議中の)899ばかりでなく891の適用可能性」も示唆した上「891を使うか899を使うかはさておき、米国税法(今回の税制改正以前のSub F、GILTI、BEAT等)のBase Erosion対策はピラー2と同様な強固水準にある(したがってこれ以上、米国所得にピラー2を適用は不要)っていう認識をOECDが持つ必要がある点は明確に伝えている」と発言したと報道されている。敢えてSection 891に言及しているのはタイミングがタイミングだけに上院法案と行政府のコーディネート的に興味深いよね。
上院法案New-BEAT
で、Section 899上院バージョンの付加税・Super-BEATっていう2つの対抗策のうち、一旦付加税はまあまあカバーしたつもり。とは言えsection 899とFIRPTA源泉とかはかなり複雑だから一旦落ち着いたら(いつ?)更なる詳細に触れるね。これは元々FIRPTA(Substantiveな課税規定)およびFIRPTA源泉規則(徴収メカニズム)が込み入ってるところに、更に複雑なsection 899をOverlay(「上塗り」とでも訳す?)するデザインなので仕方がない。
Overlayって言えばsection 899のもう一方の対抗策に当たるSuper-BEATも通常BEATのOverlayだけど、下院法案時点では通常BEATは2025年までの現状BEATと同じだったんでOverlayによる差異を話せばそれで済んだところ、上院法案では通常BEATもNew-BEATに生まれ変わったんでまずはそちらを良く理解しないと「Super」の話しに至らない。ってことでNew-BEATの話しをし始めたのが前回。BEATミニマム税率アップ、クレジット使用温存、そして概念的にはMake Senseするけど導入された点は歳入Scoeringの観点からチョッとビックリのHigh-Tax Exceptionに触れた。
支払利息の資産計上
上院法案では通常のBEAT適用時の「Base Erosion Payment」の定義をアップデートしてる。BEATミニマム税を語る際の「Base Erosion Payment」の正確な位置づけが分かんないと定義の重要性が伝わり難いんでBEATミニマム税のベーシックを復習しておく。
上院法案New-BEATにしても従来の元祖BEATにしても基本的な構成は同じ。すなわちBEAT用に計算されるBEAT課税所得にBEAT税率(今は10%)を掛けてR&Dクレジット、一定要件下でLow-income housingおよびエネジークレジットの80%をマイナスした税額が暫定BEAT税額(FTCでマイナスすることはできない。これはBEAT導入当時租税条約違反ではと指摘されていたデザイン)。これと通常法人税(FTCを含む全てのクレジット後)を比較して暫定BEAT税額が高ければ超過額がミニマム税になるという仕組み。
BEAT課税所得は通常の「課税所得」に「Base Erosion Tax Benefit」および「(通常法人税計算時に繰越NOLを使用している場合は)使用したNOLに占める(NOLを生み出した課税年度の)Base Erosion %相当額」双方を加算した金額。この定義の一つの副産物はスターティングポイントが通常の課税所得なんでゼロ未満(すなわちマイナス)にはなり得ないって点。例えば単年課税所得が100で(80%制限前の)繰越NOLが1,000ある場合、BEAT課税所得を算定する際の加算はゼロからステートする。マイナス900ではない。一方、過年度からの繰越NOLを適用する前の段階で単年課税所得がマイナス900の場合、スターティングポイントはマイナス900だ。この点はBEAT導入当初は異なる解釈もあり得たけど、AMTと異なりパラレルに所得を別計算するのではなくBEATはあくまで加算計算ってことで最終規則でもその旨が確認され今では当たり前の計算として定着してる(当時の議論懐かしいね)。したがって、過去NOLでその後プラスに転じた課税年度はBEAT抵触の確率が上がる。
Base Erosion Tax BenefitはBase Erosion Paymentのうち該当課税年度でDeductionに計上されている(またはReinsuranceやInversion企業のCOGSとかに関してはReductionに計上されている)金額でBase Erosion Paymentに基づく償却を含む。Base Erosion %は該当課税年度のBase Erosion Tax Benefit/Deduction総額(プラスReductionがBase Erosion Tax Benefitになっている場合はその金額もプラス)」。
Base Erosion Paymentは外国関連者への支出のうちDeductionになる性格のもの、償却資産(有形・無形を問わず)取得対価、Reinsurance(これはDeductionではなくReductionなので追加規定が必要)、そしてInversion企業のCOGS等(COGSもReductionなのでReinsurance同様追加規定が必要)。
これを見て分かる通りBase Erosion Tax BenefitとBase Erosion PaymentはかなりCloseな概念。Base Erosion Paymentは支出がBEAT課税所得の加算項目かどうかの性格付け、Base Erosion Tax Benefitはその上でどの課税年度に加算するかっていう「タイミング」Issueって考えると分かり易い。またBase Erosion PaymentおよびBase Erosion Tax Benefitには各々例外その他の追加規定がある。
で、上院法案のNew-BEATだけど、Base Erosion Paymentの定義に支払利息にかかわる新たな規則を追加している。具体的には米国外関連者に対する支払利息が資産計上されていても(Deductionしているケース同様に)Base Erosion Paymentにするというもの。ただし当新規規定有無にかかわらず従来からBase Erosion Paymentに該当する支出および資産計上が税法上強制されるsection 263(g)(Straddle取引にかかわる支払利息資産計上規定)および section 263A(f)(一定要件を満たす長期工事資産建設ファイナンスにかかわる支払利息資産計上規定)は例外。ボトムライン的には税法に強制される訳ではなく納税者の選択で支払利息を資産計上してもDeductionしたケース同様にBase Erosion Paymentになるっていうこと。Base Erosion Tax BenefitやBase Erosion %の定義もこのBase Erosion Paymentにかかわる定義改訂とシンクロされている。Inversion企業やReinsuranceを除き原則Base Erosion PaymentやBase Erosion Tax Benefitが「Deduction項目」に限定されるっていう点は後述のSuper-BEATにも大きく関係する概念になる。
BEAT適用対象法人
New-BEATでは適用対象法人の判断法も厳格化している。従来は1)RIC、REIT、S-Corp以外のCorporation(米国内外問わず)、2)過去3年間平均Gross Receiptが$500M以上、そして3)Base Erosion %が3%以上(銀行および証券ディーラーは2%以上)っていうものだった。このうち3のBase Erosion %を全員一律で2%に引き下げている。え~せっかく苦心して2.99%にしてたのに~!って嘆きたくなるかもしれないけどSuper-BEATはもっと怖い。
っていうことでNew-BEATだけでカメさんのスピードみたいだったけど次回からはNew-BEATを受けての上院法案section 899のSuper-BEAT。
Friday, June 20, 2025
上院法案「New」BEATとsection 899「Super」 BEAT
前回のポスティングではMega-Bill上院法案が公開された直後の米国BBB動向、そして時間切れになる前に激しさを増すロビー活動に触れた。今日はいよいよsection 899の付加税と並ぶもうひとつの対抗策にあたる「Super-BEAT」に触れたいけど、実は上院法案は「Super」じゃない「元祖」通常BEATそのものに結構な改訂を加えてるんで、まずはBrand-Newの通常BEATの話しをしないとSuperに至らない。ということでNew BEATから入るけどその前にMega-Bill動向。
上院Byrd Rule審判「Byrd Bath」
John Thuneは来週にも手続き的なProcedure Voteを敢行し、その直後に本会議投票に漕ぎつけるっていう超Aggressiveなタイムラインを今でも目指してるみたいだけど、その際に避けて通ることができないのが上院ParliamentarianのElizabeth MacDonoughによるByrd Rule審判。Mega-Billに盛り込まれている規定が予算調整法、すなわち60票の代わりに過半数で通すことが許されるScopeかっていう審判を受けないといけない。具体的には大概において野党側の民主党が「これはScope外」で訴えて与党の共和党は「Scope内」で防衛し、Parliamentarianが審判を下すような手続き。法案をByrd Ruleで洗うみたいなんでポリティクスの世界では「Byrd Bath」って言う。鳥が行水してるみたいで可愛いけど実際は闘争的な手続きだ。
Mega-BillはFinance Committee管轄以外のCommitteeの法案も多く含むんで、Byrd Bathはそれら全てが対象になる。既に金融系CommitteeのCFPB(Consumer Financial Protection Bureau)の予算ゼロ化、また監査法人を監督するSEC傘下のPCAOB撤廃、がByrd Ruleに抵触するって判断されたよう。Byrd Ruleに抵触するってことは予算調整法の一部として可決できないってことだけど、60票の賛成があればByrd Ruleを克服することができる。
共和党が一番怖いのはBudget Windowのコストを「Current Policy Baseline」を使って判断することがNGとなること。Current Policy Baselineっていうのは今適用しているTCJAの規則を延長しても追加コストにはならないはずっていう主張に基づくコスト計算。これが認められないとTCJAが2026年以降失効した状態との比較でコストを計算することになり多額のコストを認識しないといけなくなる。もちろん実際の歳入・歳出はCurrent Policy Baselineだろうが通常のBaseline だろうが同じだけど予算調整法の見せ方のギミックとしては重要なポイントだ。この点は余りに重要なんで以前から水面下で交渉を重ねてきてると考えるのが自然だけど最終結果は不明。
Section 899は一旦お墨付きを得てるけど、Byrd Bathで再度審査の対象となる可能性はあるね。
米国外ロビー活動
米国外の納税者によるsection 899のロビー活動はScott Bessent長官が「自分の国の政府に差別的課税を取り下げるよう働きかけるのが筋」って主張してる点は前回のポスティングで触れたけど、カナダ(DSTだけがPer Se Unfair Foreign Taxなんで被害は相対的に軽い)に続き、EUの企業団体はEUに「テクニカルな議論はどうでもいいからsection 899の適用がないよう税法を変えること」っていうプレッシャーを強化しているという報道。
また英国ではFTSE100社が自国の財務省に「何でもいいからsection 899が英国企業に適用されないよう対応すること」っていう要請をしたという話しも報道されている。英国企業は「米国撤退は単純にオプションではない」とした上で何もせずにsection 899適用開始になると米国オペレーションに過激なリストラクチャリング(米国企業にインバージョン??)、を敢行しないといけなくなるし、目先の対応としてはグループ内DebtファイナンスをEquityに変えて配当を控える程度に限られる...とのこと。また「せっかくBrexitしてEUじゃないんだからそのメリットを活かして主権を発揮して独自に対応を率先して検討・策定するよう」働きかけたという話しだ。
New BEATは税率引き上げ
New BEATミニマム税率はナンと14%。これはSuper-BEATじゃなくて通常BEATの話し。銀行と証券ディーラーは従来1%プラスだったけどこの1%付加は撤廃されて全員一律14%になった。
クレジットは温存
BEATミニマム税計算時に2026年から認められなくなる予定だったR&Dクレジット、80%制限下でLow-income housingおよびエネジークレジットによるBEAT暫定税(通常の法人税と比べる前のBEAT税額)マイナスがそのまま温存されてる。この部分は便宜的に、財務省規則に規定されてる方向でBEAT暫定税を計算する際にクレジットを使えるって表現しておくけど、条文は逆でBEAT暫定税と比較する法人税にこれらのクレジットを加算するような表現になってる。方程式の左側でプラスしてる額を式の右側に移動させるとマイナスになるっていう超基礎的な算数なんで同じことなんだけど条文は直観的に分かり難いかもね。いずれにしてもこれが認められなくなるとR&Dクレジットで通常の法人税は低くなってもBEATミニマム税計算する際のBEAT暫定税はマイナスできないんでBEATミニマム税が生じ易くなるところだった。
High-Tax Exception
外国関連者に対する支出が、受け手側で米国法人税最高税率の90%を超える(「greater」)税率で課税されてるって納税者が証明できる場合、支出はBase Erosion Paymentには当たらないっていうSub FやGILTIみたいな「High-Tax Exception」が新規に規定された。現状法人税率は21%だからその90%は18.9%になる。支出の受け手側の税率計算はFTCの制限枠計算時に本来Passiveバスケットに属する投資所得が米国の適用最高税率より高い税率で国外で課税されている場合、強制的にGeneralバスケットにReclassさせられる所謂「High-Tax Kickout」の計算法に準じて行うとしている。
Base Erosion Paymentってグループ内の高税率国から低税率国に金利、サービスFee、ロイヤリティとかを支払ってグループ全体ではゼロサムでもグローバル全体の税金が下がるっていうかなり初歩的な算数を利用する支出だから受け手側で米国と同等の税率で税金が課される場合、本来のBase Erosion Paymentにはならない。日本みたいな高税率国への支出は、受け手側で18.9%超の税金を支払うことが多いだろうからとても有益な免除規定だ。ただひとつ残念っていうか致命的なのは現時点のsection 899法案ではUTPRやDSTを持つ国に適用される強化版Super-BEAT目的でHigh-Tax Exceptionは認められないこと…。これはSuper-BEATの話しなんでその際に後述。
通常のNew BEATに戻るけど、Base Erosion Paymentとかグループ内の話しだから「だったら…」って一旦20%法人税の国に支出して、そこから低税率の国に再支出みたいな迂回ルートプラニングが横行しがち。源泉税に対する条約適用なんかも同様のプラニングがあってその昔はLotus 1-2-3(懐かしい?それとも知らない?)駆使してAからBに金利払う際に「A->X->Y->D->B」ってすると条約や該当国の国内法で源泉税が最小限になるね!とか計算してたけど、そんな話は今は昔でTreaty Shoppingを取り締まるためLOB(「Leveraged BuyoutのLBO」じゃなくて「Limitation on Benefits」だからね)を持つ条約がほとんどになりConduit Financing Arrangement対抗規則が出たりでそんなに簡単にはいかなくなった。それと同じでBEATのHigh-Tax ExceptionにもConduit使用対抗規則が盛り込まれてる。
New BEAT法案では、財務省が定める範囲で形式的に特定の外国関連者(高税率国の関連者1)に対して行われる支出が、関連者1による別の外国関連者(低税率国の関連者2)への支出をFundingしてて、受け手の関連者2が18.9%未満(「Lower」)の税率で課税されてる場合、形式的には関連者1に対する支出でも税務上は関連者2に対する支出と取り扱うとしている。BEAT Funding規定の誕生!「Funding規定」って名前聞いただけで気分が悪くなる読者もいるんではって思うけど、Fundingと名の付くものはBEATとは別のBase Erosion対抗策1.385‐3のPer Seルールとか、国外関連者による自社株買いを米国法人が間接的にファイナンスしてるってみなす自社株買いFunding規定とか、どれも頭が痛くなる規則ばかり。Fundingリストに更にひとつ仲間が加わったね。
ちなみに付加税の下院法案の「On or after」と「After」の使い分けがおかしかったように、BEAT High-Tax Exceptionも「Greater」と「Lower」の使い方がチョッと不思議。High-Tax Exception自体は「Greater」なんで18.9%ピッタリだと不適格。一方、Anti-Conduitは「Lower」なんで18.9%だとOK。直接18.9%の国に支払うとギリギリHigh-Tax Exceptionにならず残念っていう結果になるけど、Funding規定で高税率国経由で18.9%の国に払うとAnti-Conduitの対象にならないように見える。ピッタリ18.9%になるケースは稀だろうから実務的なインパクトはないに等しいかもしれないけど概念的にチョッと釈然としないよね。最終バージョンではAnti-Conduitは「Equal or lower」とかにアップデートされるのかな。Exception側の「Greater」はSub FのForeign Base Company Incomeに対するHigh-Tax Exceptionもそうなんでこっちは変わらないだろう。ただ、Anti-Conduitは条文の文言的に財務省規則が出るまでは効果を持たない規則だ。
で次回は唐突なNew BEATの金利資産計上対策から。
上院Byrd Rule審判「Byrd Bath」
John Thuneは来週にも手続き的なProcedure Voteを敢行し、その直後に本会議投票に漕ぎつけるっていう超Aggressiveなタイムラインを今でも目指してるみたいだけど、その際に避けて通ることができないのが上院ParliamentarianのElizabeth MacDonoughによるByrd Rule審判。Mega-Billに盛り込まれている規定が予算調整法、すなわち60票の代わりに過半数で通すことが許されるScopeかっていう審判を受けないといけない。具体的には大概において野党側の民主党が「これはScope外」で訴えて与党の共和党は「Scope内」で防衛し、Parliamentarianが審判を下すような手続き。法案をByrd Ruleで洗うみたいなんでポリティクスの世界では「Byrd Bath」って言う。鳥が行水してるみたいで可愛いけど実際は闘争的な手続きだ。
Mega-BillはFinance Committee管轄以外のCommitteeの法案も多く含むんで、Byrd Bathはそれら全てが対象になる。既に金融系CommitteeのCFPB(Consumer Financial Protection Bureau)の予算ゼロ化、また監査法人を監督するSEC傘下のPCAOB撤廃、がByrd Ruleに抵触するって判断されたよう。Byrd Ruleに抵触するってことは予算調整法の一部として可決できないってことだけど、60票の賛成があればByrd Ruleを克服することができる。
共和党が一番怖いのはBudget Windowのコストを「Current Policy Baseline」を使って判断することがNGとなること。Current Policy Baselineっていうのは今適用しているTCJAの規則を延長しても追加コストにはならないはずっていう主張に基づくコスト計算。これが認められないとTCJAが2026年以降失効した状態との比較でコストを計算することになり多額のコストを認識しないといけなくなる。もちろん実際の歳入・歳出はCurrent Policy Baselineだろうが通常のBaseline だろうが同じだけど予算調整法の見せ方のギミックとしては重要なポイントだ。この点は余りに重要なんで以前から水面下で交渉を重ねてきてると考えるのが自然だけど最終結果は不明。
Section 899は一旦お墨付きを得てるけど、Byrd Bathで再度審査の対象となる可能性はあるね。
米国外ロビー活動
米国外の納税者によるsection 899のロビー活動はScott Bessent長官が「自分の国の政府に差別的課税を取り下げるよう働きかけるのが筋」って主張してる点は前回のポスティングで触れたけど、カナダ(DSTだけがPer Se Unfair Foreign Taxなんで被害は相対的に軽い)に続き、EUの企業団体はEUに「テクニカルな議論はどうでもいいからsection 899の適用がないよう税法を変えること」っていうプレッシャーを強化しているという報道。
また英国ではFTSE100社が自国の財務省に「何でもいいからsection 899が英国企業に適用されないよう対応すること」っていう要請をしたという話しも報道されている。英国企業は「米国撤退は単純にオプションではない」とした上で何もせずにsection 899適用開始になると米国オペレーションに過激なリストラクチャリング(米国企業にインバージョン??)、を敢行しないといけなくなるし、目先の対応としてはグループ内DebtファイナンスをEquityに変えて配当を控える程度に限られる...とのこと。また「せっかくBrexitしてEUじゃないんだからそのメリットを活かして主権を発揮して独自に対応を率先して検討・策定するよう」働きかけたという話しだ。
New BEATは税率引き上げ
New BEATミニマム税率はナンと14%。これはSuper-BEATじゃなくて通常BEATの話し。銀行と証券ディーラーは従来1%プラスだったけどこの1%付加は撤廃されて全員一律14%になった。
クレジットは温存
BEATミニマム税計算時に2026年から認められなくなる予定だったR&Dクレジット、80%制限下でLow-income housingおよびエネジークレジットによるBEAT暫定税(通常の法人税と比べる前のBEAT税額)マイナスがそのまま温存されてる。この部分は便宜的に、財務省規則に規定されてる方向でBEAT暫定税を計算する際にクレジットを使えるって表現しておくけど、条文は逆でBEAT暫定税と比較する法人税にこれらのクレジットを加算するような表現になってる。方程式の左側でプラスしてる額を式の右側に移動させるとマイナスになるっていう超基礎的な算数なんで同じことなんだけど条文は直観的に分かり難いかもね。いずれにしてもこれが認められなくなるとR&Dクレジットで通常の法人税は低くなってもBEATミニマム税計算する際のBEAT暫定税はマイナスできないんでBEATミニマム税が生じ易くなるところだった。
High-Tax Exception
外国関連者に対する支出が、受け手側で米国法人税最高税率の90%を超える(「greater」)税率で課税されてるって納税者が証明できる場合、支出はBase Erosion Paymentには当たらないっていうSub FやGILTIみたいな「High-Tax Exception」が新規に規定された。現状法人税率は21%だからその90%は18.9%になる。支出の受け手側の税率計算はFTCの制限枠計算時に本来Passiveバスケットに属する投資所得が米国の適用最高税率より高い税率で国外で課税されている場合、強制的にGeneralバスケットにReclassさせられる所謂「High-Tax Kickout」の計算法に準じて行うとしている。
Base Erosion Paymentってグループ内の高税率国から低税率国に金利、サービスFee、ロイヤリティとかを支払ってグループ全体ではゼロサムでもグローバル全体の税金が下がるっていうかなり初歩的な算数を利用する支出だから受け手側で米国と同等の税率で税金が課される場合、本来のBase Erosion Paymentにはならない。日本みたいな高税率国への支出は、受け手側で18.9%超の税金を支払うことが多いだろうからとても有益な免除規定だ。ただひとつ残念っていうか致命的なのは現時点のsection 899法案ではUTPRやDSTを持つ国に適用される強化版Super-BEAT目的でHigh-Tax Exceptionは認められないこと…。これはSuper-BEATの話しなんでその際に後述。
通常のNew BEATに戻るけど、Base Erosion Paymentとかグループ内の話しだから「だったら…」って一旦20%法人税の国に支出して、そこから低税率の国に再支出みたいな迂回ルートプラニングが横行しがち。源泉税に対する条約適用なんかも同様のプラニングがあってその昔はLotus 1-2-3(懐かしい?それとも知らない?)駆使してAからBに金利払う際に「A->X->Y->D->B」ってすると条約や該当国の国内法で源泉税が最小限になるね!とか計算してたけど、そんな話は今は昔でTreaty Shoppingを取り締まるためLOB(「Leveraged BuyoutのLBO」じゃなくて「Limitation on Benefits」だからね)を持つ条約がほとんどになりConduit Financing Arrangement対抗規則が出たりでそんなに簡単にはいかなくなった。それと同じでBEATのHigh-Tax ExceptionにもConduit使用対抗規則が盛り込まれてる。
New BEAT法案では、財務省が定める範囲で形式的に特定の外国関連者(高税率国の関連者1)に対して行われる支出が、関連者1による別の外国関連者(低税率国の関連者2)への支出をFundingしてて、受け手の関連者2が18.9%未満(「Lower」)の税率で課税されてる場合、形式的には関連者1に対する支出でも税務上は関連者2に対する支出と取り扱うとしている。BEAT Funding規定の誕生!「Funding規定」って名前聞いただけで気分が悪くなる読者もいるんではって思うけど、Fundingと名の付くものはBEATとは別のBase Erosion対抗策1.385‐3のPer Seルールとか、国外関連者による自社株買いを米国法人が間接的にファイナンスしてるってみなす自社株買いFunding規定とか、どれも頭が痛くなる規則ばかり。Fundingリストに更にひとつ仲間が加わったね。
ちなみに付加税の下院法案の「On or after」と「After」の使い分けがおかしかったように、BEAT High-Tax Exceptionも「Greater」と「Lower」の使い方がチョッと不思議。High-Tax Exception自体は「Greater」なんで18.9%ピッタリだと不適格。一方、Anti-Conduitは「Lower」なんで18.9%だとOK。直接18.9%の国に支払うとギリギリHigh-Tax Exceptionにならず残念っていう結果になるけど、Funding規定で高税率国経由で18.9%の国に払うとAnti-Conduitの対象にならないように見える。ピッタリ18.9%になるケースは稀だろうから実務的なインパクトはないに等しいかもしれないけど概念的にチョッと釈然としないよね。最終バージョンではAnti-Conduitは「Equal or lower」とかにアップデートされるのかな。Exception側の「Greater」はSub FのForeign Base Company Incomeに対するHigh-Tax Exceptionもそうなんでこっちは変わらないだろう。ただ、Anti-Conduitは条文の文言的に財務省規則が出るまでは効果を持たない規則だ。
で次回は唐突なNew BEATの金利資産計上対策から。
Wednesday, June 18, 2025
Mega-Bill上院法案「Morning After」
上院法案公表から一夜明けたMorning After。再度法案に目を通したけどsection 899は公表直後に書いた昨日のポスティングで合ってると思う。Super-BEATはBEATそのものが大きく変わってるんでNew BEATの話しも一緒にしないとSuper-BEATの理解が進まないんで次回にでも。
で、Big Beautiful Bil(「BBB」)上院法案公開から一夜明けてDCサークルはBBB三昧。
BBB
っていうのは本当なんだけど、実は話題のBBBは「Bunker-Buster Bomb」のこと。イスラエルがイランの対空ディフェンス能力を除去して制空権を確保していて自由に飛んでいけるっていう信じられない展開で地上に露出している戦略施設は既に破壊したらしいんだけど、イランの核施設の一つが山奥の地下深くにあるのが分かっていてそれを破壊できるのは米国が持つBBBのみらしい(全くの専門外なんで全部聞いた話し)。でもトランプ・MAGAは米国外のConflictには関与しないっていうのが原則ポリシー。そこがネオコンやDCのEstablishmentと違うところ。
ただトランプ派内でも意見が割れるところで、America FirstポリシーはAmerica Onlyではなく、米国を敵視している国の核施設を破壊できる千載一遇のチャンスなんだから国防はAmerica Firstポリシーに合致するっていう派がいたり。BBBを打ち込むにはUS Air ForceのB-2 Bomberがこっそり飛んで行く必要があってB-2 BomberはMissouriのベースに居るらしいんで片道15時間(JFKから東京出張行くのとあんまり変わんないね!)給油を繰り返しながら誰にも探知されずに飛んでいくのだそう。MAGAとしては国外のConflictに関与しないのが原則だけどBBBだけ打ち込みに行くんだったらいい?って思う派もあるんだけど、その後の混乱に引きずり込まれるのは必至っていう話しもありイラクやアフガンの二の舞だけは避けないとっていうところでここは我慢どころっていう派もいたり喧々囂々。どうなるでしょうか。
Last Minuteロビー活動
で、それに比べるとSALTが...とかの戦いは平和な話しって感謝を禁じ得ない(?)Mega-BillのBBB。まあ大概において下院法案を踏襲して両院一致バージョンの早期可決を考慮したんだろうな、っていう内容とは言えやはりSALT、Medicaid、エネジークレジット等は未だに調整中。SALTくらいでって思うけど、NYの17th District(日本人の駐在の方にもお馴染みのWestchesterを含むDistrict)の共和党下院議員Mike LawlerとかはSALT枠を拡大しないと中間選挙で戦えないっていう話し。共和党絡みの票読みしてる人の話しだとこれは冗談ではなく本当らしい。下院の議席数は僅差だから共和党下院としては一議席でも重要。ってことで事が込み入る。
Section 899に関しては上院法案に趣旨はそのまま入ったことから上院でも899の重要性が認識された証拠になったけど、まだまだ転覆させようって激しいロビー活動が続いてるらしい。Wall Street派に加えて今度は不動産業界登場。海外からの投資に冷却効果があるんでMinority出資は免除して欲しいみたいな書簡をJohn ThuneとMike Crapoに送り付けたりしてる。以前のREIT特集で触れたけど不動産業界の究極の夢はFIRPTAの完全撤廃!さすがにそれは「Good luck」って感じだけど163(j)にしても上場REITにしても、古くはUP-REITがSub KのAnti-Abuse Regulationsでお墨付きをもらったり何かと不動産業界は厚遇特別扱い。今ではお馴染みのUP-CはこのUP-REITに対するAnti-Abuse除外お墨付きがなければストラクチャーとして蔓延しなかったかもって考えると不動産業界のおかげで一般事業のパススルー上場時のパワフルなストラクチャーオプションが増えて感謝。不動産業界がパワフルなのは、例えばWall Streetとかだったら特定の州の議院しか聞く耳を持たないかもしれないけど、不動産は全州にあるんでロビー活動時にLeverageが効くらしい。不動産業界とは別に外国の投資銀行とかもロビー活動してるらしいけどScott Bessent長官曰く「ロビー活動の矛先が間違っている。自分の国の政府に不公平税制を撤回するようロビーするべき」とのこと。不動産パワーで更なる緩和措置があるでしょうか。
来週上院投票?
ただ、section 899に限らず公表された上院法案は一週間ほど更なる変遷を経てJohn Thune曰く来週水曜日か木曜日に最初の投票、その後、最終投票をその直後の週末にしたいということ。ということで決して最終版ではないけどタイトなタイムライン。上院可決してその後に下院とConferenceで調整したりしてると時間が掛かるんで、上院の調整と同時にPre-Conferenceですり合わせして一気に通すっていうもくろみらしい。上院だけでもマジックナンバーの4人造反が居るかどうか不明。Rand Paul、MedicaidのJosh HawleyやSusan Collins…。どうなるでしょうか。
次回はNew BEATとSuper-BEATについて。
で、Big Beautiful Bil(「BBB」)上院法案公開から一夜明けてDCサークルはBBB三昧。
BBB
っていうのは本当なんだけど、実は話題のBBBは「Bunker-Buster Bomb」のこと。イスラエルがイランの対空ディフェンス能力を除去して制空権を確保していて自由に飛んでいけるっていう信じられない展開で地上に露出している戦略施設は既に破壊したらしいんだけど、イランの核施設の一つが山奥の地下深くにあるのが分かっていてそれを破壊できるのは米国が持つBBBのみらしい(全くの専門外なんで全部聞いた話し)。でもトランプ・MAGAは米国外のConflictには関与しないっていうのが原則ポリシー。そこがネオコンやDCのEstablishmentと違うところ。
ただトランプ派内でも意見が割れるところで、America FirstポリシーはAmerica Onlyではなく、米国を敵視している国の核施設を破壊できる千載一遇のチャンスなんだから国防はAmerica Firstポリシーに合致するっていう派がいたり。BBBを打ち込むにはUS Air ForceのB-2 Bomberがこっそり飛んで行く必要があってB-2 BomberはMissouriのベースに居るらしいんで片道15時間(JFKから東京出張行くのとあんまり変わんないね!)給油を繰り返しながら誰にも探知されずに飛んでいくのだそう。MAGAとしては国外のConflictに関与しないのが原則だけどBBBだけ打ち込みに行くんだったらいい?って思う派もあるんだけど、その後の混乱に引きずり込まれるのは必至っていう話しもありイラクやアフガンの二の舞だけは避けないとっていうところでここは我慢どころっていう派もいたり喧々囂々。どうなるでしょうか。
Last Minuteロビー活動
で、それに比べるとSALTが...とかの戦いは平和な話しって感謝を禁じ得ない(?)Mega-BillのBBB。まあ大概において下院法案を踏襲して両院一致バージョンの早期可決を考慮したんだろうな、っていう内容とは言えやはりSALT、Medicaid、エネジークレジット等は未だに調整中。SALTくらいでって思うけど、NYの17th District(日本人の駐在の方にもお馴染みのWestchesterを含むDistrict)の共和党下院議員Mike LawlerとかはSALT枠を拡大しないと中間選挙で戦えないっていう話し。共和党絡みの票読みしてる人の話しだとこれは冗談ではなく本当らしい。下院の議席数は僅差だから共和党下院としては一議席でも重要。ってことで事が込み入る。
Section 899に関しては上院法案に趣旨はそのまま入ったことから上院でも899の重要性が認識された証拠になったけど、まだまだ転覆させようって激しいロビー活動が続いてるらしい。Wall Street派に加えて今度は不動産業界登場。海外からの投資に冷却効果があるんでMinority出資は免除して欲しいみたいな書簡をJohn ThuneとMike Crapoに送り付けたりしてる。以前のREIT特集で触れたけど不動産業界の究極の夢はFIRPTAの完全撤廃!さすがにそれは「Good luck」って感じだけど163(j)にしても上場REITにしても、古くはUP-REITがSub KのAnti-Abuse Regulationsでお墨付きをもらったり何かと不動産業界は厚遇特別扱い。今ではお馴染みのUP-CはこのUP-REITに対するAnti-Abuse除外お墨付きがなければストラクチャーとして蔓延しなかったかもって考えると不動産業界のおかげで一般事業のパススルー上場時のパワフルなストラクチャーオプションが増えて感謝。不動産業界がパワフルなのは、例えばWall Streetとかだったら特定の州の議院しか聞く耳を持たないかもしれないけど、不動産は全州にあるんでロビー活動時にLeverageが効くらしい。不動産業界とは別に外国の投資銀行とかもロビー活動してるらしいけどScott Bessent長官曰く「ロビー活動の矛先が間違っている。自分の国の政府に不公平税制を撤回するようロビーするべき」とのこと。不動産パワーで更なる緩和措置があるでしょうか。
来週上院投票?
ただ、section 899に限らず公表された上院法案は一週間ほど更なる変遷を経てJohn Thune曰く来週水曜日か木曜日に最初の投票、その後、最終投票をその直後の週末にしたいということ。ということで決して最終版ではないけどタイトなタイムライン。上院可決してその後に下院とConferenceで調整したりしてると時間が掛かるんで、上院の調整と同時にPre-Conferenceですり合わせして一気に通すっていうもくろみらしい。上院だけでもマジックナンバーの4人造反が居るかどうか不明。Rand Paul、MedicaidのJosh HawleyやSusan Collins…。どうなるでしょうか。
次回はNew BEATとSuper-BEATについて。
Monday, June 16, 2025
税制改正上院バージョン公開「899の運命は?」
前回のポスティングを「次回のポスティングをドラフトする頃にはもしかしたら上院バージョンの話しができるような状況になってるかもね」って締めくくったけど、本当にその通りになりました!米国時間の金曜日に結局出なかったんで月曜日は怪しいなと思って移動中にもかかわらず朝から目を光らせたんだけど、ちょうどJFKに着いた直後Air Train降りるタイミングで公表を知った。
Air Train降りてApple Pay使えるようになったからマシだけどチョッとアナログな感じの改札出てE Trainに向かう途中のエスカレーター降りたところで一旦Tim Hortens(覚えてる?パートナーシップ使って米国株主が367に抵触しない形でカナダにInversionした話し)でコーヒー買って超ザっと目を通してから地下鉄に乗ったけど、大概において思ってた通り。ビジネス界が望んでいた163(j)/174/168(k)は下院と異なり恒久化、チップ・残業代・自動車ローン金利等のトランプ選挙公約はそのまま盛り込まれてた。
チョッと驚いたけどある意味やっぱり・・・だったのはSALT控除。現状の$10Kを下院法案では$40Kに引き上げてたけど、$30Kくらいにされちゃうのかなって思って恐る恐る読んだらナンと$10Kのまま。え~、下院にはCAやNYのDistrict議員がいるけど、上院は各州2名でCAやNYの高税率州の共和党上院議員はいないから仕方ないのかもしれないけど挑戦的。上院にしてみれば何で規律のない歳出を繰り返す州の税収を部分的に連邦が負担する必要があるのかってことで特に州個人所得税ナシのフロリダ州のRick Scottみたいに「(SALT控除は)ゼロがいいんじゃないかな」っていう世界になる。ただ、法文とは別に公表されている解説で「SALTは議論を呼ぶ検討なので取り合えず$10Kにしておくけど最終ではない」って一応コメントされてるんで調整が付いてないってことだね。
で、何と言っても読者のみなさんの関心がここ数週間急激にアップしているOpportunity Zone...、じゃなくてsection 899はどうなったでしょうか。
Section 899上院法案バージョン
こちらもほぼ想定の範囲内だったけど基本的な制度設計は同じ。一読して気づいた「お~こうきたか」みたいな点をいくつか。落ち着いたらもう少しジックリ読んで詳細解説してみたいけど今日は取り急ぎハイライト。それにしても規則内容は同様なんだけど法文の構成・順序が全く変わってるんで面食らう。下院法案の癖が抜けるまではチョッと調子でない。
Offending Foreign Country
下院法案ではUnfair Foreign Tax制度を導入してる国を「Discriminatory Foreign Country」って定義してたけど、上院法案ではこれが「Offending Foreign Country」に。DiscriminatoryとOffendingってConnotation的にどっちがマシなんだろうか。普段Offendingって言うと人を不快にさせる、またはルール違反っていう双方のニュアンスで使うけど、確かにそういわれてみるとUTPRやDSTでアメリカを不快にさせて、アメリカの視点からは国際法違反って考えるとうまくひとつの単語で複数のニュアンスを詰め込んだ表現かもね。
Unfair Foreign Tax
1月21日下院法案Mark IIに少し戻った感じでExtraterritorial TaxとDiscriminatory Taxの各々がまず定義されてるけど、Extraterritorial Taxに関しては定義後半に「UTPR」は含まれる、「DST」に関してはDiscriminatory Taxの定義そのものの1つとして明記されてるんで結局それらの制度を持ってたらそれでNG。あれDPTは?って思ったけど一読した限りではPer Se Unfair Foreign Taxから脱落したみたいだ。でも世界中の税制調べた訳じゃないけど、DPTって英国とオーストラリアだろうからUTPRやDST持ってたらDPTが救われても意味ないね。
「Extraterritorial tax」と「Discriminatory Tax」で異なる対処?
おそらく設計的に一番アレって思うのは下院法案では「Extraterritorial tax」でも「Discriminatory Tax」でもどっちか採択してたら対処は同じだったけど、上院バージョンは「Discriminatory Tax」だけの問題国に関しては付加税を活用した対処はなくApplicable Personに直接間接に50%超(議決権または価値ベース)所有される米国法人にSuper-BEATが適用されるだけの対処に見える。法文読む限りそうなんだけど100%自信ないんで明日もう少しスッキリした頭で読んでみたい。一方「Extraterritorial Tax」を持つ国は従来通り付加税とSuper-BEATの双方で対抗されるように見える。この差はExtraterritorial Taxは持ってないけどDiscriminatory Taxはあるっていう国にのみ関係ある話し。もっと意訳するとUTPR持ってる国はDSTがあろうとなかろうと下院法案通り双方の対処法対象で、DSTはあるけどUTPRはありませんって国はSuper-BEATのみってことになる。
Applicable Date
適用にもう少し時間を設けて問題国が自国の制度を変える猶予期間を確保するのがベターっていう話しが出てて、この点は潜在的な下院法案からの変更点になり得るっていう点は前回のポスティングで予想したけど、その通りになった。Applicable Date(国毎・暦年ベース)やApplicable PersonがFiscal Yearのケースの適用開始年度を決める際の例の3つの日のうちの一つ「899可決から90日後」っていうのがナンと4倍に延長され「899可決から一年後」ってなった。これで仮に既にUnfair Foreign Taxを持ってる国に関しては2027年1月1日がApplicable Dateになるね。
「On or After」 v 「After」
以前のポスティング「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた通り下院法案ではFiscal YearベースのApplicable Personに対する付加税およびSuper-BEAT適用初年度は例の3つの日(下院では899可決から90日、問題国のUnfair Foreign Tax可決から180日、Unfair Foreign Tax適用開始日)の一番遅い日の「後(After)」に開始するFiscal Yearってなってた。付加税%を決める際のApplicable Date決定目的では「on or after」だったんで4月1日にUnfair Foreign Taxが適用開始で(仮にその日が3つのうち一番遅い日とする)3月決算の場合は一年後の4月1日に開始するFiscal Yearが最初の適用年度になるはずだった。さすがにApplicable Dateと規則がパラレルじゃないのはおかしいって思ってかどのFiscal Yearから適用かの判断時も「On or after」に変更されている。ただ、上述の通り、3つの日のひとつ「899可決から90日後」が「一年後」に変更されてるんで、この日が(例えば2026年7月5日)が一番遅い日になることが多く、その場合は4月1日問題は生じない。
付加税%は15%打ち止め
下院法案では付加税のCAPを付加税が足された後の税率を参照して規定していた。具体的には結果として計算される%は法定税率プラス20%がCAPとされてた。今回は付加税%そのものが15%で打ち止めになるって規定されている。下院法案と同じく条約適用の納税者には条約レートがスターティングとなる。したがって源泉税が条約でゼロ%の場合は15%で終わるけど条約ないと45%だ。
「Portfolio Interest Exemption」
米国債やボンドの金利源泉税が高くなって米国への投資に悪影響っていう懸念に対応するためか、下院Budget CommitteeのFootnoteにPortfolio Interest Exemptionは付加税の対象じゃないって記載されてたけど、Budget CommitteeのFootnoteは法律ではないんで法文上の明確化が望まれて、もしかしたらこれも上院でアップデートされるかもっていう点は前回のポスティングで触れたけど、その通り法文で対象外って明確になった。これでボンドは一安心。また199Aのパススルー所得控除の対象としても追加されてたDirect CreditのBDCが受け取る利子がPortfolio Interest Exemptionの要件を満たしている場合、それを原資に支払う配当も同様に対象外となった。
っていうことで若干のTweakの上、上院でも温存っていう予想通りの結果だけど15%打ち止め、可決から1年、とか随所に緩和措置がみられたね。取り急ぎでした。
Air Train降りてApple Pay使えるようになったからマシだけどチョッとアナログな感じの改札出てE Trainに向かう途中のエスカレーター降りたところで一旦Tim Hortens(覚えてる?パートナーシップ使って米国株主が367に抵触しない形でカナダにInversionした話し)でコーヒー買って超ザっと目を通してから地下鉄に乗ったけど、大概において思ってた通り。ビジネス界が望んでいた163(j)/174/168(k)は下院と異なり恒久化、チップ・残業代・自動車ローン金利等のトランプ選挙公約はそのまま盛り込まれてた。
チョッと驚いたけどある意味やっぱり・・・だったのはSALT控除。現状の$10Kを下院法案では$40Kに引き上げてたけど、$30Kくらいにされちゃうのかなって思って恐る恐る読んだらナンと$10Kのまま。え~、下院にはCAやNYのDistrict議員がいるけど、上院は各州2名でCAやNYの高税率州の共和党上院議員はいないから仕方ないのかもしれないけど挑戦的。上院にしてみれば何で規律のない歳出を繰り返す州の税収を部分的に連邦が負担する必要があるのかってことで特に州個人所得税ナシのフロリダ州のRick Scottみたいに「(SALT控除は)ゼロがいいんじゃないかな」っていう世界になる。ただ、法文とは別に公表されている解説で「SALTは議論を呼ぶ検討なので取り合えず$10Kにしておくけど最終ではない」って一応コメントされてるんで調整が付いてないってことだね。
で、何と言っても読者のみなさんの関心がここ数週間急激にアップしているOpportunity Zone...、じゃなくてsection 899はどうなったでしょうか。
Section 899上院法案バージョン
こちらもほぼ想定の範囲内だったけど基本的な制度設計は同じ。一読して気づいた「お~こうきたか」みたいな点をいくつか。落ち着いたらもう少しジックリ読んで詳細解説してみたいけど今日は取り急ぎハイライト。それにしても規則内容は同様なんだけど法文の構成・順序が全く変わってるんで面食らう。下院法案の癖が抜けるまではチョッと調子でない。
Offending Foreign Country
下院法案ではUnfair Foreign Tax制度を導入してる国を「Discriminatory Foreign Country」って定義してたけど、上院法案ではこれが「Offending Foreign Country」に。DiscriminatoryとOffendingってConnotation的にどっちがマシなんだろうか。普段Offendingって言うと人を不快にさせる、またはルール違反っていう双方のニュアンスで使うけど、確かにそういわれてみるとUTPRやDSTでアメリカを不快にさせて、アメリカの視点からは国際法違反って考えるとうまくひとつの単語で複数のニュアンスを詰め込んだ表現かもね。
Unfair Foreign Tax
1月21日下院法案Mark IIに少し戻った感じでExtraterritorial TaxとDiscriminatory Taxの各々がまず定義されてるけど、Extraterritorial Taxに関しては定義後半に「UTPR」は含まれる、「DST」に関してはDiscriminatory Taxの定義そのものの1つとして明記されてるんで結局それらの制度を持ってたらそれでNG。あれDPTは?って思ったけど一読した限りではPer Se Unfair Foreign Taxから脱落したみたいだ。でも世界中の税制調べた訳じゃないけど、DPTって英国とオーストラリアだろうからUTPRやDST持ってたらDPTが救われても意味ないね。
「Extraterritorial tax」と「Discriminatory Tax」で異なる対処?
おそらく設計的に一番アレって思うのは下院法案では「Extraterritorial tax」でも「Discriminatory Tax」でもどっちか採択してたら対処は同じだったけど、上院バージョンは「Discriminatory Tax」だけの問題国に関しては付加税を活用した対処はなくApplicable Personに直接間接に50%超(議決権または価値ベース)所有される米国法人にSuper-BEATが適用されるだけの対処に見える。法文読む限りそうなんだけど100%自信ないんで明日もう少しスッキリした頭で読んでみたい。一方「Extraterritorial Tax」を持つ国は従来通り付加税とSuper-BEATの双方で対抗されるように見える。この差はExtraterritorial Taxは持ってないけどDiscriminatory Taxはあるっていう国にのみ関係ある話し。もっと意訳するとUTPR持ってる国はDSTがあろうとなかろうと下院法案通り双方の対処法対象で、DSTはあるけどUTPRはありませんって国はSuper-BEATのみってことになる。
Applicable Date
適用にもう少し時間を設けて問題国が自国の制度を変える猶予期間を確保するのがベターっていう話しが出てて、この点は潜在的な下院法案からの変更点になり得るっていう点は前回のポスティングで予想したけど、その通りになった。Applicable Date(国毎・暦年ベース)やApplicable PersonがFiscal Yearのケースの適用開始年度を決める際の例の3つの日のうちの一つ「899可決から90日後」っていうのがナンと4倍に延長され「899可決から一年後」ってなった。これで仮に既にUnfair Foreign Taxを持ってる国に関しては2027年1月1日がApplicable Dateになるね。
「On or After」 v 「After」
以前のポスティング「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた通り下院法案ではFiscal YearベースのApplicable Personに対する付加税およびSuper-BEAT適用初年度は例の3つの日(下院では899可決から90日、問題国のUnfair Foreign Tax可決から180日、Unfair Foreign Tax適用開始日)の一番遅い日の「後(After)」に開始するFiscal Yearってなってた。付加税%を決める際のApplicable Date決定目的では「on or after」だったんで4月1日にUnfair Foreign Taxが適用開始で(仮にその日が3つのうち一番遅い日とする)3月決算の場合は一年後の4月1日に開始するFiscal Yearが最初の適用年度になるはずだった。さすがにApplicable Dateと規則がパラレルじゃないのはおかしいって思ってかどのFiscal Yearから適用かの判断時も「On or after」に変更されている。ただ、上述の通り、3つの日のひとつ「899可決から90日後」が「一年後」に変更されてるんで、この日が(例えば2026年7月5日)が一番遅い日になることが多く、その場合は4月1日問題は生じない。
付加税%は15%打ち止め
下院法案では付加税のCAPを付加税が足された後の税率を参照して規定していた。具体的には結果として計算される%は法定税率プラス20%がCAPとされてた。今回は付加税%そのものが15%で打ち止めになるって規定されている。下院法案と同じく条約適用の納税者には条約レートがスターティングとなる。したがって源泉税が条約でゼロ%の場合は15%で終わるけど条約ないと45%だ。
「Portfolio Interest Exemption」
米国債やボンドの金利源泉税が高くなって米国への投資に悪影響っていう懸念に対応するためか、下院Budget CommitteeのFootnoteにPortfolio Interest Exemptionは付加税の対象じゃないって記載されてたけど、Budget CommitteeのFootnoteは法律ではないんで法文上の明確化が望まれて、もしかしたらこれも上院でアップデートされるかもっていう点は前回のポスティングで触れたけど、その通り法文で対象外って明確になった。これでボンドは一安心。また199Aのパススルー所得控除の対象としても追加されてたDirect CreditのBDCが受け取る利子がPortfolio Interest Exemptionの要件を満たしている場合、それを原資に支払う配当も同様に対象外となった。
っていうことで若干のTweakの上、上院でも温存っていう予想通りの結果だけど15%打ち止め、可決から1年、とか随所に緩和措置がみられたね。取り急ぎでした。
Saturday, June 14, 2025
Section 899下院法案バージョン (4)
Mega-Bill上院バージョン
Mega-Billのタックス部分を上院で担当するFinance Committeeが税制改正上院バージョンドラフトを今日(米国金曜日)にも公表するかもって噂されてたんでソワソワ・ワクワク (?)してたんだけど未だ出てないんで、結局来週になるのかもね。13日の金曜日は縁起悪いって考えた?なんてことはないと思うけど、DCの常識的に、この手のドラフトをあんまり前もって白日の下に晒すと、様々な利権を持つ者が精査してLast minuteのロビー活動に繋がるんで、来週奇襲攻撃的に公開するっていう戦術に出てるのかもね。
Medicaidは別の管轄なんで置いておいて税制面で、上院バージョンが公開される際の関心は下院・上院間で温度差が浮き彫りになってる項目にどんな風に対処するかっていう点。すなわちSALT控除枠が$40Kのままか、チップ・残業代非課税がSurviveするか、163(j)/174/168(k)の時限救済を恒久化できるか、エネジークレジットの撤廃タイミングを緩和するか、が主たる関心事になる。これは上院がポリシーとしてどう考えるかっていう角度からの興味もなくはないけど、以前も増れた通り下院バージョンからの乖離が大きくなると両院一致バージョンを早期に可決するゴールに影響があるっていうポリティクスの問題が大きい。
これら争点となっている政策は各々Mega-Billの財政コスト面でプレッシャーが高くなるんでこれらを取り込むとDeficit Hawk派と最後の線で保ってるバランス調整が更に複雑になる。コップのウォッカがこぼれ落ちる寸前までコインを沈め合ってる感じ。そんなかけひきも近頃はもどかしくなっていっそ倒しちゃうようなことがないようにね。メレンゲはホイップし過ぎたらしぼむんでちょうど良い頃合いに止めないとね。う~ん、Voyager良く聴いたな~。この前一瞬触れたRubber SoulからPepperじゃないけど、Pearl Pierce、Reincarnation、Voyager、No Sideって続くあの4枚は個人的にはMark II (?)のGolden Ageで今聴いても素晴らしい。それよりもっと前の子供の頃に聴いてた、ひこうき雲やMisllim、そしてその後のCOBALT HOUR(卒業写真!)、14番目の月(中央フリーウェイ!)なんかのMark Iもいいよね!
で、上院サイドのDeficit Hawk派はトランプが説得に回り徐々にRand Paul以外は歩み寄りの気配があるっていう報道(Rand Paulは結局ホワイトハウスのピクニックに招待してもらえたそう!)。え~Ron Johnsonも歩み寄り~?って思うかもしれないけど、Mega-Billとは別ルートで大統領府と赤字削減プランを協議するっていう約束になったっていう報道もある。ただSALTの控除枠に関して$30Kか$40Kかとか喧喧囂囂の駆け引きが続く中、上院Deficit Hawk派の一人のRick Scott (R-FL)がどれ位の控除枠だったら受け入れ可能かって質問された際に「ゼロがいいんじゃないかな」とコメントしたそうだ。けんもほろろだね。
Section 899の行方は?
これらが主たる大物ポイントだけど、最近頻繁に「section 899は上院でも可決しますか?」っていう質問を受けるようになった。テクニカルに正しい回答は「僕は占い師じゃないんで分かりません。トランプもJohn Thuneも定かじゃないと思います」ってものだけど、Bootleg的な回答は「section 899は若干のTweakはあり得てもそのまま可決される可能性大」って考えるのが合理的。最終法案に盛り込まれる確率は個人的には95%超レベルって考えている。ポリティクスに絶対はないんでその範囲では最高得点に属する。
その理由はいくつかあるけど、まず上院以外の2府、下院と行政府(大統領・財務省)は120%法案指示で一枚岩になってる点。1月20日の政権発足と同時に公表された「Global Tax Deal大統領令」と翌日の下院section 899 Take 2のコーディネートぶりは当時のポスティング「「Global Tax Deal」大統領令」で触れてるんでそっちも読んで欲しい。昨日から議会で財務長官のBessentが質疑応答してたけど、その中でsection 899に関しては「Revenge Tax」とか俗称が付いてるけど誤解を招くとした上で他国の暴走を止め米国議業が他国企業とフェアに競争するため必要と100%ディフェンドしていた。反対意見は主に問題国の納税者からのものとも発言してた。上院と下院で意見が割れる大物争点が他にある中、加えてsection 899を喧嘩に加えるインセンティブが上院にあるとは考え難い。
次に、以前も触れたけど、section 899の主たる米国内の反対はWall Streetからに限定されてるって思われる点。国債を含む米国資産への国外からの投資意欲に悪影響があるっていう理由。この点も投資銀行のアナリストによっては「影響はほぼない(Budget Committeeが後からFootnoteでPortfolio Interest Exemptionに影響はなくsection 899付加税の対象ではないってコメント付けたんで特に)」「影響あるとしたら既に織り込み済み」っていう見方をする者も居る。いずれにして審議過程で目立ったマーケットインパクトは見られない。
一方で一般企業はOECDのGlobal Tax Dealにコンプライアンスしたり、米国で合法的に税金払ってるのに、OECDの計算で(例、R&Dクレジット取って)たまたまLow-Taxedになったっていう理由で米国の利益に子会社所在国で課税されることに何の得もないんで、政権によるプッシュバックの評価は高い。噂によるとカナダや欧州の企業も、これで少しでもコンプライアンス負荷が軽減されて欲しいって実は「こっそり」応援してるところも少なくないっていう話しも聞いた(苦笑)。
ビジネス界からのプッシュバックがWall Streetからに限定されてる点と関連するけど、議員は何よりも次の選挙に備えて地元の有権者にいいところを見せないといけない。有権者の視点からから「みなさんのために高い州税の控除枠を拡大しました」とか「みなさんが欲しい太陽光発電の助成金(クレジット)廃止を2年遅らせました」とか「コメ不足をこうして解消します(ゴメン、これは日本か)」は分かり易い。一方で「OECDが世界に働きかけて導入を図っている不公平税制を取り入れている外国の企業に対する懲罰課税を撤廃しました」って言っても「OECD?石油の輸出国の団体だっけ?」とか「撤廃して自分たち(選挙区の一般People)になんか好影響あんの?」「何で外国企業のために時間使ってんの?」みたいな世界だろうから、そこに限られたPolitical Capitalを費やす議員が多いとは思えない。
また、Mega-Billの一つの大きな争点はBudget Windowの今後10年の財政赤字に対するインパクト。昨日のFinance CommitteeのヒアリングでBessent財務長官はCBOのScoreは関税による歳入を無視してる点、Dynamic scoreじゃない点も加味して「Budget Window内で財政は均衡する」っていう見解をシェアしていた。で、ただでさえ歳出減が徹底できず、歳入源は限られている中、$116Bっていう比較的大きな歳入がScoreされてる規則を敢えて撤廃するようなことは考え難い。
Section 899上院バージョン?
大概において上院での可決が見込まれるとして、じゃあ下院法案バージョンの法文に何らかの変更が加えられる可能性はどうだろうか。こちらも「Heaven Knows」(Donna Summer!)の世界だけど、付加税やSuper-BEATにかかわるSubstantiveな変更はないんじゃないかな~。もしかしたらThom Tillis (R-NC)がDiscriminatory Foreign CountryがUTPRを取り下げたりする時間的な猶予をもう少し与えた方がいいとか言ったそうなんで、例えばApplicable Date(常に暦年で国単位でひとつの日。覚えてる?)やFiscal Year納税者の適用開始年度判断時に使用する日にちのひとつ「section 899の可決90日後」っていうのを「180日」に変えたり(可決日次第だけどおそらく180日にすれば暦年ベースのApplicable Dateは早くて2026年の代わりに2027年1月1日になる)っていう感じのマイナーチェンジは考え得る。またWall Streetの懸念を一部払拭した「Portfolio interest exemption」適格の利子所得はsection 899の付加税対象外っていうBudget CommitteeのFootnoteコメントは法文からは明らかじゃないんで、法文自体をテクニカルアップデートして明確化を図るとかもあり得るかもね。
Recission Bill下院可決
数回前のポスティング「ついにOECD資金拠出撤回法案+Section 899等審議動向」で触れたOECDに対する拠出金撤回を含むって報道されている法案(Recission Bill)は昨日下院で可決された。法案そのものには対象国際機関の個々の名称は記載されてないけど下院の資料にOECDやUNの名前が出てたんで内務省管轄のCIO accountからの拠出取り消しに含まれてるって推測される。次は上院だけど、面白いことにRecission Billは通常の上院60票ではなくReconciliationパッケージ同様に50票超の単純多数決で可決される。この辺の話しは専門外なんで理解している範囲での話しだけど、Recission Billを規定している「the Impoundment Control Act of 1974」では予算撤回を迅速に可能にするためRecission Billは「privileged」っていう位置づけにあるからっていうこと。ただ、共和党上院議員にも歳出減に躊躇しがちな議員は結構いるんで単純多数欠だからって可決が保証されてる訳じゃない。タイミング的にも上院の優先順位は当然Mega-Bill可決の方が高いんでJohn ThuneによるとRecission Billの審議はMega-Bill可決後の7月にずれ込むっていうことだ。
う~ん、$9B(Billion)のRecission Billの可決が定かじゃないってというこの厳しい現実。これじゃ米国の債務$36T(こちらはTrillion)はいつまでたっても解消できないよね。
Section 899 下院法案「Specified rate of tax」
Super-BEAT以外の元祖Section 899部分の下院法案の規則は3つの定義される用語で構成される。すなわち「Applicable Person」に関して各「Specified rate of tax」に「Applicable number of percentage points」を足すっていうもの。「Applicable Person」に関しては前回「Section 899下院法案バージョン (3)」で触れたし、「Applicable number of percentage points」は付加税%って勝手に命名して「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた。
で、最後に残るのが「Specified rate of tax」だけど、tax rateって表現されているものの要は付加税を足す対象となる税金タイプのことって考えると分かり易い。ただ、税金タイプに%を足すっていうのは表現としてパラレルじゃないんで、付加税%を足す対象として「定義される特定の税率」っていう意味でこんな規定になってる。付加税対象の税金タイプは下院法案(Track 3)になる前の1月21日のTrack 2に当たるH.R.591とほぼ同じなんで当時のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」を読んでみて欲しい。
マイナーだけど変更点としては下院法案では1月21日のH.R.591の付加税の対象税金タイプに「section 4948」(Private foundationに対するExcise tax)が加えられている。さらに前回触れた通り下院法案にはForeign Governmentに対する特別恩典はないってここ部分に追記がある。さらにH.R.591では条約レートは無視するって明記されてたけど、既に何回か触れた通り下院法案では条約を適用したレートがスターティングポイントになる。
また法文そのものじゃないけど、下院が上院に法案を送付した際に下院Budget Committeeが解説を加えてて、その中のsection 899の付加税に関してFootnoteがある。Footnoteによると付加税は特定税率(Specified tax rate)を上方修正する「だけ」の仕組みなので、そもそもSpecified taxの適用が明文的に免除されているケースには付加税の適用はないとしている。その例としてProfits interest exemptionが名指しされている。さらに条約で減免されているケースは結果として0%になってるとしても法的に課税が免除されている状況とは異なるとして区別している。
ということで次回のポスティングをドラフトする頃にはもしかしたら上院バージョンの話しができるような状況になってるかもね。
Mega-Billのタックス部分を上院で担当するFinance Committeeが税制改正上院バージョンドラフトを今日(米国金曜日)にも公表するかもって噂されてたんでソワソワ・ワクワク (?)してたんだけど未だ出てないんで、結局来週になるのかもね。13日の金曜日は縁起悪いって考えた?なんてことはないと思うけど、DCの常識的に、この手のドラフトをあんまり前もって白日の下に晒すと、様々な利権を持つ者が精査してLast minuteのロビー活動に繋がるんで、来週奇襲攻撃的に公開するっていう戦術に出てるのかもね。
Medicaidは別の管轄なんで置いておいて税制面で、上院バージョンが公開される際の関心は下院・上院間で温度差が浮き彫りになってる項目にどんな風に対処するかっていう点。すなわちSALT控除枠が$40Kのままか、チップ・残業代非課税がSurviveするか、163(j)/174/168(k)の時限救済を恒久化できるか、エネジークレジットの撤廃タイミングを緩和するか、が主たる関心事になる。これは上院がポリシーとしてどう考えるかっていう角度からの興味もなくはないけど、以前も増れた通り下院バージョンからの乖離が大きくなると両院一致バージョンを早期に可決するゴールに影響があるっていうポリティクスの問題が大きい。
これら争点となっている政策は各々Mega-Billの財政コスト面でプレッシャーが高くなるんでこれらを取り込むとDeficit Hawk派と最後の線で保ってるバランス調整が更に複雑になる。コップのウォッカがこぼれ落ちる寸前までコインを沈め合ってる感じ。そんなかけひきも近頃はもどかしくなっていっそ倒しちゃうようなことがないようにね。メレンゲはホイップし過ぎたらしぼむんでちょうど良い頃合いに止めないとね。う~ん、Voyager良く聴いたな~。この前一瞬触れたRubber SoulからPepperじゃないけど、Pearl Pierce、Reincarnation、Voyager、No Sideって続くあの4枚は個人的にはMark II (?)のGolden Ageで今聴いても素晴らしい。それよりもっと前の子供の頃に聴いてた、ひこうき雲やMisllim、そしてその後のCOBALT HOUR(卒業写真!)、14番目の月(中央フリーウェイ!)なんかのMark Iもいいよね!
で、上院サイドのDeficit Hawk派はトランプが説得に回り徐々にRand Paul以外は歩み寄りの気配があるっていう報道(Rand Paulは結局ホワイトハウスのピクニックに招待してもらえたそう!)。え~Ron Johnsonも歩み寄り~?って思うかもしれないけど、Mega-Billとは別ルートで大統領府と赤字削減プランを協議するっていう約束になったっていう報道もある。ただSALTの控除枠に関して$30Kか$40Kかとか喧喧囂囂の駆け引きが続く中、上院Deficit Hawk派の一人のRick Scott (R-FL)がどれ位の控除枠だったら受け入れ可能かって質問された際に「ゼロがいいんじゃないかな」とコメントしたそうだ。けんもほろろだね。
Section 899の行方は?
これらが主たる大物ポイントだけど、最近頻繁に「section 899は上院でも可決しますか?」っていう質問を受けるようになった。テクニカルに正しい回答は「僕は占い師じゃないんで分かりません。トランプもJohn Thuneも定かじゃないと思います」ってものだけど、Bootleg的な回答は「section 899は若干のTweakはあり得てもそのまま可決される可能性大」って考えるのが合理的。最終法案に盛り込まれる確率は個人的には95%超レベルって考えている。ポリティクスに絶対はないんでその範囲では最高得点に属する。
その理由はいくつかあるけど、まず上院以外の2府、下院と行政府(大統領・財務省)は120%法案指示で一枚岩になってる点。1月20日の政権発足と同時に公表された「Global Tax Deal大統領令」と翌日の下院section 899 Take 2のコーディネートぶりは当時のポスティング「「Global Tax Deal」大統領令」で触れてるんでそっちも読んで欲しい。昨日から議会で財務長官のBessentが質疑応答してたけど、その中でsection 899に関しては「Revenge Tax」とか俗称が付いてるけど誤解を招くとした上で他国の暴走を止め米国議業が他国企業とフェアに競争するため必要と100%ディフェンドしていた。反対意見は主に問題国の納税者からのものとも発言してた。上院と下院で意見が割れる大物争点が他にある中、加えてsection 899を喧嘩に加えるインセンティブが上院にあるとは考え難い。
次に、以前も触れたけど、section 899の主たる米国内の反対はWall Streetからに限定されてるって思われる点。国債を含む米国資産への国外からの投資意欲に悪影響があるっていう理由。この点も投資銀行のアナリストによっては「影響はほぼない(Budget Committeeが後からFootnoteでPortfolio Interest Exemptionに影響はなくsection 899付加税の対象ではないってコメント付けたんで特に)」「影響あるとしたら既に織り込み済み」っていう見方をする者も居る。いずれにして審議過程で目立ったマーケットインパクトは見られない。
一方で一般企業はOECDのGlobal Tax Dealにコンプライアンスしたり、米国で合法的に税金払ってるのに、OECDの計算で(例、R&Dクレジット取って)たまたまLow-Taxedになったっていう理由で米国の利益に子会社所在国で課税されることに何の得もないんで、政権によるプッシュバックの評価は高い。噂によるとカナダや欧州の企業も、これで少しでもコンプライアンス負荷が軽減されて欲しいって実は「こっそり」応援してるところも少なくないっていう話しも聞いた(苦笑)。
ビジネス界からのプッシュバックがWall Streetからに限定されてる点と関連するけど、議員は何よりも次の選挙に備えて地元の有権者にいいところを見せないといけない。有権者の視点からから「みなさんのために高い州税の控除枠を拡大しました」とか「みなさんが欲しい太陽光発電の助成金(クレジット)廃止を2年遅らせました」とか「コメ不足をこうして解消します(ゴメン、これは日本か)」は分かり易い。一方で「OECDが世界に働きかけて導入を図っている不公平税制を取り入れている外国の企業に対する懲罰課税を撤廃しました」って言っても「OECD?石油の輸出国の団体だっけ?」とか「撤廃して自分たち(選挙区の一般People)になんか好影響あんの?」「何で外国企業のために時間使ってんの?」みたいな世界だろうから、そこに限られたPolitical Capitalを費やす議員が多いとは思えない。
また、Mega-Billの一つの大きな争点はBudget Windowの今後10年の財政赤字に対するインパクト。昨日のFinance CommitteeのヒアリングでBessent財務長官はCBOのScoreは関税による歳入を無視してる点、Dynamic scoreじゃない点も加味して「Budget Window内で財政は均衡する」っていう見解をシェアしていた。で、ただでさえ歳出減が徹底できず、歳入源は限られている中、$116Bっていう比較的大きな歳入がScoreされてる規則を敢えて撤廃するようなことは考え難い。
Section 899上院バージョン?
大概において上院での可決が見込まれるとして、じゃあ下院法案バージョンの法文に何らかの変更が加えられる可能性はどうだろうか。こちらも「Heaven Knows」(Donna Summer!)の世界だけど、付加税やSuper-BEATにかかわるSubstantiveな変更はないんじゃないかな~。もしかしたらThom Tillis (R-NC)がDiscriminatory Foreign CountryがUTPRを取り下げたりする時間的な猶予をもう少し与えた方がいいとか言ったそうなんで、例えばApplicable Date(常に暦年で国単位でひとつの日。覚えてる?)やFiscal Year納税者の適用開始年度判断時に使用する日にちのひとつ「section 899の可決90日後」っていうのを「180日」に変えたり(可決日次第だけどおそらく180日にすれば暦年ベースのApplicable Dateは早くて2026年の代わりに2027年1月1日になる)っていう感じのマイナーチェンジは考え得る。またWall Streetの懸念を一部払拭した「Portfolio interest exemption」適格の利子所得はsection 899の付加税対象外っていうBudget CommitteeのFootnoteコメントは法文からは明らかじゃないんで、法文自体をテクニカルアップデートして明確化を図るとかもあり得るかもね。
Recission Bill下院可決
数回前のポスティング「ついにOECD資金拠出撤回法案+Section 899等審議動向」で触れたOECDに対する拠出金撤回を含むって報道されている法案(Recission Bill)は昨日下院で可決された。法案そのものには対象国際機関の個々の名称は記載されてないけど下院の資料にOECDやUNの名前が出てたんで内務省管轄のCIO accountからの拠出取り消しに含まれてるって推測される。次は上院だけど、面白いことにRecission Billは通常の上院60票ではなくReconciliationパッケージ同様に50票超の単純多数決で可決される。この辺の話しは専門外なんで理解している範囲での話しだけど、Recission Billを規定している「the Impoundment Control Act of 1974」では予算撤回を迅速に可能にするためRecission Billは「privileged」っていう位置づけにあるからっていうこと。ただ、共和党上院議員にも歳出減に躊躇しがちな議員は結構いるんで単純多数欠だからって可決が保証されてる訳じゃない。タイミング的にも上院の優先順位は当然Mega-Bill可決の方が高いんでJohn ThuneによるとRecission Billの審議はMega-Bill可決後の7月にずれ込むっていうことだ。
う~ん、$9B(Billion)のRecission Billの可決が定かじゃないってというこの厳しい現実。これじゃ米国の債務$36T(こちらはTrillion)はいつまでたっても解消できないよね。
Section 899 下院法案「Specified rate of tax」
Super-BEAT以外の元祖Section 899部分の下院法案の規則は3つの定義される用語で構成される。すなわち「Applicable Person」に関して各「Specified rate of tax」に「Applicable number of percentage points」を足すっていうもの。「Applicable Person」に関しては前回「Section 899下院法案バージョン (3)」で触れたし、「Applicable number of percentage points」は付加税%って勝手に命名して「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた。
で、最後に残るのが「Specified rate of tax」だけど、tax rateって表現されているものの要は付加税を足す対象となる税金タイプのことって考えると分かり易い。ただ、税金タイプに%を足すっていうのは表現としてパラレルじゃないんで、付加税%を足す対象として「定義される特定の税率」っていう意味でこんな規定になってる。付加税対象の税金タイプは下院法案(Track 3)になる前の1月21日のTrack 2に当たるH.R.591とほぼ同じなんで当時のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」を読んでみて欲しい。
マイナーだけど変更点としては下院法案では1月21日のH.R.591の付加税の対象税金タイプに「section 4948」(Private foundationに対するExcise tax)が加えられている。さらに前回触れた通り下院法案にはForeign Governmentに対する特別恩典はないってここ部分に追記がある。さらにH.R.591では条約レートは無視するって明記されてたけど、既に何回か触れた通り下院法案では条約を適用したレートがスターティングポイントになる。
また法文そのものじゃないけど、下院が上院に法案を送付した際に下院Budget Committeeが解説を加えてて、その中のsection 899の付加税に関してFootnoteがある。Footnoteによると付加税は特定税率(Specified tax rate)を上方修正する「だけ」の仕組みなので、そもそもSpecified taxの適用が明文的に免除されているケースには付加税の適用はないとしている。その例としてProfits interest exemptionが名指しされている。さらに条約で減免されているケースは結果として0%になってるとしても法的に課税が免除されている状況とは異なるとして区別している。
ということで次回のポスティングをドラフトする頃にはもしかしたら上院バージョンの話しができるような状況になってるかもね。
Sunday, June 8, 2025
Section 899下院法案バージョン (3)
Mega-Billの中の税法部分の上院バージョンが公表される前にsection 899下院法案バージョンの詳細に戻っておかないとねってことでシリーズ3。下院法案バージョンに関しては国別暦年ベースの付加税適用開始タイミングおよび付加%、そしてDiscriminatory Foreign Countryの納税者がFiscal Year課税年度を採択してるケースの各納税者に対する適用タイミングおよび混合税率の考え方に触れた。今日はsection 899の適用対象者が誰かっていう点に触れたい。
Applicable Person
Super-BEAT以外のsection 899の基本的なアプローチは「Applicable Person」に関して規定されるタイプの税率に付加税を足すっていうもの。源泉税は徴収メカニズムなんで源泉徴収が義務付けられる支払者の位置づけは関係なくて所得を受け取る者が「Applicable Person」かどうかが重要。支払いを受け取る者がApplicable Personの場合に源泉税を徴収・納付する者が付加%を足して源泉する。いずれにしても誰がApplicable Personになるかの判断が重要。
Applicable Personは条文にて下に列挙する者と定義されている。当然だけどいずれもDiscriminatory Foreign Country、すなわちUTPRやDST等のUnfair Foreign Taxesを持つ国に関係する者。ここでは便宜上Discriminatory Foreign Countryを「問題国」って表現しておく。
Foreign Government
まず問題国の「Foreign Government」。法人や個人を超えて堂々のトップバッター。この順序自体に特に深い意味はないのかもしれないけど(そしてもちろん法的なSignificanceはゼロだけど)、なんとなく問題国の法人や個人は自分たちではどうにも対処のしようがない世界で付加税とかの迷惑を被ることになるけど、Foreign GovernmentはUnfair Foreign Taxesを導入している国と一心同体(?)ってことなのかな~とか考えちゃうけどね。この順番チョッと不自然だもんね。
で、ここでいうForeign Governmentは米国税法のsection 892に基づき本来であれば通常の外国法人よりもアップグレードされた特別な特典を受けることができる者。Sovereign Governmentの「Integral Part」およびSovereign Governmentが持つ一定要件を満たす「Controlled Entity」の双方を意味する。俗に言うSWFは通常Controlled EntityとしてForeign Governmentと位置付けられる。米国内外のCommercial Activityがフローすると大変なことになるんで(SWFそのものもだけど、アドバイザーも…)通常のECI以上の超慎重な対応となる。ファンドが通常の外国人LPとは別に892用のFeederを用意したりするのはこのためでCommercial ActivityをフローさせないっていうのはExistential的な検討になる。
Foreign GovernmentがApplicable Personっていうのは定義としての規則なんだけど、Foreign Governmentに関してはApplicable Personなんで付加税適用っていうインパクトはもちろんだけど、加えてわざわざ付加税適用を規定している箇所に「Foreign GovernmentがApplicable Personになる場合section 892(a)に規定されるForeign Governmentの特典はない」って特記がある。SWFのポスティングじゃないんで細かい話しはしないけど、通常の外国法人との比較でForeign Governmentの恩典って主に50%「以上」の持分を持たず、また実質支配下においたりしてない限り米国法人からの配当が条約にかかわりなくゼロ%になる点、また持分が50%未満のUSRPI株式を譲渡してもFIRPTA課税の対象とならないっていう点。もちろんForeign Governmentが同時にQFPFでもあるケースも珍しくないんで、そんなケースではQFPFに認められる別のFIRPTA恩典もプラスで享受することができる。
で、問題国のForeign GovernmentにForeign Governmentの特典がないと一体全体どうなっちゃうの?って言うと、特典がないからと言って全ての所得に自動的に課税されるっていう訳ではなく、要は通常の外国法人と同じシステムで課税されるっていう取り扱いになる。ただ、問題国の法人は後述の通りApplicable Personとして付加税の対象になるんで、通常の外国法人として条約を加味した後にsection 899のインパクトを図ることになる。
個人
次は個人(Individual)に関してだけど、こちらは問題国の税務上の居住者で米国市民や米国居住者でない者。1月21日の原案では「市民(Citizen)」だったけど下院法案バージョンでは「居住者(Resident)」に変更されている。ということは例えば日本の例だと、日本の法令で非居住者になると日本に関してはApplicable Personじゃなくなるってことになる。だけど、問題国は個人が市民権を持っている国に限定されないんで、例えば英国の居住者になったりするとそれはそれで英国が理由でApplicable Personになっちゃうよね。なんで英国を例にしたかは分かるね。英国はUTPR、DST、DPTの3冠王だからね!3冠王でも付加税が3倍になることはないんでその点は安心(?)。逆に言えばひとつでも持ってるとNGだからね。
また、米国に引っ越す場合、例えば暦年の後半に日本を出て日本の法令で非居住者になっても(これは日本の法令で専門外なんで例)米国の国内法では翌年の1月1日からしか居住者にならないことが多い(出国以前過去3年間にどれだけ米国に足を踏み入れてたか次第)。それでも日本の居住者じゃなければ、米国で非居住者でも他のどの国の居住者にもならないだろうからその間は「Nowhere Man」としてNowhere Landに住んでることになるんんでApplicable Personには当たらないことになるはず。う~ん、これこそHe's a real nowhere man…。子供の頃Rubber Soul良く聴いたな~。Rubber SoulからRevolver、そしてPepperまでの進化は直前のHelpとの比較で凄まじい。才能が開花するってああいうことだね!で、Applicable Personの話しに戻るけど(安心した?)課税年度毎で計算する税金に関して同じ課税年度(暦年)内にApplicable Personとそうでない期間が混在する場合の取り扱いは今一つ明確じゃない気がする。また、前回のByrd Ruleの絡みもあるんで居住関係は条約も加味して判断していいって考えるのが自然だと思うんで4条のTie-Breakerとか適用してたらその前提でApplicable Personかどうかを判断することになるんだろう。市民っていう定義じゃなくなったんで、米国駐在期間は原則Applicable Personにはならないことになる。また個人に関してはFIRPTA以外のECIには付加税の適用はないって明確になったんでその点でも相当Scopeが狭まる。個人は良かったね。
法人
次に問題国の法人。正確には問題国の居住者と取り扱われる法人。ただし、米国所有外国法人(a United States-owned foreign corporation)は除外。この米国所有外国法人は外国税額控除の制限枠を規定している条文に定義があり、米国人(米国居住者、市民、米国法人、米国パートナーシップ、米国信託、米国遺産)に直接・間接に50%以上の議決権または価値を所有される外国法人を言う。この判断時には株式を取得するオプション(そのオプションを取得するオプションも含む)はオプションでオプション所有者が対象株式を所有しているかのように取り扱う。
例えば、米国法人の英国子会社(英国居住法人扱いと仮定)は問題国の法人なんで本来であればApplicable Personだけど、米国所有外国法人なんでApplicable Personにはならないことになる。英国って国単位では問題国(Discriminatory Foreign Country)だとしても。
さらに問題国の居住法人でなくても、50%超の議決権または価値を直接・間接にApplicable Personが所有している外国法人もApplicable Personに当たる。ただし、この目的では上場企業は免除。注意が必要なのは上場企業に適用される例外はあくまでその法人の居住地は問題国じゃないケースのみ。すなわちそんなケースでは上場企業の持分が他国のApplicable Personに50%超所有されててもApplicable Personにならないってことだろう。上場企業の居住国そのものが問題国の場合、上場企業だからってApplicable Personにならないっていう例外はない。
上場企業以外の法人がUnfair Foreign Taxesを導入していない優等生国(?)の居住法人の場合、それでもApplicable Personになるかどうかの判断には法人の持分を正確に特定する必要がある。容易に特定できるケースも少なくないかもしれないけど、場合によっては特定が難しいケースもあるだろう。ケイマンファンド経由とかで所有されているようなケースだと法人はBeneficial Ownerが分からない可能性大。どうするんでしょうか。USRPIみたいに反証できなければApplicable Personみたいな規則が出るのかな。
Private Foundation
どれだけ読者の皆さんに影響があるか分かんないけど、問題国で創設(Created)される、または組成(Organized)されるPrivate Foundation。付加税の規則ではPrivate Foundationに課せられるExcise Taxは付加税対象タイプって明記されてる。
信託
信託は米国内外を問わず受益権(「Beneficiary Interest」)の50%超(「Majority」)をApplicable Personに所有されているケース。
外国パートナーシップ・支店等
外国パートナーシップ、支店、その他の主体に関しては財務省が定める範囲でApplicable Personになる。条文の文言的にこれらの主体・支店は財務省規則(またはNotice等のSub-Guidance)が公表されるまではApplicable Personには当たらないことになる。パートナーシップはなぜ法人や信託みたいにCapital InterestまたはProfits Interestの50%超をApplicable Personに所有されているケースとかしないんだろうって思うかもしれいけど、おそらく持分の認定を704ベースとかで判断するのは難しいし、パススルーなんでパートナー自身がApplicable Personだったらいずれにしても他の定義でカバーされるっていうことで、仮に外国パートナーシップ自体がApplicable Personかどうか不明でも、パートナーがApplicable Personだったら外国パートナーシップからAllocationされる米国課税対象所得にはパートナーが直接受け取ったかのようにsection 899の適用があるっていうことに見える。
財務省による免除権限
実はApplicable Personの定義に、全てのタイプのApplicable Personに関して「Except as otherwise provided by the Secretary」っていう例外が規定されている。ここで言うSecretaryは財務長官のこと。つまり上に列挙した者でも財務長官権限で「Applicable Personではない」っていう指定が可能なことになる。例外規定なんで法文解釈の「いろは」的に狭義に解釈し、例外が公表されるまでは例外はないってことだけど、これはランダムにこの人はOKというような例外じゃなくて、問題国がUnfair Foreign Taxesを撤廃する手続き中とかの状況に認められるタイプの緩和措置っていうのが趣旨だろう。
ということで次回は下院法案バージョンの付加税対象タイプの税金に関して。上院の動向次第でテーマ変わるかもしれないけどね。
Applicable Person
Super-BEAT以外のsection 899の基本的なアプローチは「Applicable Person」に関して規定されるタイプの税率に付加税を足すっていうもの。源泉税は徴収メカニズムなんで源泉徴収が義務付けられる支払者の位置づけは関係なくて所得を受け取る者が「Applicable Person」かどうかが重要。支払いを受け取る者がApplicable Personの場合に源泉税を徴収・納付する者が付加%を足して源泉する。いずれにしても誰がApplicable Personになるかの判断が重要。
Applicable Personは条文にて下に列挙する者と定義されている。当然だけどいずれもDiscriminatory Foreign Country、すなわちUTPRやDST等のUnfair Foreign Taxesを持つ国に関係する者。ここでは便宜上Discriminatory Foreign Countryを「問題国」って表現しておく。
Foreign Government
まず問題国の「Foreign Government」。法人や個人を超えて堂々のトップバッター。この順序自体に特に深い意味はないのかもしれないけど(そしてもちろん法的なSignificanceはゼロだけど)、なんとなく問題国の法人や個人は自分たちではどうにも対処のしようがない世界で付加税とかの迷惑を被ることになるけど、Foreign GovernmentはUnfair Foreign Taxesを導入している国と一心同体(?)ってことなのかな~とか考えちゃうけどね。この順番チョッと不自然だもんね。
で、ここでいうForeign Governmentは米国税法のsection 892に基づき本来であれば通常の外国法人よりもアップグレードされた特別な特典を受けることができる者。Sovereign Governmentの「Integral Part」およびSovereign Governmentが持つ一定要件を満たす「Controlled Entity」の双方を意味する。俗に言うSWFは通常Controlled EntityとしてForeign Governmentと位置付けられる。米国内外のCommercial Activityがフローすると大変なことになるんで(SWFそのものもだけど、アドバイザーも…)通常のECI以上の超慎重な対応となる。ファンドが通常の外国人LPとは別に892用のFeederを用意したりするのはこのためでCommercial ActivityをフローさせないっていうのはExistential的な検討になる。
Foreign GovernmentがApplicable Personっていうのは定義としての規則なんだけど、Foreign Governmentに関してはApplicable Personなんで付加税適用っていうインパクトはもちろんだけど、加えてわざわざ付加税適用を規定している箇所に「Foreign GovernmentがApplicable Personになる場合section 892(a)に規定されるForeign Governmentの特典はない」って特記がある。SWFのポスティングじゃないんで細かい話しはしないけど、通常の外国法人との比較でForeign Governmentの恩典って主に50%「以上」の持分を持たず、また実質支配下においたりしてない限り米国法人からの配当が条約にかかわりなくゼロ%になる点、また持分が50%未満のUSRPI株式を譲渡してもFIRPTA課税の対象とならないっていう点。もちろんForeign Governmentが同時にQFPFでもあるケースも珍しくないんで、そんなケースではQFPFに認められる別のFIRPTA恩典もプラスで享受することができる。
で、問題国のForeign GovernmentにForeign Governmentの特典がないと一体全体どうなっちゃうの?って言うと、特典がないからと言って全ての所得に自動的に課税されるっていう訳ではなく、要は通常の外国法人と同じシステムで課税されるっていう取り扱いになる。ただ、問題国の法人は後述の通りApplicable Personとして付加税の対象になるんで、通常の外国法人として条約を加味した後にsection 899のインパクトを図ることになる。
個人
次は個人(Individual)に関してだけど、こちらは問題国の税務上の居住者で米国市民や米国居住者でない者。1月21日の原案では「市民(Citizen)」だったけど下院法案バージョンでは「居住者(Resident)」に変更されている。ということは例えば日本の例だと、日本の法令で非居住者になると日本に関してはApplicable Personじゃなくなるってことになる。だけど、問題国は個人が市民権を持っている国に限定されないんで、例えば英国の居住者になったりするとそれはそれで英国が理由でApplicable Personになっちゃうよね。なんで英国を例にしたかは分かるね。英国はUTPR、DST、DPTの3冠王だからね!3冠王でも付加税が3倍になることはないんでその点は安心(?)。逆に言えばひとつでも持ってるとNGだからね。
また、米国に引っ越す場合、例えば暦年の後半に日本を出て日本の法令で非居住者になっても(これは日本の法令で専門外なんで例)米国の国内法では翌年の1月1日からしか居住者にならないことが多い(出国以前過去3年間にどれだけ米国に足を踏み入れてたか次第)。それでも日本の居住者じゃなければ、米国で非居住者でも他のどの国の居住者にもならないだろうからその間は「Nowhere Man」としてNowhere Landに住んでることになるんんでApplicable Personには当たらないことになるはず。う~ん、これこそHe's a real nowhere man…。子供の頃Rubber Soul良く聴いたな~。Rubber SoulからRevolver、そしてPepperまでの進化は直前のHelpとの比較で凄まじい。才能が開花するってああいうことだね!で、Applicable Personの話しに戻るけど(安心した?)課税年度毎で計算する税金に関して同じ課税年度(暦年)内にApplicable Personとそうでない期間が混在する場合の取り扱いは今一つ明確じゃない気がする。また、前回のByrd Ruleの絡みもあるんで居住関係は条約も加味して判断していいって考えるのが自然だと思うんで4条のTie-Breakerとか適用してたらその前提でApplicable Personかどうかを判断することになるんだろう。市民っていう定義じゃなくなったんで、米国駐在期間は原則Applicable Personにはならないことになる。また個人に関してはFIRPTA以外のECIには付加税の適用はないって明確になったんでその点でも相当Scopeが狭まる。個人は良かったね。
法人
次に問題国の法人。正確には問題国の居住者と取り扱われる法人。ただし、米国所有外国法人(a United States-owned foreign corporation)は除外。この米国所有外国法人は外国税額控除の制限枠を規定している条文に定義があり、米国人(米国居住者、市民、米国法人、米国パートナーシップ、米国信託、米国遺産)に直接・間接に50%以上の議決権または価値を所有される外国法人を言う。この判断時には株式を取得するオプション(そのオプションを取得するオプションも含む)はオプションでオプション所有者が対象株式を所有しているかのように取り扱う。
例えば、米国法人の英国子会社(英国居住法人扱いと仮定)は問題国の法人なんで本来であればApplicable Personだけど、米国所有外国法人なんでApplicable Personにはならないことになる。英国って国単位では問題国(Discriminatory Foreign Country)だとしても。
さらに問題国の居住法人でなくても、50%超の議決権または価値を直接・間接にApplicable Personが所有している外国法人もApplicable Personに当たる。ただし、この目的では上場企業は免除。注意が必要なのは上場企業に適用される例外はあくまでその法人の居住地は問題国じゃないケースのみ。すなわちそんなケースでは上場企業の持分が他国のApplicable Personに50%超所有されててもApplicable Personにならないってことだろう。上場企業の居住国そのものが問題国の場合、上場企業だからってApplicable Personにならないっていう例外はない。
上場企業以外の法人がUnfair Foreign Taxesを導入していない優等生国(?)の居住法人の場合、それでもApplicable Personになるかどうかの判断には法人の持分を正確に特定する必要がある。容易に特定できるケースも少なくないかもしれないけど、場合によっては特定が難しいケースもあるだろう。ケイマンファンド経由とかで所有されているようなケースだと法人はBeneficial Ownerが分からない可能性大。どうするんでしょうか。USRPIみたいに反証できなければApplicable Personみたいな規則が出るのかな。
Private Foundation
どれだけ読者の皆さんに影響があるか分かんないけど、問題国で創設(Created)される、または組成(Organized)されるPrivate Foundation。付加税の規則ではPrivate Foundationに課せられるExcise Taxは付加税対象タイプって明記されてる。
信託
信託は米国内外を問わず受益権(「Beneficiary Interest」)の50%超(「Majority」)をApplicable Personに所有されているケース。
外国パートナーシップ・支店等
外国パートナーシップ、支店、その他の主体に関しては財務省が定める範囲でApplicable Personになる。条文の文言的にこれらの主体・支店は財務省規則(またはNotice等のSub-Guidance)が公表されるまではApplicable Personには当たらないことになる。パートナーシップはなぜ法人や信託みたいにCapital InterestまたはProfits Interestの50%超をApplicable Personに所有されているケースとかしないんだろうって思うかもしれいけど、おそらく持分の認定を704ベースとかで判断するのは難しいし、パススルーなんでパートナー自身がApplicable Personだったらいずれにしても他の定義でカバーされるっていうことで、仮に外国パートナーシップ自体がApplicable Personかどうか不明でも、パートナーがApplicable Personだったら外国パートナーシップからAllocationされる米国課税対象所得にはパートナーが直接受け取ったかのようにsection 899の適用があるっていうことに見える。
財務省による免除権限
実はApplicable Personの定義に、全てのタイプのApplicable Personに関して「Except as otherwise provided by the Secretary」っていう例外が規定されている。ここで言うSecretaryは財務長官のこと。つまり上に列挙した者でも財務長官権限で「Applicable Personではない」っていう指定が可能なことになる。例外規定なんで法文解釈の「いろは」的に狭義に解釈し、例外が公表されるまでは例外はないってことだけど、これはランダムにこの人はOKというような例外じゃなくて、問題国がUnfair Foreign Taxesを撤廃する手続き中とかの状況に認められるタイプの緩和措置っていうのが趣旨だろう。
ということで次回は下院法案バージョンの付加税対象タイプの税金に関して。上院の動向次第でテーマ変わるかもしれないけどね。
Saturday, June 7, 2025
Section 899最大の難関「Byrd Rule」Parliamentarianから合格通知
う~ん、section 899、Super-BEAT、OECD De-funding等の対抗策は2024年の選挙で共和党がTrifactaになったら現実的って2023年当時から警鐘を鳴らし続けたけど、世間では全然Catch-Onしなくて(苦笑)、今になってメインストリームメディアとかが「section 899が…」とか条文番号にまで言及して大騒ぎしてるんでなんだかな~って感じ。米国ではsection 899は「Revenge Tax」っていう俗称が一般化してる始末。
Section 899は予算調整法(Byrd Rule)の範囲内?
Mega-Billを上院共和党が可決できるかどうか以前にsection 899やMega-Billに盛り込まれている規則の一部にはテクニカルなチャレンジがある。予算調整法って言う特別な手続きで上院を可決させることができる内容の規定かどうかっていう点を取り締まるByrd Ruleだ。Byrd Ruleは上院60票の代わりに単純多数決の50票超(議員投票で50の場合はVPのバンスがCasting Vote)での可決が許されるための条件を規定してるルール。上院可決時のルールなんで、元々多数決で法案を通す下院には直接関係ない世界。ただ下院としても上院で予算調整法スコープ外でキックアウトされるような法案を可決しても時間の無駄なんで当然そうならないよう配慮する。
Section 899に関しては主に2つの論点があり得て、1つ目は条約をオーバーライドしてしまうことで税法の範疇よりも外交ポリシー達成を主たる目的としてるんで予算調整法では制定できないんではっていう点、もう1つは予算調整法は法律が歳入・歳出に影響する必要があり、また10年間のBudget Windowを超えて赤字を計上してはいけないっていう点。以前のポスティングで触れた通り、Section 899下院法案バージョンではこの辺りを十分に加味して、1月に提出されたバージョンと異なり付加%は条約レートからスタートさせるっていう配慮を見せ、歳入・歳出面に関しては長期間に亘る財務長官の交渉規定を撤廃、財務省の検討を待たずにUTPR、DST、DPTをUnfair Foreign Taxesと明記し歳入のScoreを容易にしている。それを受けてJoint Committee of Taxationは10年間のBudget Windowで$161Bの歳入があるってScoreしてる。ただ2034年には$8B程度のマイナスに転じるってJCTは言ってるんで、そのままマイナスが続くとBudget Windowを超える期間の赤字がBudget Window内の黒字$161Bを超えてしまってByrd Rule違反ではっていうリスクもある。ただ、161対8だからその後20年掛けて2055年にはネットで赤字転落…っていうようなほぼ意味のない数字を基にNGになるリスクは少ない。Budget Windowで$161Bプラスっていうのは他の規定との比較においてもかなり立派な歳入源。
Byrd Rule違反かどうか誰が判断?
法案のどの規定がByrd Rule違反で予算調整法内で可決不可かっていう判断は上院のParliamentarianって呼ばれる人物が行う。Parliamentarianは一人だけだから凄い権力で、Elizabeth MacDonoughが2012年から10年以上君臨している。このParliamentarianの判断はなかなか油断大敵で例えばInflation Reduction Act審議時点でもPrivate Insurance MarketのPrescription Drug Priceがインフレ率よりも高騰する点を規制する条項は「歳入インパクトは単に付随的で、主にポリシー設定が目的」っていう理由でキックアウトされている。Section 899も上述の通り外交ポリシー設定が主目的って位置付けられると同じようなうきめにあうリスクが存在する。週末を迎える段階では現時点でParliamentarianからsection 899に関してネガティブな話しは伝わっている形跡はなく、何か問題があるんだったら何らかの前触れがあるだろうから下院が可決したバージョンは工夫されてるんでセーフでは?っていうのが大概の見方だった。
そして結果は?
週末のプレスによるとParliamentarianは少なくとも条項そのものをキックアウトするような理由はないって判断したようでこのまま上院の審議対象OKっていう合格通知が届いたようだ。細部で修正が求められる可能性は残るものの手続き的に致命傷を負うことなく進むことになった。
大領領および財務省は完全にバックアップしているんでWall Street系の懸念がどの程度上院に響くかがキー。Wall Streetって言えば、メディアのWSJは「Revenge Tax」は理に適ってて解決策はいとも簡単、すなわち外国が米国を差別しているUTPRやDSTを撤回すればいいだけでシンプルだから可決すればいいとバッサリ。
上院Finance Committeeのマークアップの初版が早ければ週末または週明けには公開されるっていう噂があるんでsection 899ばかりじゃなくエネジークレジットの撤廃タイミングやSALTの対処も目が離せないね。
Section 899は予算調整法(Byrd Rule)の範囲内?
Mega-Billを上院共和党が可決できるかどうか以前にsection 899やMega-Billに盛り込まれている規則の一部にはテクニカルなチャレンジがある。予算調整法って言う特別な手続きで上院を可決させることができる内容の規定かどうかっていう点を取り締まるByrd Ruleだ。Byrd Ruleは上院60票の代わりに単純多数決の50票超(議員投票で50の場合はVPのバンスがCasting Vote)での可決が許されるための条件を規定してるルール。上院可決時のルールなんで、元々多数決で法案を通す下院には直接関係ない世界。ただ下院としても上院で予算調整法スコープ外でキックアウトされるような法案を可決しても時間の無駄なんで当然そうならないよう配慮する。
Section 899に関しては主に2つの論点があり得て、1つ目は条約をオーバーライドしてしまうことで税法の範疇よりも外交ポリシー達成を主たる目的としてるんで予算調整法では制定できないんではっていう点、もう1つは予算調整法は法律が歳入・歳出に影響する必要があり、また10年間のBudget Windowを超えて赤字を計上してはいけないっていう点。以前のポスティングで触れた通り、Section 899下院法案バージョンではこの辺りを十分に加味して、1月に提出されたバージョンと異なり付加%は条約レートからスタートさせるっていう配慮を見せ、歳入・歳出面に関しては長期間に亘る財務長官の交渉規定を撤廃、財務省の検討を待たずにUTPR、DST、DPTをUnfair Foreign Taxesと明記し歳入のScoreを容易にしている。それを受けてJoint Committee of Taxationは10年間のBudget Windowで$161Bの歳入があるってScoreしてる。ただ2034年には$8B程度のマイナスに転じるってJCTは言ってるんで、そのままマイナスが続くとBudget Windowを超える期間の赤字がBudget Window内の黒字$161Bを超えてしまってByrd Rule違反ではっていうリスクもある。ただ、161対8だからその後20年掛けて2055年にはネットで赤字転落…っていうようなほぼ意味のない数字を基にNGになるリスクは少ない。Budget Windowで$161Bプラスっていうのは他の規定との比較においてもかなり立派な歳入源。
Byrd Rule違反かどうか誰が判断?
法案のどの規定がByrd Rule違反で予算調整法内で可決不可かっていう判断は上院のParliamentarianって呼ばれる人物が行う。Parliamentarianは一人だけだから凄い権力で、Elizabeth MacDonoughが2012年から10年以上君臨している。このParliamentarianの判断はなかなか油断大敵で例えばInflation Reduction Act審議時点でもPrivate Insurance MarketのPrescription Drug Priceがインフレ率よりも高騰する点を規制する条項は「歳入インパクトは単に付随的で、主にポリシー設定が目的」っていう理由でキックアウトされている。Section 899も上述の通り外交ポリシー設定が主目的って位置付けられると同じようなうきめにあうリスクが存在する。週末を迎える段階では現時点でParliamentarianからsection 899に関してネガティブな話しは伝わっている形跡はなく、何か問題があるんだったら何らかの前触れがあるだろうから下院が可決したバージョンは工夫されてるんでセーフでは?っていうのが大概の見方だった。
そして結果は?
週末のプレスによるとParliamentarianは少なくとも条項そのものをキックアウトするような理由はないって判断したようでこのまま上院の審議対象OKっていう合格通知が届いたようだ。細部で修正が求められる可能性は残るものの手続き的に致命傷を負うことなく進むことになった。
大領領および財務省は完全にバックアップしているんでWall Street系の懸念がどの程度上院に響くかがキー。Wall Streetって言えば、メディアのWSJは「Revenge Tax」は理に適ってて解決策はいとも簡単、すなわち外国が米国を差別しているUTPRやDSTを撤回すればいいだけでシンプルだから可決すればいいとバッサリ。
上院Finance Committeeのマークアップの初版が早ければ週末または週明けには公開されるっていう噂があるんでsection 899ばかりじゃなくエネジークレジットの撤廃タイミングやSALTの対処も目が離せないね。
Wednesday, June 4, 2025
ついにOECD資金拠出撤回法案+Section 899等審議動向
いよいよ上院が休会から戻ってきたんで今週からMega-Bill上院審議開始。既にArmed Services等の物議を醸しにくいCommitteeは自分担当部分のMega-Bill上院版を完成させつつあるっていう話し。
Rescission Bill
一旦予算化された歳出を議会が法律で撤回する手続きをRescissionって言うけど、DOGEが見つけた無駄使いとかで既に予算化されている支出を取り消すためのRescission Bill法案が大統領府から議会に提出されるってホワイトハウスが数日前から言ってた。Rescission Billは予算化(Appropriation)した議会からでも予算を使う立場にある行政府(Executive Branch)の長である大統領からでもどちらも提出できる。で、それが現実に提出されたんだけど、法案では他の多くの撤回に混ざって予算化されていたUN等の国際機関に対する計$437M全額撤回されている。UNとかと並びOECDへの拠出も全額De-Fundが提案されている。ちなみにダボスで有名なWorld Economic Forum(WEF)は近年いろんなスキャンダルが報道されてたり会長が辞任に追い込まれたりって報道されてるけど、このWEFに対する資金供与取り消しも入ってる。WEFってMAGA系や一般PeopleからはOut-of-touchなグローバルエリートの象徴みたいに言われることが多いんで米国が資金拠出を予算化してたことの方が不思議に見えたけど、考えてみれば選挙前に拠出が決まってたのを取り消すっていうことなんだね。政権変わったんで既に拠出は終わってるって勘違いしてた。
OECDのDe-Fundingの動きは数年前からあって何回かポスティングしたことがあるんでそれ自体驚きはない。OECDの予算の結構なポーション(20%程度?)を米国が負担してるって聞いてるんで、にもかかわらず世界を巻き込んでピラー2とかで米国の国家主権を侵害して不快っていう話しも以前からの共和党のスタンス。ただ、共和党Trifectaの状態になってるんで、昨年の予算段階では民主党多数の上院を通らなかった環境と異なり、今回は資金拠出停止が現実になる可能性がある点、以前とは迫力が異なる。
Mega-Bill上院審議
Medicaid、エネジークレジット、SALT控除とか具体的な争点は多岐に亘るけど、いくつか大枠のダイナミクスがあるとするとまず下院リーダーシップ。上院の話ししてんじゃないの?って思うかもしれないけど上院が審議のたたき台となる下院法案はMagic Johnsonの「綱渡り状態の離れ業」で際どく可決に漕ぎつけたもの。したがって下院Mega-Bill法案の内容をあまり大きく変えると、その後の両院一致法案とする際の下院審議がまたしてもドラマチックに困難になるリスク大。このリスクはRealなんで「上院による修正は最低限に…。Delicate balanceを崩さずに」っていうのが下院リーダーシップの願い。この願いはいくらMike JohnsonがMagic Johnsonと言われてももちろん実は生身の人間で本当の魔法使いじゃないんで下院リーダーシップにとってはかなり切実なもの。にもかかわらず本来一番法案を通したいトランプがTruth Socialで「上院は好きにするだろう」みないなコメントをしたりして下院リーダーシップは冷や冷やものだろう。Truth Socialのあのコメントは普通のポリティシャンだったら絶対に敢えて書かないだろう。まあそこがトランプなんだろうね。
もうひとつは(今度こそ上院の)Deficit Hawk派。Rand Paul (R-KY)とRon Johnson (R-WI)の2人は一貫して財政赤字反対だから今のMega-Bill法案では賛成票には数え難い。せめてコロナ前の歳出レベルに戻すべきっていうのが彼らの主張。危機がある毎に政府が大きくなって危機が終わっても小さくならないから累積赤字がここまでの状態になってるんでこの主張はもっともに聞こえるけど普通の議員は歳出減には常に腰が引けるんでなかなか歳出を減らすことはできない。
PaulやJohnsonに比べるともう少し弾力的に対応する余地があるような気もするけど、Mike Lee (R-UT)やRick Scott (R-FL)もいる。ただもっと手ごわいのは実はMitch McConnell (R-KY)、Lisa Murkowski (R-AK)、そしてSusan Collins (R-ME)っていう話しもある。MurkowskiやCollinsはDeficit Hawk派とは真逆の理由で賛成できないんだろうけど、第一期トランプ政権時からトランプとは何かと意見が割れることが多かったんで票読み的にはなるほどねって感がある。McConnellは旧Establishmentの共和党の代表みたいな存在なんでMAGAとはそりが合わない。ただMega-Billのタックス部分の多くはMcConnellの関与も多かったTCJAの延長なんだけどね。McConnellの奥さんはトランプ1.0で交通省長官を務めたElaine Chaoだけど、去年だっけ、彼女のSisterがテキサスに所有する大きなランチに友人を招待して飲んだ後、Tesla運転して別邸に帰ろうとした際、自分のランチ敷地内にあるLake(池?)に暗闇の中落ちて水没してしまった事件はビックリだった。その後もMcConnellは転んで怪我したりして何かとついてない感じ。昔の影響力や政治力を知っているだけに…。
で、下院同様、上院も53対47っていう負けずに僅差だから最後はJDバンスがTie-Breakするとしても造反は3人まで。この線を死守できるかどうか水面下で交渉が始まってるって推測される。これらのDeficit Hawk派が更なる歳出減を要求すると、上院での審議が込み入るばかりでなく、仮に上院で何らかのコンセンサスが得られたとしても今度は修正された法案の下院側の受け入れでひと悶着ってなる。
Cut v Saving
ちなみにDCでのやり取りを見てると、税法そのものは共和党Finance Committeeメンバーが既に大概の方向性を決めてて下院法案と大枠歩調を合わせるっていうような話しがある一方、他の部分、特にMedicaid等のプログラムに関しては更なる歳出減(Cut)がないとDeficit Hawk派は賛成に至らず、1票ほどショートするのではってような憶測が多い。ちなみにこれらのプログラムの歳出カットを語る際、共和党リーダーシップは「Cut」ではなく「Saving」って形容するトレンドがある。そんなの同じじゃんって思うかもしれないけど、プログラム創設の趣旨的に本来恩典があるべき市民のベネフィットは削ることなく、無駄使い、不正や濫用を最小限にするっていうアプローチを強調するため、一般市民のから徴収した税金の無駄使いをSaveするっていう意味。
他にも連邦政府に通常の市民感覚、Common Senseではチョッと想像し難い(ただ、外交とかのIntricateなポリティクスは一般Peopleには理解し難いんでどこまでの支出が米国の利益でどこからが私欲や無駄使いなのかは各自のイデオロギーによるところが大きいよね)巨額の不要な支出、不正、濫用が明らかになってるけど、それらをどこまで法律でFixする規律があるかどうかがキーだろう。OECD資金拠出取り消しのRescission Billは既に予算化されている拠出の撤回だけど、Mega-Billみたいに今後の支出を左右する法案に関して、共和党議員の多くが厳しい票を投じる勇気がない場合、DC系のニュースサークルでチラッと聞いたのは、一旦議会が予算を決めた後、行政府・ホワイトハウスが施行時により低いコストで目的を達成したら差額は議会のRescission可決を経ることなく節約した額を大統領権限で歳出減とすることができるっていう趣旨の文言をMega-Billに盛り込むっていう新案。これだと弱気の共和党議員はハードな票を入れなくてもいい一方、トランプ政権はこの手の歳出減に何の躊躇もないのでガンガンSaveしてくれるのでは、っていう期待で下院法案に大きな変更を加えない状態でConferenceに持ち込むっていうアイディアのようだ。ただ、こんな手法じゃないと膨張し切った歳出もカットできないのは議会的に情けないっていうかArticle 1の義務を市民に負ってる意識が十分じゃない気もするけどね。無駄使いをSaveしたら市民の評価は高いって思うんだけど、その審判を仰ぐ気概もないのかもね。
Section 899は?
下院Section 899法案に対する反対派はいわゆるWall Streetタイプからが多く、米国へのCapital Flowに悪影響があるから好ましくないっていう理由。国の借金が多額な中、さらに外国人が国債を含む米国資産購入を控えるんじゃないかって結構慌て気味。それを受けてビジネス系のニュースサイクルも「ただでさえTreasury Bondが不調なのに…」っていうような論調もあるけど、この4年借金が一気に倍近くになっても余り騒いでなかったのに今更って感じも。Secton 899がなければいつまで借り続けることができるって考えてたんだろうね。Section 899あってもなくても時間の問題って感じはあったんだけど。以前のポスティングで触れたドルのReserve CurrencyとResource Curseの問題だ。
Capital Flowに関してはひとつ救いの手が差し伸べられてる。下院から上院に送付された法案Textに添付されていた下院Budget Committeeには面白いFootnoteが付いてて、そこにはPortfolio Interestに代表される米国内法で非課税と規定される投資所得に関しては5%付加税の対象にはならないって明記してる。この点は条文からは明確じゃない(1月の899案のポスティングで触れたよね)。一方で条約で免税になっているものは本来課税なのでこれとは異なり付加税の対象だそう。え~じゃあBondの金利とか大丈夫じゃんって、これでWall Streetも一安心?Ways and Meansも今日新たなプレスリリースで899に対するパニック反応に対抗するコメントを公表している。
肝心の上院では下院Section 899法案に対して今のところ特に目立った拒絶反応は聞かれない。John Thuneも上院は上院の考えがある的な発言はしているものの899に特化したコメントはない。もっと争点となる大物があるし、Deficit Hawk派との交渉も考えると敢えて$161Bの歳入源ってScoreされてる貴重な規則を廃止するだろうか。ただ、Joint Committeeは10年間のBudget Windowでは$161Bの歳入プラス効果だけど、後半2年(2034年とか)だけに限定してみるとは投資減によるマイナス効果で逆にいくらか歳入が減るって予測してる。ただ、この手のScoreは当たらないし、ましてや2034年に「まだこれだけの国がUTPRを維持してるか…」とか当然不明だからかなりいい加減というかEducated Guessの域を出ない。
ということで現状アップデートでした。
Rescission Bill
一旦予算化された歳出を議会が法律で撤回する手続きをRescissionって言うけど、DOGEが見つけた無駄使いとかで既に予算化されている支出を取り消すためのRescission Bill法案が大統領府から議会に提出されるってホワイトハウスが数日前から言ってた。Rescission Billは予算化(Appropriation)した議会からでも予算を使う立場にある行政府(Executive Branch)の長である大統領からでもどちらも提出できる。で、それが現実に提出されたんだけど、法案では他の多くの撤回に混ざって予算化されていたUN等の国際機関に対する計$437M全額撤回されている。UNとかと並びOECDへの拠出も全額De-Fundが提案されている。ちなみにダボスで有名なWorld Economic Forum(WEF)は近年いろんなスキャンダルが報道されてたり会長が辞任に追い込まれたりって報道されてるけど、このWEFに対する資金供与取り消しも入ってる。WEFってMAGA系や一般PeopleからはOut-of-touchなグローバルエリートの象徴みたいに言われることが多いんで米国が資金拠出を予算化してたことの方が不思議に見えたけど、考えてみれば選挙前に拠出が決まってたのを取り消すっていうことなんだね。政権変わったんで既に拠出は終わってるって勘違いしてた。
OECDのDe-Fundingの動きは数年前からあって何回かポスティングしたことがあるんでそれ自体驚きはない。OECDの予算の結構なポーション(20%程度?)を米国が負担してるって聞いてるんで、にもかかわらず世界を巻き込んでピラー2とかで米国の国家主権を侵害して不快っていう話しも以前からの共和党のスタンス。ただ、共和党Trifectaの状態になってるんで、昨年の予算段階では民主党多数の上院を通らなかった環境と異なり、今回は資金拠出停止が現実になる可能性がある点、以前とは迫力が異なる。
Mega-Bill上院審議
Medicaid、エネジークレジット、SALT控除とか具体的な争点は多岐に亘るけど、いくつか大枠のダイナミクスがあるとするとまず下院リーダーシップ。上院の話ししてんじゃないの?って思うかもしれないけど上院が審議のたたき台となる下院法案はMagic Johnsonの「綱渡り状態の離れ業」で際どく可決に漕ぎつけたもの。したがって下院Mega-Bill法案の内容をあまり大きく変えると、その後の両院一致法案とする際の下院審議がまたしてもドラマチックに困難になるリスク大。このリスクはRealなんで「上院による修正は最低限に…。Delicate balanceを崩さずに」っていうのが下院リーダーシップの願い。この願いはいくらMike JohnsonがMagic Johnsonと言われてももちろん実は生身の人間で本当の魔法使いじゃないんで下院リーダーシップにとってはかなり切実なもの。にもかかわらず本来一番法案を通したいトランプがTruth Socialで「上院は好きにするだろう」みないなコメントをしたりして下院リーダーシップは冷や冷やものだろう。Truth Socialのあのコメントは普通のポリティシャンだったら絶対に敢えて書かないだろう。まあそこがトランプなんだろうね。
もうひとつは(今度こそ上院の)Deficit Hawk派。Rand Paul (R-KY)とRon Johnson (R-WI)の2人は一貫して財政赤字反対だから今のMega-Bill法案では賛成票には数え難い。せめてコロナ前の歳出レベルに戻すべきっていうのが彼らの主張。危機がある毎に政府が大きくなって危機が終わっても小さくならないから累積赤字がここまでの状態になってるんでこの主張はもっともに聞こえるけど普通の議員は歳出減には常に腰が引けるんでなかなか歳出を減らすことはできない。
PaulやJohnsonに比べるともう少し弾力的に対応する余地があるような気もするけど、Mike Lee (R-UT)やRick Scott (R-FL)もいる。ただもっと手ごわいのは実はMitch McConnell (R-KY)、Lisa Murkowski (R-AK)、そしてSusan Collins (R-ME)っていう話しもある。MurkowskiやCollinsはDeficit Hawk派とは真逆の理由で賛成できないんだろうけど、第一期トランプ政権時からトランプとは何かと意見が割れることが多かったんで票読み的にはなるほどねって感がある。McConnellは旧Establishmentの共和党の代表みたいな存在なんでMAGAとはそりが合わない。ただMega-Billのタックス部分の多くはMcConnellの関与も多かったTCJAの延長なんだけどね。McConnellの奥さんはトランプ1.0で交通省長官を務めたElaine Chaoだけど、去年だっけ、彼女のSisterがテキサスに所有する大きなランチに友人を招待して飲んだ後、Tesla運転して別邸に帰ろうとした際、自分のランチ敷地内にあるLake(池?)に暗闇の中落ちて水没してしまった事件はビックリだった。その後もMcConnellは転んで怪我したりして何かとついてない感じ。昔の影響力や政治力を知っているだけに…。
で、下院同様、上院も53対47っていう負けずに僅差だから最後はJDバンスがTie-Breakするとしても造反は3人まで。この線を死守できるかどうか水面下で交渉が始まってるって推測される。これらのDeficit Hawk派が更なる歳出減を要求すると、上院での審議が込み入るばかりでなく、仮に上院で何らかのコンセンサスが得られたとしても今度は修正された法案の下院側の受け入れでひと悶着ってなる。
Cut v Saving
ちなみにDCでのやり取りを見てると、税法そのものは共和党Finance Committeeメンバーが既に大概の方向性を決めてて下院法案と大枠歩調を合わせるっていうような話しがある一方、他の部分、特にMedicaid等のプログラムに関しては更なる歳出減(Cut)がないとDeficit Hawk派は賛成に至らず、1票ほどショートするのではってような憶測が多い。ちなみにこれらのプログラムの歳出カットを語る際、共和党リーダーシップは「Cut」ではなく「Saving」って形容するトレンドがある。そんなの同じじゃんって思うかもしれないけど、プログラム創設の趣旨的に本来恩典があるべき市民のベネフィットは削ることなく、無駄使い、不正や濫用を最小限にするっていうアプローチを強調するため、一般市民のから徴収した税金の無駄使いをSaveするっていう意味。
他にも連邦政府に通常の市民感覚、Common Senseではチョッと想像し難い(ただ、外交とかのIntricateなポリティクスは一般Peopleには理解し難いんでどこまでの支出が米国の利益でどこからが私欲や無駄使いなのかは各自のイデオロギーによるところが大きいよね)巨額の不要な支出、不正、濫用が明らかになってるけど、それらをどこまで法律でFixする規律があるかどうかがキーだろう。OECD資金拠出取り消しのRescission Billは既に予算化されている拠出の撤回だけど、Mega-Billみたいに今後の支出を左右する法案に関して、共和党議員の多くが厳しい票を投じる勇気がない場合、DC系のニュースサークルでチラッと聞いたのは、一旦議会が予算を決めた後、行政府・ホワイトハウスが施行時により低いコストで目的を達成したら差額は議会のRescission可決を経ることなく節約した額を大統領権限で歳出減とすることができるっていう趣旨の文言をMega-Billに盛り込むっていう新案。これだと弱気の共和党議員はハードな票を入れなくてもいい一方、トランプ政権はこの手の歳出減に何の躊躇もないのでガンガンSaveしてくれるのでは、っていう期待で下院法案に大きな変更を加えない状態でConferenceに持ち込むっていうアイディアのようだ。ただ、こんな手法じゃないと膨張し切った歳出もカットできないのは議会的に情けないっていうかArticle 1の義務を市民に負ってる意識が十分じゃない気もするけどね。無駄使いをSaveしたら市民の評価は高いって思うんだけど、その審判を仰ぐ気概もないのかもね。
Section 899は?
下院Section 899法案に対する反対派はいわゆるWall Streetタイプからが多く、米国へのCapital Flowに悪影響があるから好ましくないっていう理由。国の借金が多額な中、さらに外国人が国債を含む米国資産購入を控えるんじゃないかって結構慌て気味。それを受けてビジネス系のニュースサイクルも「ただでさえTreasury Bondが不調なのに…」っていうような論調もあるけど、この4年借金が一気に倍近くになっても余り騒いでなかったのに今更って感じも。Secton 899がなければいつまで借り続けることができるって考えてたんだろうね。Section 899あってもなくても時間の問題って感じはあったんだけど。以前のポスティングで触れたドルのReserve CurrencyとResource Curseの問題だ。
Capital Flowに関してはひとつ救いの手が差し伸べられてる。下院から上院に送付された法案Textに添付されていた下院Budget Committeeには面白いFootnoteが付いてて、そこにはPortfolio Interestに代表される米国内法で非課税と規定される投資所得に関しては5%付加税の対象にはならないって明記してる。この点は条文からは明確じゃない(1月の899案のポスティングで触れたよね)。一方で条約で免税になっているものは本来課税なのでこれとは異なり付加税の対象だそう。え~じゃあBondの金利とか大丈夫じゃんって、これでWall Streetも一安心?Ways and Meansも今日新たなプレスリリースで899に対するパニック反応に対抗するコメントを公表している。
肝心の上院では下院Section 899法案に対して今のところ特に目立った拒絶反応は聞かれない。John Thuneも上院は上院の考えがある的な発言はしているものの899に特化したコメントはない。もっと争点となる大物があるし、Deficit Hawk派との交渉も考えると敢えて$161Bの歳入源ってScoreされてる貴重な規則を廃止するだろうか。ただ、Joint Committeeは10年間のBudget Windowでは$161Bの歳入プラス効果だけど、後半2年(2034年とか)だけに限定してみるとは投資減によるマイナス効果で逆にいくらか歳入が減るって予測してる。ただ、この手のScoreは当たらないし、ましてや2034年に「まだこれだけの国がUTPRを維持してるか…」とか当然不明だからかなりいい加減というかEducated Guessの域を出ない。
ということで現状アップデートでした。
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