Saturday, August 4, 2007

FIN 48(5) グレーな申告ポジションのその後の「運命」

*FIN 48の「累積効果」の管理

一旦FIN 48に基づき認識されたグレーなポジションはその後の展開次第でいろいろな運命をたどることとなる。すなわち、一旦認識された税効果もその後の不利な情報が出てくれば見直しの対象となり、将来の年度でFIN 48負債の対象となるケースもある。これは「Subsequent De-Recognition」と呼ばれる。逆にFIN 48負債の対象となっていたポジションが急に息を吹き返し、税効果が認められる「Subsequent Recognition」となることもある。また、Recognition自体に変更はない場合でもFIN 48負債の金額に調整を加える必要が生じる「Subsequent Measurement」という局面もあり得る。具体的な展開としては次のようなパターンがある。

*時効の成立

連邦法人税の時効は通常申告書提出から3年である。したがって、FIN 48に基づきグレーなポジションを計上したにも係らず税務調査がなく時が経過した場合、FIN 48負債は結果として実現しなかったということになり、その時点で繰り戻される。負債が消えるため、Income Statementには「クレジット」のタックス費用(すなわちTax Benefit)が認識される。この時点で決算書上の「Current」部分のタックス費用は累計ベースで申告書上認識された金額に同一となる。

*新たな法律、事実関係に基づく「Recognition」「De-Recognition」または「Measurement」の変更

過年度に認識されたグレーなポジションに関して新たな法律(判例、通達等を含む)が発表された場合にはポジションを見直すことができる。また、事実関係に係る新たな展開、例えば移転価格に係るAPA交渉の進展、があった場合にも当然ポジションの見直しが行われる。また逆に、過年度には税効果を認めていたポジションに関して新たな法律、事実関係が明らかになった場合のも、当然その時点で過去の「Recognition」または「Measurement」を見直し、必要であれば適切なFIN 48負債計上が求められる。 

*税務調査、不服申請等のプロセスによる合意

税務調査およびその後の不服申請、訴訟等でポジションに対してIRS等と合意をみた場合には、合意した金額に基づく税効果を認め、過去に認識されたFIN 48負債との差額が調整される形で負債は実現される。

*後発事象取り込みのタイミング

上のいずれの後発事象の影響も、「決算日(Reporting Date)」に存在する情報に基づいて決定される。したがって、第一四半期の終了時点(例 3月31日)ではRecognitionされると判断されたポジションに関して、4月初旬に同様のケースで不利な判例が発表された場合には、その時点で第一四半期の決算が発表されていないとしても、第一四半期の決算は「Recognitionがされたまま」の状態に据え置かれ、不利な判例の効果(おそらくSubsequent De-Recognition)は判例の情報が入手された第二四半期に反映される。

また、過年度のポジションの見直しは「新たな情報(法律、事実関係その他)」に基づく必要があり、過去に存在した情報と同じものを「再度検討」した結果に基づいてはならない。

このように単年毎にグレーな申告ポジションを見極めた後はその後の変動を管理する必要がある。前回のポスティングで触れた通り、これは一般に「Roll-Forward」スケジュールと呼ばれるエクセルのような計算表で管理される。SFAS109下での繰延税金の管理がバランスシート・アプローチであることから、繰延税金に関して同様のRoll-Forwardスケジュールを作成しているケースが多く、形態としては似たようなものとなる。既に多忙な決算担当者にとっては年々作業負担が重くなっていくことは間違いない。

次回のポスティングではFIN 48の適用時のその他の注意点について触れたい。