2007年には多くのポスティングをFIN 48関連に割いたが、その先行きがまた怪しくなってきた。というのも非上場企業に対するFIN 48の適用一年延期をFASBに勧告して認められたPCFRCが今度は「非上場企業にはFIN 48の適用を永遠に見合わせるべきだ」との勧告を行ったからだ。これは実質、非上場企業に関して言えばFIN 48撤廃ということになる。適用一年延期に関しては2007年11月8日の「FIN 48の非上場企業への適用ついに一年延期」を参照のこと。
*PCFRC
PCFRCに関してはFIN 48一年延期の際にも触れたが、これは「Private Company Financial Reporting Committee(PCFRC)」と呼ばれる非営利団体であり、非上場企業に係る会計原則適用の改善を図るためナントFIN 48を作成した「張本人」であるFASBそのものとAICPAが合同で発足させたものだ。その使命はFASBの作成する会計原則の非上場企業への適用法をFASBに推薦するというものである。そのPCFRCがFASBにFIN 48は非上場企業には適用するべきではないと勧告しているのだからただ事ではない。
*FIN 48は非上場企業には無用?
PCFRCでは一年延期を勧告した2007年後半以来、引き続き非上場企業に対するFIN 48適用のインパクトをリサーチしてきた。その結果分かったことは非上場企業の決算書の利用者にとってFIN 48下で求められる算定、開示全ては「ほぼ関心の対象外(Largely irrelevant)」だということだ。さらに、決算書の利用者にとって非上場企業が申告書でどのようなポジションを取っているかという点は意思決定を行う上でさして重要ではないという結果も出ている。
役に立たないばかりではない。多くの非上場企業の経営者および非上場企業にサービスを提供する会計士等にとってFIN 48を適用することは簡単ではなく、その作業はコストが高いという不満が浮き彫りになっている。さらに、多くの非上場企業がFIN 48の基準は無視して、その点に関してだけはGAAPに準じないというポジションを取るつもりであることも明らかになった。
これらのことから、有用性、費用対効果の観点からFIN 48は非上場企業には不適切であると結論付けられている。FIN 48のImplementationに関与した個人的な経験からもPCFRCのポイントは非上場企業に限って言えばかなり的を得ていると言える。
*非上場企業
非上場企業の定義は時としてややこしいが、SFAS 109を読むと「債券・株式が上場されていない事業主体」または「上場準備のためSEC等に決算書がファイルされていない事業主体」とされている。さらに2008年2月1日に公開されたFASB Staff Position (FSP)では、子会社が非上場で親会社が上場している場合でも「親会社が米国GAAPで決算書を作成していない」場合には子会社は非上場企業と考えていいとしている。したがって、多くの日本企業の米国現地法人がFIN 48目的では非上場企業となる。
*FASBの反応は?
FASBの反応は今後のミーティングを待つまで分からない。PCFRCは「もし不適用という勧告が受け入れられない場合には、期限ナシに延期を希望する」としている。期限ナシの延期はFASBが国際会計基準(IFRS)の急速な浸透に対して米国GAAPをどう整合化していくかという作業を通じてFIN 48のメリットが検証されるまでを目処とするべきとしている。一年延期と異なり、すんなりと勧告が受け入れられるかどうかは不明だ。今後の進展が興味深い。
*IFRSとFIN 48
IFRSにも当然決算書上のタックス費用の計算を規定するセクションはあるがもちろんFIN 48はない。IFRSが急速に認知される中、FASBはSFAS 109の改訂を準備していると言われている。SFAS 109とIFRSの差異をできるだけ少なくするためだ。しかし、その改訂後も当面はFIN 48は残ると見られており、米国GAAPを使用する限り(不適用がFASBに認められない場合、または上場企業の場合は)しばらくはFIN 48と付き合わざるを得ない。その意味でさっさとIFRSに移行するのが得策と判断する企業も出てくるであろう。