前回から国際課税制度移行時の特別規定となる「留保所得一括課税」に関して触れ始めたが、ちょうど、昨日(2018年8月1日)、一括課税にかかわる財務省規則案が公表された。この規則案、今回の税制改正にかかわる財務省規則としては初のものとなる。規則案は前文113ページ、主文136ページ、計249ページ、と予想はしていたけど膨大だ。2年前の過少資本規則518ページも読めたんだから、その半分と考えれば今回も読み込めるはず、って自分に言い聞かせないとね。
で、この手の規則には、「書類作成負担軽減法」とか訳されることがある米国の「Paperwork Reduction Act」に基づいて、規則対応に各納税者がどれだけの時間を費やす必要があると推定されるか、っていう時間数が記載されている。いつも笑っちゃうけど、Section 965の一括課税対応に費やされる推定時間はナント納税者当り「5時間」だそうだ。250ページの規則を発行しておいて5時間っていうのは大胆だ。
規則案の内容そのものは過去の複数のNoticeから予想されたものが多い。一点、興味深かったのは、留保所得一括課税で課税済み留保所得となった金額を原資として、後日外国法人が米国株主に分配を行い、源泉税が課せられる際の外国税額控除の取り扱い。規則案によると税額控除の対象とはなるけど(それは960があるので当然そのはず)、源泉税のうち外国税額控除の対象となる金額は、一括課税時に税額控除対象となる法人税を減額した際の「Applicable %」で同様に減額するというもの。そうなるんじゃないかな、っていう憶測はあったけど、業界の集まりに来る財務省やIRSの重鎮が全額取らせてあげてもいいんじゃないか、というような趣旨の発言をしているのを聞いたことがあったので変な期待が頭の片隅に残っていた。でも、やっぱり減額だったね。まあ、低税率で課税済みになってる留保所得を原資としているのでしょうがないね。
いきなり財務省規則案を深掘りしてもチョッと分かり難いかもしれないので、まずは一括課税規定の基礎から入って、適宜、規則案で補足されている部分に触れていきたい。
一括課税の基本的なアプローチは、留保所得をSubpart F所得と認定することで、米国株主側で課税所得として認識させるというもの。Subpart F所得とは、従来から税法に存在し、米国のCFC課税の対象となる一定の所得のことで、Subpart F所得となり例外規定の適用がないと、米国株主側で課税所得として認識しないといけない、というもの。
これはなかなかスマートなアプローチで、対象となる留保所得を明確に規定すれば、米国株主側の計算法、CFCの株式簿価の調整、その後の分配、外国税額控除などは既存の法律をそのまま流用することができる。もちろん必要に応じて既存の法律の考え方を変更もできる。したがって一括課税を規定しているSection 965では米国で課税する云々には直接触れられておらず、「Deferred Foreign Income Corporation」が認識している「Deferred Foreign Income」の2017年11月2日または12月31日時点のいずれか大きい残高額を当外国法人のSubpart F所得とする、と規定している。米国株主側の属性となるGILTIと異なり、Subpart Fは各CFCの属性と言えるので、外国法人のDeferred Foreign Incomeを各外国法人レベルでSubpart F所得と規定し、後は通常のSubpart F規定に準じて米国株主が他の(通常の)Subpart F所得同様に合算するという仕組み。
で、この基本的なフレームワークの次にくる規定が、マイナス留保所得の扱い。通常のSubpart F所得の世界では、米国株主はプラスのSubpart F所得を持つCFCから、所得のみを合算することになるけど、留保所得課税をSubpart F所得扱いする際の特別措置として、米国株主が少なくとも1社でもDeferred Foreign Income を持つ外国法人を持分を有し、また少なくとも一社マイナスのE&Pを持つ外国法人を持分を有する場合には、米国株主側で取り込むべきSubpart F扱いされる留保所得はマイナスE&Pの金額で減額することが認められる。
外国法人のマイナスE&Pを他の外国法人からフローしてくるSubpart F所得と、米国株主側で相対するという概念は、従来のSubpart F規定には存在しないので、この点に関しては多くの複雑な検討事項が必要となり、法律でも比較的詳細に規定されている。ここはチョッと長くなりそうなので次回、まとめて触れてみたい。
Friday, August 3, 2018
Tuesday, July 31, 2018
米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(2)
柄にもなく2回も売上税の話しで脱線してしまったけど、元々は米国の三権分立や判例主義の部分に興味があってどうしても触れておきたかった。三権分立は米国において連邦憲法で保障されている個人の自由にかかわる権利を守るための最重要システムだ。聞こえのいい憲法を持つことは簡単だけど、独裁者が憲法を無視して暴走しないためには強固な三権分立が不可欠だからね。という訳で、それはそれなんだけど、今回からはいよいよ満を持して、税制改正の国際課税に関して。今回の税制改正で一番大きなインパクトがあるのは、何と言ってもクロスボーダー課税の部分だから嫌でも長編にならざるを得ない。
前回の「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(1)」で「しつこく」触れたんで、既にメッセージは伝わってると思うけど、GILTIの導入を考えると、税制改正で米国がテリトリアル課税制度に移行したというのは、ウソとまでは言わないとしても、かなりの語弊がある。従来のDeferral制度が完全撤廃されたことは間違いはないけど、問題はその撤廃の仕方。CFCを含む10%特定外国法人からの配当は非課税になったので、米国もこれでめでたくテリトリアル課税制度の仲間入り、というのは表面的な見え方で、まず先に毎期毎期、GILTIによりCFC課税所得を強制的に米国株主側で所得認識させられるため、CFCの配当原資は毎期ほぼ課税済みとなってしまう。配当非課税で真のテリトリアル制度の恩典を享受できるのは、GILTIから免除されるCFCの償却対象動産の定額償却ベース簿価の10%ルーティンリターン所得のみ。これはかなり地味なテリトリアル制度と言わざるえを得ない。
GILTIに関しては、少なくとも機械的な計算ルールに関して、夏の後半、日本ではツクツクボウシが鳴き始める頃に規則案が出るらしいので、その際に詳細に触れたいが、GILTIの「I」と「L」には騙されないように。GILTIはGlobal Intangible Low-Taxed Incomeの略で「ギルティ―」(Guiltyみたいに)と発音されるけど、米国株主側で課税所得として合算が求められるCFCの所得はIntangibleから発生するものには限定されていない。CFCの課税所得(米国税法ベースで計算!)全額(一部の例外の除き)を米国株主側で合算課税する恐ろしいシステムだ。唯一対象外となり、すなわち真のテリトリアル制度の恩典対象となるのは、CFCの償却対象動産の定額償却ベース簿価の10%ルーティンリターン所得のみ。この額を超過する所得はみなしでIntangibleに帰属すると扱われる。
また、Low-Taxedと命名されているので、高税率国で事業展開するCFCはGILTI合算から免除されているのでは?、と勘違いしがちだけど、それも間違い。米国の従来のCFC課税であるSubpart F制度に規定される「High-Tax Exception」のようなものはGILTI規定には存在しない。Subpart Fと異なり、GILTI合算はMobilityが高かったり、その国に存在する意味がないような怪しげな所得のみが対象となる訳ではない。償却動産簿価の10%ルーティンリターン以外は全て問答無用に合算対象だ。
ではなぜGILTIは、まことしやかに「Low-Taxed」と命名されているかというと、米国株主側で、一旦CFC所得のみなしルーティング所得以外全額を合算した上で、50%のGILTI控除があったり、外国法人税のうちGILTIに適切に対応していると扱われる金額の80%がFTCとして認められるので、算数上は13.125%を超える法人税を現地で支払っていれば、GILTIを合算しても最終的に持ち出しとなる米国法人税はないというのが理由。「なんだ、13.125%だったらLow Taxじゃん」って思うかもしれないけど、これは全てがうまくいく際の理論的な算数。GILTI控除やFTCは米国株主側で課税所得が出ていないと取れないし、また課税所得が発生していても、米国株主側の経費をFTC算定時にGILTIバスケットに配賦してしまうと、GILTIに基づく米国法人税をFTCではきれいに消しきれないという問題がある。これは米国側の枠の問題なので、CFCが外国でどれだけ巨額の法人税を支払っていても関係ない。
となるとGlobal Intangible Low-Taxed Incomeの略のGILTIのうち、正しいのは最初の「G」と最後の「I」だけ?という驚愕の結果となる。Global Everything High-Taxed Incomeと名称変更すると「GEHTI」となってギルティ―がゲフティーになっちゃうね(笑)。
で、米国の新たな国際課税システムを部分的なテリトリアル課税と見るにしても、待ったなしの全世界 課税と見るにしても、従来のシステムに基づくDeferral制度から脱却したことだけは確か。で、この制度移行時に今まで外国に埋蔵されていた巨額の配当原資に従来の35%より低い税率で一括課税しようというのがSection 965の留保所得一括課税となる。今週にでも税制改正に基づく初となる一括課税にかかわる財務省規則案が公表されるのではないかと固唾を飲んで見守っている(大げさ?)最中というまさに今が旬の規定だ、税制改正に基づく新規定のほとんどは2018年課税年度から影響を持つけど、一括課税だけは2017年に取り込まれることが多いので他の規定に先行してガイダンスが必要となる。という訳で、まずは「一括課税」を題材に次回から引き続きUnplugしていきたい。
前回の「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(1)」で「しつこく」触れたんで、既にメッセージは伝わってると思うけど、GILTIの導入を考えると、税制改正で米国がテリトリアル課税制度に移行したというのは、ウソとまでは言わないとしても、かなりの語弊がある。従来のDeferral制度が完全撤廃されたことは間違いはないけど、問題はその撤廃の仕方。CFCを含む10%特定外国法人からの配当は非課税になったので、米国もこれでめでたくテリトリアル課税制度の仲間入り、というのは表面的な見え方で、まず先に毎期毎期、GILTIによりCFC課税所得を強制的に米国株主側で所得認識させられるため、CFCの配当原資は毎期ほぼ課税済みとなってしまう。配当非課税で真のテリトリアル制度の恩典を享受できるのは、GILTIから免除されるCFCの償却対象動産の定額償却ベース簿価の10%ルーティンリターン所得のみ。これはかなり地味なテリトリアル制度と言わざるえを得ない。
GILTIに関しては、少なくとも機械的な計算ルールに関して、夏の後半、日本ではツクツクボウシが鳴き始める頃に規則案が出るらしいので、その際に詳細に触れたいが、GILTIの「I」と「L」には騙されないように。GILTIはGlobal Intangible Low-Taxed Incomeの略で「ギルティ―」(Guiltyみたいに)と発音されるけど、米国株主側で課税所得として合算が求められるCFCの所得はIntangibleから発生するものには限定されていない。CFCの課税所得(米国税法ベースで計算!)全額(一部の例外の除き)を米国株主側で合算課税する恐ろしいシステムだ。唯一対象外となり、すなわち真のテリトリアル制度の恩典対象となるのは、CFCの償却対象動産の定額償却ベース簿価の10%ルーティンリターン所得のみ。この額を超過する所得はみなしでIntangibleに帰属すると扱われる。
また、Low-Taxedと命名されているので、高税率国で事業展開するCFCはGILTI合算から免除されているのでは?、と勘違いしがちだけど、それも間違い。米国の従来のCFC課税であるSubpart F制度に規定される「High-Tax Exception」のようなものはGILTI規定には存在しない。Subpart Fと異なり、GILTI合算はMobilityが高かったり、その国に存在する意味がないような怪しげな所得のみが対象となる訳ではない。償却動産簿価の10%ルーティンリターン以外は全て問答無用に合算対象だ。
ではなぜGILTIは、まことしやかに「Low-Taxed」と命名されているかというと、米国株主側で、一旦CFC所得のみなしルーティング所得以外全額を合算した上で、50%のGILTI控除があったり、外国法人税のうちGILTIに適切に対応していると扱われる金額の80%がFTCとして認められるので、算数上は13.125%を超える法人税を現地で支払っていれば、GILTIを合算しても最終的に持ち出しとなる米国法人税はないというのが理由。「なんだ、13.125%だったらLow Taxじゃん」って思うかもしれないけど、これは全てがうまくいく際の理論的な算数。GILTI控除やFTCは米国株主側で課税所得が出ていないと取れないし、また課税所得が発生していても、米国株主側の経費をFTC算定時にGILTIバスケットに配賦してしまうと、GILTIに基づく米国法人税をFTCではきれいに消しきれないという問題がある。これは米国側の枠の問題なので、CFCが外国でどれだけ巨額の法人税を支払っていても関係ない。
となるとGlobal Intangible Low-Taxed Incomeの略のGILTIのうち、正しいのは最初の「G」と最後の「I」だけ?という驚愕の結果となる。Global Everything High-Taxed Incomeと名称変更すると「GEHTI」となってギルティ―がゲフティーになっちゃうね(笑)。
で、米国の新たな国際課税システムを部分的なテリトリアル課税と見るにしても、待ったなしの全世界 課税と見るにしても、従来のシステムに基づくDeferral制度から脱却したことだけは確か。で、この制度移行時に今まで外国に埋蔵されていた巨額の配当原資に従来の35%より低い税率で一括課税しようというのがSection 965の留保所得一括課税となる。今週にでも税制改正に基づく初となる一括課税にかかわる財務省規則案が公表されるのではないかと固唾を飲んで見守っている(大げさ?)最中というまさに今が旬の規定だ、税制改正に基づく新規定のほとんどは2018年課税年度から影響を持つけど、一括課税だけは2017年に取り込まれることが多いので他の規定に先行してガイダンスが必要となる。という訳で、まずは「一括課税」を題材に次回から引き続きUnplugしていきたい。
Saturday, June 23, 2018
最高裁判例「オンラインショッピングと売上税」(2)
前回のポスティングで最高裁判所の判決「South Dakota v. Wayfair」に関して書き始めたけど、例によって米国の法律は複雑で、思ったより長くなってしまい、今回はその後半。
前回のポスティングで「Nexus」の話しに触れたけど、これは州による法的管轄権の行使可否を判断する基準のことで、連邦憲法のDue Process条項とかを拠り所に判断され、税金だけではなく、広範な法律適用時に重大な検討事項となる。例えば、民事裁判をどこの州で起こすことができるか、とか。自分に有利な思想の判事が多数を占めている特定の管轄区の裁判所に提訴したくても、被告人がその管轄区に何の関係も持たない場合、どこまでそれが認められるのか、というような問題。逆にこのようなForum Shoppingは裁判の戦略策定時の大きなポイントなんだけど。Civil ProcedureのPersonal JurisdictionとかSubject Matter Jurisdictionの問題で、米国でLaw School行ったり、Bar Exam受けたことある人にとっては、Evidenceと並んで気持ちが暗くなる科目のひとつだったんでは?Nexusがあるかどうかの検討は、州の法人税に関しても頻繁に行われるけど、同じ「Nexus」という用語を使っていても、その判断基準は売上税に対するケースと同じではない。
売上税に関して、今回の判決が出るまでは、販売者による売上税徴収義務は州内に「物理的な存在」を持つ納税者に対してのみ行使できる、というものだった。これは最高裁判所による1992年のランドマークケース「Quill Corp. v. North Dakota」の判例に基づく。今回その判例を覆したことになるけど、前回のポスティングの冒頭で触れた通り、先例拘束力の原則に基づく米国ではかなりの英断。ちなみに自分より上位にある裁判所による判例を覆すことは認められないので、最高裁判所の判例を覆すことができるのは最高裁判所自らのみということになる。
最高裁判所が下すケースの数と照らし合わせて見ると、Stare Decisisを踏襲せずに自らのケースを覆した件数は極めて少ない。大概、今回のケースのように元々の判断からかなりの年月が経過し、社会的な背景、状況が変わったことを受けての苦渋の判断というようなものが多い。米国は「法の支配」の国なので、判例は基本的に変わらないようにしないと法律そのものの信憑性が低下してしまう中での難しい判断だろう。
例えば、1905年に最高裁判所が下した「Lochnerケース」。パン焼きの職人さんの週当たりの労働時間を60時間までと制限したNY州労働法に対して、契約の自由、雇用の自由を侵害しているとして憲法違反とした判例だ。この最高裁判所の判例は、その後の州政府による労働法制定時の裁量を大きく制限する。例えば、1923年には、女性に対する最低賃金を保障したDCの労働法もLochnerケースを踏襲して違憲判断が下されている。
この二つの判例の法的な趣旨は全く同じ。すなわち、州が個人の労働契約に口を出すのは、雇う側、雇われる側双方に連邦憲法上保障されている自由を奪うというものだ。でも、その適用対象次第で受ける印象はチョッと異なる気がする。パン焼き職人の労働時間を制限してはいけません、と言われると、なるほど、パンを焼くのが3度の食事より好きな人に60時間超えてパンを焼いてはいけません、なんてことは国とか州に口出しされる筋合いはないよね、って思えるかもしれないけど、女性に最低賃金を規定してはいけません、って言われると、なんとなく「そうなの?」って感じの反応じゃないだろうか。
まあ、ともかく時は流れて1937年。ホテル勤務のメードさんが提訴して何と最高裁判所まで行った「West Coast Hotel v. Parrish」ケース。最高裁判所はLochner判決を覆し、最低賃金を保障するワシントン州労働法を容認している。「契約の自由は絶対的なものではなく、労働者の健康や安全を保障する目的の州法は憲法違反ではない」という趣旨に時代の流れと共に移り変わっていった。最高裁判所は上告されてくるケースの極一部を自らの裁量で取り上げるかどうか決めることが出来る点は以前も触れたけど、判例を覆す必要性を感じ始めると、それを実行する、または過去の判例を引き続き踏襲するのであればその今日における正当性を表明するのに適切なケースを選択することとなり、West Coast Hotelにしても今回のWayfairにしても、最高裁判所がこれらのケースを取り上げているのはもちろん偶然ではない。
で、今回の、「South Dakota v. Wayfair」で「Quill Corp. v. North Dakota」判例を覆すに至った背景にはもちろん経済、商取引、テクノロジーの在り方が1992年と今では全く異なるという事実関係がある。1992年当時の争点はメールオーダー等、限られた取引に関するものだ。1992年と言えばGoogleが設立される6年前。Michael Lewis (「Liar’s PokerやBig Shortの著者」)による「The New New Thing」でも取り上げられたJim Clarkのモザイク(Netscape)だって登場したのは1994年頃だ。この頃、アマゾンもオンラインの本屋として登場している。
グロサリーショッピングのオンラインデリバリーの「はしり」と言えば、何と言ってもWebvan。そう言えばあってよね!って思い出してくれる方も米国、特に西海岸辺りには結構いるんじゃないかと思うけど、1996年に設立され、時間指定のデリバリー、スーパーにあるような多くの品揃え、というチョッと考えただけで巨額の設備投資が必要となるビジネスモデルだった。カリフォルニアではニッチ的にチョッと流行っていて実際に利用したこともあるけど、時代の先を行き過ぎていた観は否めず、10都市限定とは言え、需要が投資に追いつかない状況で2001年には更生法適用となった。実はこのWebvan、実は何と現在のAmazonFreshに受け継がれている。AmazonFreshの経営陣にはWebvan出身者が複数いるし、テクノロジー、ビジネスモデルもWebvanから取り込んだものも多い。さらにWebvan.Comというドメインは現在ではアマゾンが所有しているそうだ。
このようにWebvan自体は巨額の資金を吸い上げた挙句に結局倒産しているが、VentureとかIPOというリスクマネーをインフラに投資した訳だから、国の借金が残ったり納税者のお金を使うことなくインフラやノウハウはその後に残る訳で、この頃のDot.Comバブル時代の大胆な投資はなんだかんだその後のハイテク産業成長の基礎を築いているような気がする。
という訳で、1992年にはオンラインショッピングという概念すら存在しなかったことがDot.Com系の沿革を時間軸で追うと良く分かる。今日では、電子商取引が定着し、最高裁判所自らが「Quillは適切な判断ではなく過ちであったと言える」とまで言っている。でも、当時はまさか、全ての日常品をAmazon Primeとかで2日間待てば郵送料ナシで自宅までデリバーされるような時代が来るとはさすがの賢者揃いの最高裁判所判事も含めて誰も予見できなかった訳で、Quillの判決は当時としては合理的で仕方がないこと。今から見れば「不適切」な判断と映るかもしれないけど、歴史上の出来事全て、後から今日のスタンダードで判断するのは良くない。
実務的にコンプライアンスできるのかという現実的な側面から見ると、テクノロジー進化が大きな役割を果たしていると言えるだろう。前回触れた通り、売上税は州、郡により税率、対象品目、免除規定がまちまちで、当然ペーパーワークも異なる。そんなのをマニュアルで処理しないといけないとなると、余りの負荷でやはりDue Process的に問題となる。今回のSouth Dakota州の法律が違憲とならなかった一つの要因にコンプライアンスを容易にしてくれていたことが挙げられる。
例えば、South Dakota州で限られた回数の取引とか少額の取引にしか従事していない販売主に対しては免除制度が規定されていたり、徴収義務は今後の取引のみで過去訴求しないとか、州外販売主側の事務負担軽減の目的で、州側が無償でソフトウェアを供給したり、更に、複数の州が加盟している「The Streamlined Sales Tax Project (SSTP)」にSouth Dakota州が参加して、できるだけ標準的なプロセスとなるよう尽力している。
したがって、今回の判例に基づいて、州外の販売主に対して売上税の徴収を規定する州法が憲法のテストを通過するには、州間通商に過度の負担を強いず、公正な規定内容とすることが前提となる。
今後の展開としては、各州が、最高裁判所がOKとした基準に基づいて、州外販売主に対する売上税徴収義務を規定したり、従来の憲法の制約内で限界に挑んでいた法律を既に制定しているところは、最高裁判所の見解と照らし合わせて、合憲となる可能性の高いものに微調整していく必要があるあるだろう。もうひとつ、以前から期待されている流れに、連邦議会が何らかの法律を制定するというものがある。連邦は憲法上、通商条項に基づき「Inter-State Commerce」にかかわる法律を制定することができる。したがって、連邦が制定した法律はPreemptive的に州法よりも上位に属することになる。例えば、法人税のNexusを各州が規定しているけど、一定の活動に関しては連邦法がオーバーライドする形で法人税の課税を制限しているようなもの(PL86-272)があるけど、このような形で何らかの連邦法により一定の基準設定が好ましいという声も多い。
電子取引を含む経済のあり方そのものが大きく変わっていく中、今回の判決は時間の問題だっただろう。昔は物理来な存在をもってNexusを判断していたが、電子取引の世界では、物理的な存在は重要なファクターでないことも多く、経済的な結び付き、すなわち「Economic Nexus」の台頭となる。法人税の世界でも、BEPSとかで苦労して、新しい経済の在り方に対応しないといけない直接税は余り時代にあっていないとも言え、長期トレンドとしてはVATのようなDestination Baseの課税にシフトしていくんだろう。
Destination BaseというとBlue PrintのBorder Adjustmentを盛り込んだDBCFTが懐かしい。先日、上院財政委員会のTax Counselの方と直接話しをするという好機に恵まれたけど、実は水面下ではDBCFTの法文ドラフトが完成していたようで、100ページ(と言っていたかどうか忘れたけど)とか、膨大かつ複雑な規定だったようだ。「BEATなんて数ページの規定なんだから有難く思うように」みたいなお説教もしてもらったけど、DBCFTは概念的に実にシンプルだったので、そこまで複雑にしないと法律にならないという点は意外だった。今となっては闇に封印されている法案だけど、Information Freedom Actとか使って見れるものなら見てみたいものだ。
ちなみに今回の最高裁判所の判決も例によって5-4で決定されているけど、その構成は興味深い。同じ5-4でも保守系とリベラル系がきれいにイデオロギー的に分かれていないからだ。元々レーガン大統領に任命された、したがって本来保守派に属するはずだけど実際には現在では退官したオコナーと並んでSwing Voteとなることが多いケネディーが判決の主文をデリバーしてる。それに賛同している判事にはアリート、ゴーサッチ、トーマスという保守派と並び、リベラルなギンズバーグが含まれる。逆に反対少数意見にはブライヤー、キーガン、ソトマイヨールというリベラルの牙城に加え、保守で長官のロバーツで構成されている。ロバーツの考えは最高裁が口を出す話しではなく、連邦議会が適切な規定を制定するべき、というもの。米国の法律は面白い。
という訳で柄にもなく州税、それも外形課税の話しでチョッと疲れたけど、次回こそは税制改正の国際課税。
前回のポスティングで「Nexus」の話しに触れたけど、これは州による法的管轄権の行使可否を判断する基準のことで、連邦憲法のDue Process条項とかを拠り所に判断され、税金だけではなく、広範な法律適用時に重大な検討事項となる。例えば、民事裁判をどこの州で起こすことができるか、とか。自分に有利な思想の判事が多数を占めている特定の管轄区の裁判所に提訴したくても、被告人がその管轄区に何の関係も持たない場合、どこまでそれが認められるのか、というような問題。逆にこのようなForum Shoppingは裁判の戦略策定時の大きなポイントなんだけど。Civil ProcedureのPersonal JurisdictionとかSubject Matter Jurisdictionの問題で、米国でLaw School行ったり、Bar Exam受けたことある人にとっては、Evidenceと並んで気持ちが暗くなる科目のひとつだったんでは?Nexusがあるかどうかの検討は、州の法人税に関しても頻繁に行われるけど、同じ「Nexus」という用語を使っていても、その判断基準は売上税に対するケースと同じではない。
売上税に関して、今回の判決が出るまでは、販売者による売上税徴収義務は州内に「物理的な存在」を持つ納税者に対してのみ行使できる、というものだった。これは最高裁判所による1992年のランドマークケース「Quill Corp. v. North Dakota」の判例に基づく。今回その判例を覆したことになるけど、前回のポスティングの冒頭で触れた通り、先例拘束力の原則に基づく米国ではかなりの英断。ちなみに自分より上位にある裁判所による判例を覆すことは認められないので、最高裁判所の判例を覆すことができるのは最高裁判所自らのみということになる。
最高裁判所が下すケースの数と照らし合わせて見ると、Stare Decisisを踏襲せずに自らのケースを覆した件数は極めて少ない。大概、今回のケースのように元々の判断からかなりの年月が経過し、社会的な背景、状況が変わったことを受けての苦渋の判断というようなものが多い。米国は「法の支配」の国なので、判例は基本的に変わらないようにしないと法律そのものの信憑性が低下してしまう中での難しい判断だろう。
例えば、1905年に最高裁判所が下した「Lochnerケース」。パン焼きの職人さんの週当たりの労働時間を60時間までと制限したNY州労働法に対して、契約の自由、雇用の自由を侵害しているとして憲法違反とした判例だ。この最高裁判所の判例は、その後の州政府による労働法制定時の裁量を大きく制限する。例えば、1923年には、女性に対する最低賃金を保障したDCの労働法もLochnerケースを踏襲して違憲判断が下されている。
この二つの判例の法的な趣旨は全く同じ。すなわち、州が個人の労働契約に口を出すのは、雇う側、雇われる側双方に連邦憲法上保障されている自由を奪うというものだ。でも、その適用対象次第で受ける印象はチョッと異なる気がする。パン焼き職人の労働時間を制限してはいけません、と言われると、なるほど、パンを焼くのが3度の食事より好きな人に60時間超えてパンを焼いてはいけません、なんてことは国とか州に口出しされる筋合いはないよね、って思えるかもしれないけど、女性に最低賃金を規定してはいけません、って言われると、なんとなく「そうなの?」って感じの反応じゃないだろうか。
まあ、ともかく時は流れて1937年。ホテル勤務のメードさんが提訴して何と最高裁判所まで行った「West Coast Hotel v. Parrish」ケース。最高裁判所はLochner判決を覆し、最低賃金を保障するワシントン州労働法を容認している。「契約の自由は絶対的なものではなく、労働者の健康や安全を保障する目的の州法は憲法違反ではない」という趣旨に時代の流れと共に移り変わっていった。最高裁判所は上告されてくるケースの極一部を自らの裁量で取り上げるかどうか決めることが出来る点は以前も触れたけど、判例を覆す必要性を感じ始めると、それを実行する、または過去の判例を引き続き踏襲するのであればその今日における正当性を表明するのに適切なケースを選択することとなり、West Coast Hotelにしても今回のWayfairにしても、最高裁判所がこれらのケースを取り上げているのはもちろん偶然ではない。
で、今回の、「South Dakota v. Wayfair」で「Quill Corp. v. North Dakota」判例を覆すに至った背景にはもちろん経済、商取引、テクノロジーの在り方が1992年と今では全く異なるという事実関係がある。1992年当時の争点はメールオーダー等、限られた取引に関するものだ。1992年と言えばGoogleが設立される6年前。Michael Lewis (「Liar’s PokerやBig Shortの著者」)による「The New New Thing」でも取り上げられたJim Clarkのモザイク(Netscape)だって登場したのは1994年頃だ。この頃、アマゾンもオンラインの本屋として登場している。
グロサリーショッピングのオンラインデリバリーの「はしり」と言えば、何と言ってもWebvan。そう言えばあってよね!って思い出してくれる方も米国、特に西海岸辺りには結構いるんじゃないかと思うけど、1996年に設立され、時間指定のデリバリー、スーパーにあるような多くの品揃え、というチョッと考えただけで巨額の設備投資が必要となるビジネスモデルだった。カリフォルニアではニッチ的にチョッと流行っていて実際に利用したこともあるけど、時代の先を行き過ぎていた観は否めず、10都市限定とは言え、需要が投資に追いつかない状況で2001年には更生法適用となった。実はこのWebvan、実は何と現在のAmazonFreshに受け継がれている。AmazonFreshの経営陣にはWebvan出身者が複数いるし、テクノロジー、ビジネスモデルもWebvanから取り込んだものも多い。さらにWebvan.Comというドメインは現在ではアマゾンが所有しているそうだ。
このようにWebvan自体は巨額の資金を吸い上げた挙句に結局倒産しているが、VentureとかIPOというリスクマネーをインフラに投資した訳だから、国の借金が残ったり納税者のお金を使うことなくインフラやノウハウはその後に残る訳で、この頃のDot.Comバブル時代の大胆な投資はなんだかんだその後のハイテク産業成長の基礎を築いているような気がする。
という訳で、1992年にはオンラインショッピングという概念すら存在しなかったことがDot.Com系の沿革を時間軸で追うと良く分かる。今日では、電子商取引が定着し、最高裁判所自らが「Quillは適切な判断ではなく過ちであったと言える」とまで言っている。でも、当時はまさか、全ての日常品をAmazon Primeとかで2日間待てば郵送料ナシで自宅までデリバーされるような時代が来るとはさすがの賢者揃いの最高裁判所判事も含めて誰も予見できなかった訳で、Quillの判決は当時としては合理的で仕方がないこと。今から見れば「不適切」な判断と映るかもしれないけど、歴史上の出来事全て、後から今日のスタンダードで判断するのは良くない。
実務的にコンプライアンスできるのかという現実的な側面から見ると、テクノロジー進化が大きな役割を果たしていると言えるだろう。前回触れた通り、売上税は州、郡により税率、対象品目、免除規定がまちまちで、当然ペーパーワークも異なる。そんなのをマニュアルで処理しないといけないとなると、余りの負荷でやはりDue Process的に問題となる。今回のSouth Dakota州の法律が違憲とならなかった一つの要因にコンプライアンスを容易にしてくれていたことが挙げられる。
例えば、South Dakota州で限られた回数の取引とか少額の取引にしか従事していない販売主に対しては免除制度が規定されていたり、徴収義務は今後の取引のみで過去訴求しないとか、州外販売主側の事務負担軽減の目的で、州側が無償でソフトウェアを供給したり、更に、複数の州が加盟している「The Streamlined Sales Tax Project (SSTP)」にSouth Dakota州が参加して、できるだけ標準的なプロセスとなるよう尽力している。
したがって、今回の判例に基づいて、州外の販売主に対して売上税の徴収を規定する州法が憲法のテストを通過するには、州間通商に過度の負担を強いず、公正な規定内容とすることが前提となる。
今後の展開としては、各州が、最高裁判所がOKとした基準に基づいて、州外販売主に対する売上税徴収義務を規定したり、従来の憲法の制約内で限界に挑んでいた法律を既に制定しているところは、最高裁判所の見解と照らし合わせて、合憲となる可能性の高いものに微調整していく必要があるあるだろう。もうひとつ、以前から期待されている流れに、連邦議会が何らかの法律を制定するというものがある。連邦は憲法上、通商条項に基づき「Inter-State Commerce」にかかわる法律を制定することができる。したがって、連邦が制定した法律はPreemptive的に州法よりも上位に属することになる。例えば、法人税のNexusを各州が規定しているけど、一定の活動に関しては連邦法がオーバーライドする形で法人税の課税を制限しているようなもの(PL86-272)があるけど、このような形で何らかの連邦法により一定の基準設定が好ましいという声も多い。
電子取引を含む経済のあり方そのものが大きく変わっていく中、今回の判決は時間の問題だっただろう。昔は物理来な存在をもってNexusを判断していたが、電子取引の世界では、物理的な存在は重要なファクターでないことも多く、経済的な結び付き、すなわち「Economic Nexus」の台頭となる。法人税の世界でも、BEPSとかで苦労して、新しい経済の在り方に対応しないといけない直接税は余り時代にあっていないとも言え、長期トレンドとしてはVATのようなDestination Baseの課税にシフトしていくんだろう。
Destination BaseというとBlue PrintのBorder Adjustmentを盛り込んだDBCFTが懐かしい。先日、上院財政委員会のTax Counselの方と直接話しをするという好機に恵まれたけど、実は水面下ではDBCFTの法文ドラフトが完成していたようで、100ページ(と言っていたかどうか忘れたけど)とか、膨大かつ複雑な規定だったようだ。「BEATなんて数ページの規定なんだから有難く思うように」みたいなお説教もしてもらったけど、DBCFTは概念的に実にシンプルだったので、そこまで複雑にしないと法律にならないという点は意外だった。今となっては闇に封印されている法案だけど、Information Freedom Actとか使って見れるものなら見てみたいものだ。
ちなみに今回の最高裁判所の判決も例によって5-4で決定されているけど、その構成は興味深い。同じ5-4でも保守系とリベラル系がきれいにイデオロギー的に分かれていないからだ。元々レーガン大統領に任命された、したがって本来保守派に属するはずだけど実際には現在では退官したオコナーと並んでSwing Voteとなることが多いケネディーが判決の主文をデリバーしてる。それに賛同している判事にはアリート、ゴーサッチ、トーマスという保守派と並び、リベラルなギンズバーグが含まれる。逆に反対少数意見にはブライヤー、キーガン、ソトマイヨールというリベラルの牙城に加え、保守で長官のロバーツで構成されている。ロバーツの考えは最高裁が口を出す話しではなく、連邦議会が適切な規定を制定するべき、というもの。米国の法律は面白い。
という訳で柄にもなく州税、それも外形課税の話しでチョッと疲れたけど、次回こそは税制改正の国際課税。
最高裁判例「オンラインショッピングと売上税」(1)
本来、税制改正の国際課税にフォーカスしたいところなんだけど、トピックが余りに広範かつ面白すぎて、どこからキックオフしていいかチョッと途方に暮れかけたところ、2018年6月21日に連邦最高裁判所が、オンラインショッピングとかの州外販売者に対して州売上税の徴収権拡大を容認する旨の判決を下した。しかも、最高裁判所自らが過去の最高裁判所の判例を覆すという、Stare Decisis、すなわち先例拘束力の原則をベースとする判例法の米国において、異例の判断となった点で、今回の判決はかなりBig Dealと言える。という訳で、柄にもなく(?)、急遽、売上税を扱っている当判決に触れてみたい。
トランプ政権、というかトランプ大統領個人が、アマゾン、特に創業者のJeff Bezosを目の敵にしていて、アマゾンは売上税も払わずに米国の郵便システムを自社の物流システム同然に低料金でこき使って、荒稼ぎしている、というようなコメントをTwitterとかで繰り返しているのは周知の事実だけど、となるとトランプ政権にも白星的な判決かも。
ちなみに、確かにその昔は、近所のB&NとかBordersみたいな本当の(?)本屋さん(スタバとか併設されていて憩いの場として懐かしいね!)で本を買うと売上税を支払わないといけないのに、まだ怪しいスタートアップ(?)みたいな存在だったアマゾンで同じ本を買うと売上税を支払わなくてよかった時代もあった。でも、それは今は昔。現在ではアマゾンは全米を網羅する物流ハブを有していることもあり、アマゾンで買い物すると少なくとも州レベルの売上税は徴収されているように思う。アマゾンを利用している第三者のベンダーは未だに徴収していないケースもあるかもしれないけど。トランプ大統領のアマゾンやJeff Bezosに対する批判的なコメントは、売上税の話しではなく、どちらかと言うとJeff BezosがThe Washington Postっていう米国で影響力が大きい新聞社を所有してるけど、このThe Washington Postが大統領に批判的な社説を記載することが多い、ってことに起因していると見るべき。アマゾンのビジネスモデルにケチを付けているのは「八つ当たり」的な側面が強い。
で、今回の判例だけど、「South Dakota v. Wayfair」っていうケースで、South Dakota州内に物理的な存在を持たない州外の販売主が、オンライン等を通じてSouth Dakota州内の顧客に物販等を行う場合、South Dakota州の売上税を徴収しなさいって言う州法を容認する判断となった。
「そんなの当然じゃん」って思うかもしれないけど、事は法的にも実務的にもそこまで簡単な話しではない。まずはその辺りの背景に関して少し。
今回の判決の争点を再度整理すると、州内に何の存在も持たない「州外」の販売者に対して、州が「州法」で販売者による売上税の「徴収義務」を強制することができるか、っていう点。結果はイエスだったんだけど、逆に今回の判例が出るまでは、そのような法律は連邦憲法違反とされていた。ここで判例を理解する際に必要となるいくつかポイントだけど、まず、米国の売上税は州法だということ。米国には連邦ベースの売上税、VAT、消費税は存在しない。連邦法であれば、どこの州の販売業者であろうが一網打尽に対象となるけど、州法なので、今回のような問題が起こり得る。
さらに州の売上税は、有形資産(最近はこの解釈が拡大傾向)の「最終消費者に対する小売段階」で販売主が徴収するメカニズムになっていて、サプライチェーンの各ステップで付加価値に課税するVATとは異なる。州の法律なので、州によって売上税の対象、税率はまちまちで、同じ州内でも群が異なると税率が微妙に違ったり、さらにFlorida州とかNevada州(ベガス!)を含む7州ではそもそも売上税自体が存在しない。納税者が何らかの拠点を持つ州や郡で売上税を徴収するのは仕方がないし、元々やらないといけないとなっていたけど、縁もゆかりもない遠方からたまたまオーダーが入ったりして、その都度、そこの州や郡の仕組みを調べて売上税徴収の対応をさせられるのは実務上かなりのチャレンジとなる。それで、従来の判例が合理的な判断となっていた訳で、今までも例えば、South Dakota州に登記している法人とか、South Dakota州に店舗、倉庫、その他の物理的な施設を持っている販売主に対して州が売上税の徴収義務を課すことには何の問題もなかった。
これは米国の州の法的管轄権にかかわるDue Process的な問題だけど、敢えてザックリ言うと、州が何者かに対して州法を行使するには、対象となる者とその州の間に「何らかの関係」が存在しないといけない。国家主権に置き換えるとより分かり易いと思うけど、日本の法律が米国に住んでいる米国市民に適用できないのと似た話し。で、どこまでの活動や存在があれば、州に法的な管轄権が生まれるのかという点が争点となるけど、法的管轄権が生まれる「Minimum Contact(最低ライン)」を「Nexus」と言う。州の法人税でも、「そんなことするとCA州にNexusができちゃう」とか使うけど、まさしく、それも広義のNexusの具体的な適用法のひとつで、憲法上、それがないと州側に課税権が認められないことになる。同じNexusという用語でも適用対象となる法律により、考え方が異なり、今回の判決はあくまでも売上税にかかわるNexusの話しで、法人税のNexusには直接的に影響があるものではない。
州としては、当然、自州の法律を最大限に行使したい訳だけど、その歯止めをするのが連邦憲法のDue Processを中心とする条項。州が際どい法律を制定し、その被害(?)にあった者が訴訟を起こし、重要なケースだとそれが何年か掛けて最高裁判所にまで行き、運が良ければ最高裁判所がケースを取り上げ、判断が下されるという仕組み。その昔、CA州のWorldwide Unitary課税が違憲ではないかとバークレー銀行が訴えを起こしていたけど、1994年の「BARCLAYS BANK PLC v. FRANCHISE TAX BOARD OF CALIFORNIA」にて最高裁判所が合憲判断を下している。Worldwide Unitaryにかかわる背景を知るには「Must Read」な読み物だ。
更に、今回の判決はあくまでも売上税の州外「販売主」側の「徴収」義務にかかわるもので、販売そのものが最終的に売上税またはそれに見合う税金の対象となるかどうか、という税負担の話しとはチョッと異なる(ある意味、税制改正の国際課税におけるSection 864(c)(8)とSection 1446(f)のような関係)。米国の売上税は、有形資産の最終消費者に対する小売段階で販売主が徴収するメカニズムになっているけど、従来は、州側が州外販売者に売上税徴収権を行使できない場合、消費者側が自ら売上税同額を使用税として州に自主納付するシステムとなっていた。
つまり、オンラインショッピングとかオークションサイトで、個人を含む遠方の販売主から何か物を購入し、消費者が居住する州の売上税が徴収されていない場合には、買った側が売上税相当額を計算して、それを「使用税」という名前で州に自ら納付に行かないといけない。そんな義務があることを知らない一般市民も多いだろうし、企業と消費者間取引(BtoC)とか消費者間取引(CtoC)に基づく販売に関して、消費者がそんな使用税を納付しているケースは皆無に近かっただろう。
近年では州「個人所得税」の申告書に「オンラインショッピングとかで売上税が徴収されていない購入があったんじゃないですか?」みたいな質問が追加されていたり、州によってはご丁寧に「あなたの家族状況、収入レベルですと、大概、これくらいのオンラインショッピングがあったと推定されるので、使用税がこれ位発生します」という既定値まで表示して、それがイヤなら、自分の計算に基づく使用税を表示するように仕向けたり、といろいろと苦労していた。感覚的には、大多数の納税者が、既定値には「No thank you」となり、自分で計算してみたらゼロでした(苦笑)って申告していたんじゃないだろうか。唯一、使用税とか本当に支払ったり、州税務当局が本気で調査対象としてたのは、BtoB的な局面で、法人とか事業主が「最終消費者」となる設備とかを外国を含む州外から購入している際とかだろう。
さらに州側もいろいろと考えて、最高裁判所の判断に逆らうことなく、オンラインショッピングの州外販売主に売上税の徴収義務を課す理論構築をして、限界を試してきた。例えば俗にアマゾン・タックスとか言われてた近年の州の限界挑戦系の法律の中には、アマゾン等から報酬を受け取るAffiliateが州内に存在してる場合には、それをもってアマゾンのようなベンダーが物理的な存在を州内に有していると認定して、売上税徴収義務を課すと言うような類のものが含まれていた。Affiliateが州内にいるのかどうかの特定とか困難だろうし、歳入面で実務的にどれだけ有効だったのかは不明。
そんな実態だったんで、財政の厳しい各州にとって、州外販売主に対する売上税徴収強制権の行使は長年の悲願とも言え、今回の最高裁判所の判断はその動向が注視されていた。
なんか、チラッと売上税の判決を書いて終わらせるはずが、またしても期せずして長くなってきたので、一旦この辺にしておいて、次回、Nexus、最高裁判所が自ら過去の判例を覆した意味、そして判例を受けて今後どうなるのか、っていう点を簡単に整理してこの話は終らせたい。
トランプ政権、というかトランプ大統領個人が、アマゾン、特に創業者のJeff Bezosを目の敵にしていて、アマゾンは売上税も払わずに米国の郵便システムを自社の物流システム同然に低料金でこき使って、荒稼ぎしている、というようなコメントをTwitterとかで繰り返しているのは周知の事実だけど、となるとトランプ政権にも白星的な判決かも。
ちなみに、確かにその昔は、近所のB&NとかBordersみたいな本当の(?)本屋さん(スタバとか併設されていて憩いの場として懐かしいね!)で本を買うと売上税を支払わないといけないのに、まだ怪しいスタートアップ(?)みたいな存在だったアマゾンで同じ本を買うと売上税を支払わなくてよかった時代もあった。でも、それは今は昔。現在ではアマゾンは全米を網羅する物流ハブを有していることもあり、アマゾンで買い物すると少なくとも州レベルの売上税は徴収されているように思う。アマゾンを利用している第三者のベンダーは未だに徴収していないケースもあるかもしれないけど。トランプ大統領のアマゾンやJeff Bezosに対する批判的なコメントは、売上税の話しではなく、どちらかと言うとJeff BezosがThe Washington Postっていう米国で影響力が大きい新聞社を所有してるけど、このThe Washington Postが大統領に批判的な社説を記載することが多い、ってことに起因していると見るべき。アマゾンのビジネスモデルにケチを付けているのは「八つ当たり」的な側面が強い。
で、今回の判例だけど、「South Dakota v. Wayfair」っていうケースで、South Dakota州内に物理的な存在を持たない州外の販売主が、オンライン等を通じてSouth Dakota州内の顧客に物販等を行う場合、South Dakota州の売上税を徴収しなさいって言う州法を容認する判断となった。
「そんなの当然じゃん」って思うかもしれないけど、事は法的にも実務的にもそこまで簡単な話しではない。まずはその辺りの背景に関して少し。
今回の判決の争点を再度整理すると、州内に何の存在も持たない「州外」の販売者に対して、州が「州法」で販売者による売上税の「徴収義務」を強制することができるか、っていう点。結果はイエスだったんだけど、逆に今回の判例が出るまでは、そのような法律は連邦憲法違反とされていた。ここで判例を理解する際に必要となるいくつかポイントだけど、まず、米国の売上税は州法だということ。米国には連邦ベースの売上税、VAT、消費税は存在しない。連邦法であれば、どこの州の販売業者であろうが一網打尽に対象となるけど、州法なので、今回のような問題が起こり得る。
さらに州の売上税は、有形資産(最近はこの解釈が拡大傾向)の「最終消費者に対する小売段階」で販売主が徴収するメカニズムになっていて、サプライチェーンの各ステップで付加価値に課税するVATとは異なる。州の法律なので、州によって売上税の対象、税率はまちまちで、同じ州内でも群が異なると税率が微妙に違ったり、さらにFlorida州とかNevada州(ベガス!)を含む7州ではそもそも売上税自体が存在しない。納税者が何らかの拠点を持つ州や郡で売上税を徴収するのは仕方がないし、元々やらないといけないとなっていたけど、縁もゆかりもない遠方からたまたまオーダーが入ったりして、その都度、そこの州や郡の仕組みを調べて売上税徴収の対応をさせられるのは実務上かなりのチャレンジとなる。それで、従来の判例が合理的な判断となっていた訳で、今までも例えば、South Dakota州に登記している法人とか、South Dakota州に店舗、倉庫、その他の物理的な施設を持っている販売主に対して州が売上税の徴収義務を課すことには何の問題もなかった。
これは米国の州の法的管轄権にかかわるDue Process的な問題だけど、敢えてザックリ言うと、州が何者かに対して州法を行使するには、対象となる者とその州の間に「何らかの関係」が存在しないといけない。国家主権に置き換えるとより分かり易いと思うけど、日本の法律が米国に住んでいる米国市民に適用できないのと似た話し。で、どこまでの活動や存在があれば、州に法的な管轄権が生まれるのかという点が争点となるけど、法的管轄権が生まれる「Minimum Contact(最低ライン)」を「Nexus」と言う。州の法人税でも、「そんなことするとCA州にNexusができちゃう」とか使うけど、まさしく、それも広義のNexusの具体的な適用法のひとつで、憲法上、それがないと州側に課税権が認められないことになる。同じNexusという用語でも適用対象となる法律により、考え方が異なり、今回の判決はあくまでも売上税にかかわるNexusの話しで、法人税のNexusには直接的に影響があるものではない。
州としては、当然、自州の法律を最大限に行使したい訳だけど、その歯止めをするのが連邦憲法のDue Processを中心とする条項。州が際どい法律を制定し、その被害(?)にあった者が訴訟を起こし、重要なケースだとそれが何年か掛けて最高裁判所にまで行き、運が良ければ最高裁判所がケースを取り上げ、判断が下されるという仕組み。その昔、CA州のWorldwide Unitary課税が違憲ではないかとバークレー銀行が訴えを起こしていたけど、1994年の「BARCLAYS BANK PLC v. FRANCHISE TAX BOARD OF CALIFORNIA」にて最高裁判所が合憲判断を下している。Worldwide Unitaryにかかわる背景を知るには「Must Read」な読み物だ。
更に、今回の判決はあくまでも売上税の州外「販売主」側の「徴収」義務にかかわるもので、販売そのものが最終的に売上税またはそれに見合う税金の対象となるかどうか、という税負担の話しとはチョッと異なる(ある意味、税制改正の国際課税におけるSection 864(c)(8)とSection 1446(f)のような関係)。米国の売上税は、有形資産の最終消費者に対する小売段階で販売主が徴収するメカニズムになっているけど、従来は、州側が州外販売者に売上税徴収権を行使できない場合、消費者側が自ら売上税同額を使用税として州に自主納付するシステムとなっていた。
つまり、オンラインショッピングとかオークションサイトで、個人を含む遠方の販売主から何か物を購入し、消費者が居住する州の売上税が徴収されていない場合には、買った側が売上税相当額を計算して、それを「使用税」という名前で州に自ら納付に行かないといけない。そんな義務があることを知らない一般市民も多いだろうし、企業と消費者間取引(BtoC)とか消費者間取引(CtoC)に基づく販売に関して、消費者がそんな使用税を納付しているケースは皆無に近かっただろう。
近年では州「個人所得税」の申告書に「オンラインショッピングとかで売上税が徴収されていない購入があったんじゃないですか?」みたいな質問が追加されていたり、州によってはご丁寧に「あなたの家族状況、収入レベルですと、大概、これくらいのオンラインショッピングがあったと推定されるので、使用税がこれ位発生します」という既定値まで表示して、それがイヤなら、自分の計算に基づく使用税を表示するように仕向けたり、といろいろと苦労していた。感覚的には、大多数の納税者が、既定値には「No thank you」となり、自分で計算してみたらゼロでした(苦笑)って申告していたんじゃないだろうか。唯一、使用税とか本当に支払ったり、州税務当局が本気で調査対象としてたのは、BtoB的な局面で、法人とか事業主が「最終消費者」となる設備とかを外国を含む州外から購入している際とかだろう。
さらに州側もいろいろと考えて、最高裁判所の判断に逆らうことなく、オンラインショッピングの州外販売主に売上税の徴収義務を課す理論構築をして、限界を試してきた。例えば俗にアマゾン・タックスとか言われてた近年の州の限界挑戦系の法律の中には、アマゾン等から報酬を受け取るAffiliateが州内に存在してる場合には、それをもってアマゾンのようなベンダーが物理的な存在を州内に有していると認定して、売上税徴収義務を課すと言うような類のものが含まれていた。Affiliateが州内にいるのかどうかの特定とか困難だろうし、歳入面で実務的にどれだけ有効だったのかは不明。
そんな実態だったんで、財政の厳しい各州にとって、州外販売主に対する売上税徴収強制権の行使は長年の悲願とも言え、今回の最高裁判所の判断はその動向が注視されていた。
なんか、チラッと売上税の判決を書いて終わらせるはずが、またしても期せずして長くなってきたので、一旦この辺にしておいて、次回、Nexus、最高裁判所が自ら過去の判例を覆した意味、そして判例を受けて今後どうなるのか、っていう点を簡単に整理してこの話は終らせたい。
Monday, May 14, 2018
米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(1)
前回、脱線しながらもようやくBEATにかかわる長編を終了した。The Go-Go’sの「We Got the BEAT」の世界。The Go-Go’sって元々ロサンゼルスのSunset辺りのクラブで演奏してたかなり「不良」っぽいバンドだったらしいけど、レコードデビューしてBreakした時は大変身して可愛い感じを装っていた。最初のシングルのOur Lips Are Sealedとか結構いい曲で、その昔、来日の際に、サンプラか、渋谷公会堂か、厚生年金ホールか、どれか忘れたけど、武道館じゃなかったのは間違いない場所でライブを見た覚えがある。演奏は当時のAll Girlsバンドとしてはまあまあだったかな。もちろんレコーディングで聴く限り、日本のPink Sapphireの方が断然うまいけど。Pink SapphireのドラムとかチョッとCozy Powellみたいで格好いい。ライブで演奏してるの見たことないから本当の実力は不明。でもメンバーは入れ替わりがあったとは言え平成名物TVの「イカ天」に出てたって話しだから実際うまいんだろう。ボーカルも上手だったしね。Pink Sapphireの曲は、いくつかビートルズと曲名を使っていてシャレっぽいくて良かった。で、The Go-Go’sだけど、東京公演では、わざわざ「Tokyo Boy」とか言うオリジナル曲を披露してくれて盛り上がった。多分どこの街でも街名を入れ替えて歌ってんだろうけど。
先週末のBEAT最終章は、次の題材を「チョッと考えてみる」ってところで終わっていた。実際書き終わった直後、ランチでも食べながらじっくり考えようと決意したんだけど、肝心のランチをどうするかに気を取られてしまった。家で簡単に済ますというオプションもあったけど、先週の週末はNYCのお天気も良く、アパートの下に降りて行って、近所どこかでにフラッと軽く行きたい気分が打ち勝ってしまった。でも、結局は、2nd AveのThe SmithでSicilian Baked Eggsにしようか、アジアヌードル系の店なのにナンとGrass-FedのBeefを置いてる有難いObaoにしようか、それとも単純にMaison Kayserでフレンチオニオンとか軽く食べて帰りに禁断のブリオッシュをTo-Goしようか、とか創造性に欠ける毎週繰り返される相変わらず、かつお馴染みのパターンしか思いつかなかった。で、こんなことを「じっくり」考えすぎてた結果、ブログの次の題材を選択するに至らないまま結局、20分程待ってまで又してもSicilian Baked Eggsとなり、月曜日を迎えた後はバタバタと一週間が過ぎてしまった。
そんなこんなで、また週末を迎えてしまったんだけど、今週末、野暮用でBrooklynに行った帰りにFDR運転しながら、今回の税制改正ではSub CとかSub Kは比較的手つかずなので、やはり地殻変動的なダメージ(?)を被った国際課税のフォーカスしてみよう、とようやく決心がついた。BEATだけであれだけ引っ張ったことを考えると、GILTI、FDII、Subpart F、テリトリアル課税、その他多くの大手術が施されている国際課税なんかに手を付け始めると、一体どれだけ書くことになるのか、想像しただけで気が遠くなるけど、やはり今回の改正の焦点は国際課税なので、それで行こう。
GILTIとか個別の規定の詳細は後に触れるとして、まずは国際税務の大枠からスタートしてみたい。
普通の皆さんは、別に毎日Internal Revenue Codeを読んで生活してる訳じゃないってことはもちろん知ってるけど(そうなんだよね?笑)、それでも国際課税の話しをする際に最初に共有しきたいポイントがある。それは、今回の税制改正は、驚くべきことに「既存の税法に上書きする形で多くの新条項が規定されている」っていう点。元々とてつもなく複雑かつ不明な点が多かった法律の上に、だ。
今となっては懐かしい響きのThe Blueprintでは、一層のこと多くの複雑な規定を廃案にしてしまおう、位の勢いでアプローチされていた訳だけど、、蓋を開けてみたら何のことはない、無くなるどころか、多くが温存され、更にその上に大量かつ更に複雑な新条項を織り込んでしまった。多くの新規定が既存のプラットフォームに乗るようにできてるんだけど、従来とは大きく異なるシステムになっている訳だから、Conformさせるためにあちこちを調整して、それはそれは難しいものが出来上がっている。良くこんな法文を数週間で草案したものだ。細部は行政府の財務省に規則を策定するよう権限移譲している部分も多いが、大枠であれだけのシステムを仮にも一応法律として機能する法文に仕立て上げたCapitol Hillの実力は恐るべきものがある。
大枠の内容に目を移すと、可決に至る過程では「アメリカもいよいよテリトリアル課税になるんでよかったじゃん」、みたいな軽い感じで考えられることが多かった。9月27日のUnified Frameworkでは、確かに何らかのグローバルミニマム税の導入みたいな話しが最後にチラッと出てたけど、どんな代物となるのか想像も付かなかったし、まさかクリントンとかオバマとかの民主党政権が提唱していた「Anti-Deferral」紛いの規定が入るような想定はしていなかった。
実際に税法が可決されて、落ち着いて消化してみると、恐ろしい事実に愕然とする。Webcastとかセミナーとかする度に、折に触れて言っているので「やかまし過ぎ」の可能性もあるけど、一般の方には、その真の恐ろしさが伝わっているのかどうか今でも心配(?)で、ここでもまた書いておく。かつての米国の国際課税は全世界課税とは言え、Subpart Fを除いては基本Deferral制度だった。すなわち、米国外の子会社が得る所得は米国に分配するまで米国では課税されない仕組み。で、極端に低税率の国に所得を貯めこんでいる米国多国籍企業はもちろん、よっぽどたまたまハイタックスのプールでも存在しない限り誰も分配なんかしなかったので、言わば「自作自演のテリトリアル制度」みたいな都合のいい制度になっていたと言える。
で、今回、「正式に」テリトリアル制度に移行する過程で、自作自演テリトリアル制度でもあれだけ低税率国を利用し尽くしてきた事実を目の当たりにし、米国多国籍企業による更なる低税率国へのBase Erosionが懸念されたのは当然。そこでかなり徹底的にBase Erosion対策が規定されることとなる。BEATはその名称からもまさしくその目的だし、Anti-Hybridとか、利息のSection 163(j)なんかもその流れだ。極めつけはGILTI。GILTIはSubpart Fと異なり、CFCが健全に設立国で事業活動に従事していようが、30%とかの税率に晒されていても問答無用に全てのCFCの全所得(に近い)を毎期米国株主側で合算しましょう、という凄い規定だ。この辺りのBase Erosion対策を、OECDのBEPSのようなアプローチではなく、独自に異なる切口にて一発導入してるのも米国らしい。後日GILTIに関して触れる際に詳細を書くけど、GILTIは製造設備等の資産は米国外に有するモデルを奨励しているように見えるし、また外国における法人税率は「理論的」には、13.125%を超え始めると超過%はグローバル実効税率を押し上げ兼ねないので、引き続き外国での税率は低く推移させるプレッシャーというか、インセンティブが存在する。
GILTIを考えると、税制改正で米国がテリトリアル課税制度に移行したというのはかなり語弊がある。確かに従来のDefarral制度は完全に撤廃されたことに間違いはないが、多くの国外所得に関しては、毎期認識させられる形で撤廃されている。すなわちAnti-Deferralに姿を変えてしまったのだ。配当非課税で真のテリトリアル課税の恩典を享受できるのは、CFCの償却対象動産の定額償却ベース簿価の10%ルーティンリターン所得のみ。う~ん、テリトリアル課税の恩典対象は結構地味。
という訳で、怖わさが共有できたところで次回から従来の国際課税とそれに上乗りする形で導入されている多くの新規則に、長期戦覚悟で触れていきたい。
先週末のBEAT最終章は、次の題材を「チョッと考えてみる」ってところで終わっていた。実際書き終わった直後、ランチでも食べながらじっくり考えようと決意したんだけど、肝心のランチをどうするかに気を取られてしまった。家で簡単に済ますというオプションもあったけど、先週の週末はNYCのお天気も良く、アパートの下に降りて行って、近所どこかでにフラッと軽く行きたい気分が打ち勝ってしまった。でも、結局は、2nd AveのThe SmithでSicilian Baked Eggsにしようか、アジアヌードル系の店なのにナンとGrass-FedのBeefを置いてる有難いObaoにしようか、それとも単純にMaison Kayserでフレンチオニオンとか軽く食べて帰りに禁断のブリオッシュをTo-Goしようか、とか創造性に欠ける毎週繰り返される相変わらず、かつお馴染みのパターンしか思いつかなかった。で、こんなことを「じっくり」考えすぎてた結果、ブログの次の題材を選択するに至らないまま結局、20分程待ってまで又してもSicilian Baked Eggsとなり、月曜日を迎えた後はバタバタと一週間が過ぎてしまった。
そんなこんなで、また週末を迎えてしまったんだけど、今週末、野暮用でBrooklynに行った帰りにFDR運転しながら、今回の税制改正ではSub CとかSub Kは比較的手つかずなので、やはり地殻変動的なダメージ(?)を被った国際課税のフォーカスしてみよう、とようやく決心がついた。BEATだけであれだけ引っ張ったことを考えると、GILTI、FDII、Subpart F、テリトリアル課税、その他多くの大手術が施されている国際課税なんかに手を付け始めると、一体どれだけ書くことになるのか、想像しただけで気が遠くなるけど、やはり今回の改正の焦点は国際課税なので、それで行こう。
GILTIとか個別の規定の詳細は後に触れるとして、まずは国際税務の大枠からスタートしてみたい。
普通の皆さんは、別に毎日Internal Revenue Codeを読んで生活してる訳じゃないってことはもちろん知ってるけど(そうなんだよね?笑)、それでも国際課税の話しをする際に最初に共有しきたいポイントがある。それは、今回の税制改正は、驚くべきことに「既存の税法に上書きする形で多くの新条項が規定されている」っていう点。元々とてつもなく複雑かつ不明な点が多かった法律の上に、だ。
今となっては懐かしい響きのThe Blueprintでは、一層のこと多くの複雑な規定を廃案にしてしまおう、位の勢いでアプローチされていた訳だけど、、蓋を開けてみたら何のことはない、無くなるどころか、多くが温存され、更にその上に大量かつ更に複雑な新条項を織り込んでしまった。多くの新規定が既存のプラットフォームに乗るようにできてるんだけど、従来とは大きく異なるシステムになっている訳だから、Conformさせるためにあちこちを調整して、それはそれは難しいものが出来上がっている。良くこんな法文を数週間で草案したものだ。細部は行政府の財務省に規則を策定するよう権限移譲している部分も多いが、大枠であれだけのシステムを仮にも一応法律として機能する法文に仕立て上げたCapitol Hillの実力は恐るべきものがある。
大枠の内容に目を移すと、可決に至る過程では「アメリカもいよいよテリトリアル課税になるんでよかったじゃん」、みたいな軽い感じで考えられることが多かった。9月27日のUnified Frameworkでは、確かに何らかのグローバルミニマム税の導入みたいな話しが最後にチラッと出てたけど、どんな代物となるのか想像も付かなかったし、まさかクリントンとかオバマとかの民主党政権が提唱していた「Anti-Deferral」紛いの規定が入るような想定はしていなかった。
実際に税法が可決されて、落ち着いて消化してみると、恐ろしい事実に愕然とする。Webcastとかセミナーとかする度に、折に触れて言っているので「やかまし過ぎ」の可能性もあるけど、一般の方には、その真の恐ろしさが伝わっているのかどうか今でも心配(?)で、ここでもまた書いておく。かつての米国の国際課税は全世界課税とは言え、Subpart Fを除いては基本Deferral制度だった。すなわち、米国外の子会社が得る所得は米国に分配するまで米国では課税されない仕組み。で、極端に低税率の国に所得を貯めこんでいる米国多国籍企業はもちろん、よっぽどたまたまハイタックスのプールでも存在しない限り誰も分配なんかしなかったので、言わば「自作自演のテリトリアル制度」みたいな都合のいい制度になっていたと言える。
で、今回、「正式に」テリトリアル制度に移行する過程で、自作自演テリトリアル制度でもあれだけ低税率国を利用し尽くしてきた事実を目の当たりにし、米国多国籍企業による更なる低税率国へのBase Erosionが懸念されたのは当然。そこでかなり徹底的にBase Erosion対策が規定されることとなる。BEATはその名称からもまさしくその目的だし、Anti-Hybridとか、利息のSection 163(j)なんかもその流れだ。極めつけはGILTI。GILTIはSubpart Fと異なり、CFCが健全に設立国で事業活動に従事していようが、30%とかの税率に晒されていても問答無用に全てのCFCの全所得(に近い)を毎期米国株主側で合算しましょう、という凄い規定だ。この辺りのBase Erosion対策を、OECDのBEPSのようなアプローチではなく、独自に異なる切口にて一発導入してるのも米国らしい。後日GILTIに関して触れる際に詳細を書くけど、GILTIは製造設備等の資産は米国外に有するモデルを奨励しているように見えるし、また外国における法人税率は「理論的」には、13.125%を超え始めると超過%はグローバル実効税率を押し上げ兼ねないので、引き続き外国での税率は低く推移させるプレッシャーというか、インセンティブが存在する。
GILTIを考えると、税制改正で米国がテリトリアル課税制度に移行したというのはかなり語弊がある。確かに従来のDefarral制度は完全に撤廃されたことに間違いはないが、多くの国外所得に関しては、毎期認識させられる形で撤廃されている。すなわちAnti-Deferralに姿を変えてしまったのだ。配当非課税で真のテリトリアル課税の恩典を享受できるのは、CFCの償却対象動産の定額償却ベース簿価の10%ルーティンリターン所得のみ。う~ん、テリトリアル課税の恩典対象は結構地味。
という訳で、怖わさが共有できたところで次回から従来の国際課税とそれに上乗りする形で導入されている多くの新規則に、長期戦覚悟で触れていきたい。
Sunday, May 6, 2018
米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(9)
前回までいろいろと脱線しながら、8回に亘り税制改正の中でも日本企業の視点から注目度の高いBEATミニマム税規定に関して分析してきた。法文解釈的には、1月時点での感触と5月になった現時点の感触は若干異なるというか、国際税務業界でもその分析がいろいろと進化してきた感じがする。
NOLの使用法も、詳しくは「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(8)」を参照して欲しいけど、どうも通常の法人税の算定で使用した金額のみが加味されて、かつBase Erosion Benefit%は使用年度のもの一発を適用するという感じが濃厚。これに加えて旧アーニングズ・ストリッピング規定下で繰り越されている支払利息が、もともと外国の関連者向けのものだった場合には、Base Erosion Benefitになると、NOLと旧アーニングズ・ストリッピング規定の繰越利息の双方を使用する年度にはBEATミニマム税を支払うケースが多くなりそう。まあ、ものは考えようで、BEATミニマム税を支払っても従来の35%よりも実行税率が低ければ税制改正の恩典はプラスだったとも考えられる。
2026年以降には、BEAT算定の比較対象となる通常法人税はフルに税額控除を引いた後の金額となること、また適用税率的も12.5%(金融機関は13.5%)となることから、要注意だ。
BEATを含む国際課税のメジャーな新規定に関しては夏にも財務省規則またはNoticeのようなガイダンスが公表されると予想されているが、その際にはBEAT適用納税者かどうかの判断に利用される3年平均$500M売上、また同判断およびBEAT修正課税所得算定時にNOLのいくらを加算調整するかを計算するためのBase Erosion Benefit%、の双方を計算する際に適用がある「Aggregation Rule」(合算規定)の考え方が明確になることが期待される。Aggregation Ruleの詳細に関しては以前のポスティングの「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(7)」を参照して欲しいけど、法文では50%超の資本関係にあるグループ法人は「一人の納税者」として扱うとしている。ということは、このグループに含まれる関連者間の売上は自分に対するものなので、$500Mの判定時には加味されないと考えるのが自然なようにも見える。一方、Base Erosion Benefit%は別のところで定義されていて、仮に50%超のグループが一人の納税者でも、グループ内の取引を基にBase Erosion Benefitとなるものはそのまま計算しないといけないだろう。
また今回の税法改正のあちこちで不確実性を生み出しているのが、連結納税をしているグループに対して、特定の規定が個々の法人に対して適用されるのか、連結納税グループ単位で適用されるのか、という疑問。Section 163(j)の支払利息損金算入制限に関しては4月2日のNotice 2018-28で連結納税グループ単位ということが明確化されたけど(これに関しては「支払利息損金算入ガイダンス発表」を参照)、BEAT、GILTI、FDIIなんかもどのように適用があるかで計算結果が大きくことなることがある。BEATは通常の法人税との比較なんだから、通常の法人税が連結納税グループ単位で算定されいることを考えると間違いなく連結納税グループ単位での比較になるはずだろう。そもそも連結納税を選択しているグループに属する個社には個別の課税所得というものは概念的に存在しないと言ってもよく、その証拠に、SRLYとか個別の数字が重要になる局面では財務省規則は徹底して「個別メンバーの所得、譲渡益、控除、損失のみを参照して決定される連結納税グループの課税所得」と実に回りくどい表現をして実質単体の課税所得を指し示している。この点からも、厳密に言うと連結納税グループにはそもそも個社の課税所得という考え方が存在しないことが伺い知れる。
さらに金融機関が連結納税グループの一員となっているグループに関してはBEATミニマム税の適用税率が1%高かったり、Base Erosion Benefitの基準%が1%低かったり不利な状況になっているけど、例えば、連結納税グループの課税年度の部分的な期間、極端な例で言えば3日とか、のみ金融機関がグループに属していたらどうなるのか、とかも不明。
また以前にも触れたけど、$500Mの売上基準に加味される売上は米国法人のものは全額(上述の50%超の資本関係にあるグループ会社間のものを除外はできる可能性あり)、また外国法人に関してはECIの算定に加味される売上のみとなっている。法文を読む限り、ECIと明確に記載されているので、条約のPE規定を用いてECIを米国課税免除としていても、その売上は加味せざるを得ないように見える。そんな数字を管理しているところは稀だろうし、またそもそも米国で申告しないでいいんだから、Base Erosionのチャンスもない訳で、ここはガイダンスでPEのないECIは除外してくれることを願う。
と、いろいろとあるけど、BEATはガイダンスが公表されるまではこの辺りにして、次のトピックに進みたい。題材は山のようにあるので何を選択するかが頭痛の種。チョッと考えてみるとしよう。
NOLの使用法も、詳しくは「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(8)」を参照して欲しいけど、どうも通常の法人税の算定で使用した金額のみが加味されて、かつBase Erosion Benefit%は使用年度のもの一発を適用するという感じが濃厚。これに加えて旧アーニングズ・ストリッピング規定下で繰り越されている支払利息が、もともと外国の関連者向けのものだった場合には、Base Erosion Benefitになると、NOLと旧アーニングズ・ストリッピング規定の繰越利息の双方を使用する年度にはBEATミニマム税を支払うケースが多くなりそう。まあ、ものは考えようで、BEATミニマム税を支払っても従来の35%よりも実行税率が低ければ税制改正の恩典はプラスだったとも考えられる。
2026年以降には、BEAT算定の比較対象となる通常法人税はフルに税額控除を引いた後の金額となること、また適用税率的も12.5%(金融機関は13.5%)となることから、要注意だ。
BEATを含む国際課税のメジャーな新規定に関しては夏にも財務省規則またはNoticeのようなガイダンスが公表されると予想されているが、その際にはBEAT適用納税者かどうかの判断に利用される3年平均$500M売上、また同判断およびBEAT修正課税所得算定時にNOLのいくらを加算調整するかを計算するためのBase Erosion Benefit%、の双方を計算する際に適用がある「Aggregation Rule」(合算規定)の考え方が明確になることが期待される。Aggregation Ruleの詳細に関しては以前のポスティングの「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(7)」を参照して欲しいけど、法文では50%超の資本関係にあるグループ法人は「一人の納税者」として扱うとしている。ということは、このグループに含まれる関連者間の売上は自分に対するものなので、$500Mの判定時には加味されないと考えるのが自然なようにも見える。一方、Base Erosion Benefit%は別のところで定義されていて、仮に50%超のグループが一人の納税者でも、グループ内の取引を基にBase Erosion Benefitとなるものはそのまま計算しないといけないだろう。
また今回の税法改正のあちこちで不確実性を生み出しているのが、連結納税をしているグループに対して、特定の規定が個々の法人に対して適用されるのか、連結納税グループ単位で適用されるのか、という疑問。Section 163(j)の支払利息損金算入制限に関しては4月2日のNotice 2018-28で連結納税グループ単位ということが明確化されたけど(これに関しては「支払利息損金算入ガイダンス発表」を参照)、BEAT、GILTI、FDIIなんかもどのように適用があるかで計算結果が大きくことなることがある。BEATは通常の法人税との比較なんだから、通常の法人税が連結納税グループ単位で算定されいることを考えると間違いなく連結納税グループ単位での比較になるはずだろう。そもそも連結納税を選択しているグループに属する個社には個別の課税所得というものは概念的に存在しないと言ってもよく、その証拠に、SRLYとか個別の数字が重要になる局面では財務省規則は徹底して「個別メンバーの所得、譲渡益、控除、損失のみを参照して決定される連結納税グループの課税所得」と実に回りくどい表現をして実質単体の課税所得を指し示している。この点からも、厳密に言うと連結納税グループにはそもそも個社の課税所得という考え方が存在しないことが伺い知れる。
さらに金融機関が連結納税グループの一員となっているグループに関してはBEATミニマム税の適用税率が1%高かったり、Base Erosion Benefitの基準%が1%低かったり不利な状況になっているけど、例えば、連結納税グループの課税年度の部分的な期間、極端な例で言えば3日とか、のみ金融機関がグループに属していたらどうなるのか、とかも不明。
また以前にも触れたけど、$500Mの売上基準に加味される売上は米国法人のものは全額(上述の50%超の資本関係にあるグループ会社間のものを除外はできる可能性あり)、また外国法人に関してはECIの算定に加味される売上のみとなっている。法文を読む限り、ECIと明確に記載されているので、条約のPE規定を用いてECIを米国課税免除としていても、その売上は加味せざるを得ないように見える。そんな数字を管理しているところは稀だろうし、またそもそも米国で申告しないでいいんだから、Base Erosionのチャンスもない訳で、ここはガイダンスでPEのないECIは除外してくれることを願う。
と、いろいろとあるけど、BEATはガイダンスが公表されるまではこの辺りにして、次のトピックに進みたい。題材は山のようにあるので何を選択するかが頭痛の種。チョッと考えてみるとしよう。
Saturday, April 14, 2018
米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)支払利息損金算入ガイダンス発表「旧アーニングス・ストリッピング規定とBEAT」(2)
前回のポスティングでは、4月2日に財務省が発表した3姉妹Noticeのうち、支払利息損金算入制限(Section 163(j))にかかわるNotice 2018-28に関して、特に旧アーニングス・ストリッピング規定で繰り越されている利息の今後の扱いを中心に触れた。過去に外国関連会社に支払ってアーニングス・ストリッピング規定に抵触して繰り越されていた支払利息を今後損金算入する際には、BEATに抵触するんだろうな、っていう点は何となく予想されてたけど、(たかが?)Noticeの段階であそこまで明確にBEATに抵触する可能性を指摘してるのは少し意外な感じがすると同時に他の解釈は認めないぞ、っていう財務省の強い決意が感じられた。
今回はこのNoticeに規定されるSection 163(j)の他の適用にかかわるガイダンス内容について簡単にまとめておきたい。まず一般的に「Notice」っていうものの位置づけだけど、基本的には正式な規則が出るまでの「つなぎ」のガイダンスという性格のもので、その法的な効果も「納税者はNoticeの内容に準拠してもよろしい」となっており、法律と異なり「準拠をしなくてはいけない」という書き方ではない。もちろん、Noticeで公表されているポジションが財務省およびIRSの現時点における法文解釈となることから、Noticeと異なるポジションを取る場合には、財務省やIRSはそうは思ってないっていう点は十分に覚悟の上決断しないといけない。Notice上の解釈は必ずしも法文の唯一の解釈ではないことが多いので、異なるポジションで申告すること自体に問題がある訳じゃないけど、法的に主張が通り得るFiling Positionに至るのか、税務調査でIRSから指摘があった際に、不服審査また訴訟に行く覚悟があるのか、とかリスク管理面の検討が重要となる。
Noticeはあくまで暫定的なガイダンスをタイムリーに納税者に提供するという位置づけなので、最終的にはNoticeで公表されている財務省やIRSのポジションも正式に財務省規則に組み込まれる。その際、100%Noticeと同じポジションで規定されるとは限らないが、異なる扱いとなる可能性がNotice発行時点で認識されているケースでは、その可能性がNoticeに示唆されるのが普通。要は未だ検討中だけど、当面これいいです、みたいな感じの時の暫定処理。Section 163(j)のNoticeでも財務省はそのうちNoticeで規定されているポジションを基に「Proposed Regulations」、すなわち財務省規則「案」を策定するとしている。規則案は法的な効果を持たないので、規則案が同時に暫定規則と位置付けられていない限り法的効果を持たず、その後、最終化されて法的な効果を持つガイダンスが誕生するまでには更に時間を要することになる。Notice後に策定される規則が必ず規則案かというとそんなことはなく、いきなり最終規則が公表されることもある。現にNotice 2018-28と同時に公表されている米国事業に従事するパートナーシップ持分を譲渡した際の源泉徴収を規定したNotice 2018-29では、規則案ではなく、いきなり最終規則を策定するとしている。
で、Section 163(j)にかかわるNoticeの内容そのものだけど、まず法人が認識する利息の扱い。Section 163(j)は法人だけではなく全ての納税者(小規模事業には免除あり)に適用され、この点は法人のみが対象だった旧アーニングス・ストリッピング規定と異なる。その上で、各納税者が認識する利息のうち「Business Interest」のみがSection 163(j)の対象となる。となると当然、支払利息、受取利息のうち何が「Business Interest」に当るかという点が入口のところでまず最大の関心事となる。Business InterestでなければSection 163(j)のの出番はないからだ。
この点に関して、法文には「Businessに関連して発生するInterestはBusiness Interest」というような全然役に立たない定義しか記載されていない。米国税務の他の局面でも何がTrade or Businessなのかっていう結構基本的な点に関して明確な定義がなく困ることがあるけど、基本的には、判例等に基づき個々の事実関係に基づいて判断せざるを得ない検討だ。Trade or Businessの有無判断がよく問題となるのは、外国法人がECIを認識するかどうかという検討時だ。税法上、ECI目的では一定の活動はTrade or Businessとはならないという例外は規定されているけど、あくまでも例外が規定されているだけで、包括的にTrade or Businessを定義している条文はない。
Section 163(j)目的では「Investment Interest」はBusiness Interestには当たらないとも規定されていることから、例えば純粋な持株会社が認識する利息がSection 163(j)に規定されるBusiness Interestに当るのか、それとも法人に関しては基本的に全ての活動がBusinessと考えられるのか、という点が議論を呼んでいた。Noticeでは、法人(ここではC Corporationのこと)が認識する支払利息および受取利息は全額「Business活動」から発生しているものと明確にしている。
それはそれでOKなんだけど、パススルーには同様の考え方は適用されない。となると法人が事業活動をパススルー経由で行っている場合、自ら認識する利息は問答無用にBusiness Interestとなる一方、パススルー主体で認識される利息は必ずしもそうとは限らないということなんだろうか。Section 163(j)はややこしいことにパートナーシップに関してはパートナーシップ事業主体レベルで適用となっているので、この辺りの絡みは実に複雑だ。パートナーシップに対して本来は相反するコンセプトであるAggregateとEntityの扱いを状況次第で併用するアプローチは今に始まったことではないけど、規定によってAggregateだったりEntityだったり余りバラバラに扱うことになると、いろんなところで無理が生じてくる。
次に連結納税グループの扱い。これは以前から財務省高官が発言していた通り、Section 163(j)は連結納税グループ単位で適用となる。まあ、その当然の結果として、連結納税グループ内の債権債務は消去される。また、今後の規則案策定時には、連結納税グループでSection 163(j)に抵触する際の制限額および繰越額の個社への配賦法、連結納税グループに後から参加する法人が持ち込む繰越額に対するSRLY規定適用有無、損金制限に抵触する場合の株主側の子会社株式簿価調整法、連結納税グループ内に制限免除可能事業(不動産事業、農業、公共ユーティリティ)が含まれる場合の扱い、なんかを規定するとしている。今回、Section 163(j)が新設された際、繰り越されている支払利息はNOL同様にSection 382の対象属性である点が明確にされているので、SRLY同様の規定が適用される場合には、Section 382とのOverlap規定もNOLみたいにできるんだろうか。う~ん、いろいろと複雑。
一点Good Newsとしては、 旧アーニングス・ストリッピング規定と異なり、連結納税を選択していないグループ、または外国親会社経由で構成される広範なグループに対するグループ計算は規定されない。この点は旧アーニングス・ストリッピング規定下でも法律そのものは連結納税グループのみを合算するとしているのに、規則案が暴走して広範なグループもみなし連結納税グループとしてしまったための弊害で、みなし持分とかも適用させられて、まともに準拠しようとすると細かい部分でとても変な結果になることがあった。今回はそんなレッスンから学んだのか、本当に連結納税をしているグループのみ一社として扱うとしている。
次にE&P(アーニングス・アンド・プロフィッツ)への影響。E&P計算時にはSection 163(j)で損金算入が制限されているかどうかにかかわらず、支払利息は発生ベースで取り込むとしている。
Section 163(j)はパートナーシップに関してはパートナーシップ事業主体レベルでの適用となっている点は上述したけど、ここは実際の適用時に問題山積み。今回のNoticeでは、パートナーシップの部分はほとんど触れられていない。唯一、パートナー側でネット支払利息額の算定を行う際に、パートナーシップから配賦される受取利息全額を取り込むことは認められず、パートナーシップのネット受取利息のみを加味することとしている。それはそうで、パートナーシップレベルでまずはネット支払利息を算定することになるので、その際に受取利息は一旦加味されている。それを再度まるまるパートナーが取り込んでしまうとパートナーシップレベルの受取利息は同じ金額なのに2回枠を作りだしているような結果になり兼ねない。Floor Financingにかかわる支払利息も同様で、パートナーシップレベルのFloor Financing利息はパートナー側の枠の計算時に再度取り込んではいけないとしている。
と、まあまあクリアになった部分もあるけどパートナーシップへの適用に関しては規則案で相当きちんと規定してくれないと適用時に不明な部分が多い。また、BEATとの関係は散々明確にしているけど、他の制限、特にAnti-Hybridとかの影響も考えないといけないのか、という点は不明。更にSection 163(j)をCFCレベルで適用するのかどうかに関してもNoticeは触れていない。この点はGILTI計算に大きな影響を持つので慎重に検討の上、規則案で明らかにされるんだろう。これらの不明点は忘れているとか、問題として認識していないということでは一切なく、「敢えて」Noticeでは触れなかったと見るべきで、それだけ扱いの最終化に苦慮しているということだろう。
今回はこのNoticeに規定されるSection 163(j)の他の適用にかかわるガイダンス内容について簡単にまとめておきたい。まず一般的に「Notice」っていうものの位置づけだけど、基本的には正式な規則が出るまでの「つなぎ」のガイダンスという性格のもので、その法的な効果も「納税者はNoticeの内容に準拠してもよろしい」となっており、法律と異なり「準拠をしなくてはいけない」という書き方ではない。もちろん、Noticeで公表されているポジションが財務省およびIRSの現時点における法文解釈となることから、Noticeと異なるポジションを取る場合には、財務省やIRSはそうは思ってないっていう点は十分に覚悟の上決断しないといけない。Notice上の解釈は必ずしも法文の唯一の解釈ではないことが多いので、異なるポジションで申告すること自体に問題がある訳じゃないけど、法的に主張が通り得るFiling Positionに至るのか、税務調査でIRSから指摘があった際に、不服審査また訴訟に行く覚悟があるのか、とかリスク管理面の検討が重要となる。
Noticeはあくまで暫定的なガイダンスをタイムリーに納税者に提供するという位置づけなので、最終的にはNoticeで公表されている財務省やIRSのポジションも正式に財務省規則に組み込まれる。その際、100%Noticeと同じポジションで規定されるとは限らないが、異なる扱いとなる可能性がNotice発行時点で認識されているケースでは、その可能性がNoticeに示唆されるのが普通。要は未だ検討中だけど、当面これいいです、みたいな感じの時の暫定処理。Section 163(j)のNoticeでも財務省はそのうちNoticeで規定されているポジションを基に「Proposed Regulations」、すなわち財務省規則「案」を策定するとしている。規則案は法的な効果を持たないので、規則案が同時に暫定規則と位置付けられていない限り法的効果を持たず、その後、最終化されて法的な効果を持つガイダンスが誕生するまでには更に時間を要することになる。Notice後に策定される規則が必ず規則案かというとそんなことはなく、いきなり最終規則が公表されることもある。現にNotice 2018-28と同時に公表されている米国事業に従事するパートナーシップ持分を譲渡した際の源泉徴収を規定したNotice 2018-29では、規則案ではなく、いきなり最終規則を策定するとしている。
で、Section 163(j)にかかわるNoticeの内容そのものだけど、まず法人が認識する利息の扱い。Section 163(j)は法人だけではなく全ての納税者(小規模事業には免除あり)に適用され、この点は法人のみが対象だった旧アーニングス・ストリッピング規定と異なる。その上で、各納税者が認識する利息のうち「Business Interest」のみがSection 163(j)の対象となる。となると当然、支払利息、受取利息のうち何が「Business Interest」に当るかという点が入口のところでまず最大の関心事となる。Business InterestでなければSection 163(j)のの出番はないからだ。
この点に関して、法文には「Businessに関連して発生するInterestはBusiness Interest」というような全然役に立たない定義しか記載されていない。米国税務の他の局面でも何がTrade or Businessなのかっていう結構基本的な点に関して明確な定義がなく困ることがあるけど、基本的には、判例等に基づき個々の事実関係に基づいて判断せざるを得ない検討だ。Trade or Businessの有無判断がよく問題となるのは、外国法人がECIを認識するかどうかという検討時だ。税法上、ECI目的では一定の活動はTrade or Businessとはならないという例外は規定されているけど、あくまでも例外が規定されているだけで、包括的にTrade or Businessを定義している条文はない。
Section 163(j)目的では「Investment Interest」はBusiness Interestには当たらないとも規定されていることから、例えば純粋な持株会社が認識する利息がSection 163(j)に規定されるBusiness Interestに当るのか、それとも法人に関しては基本的に全ての活動がBusinessと考えられるのか、という点が議論を呼んでいた。Noticeでは、法人(ここではC Corporationのこと)が認識する支払利息および受取利息は全額「Business活動」から発生しているものと明確にしている。
それはそれでOKなんだけど、パススルーには同様の考え方は適用されない。となると法人が事業活動をパススルー経由で行っている場合、自ら認識する利息は問答無用にBusiness Interestとなる一方、パススルー主体で認識される利息は必ずしもそうとは限らないということなんだろうか。Section 163(j)はややこしいことにパートナーシップに関してはパートナーシップ事業主体レベルで適用となっているので、この辺りの絡みは実に複雑だ。パートナーシップに対して本来は相反するコンセプトであるAggregateとEntityの扱いを状況次第で併用するアプローチは今に始まったことではないけど、規定によってAggregateだったりEntityだったり余りバラバラに扱うことになると、いろんなところで無理が生じてくる。
次に連結納税グループの扱い。これは以前から財務省高官が発言していた通り、Section 163(j)は連結納税グループ単位で適用となる。まあ、その当然の結果として、連結納税グループ内の債権債務は消去される。また、今後の規則案策定時には、連結納税グループでSection 163(j)に抵触する際の制限額および繰越額の個社への配賦法、連結納税グループに後から参加する法人が持ち込む繰越額に対するSRLY規定適用有無、損金制限に抵触する場合の株主側の子会社株式簿価調整法、連結納税グループ内に制限免除可能事業(不動産事業、農業、公共ユーティリティ)が含まれる場合の扱い、なんかを規定するとしている。今回、Section 163(j)が新設された際、繰り越されている支払利息はNOL同様にSection 382の対象属性である点が明確にされているので、SRLY同様の規定が適用される場合には、Section 382とのOverlap規定もNOLみたいにできるんだろうか。う~ん、いろいろと複雑。
一点Good Newsとしては、 旧アーニングス・ストリッピング規定と異なり、連結納税を選択していないグループ、または外国親会社経由で構成される広範なグループに対するグループ計算は規定されない。この点は旧アーニングス・ストリッピング規定下でも法律そのものは連結納税グループのみを合算するとしているのに、規則案が暴走して広範なグループもみなし連結納税グループとしてしまったための弊害で、みなし持分とかも適用させられて、まともに準拠しようとすると細かい部分でとても変な結果になることがあった。今回はそんなレッスンから学んだのか、本当に連結納税をしているグループのみ一社として扱うとしている。
次にE&P(アーニングス・アンド・プロフィッツ)への影響。E&P計算時にはSection 163(j)で損金算入が制限されているかどうかにかかわらず、支払利息は発生ベースで取り込むとしている。
Section 163(j)はパートナーシップに関してはパートナーシップ事業主体レベルでの適用となっている点は上述したけど、ここは実際の適用時に問題山積み。今回のNoticeでは、パートナーシップの部分はほとんど触れられていない。唯一、パートナー側でネット支払利息額の算定を行う際に、パートナーシップから配賦される受取利息全額を取り込むことは認められず、パートナーシップのネット受取利息のみを加味することとしている。それはそうで、パートナーシップレベルでまずはネット支払利息を算定することになるので、その際に受取利息は一旦加味されている。それを再度まるまるパートナーが取り込んでしまうとパートナーシップレベルの受取利息は同じ金額なのに2回枠を作りだしているような結果になり兼ねない。Floor Financingにかかわる支払利息も同様で、パートナーシップレベルのFloor Financing利息はパートナー側の枠の計算時に再度取り込んではいけないとしている。
と、まあまあクリアになった部分もあるけどパートナーシップへの適用に関しては規則案で相当きちんと規定してくれないと適用時に不明な部分が多い。また、BEATとの関係は散々明確にしているけど、他の制限、特にAnti-Hybridとかの影響も考えないといけないのか、という点は不明。更にSection 163(j)をCFCレベルで適用するのかどうかに関してもNoticeは触れていない。この点はGILTI計算に大きな影響を持つので慎重に検討の上、規則案で明らかにされるんだろう。これらの不明点は忘れているとか、問題として認識していないということでは一切なく、「敢えて」Noticeでは触れなかったと見るべきで、それだけ扱いの最終化に苦慮しているということだろう。
Subscribe to:
Posts (Atom)