約2か月前の3月13日にトランプ関税の最高裁判決に関して書いて以来のポスティング。米国税務に戻るんでInbound Fの話しだと思ってたんだけど最近いろんなところから「カリフォルニア州のユニタリー課税がWordwideになるってとんでもない法案があるんですけど可決する可能性はありますか?」みたいな質問が多いんで今日はこの点に関して。
でも、その前に米国でも特にポリティクスに関心ないような状況でも何かと「どうなってんの?」みたいに話題にならざるを得ないイラン攻撃についてジムとかカフェで周りの普通の人と話して感じる肌感覚について。前回の3月13日ポスティング段階では2月28日に米国がイランを攻撃するっていう驚愕の出来事から2週間経ったところだったけど、その後も規律のない感じで終わりが見えない。米国による攻撃そのものは議会のネオコンやイスラエルロビーの歴史的な力を考えると極端に意外には映らないけど、驚愕で不思議なのはそれを実行したのが歴代の大統領じゃなくてトランプだったっていう点。
米国レガシーメディアの影響で(?)、日本ではトランプはとんでもない大統領っていうイメージが定着してるかもしれないけど、2024年の選挙で7千7百万人もの米国有権者、特にEveryday Peopleや従来であれば共和党には投票しなかった若者に指示されて大統領になっている。そんな有権者がトランプに託した最後の願いは何だろうか。願いはひとつじゃなかっただろうけど、米国政府は支配階級エリートのためではなく「We the People」、すなわち米国一般市民のために存在するっていう憲法が定める国家統治に戻して欲しいっていう期待だろうね。議会にしても大統領にしても2年や4年に一回選挙で誰を選んでも結局、市民の利益は重要視されることはなく、国は強大なマシーンに乗っ取られてしまったっていう一般庶民の無力感・失望感を代弁してくれる人物が現れたんでマシーンと戦って市民に主権を取り戻してくれるかもっていう願い。これがMake America Great Again(MAGA)Movementで、巨大なマシーンはDeep StateとかForever Government、外交面ではBlobとかいろいろな表現があるけど、一般有権者の意思や選挙サイクルとは関係ない独自のエコシステムっていうのがポイントだろう。
ブッシュ(シニア)、クリントン、ブッシュ(ジュニア)、オバマって大統領の政党は入れ替わるけど結局Uni-Party的に何も変わらないし、中東や欧州のコンフリクトへの関与(っていうか影の主役?)とか一般庶民には理解できない。他にもついていけない政策や価値観は多く、そんなOut-of-touchな政策に我慢できずに期待を託して第二期トランプ政権が誕生した。2016年の第一期トランプ政権はワシントン新参者だったんで、ロシア疑惑、弾劾裁判、徹底的なLawfare(数多くの民事・刑事訴訟)、2回(最近の事件も加えると3回。実は他にもSecurityのBreachは複数回あったという話し)の暗殺未遂っていう普通の人なら二度と立ち直れない状況に追い込まれる。それでも戦い続ける不屈の精神(?)に「まさか自分じゃマネできないな~」って応援する者が増えて2024年は2016年を上回る得票数で奇跡のCome Back。DCのパワー構造も以前より理解した第二期は就任初日から電光石火のスピードで公約を実行してた。その後、エプスタインや自分の暗殺未遂を含む多くの謎の徹底解明は滞り気味だったり、高止まり気味の物価を下げることができずに不満は燻り始めてたけど、投票した有権者の多くはバックアップしてたように見えた。
そんな中2月28日のイラン攻撃。しかもミュンヘン安全保障会議やState of Union演説で従来通りAmerica First政策をDouble Downした直後。トランプに投票した有権者の多くは「ええ~。嘘でしょう。戦争始めないってズ~っと言ってたじゃん。なんで自らネオコンになってんの~」って大ショックだっただろう。彼らのこのショックって最後の願いを託したトランプに裏切られたっていう点もあるだろうけど、あれだけ強固な精神を持った変わり者でも結局敵わない「何か」が米国には存在するんだっていう否定し難いダークな事実を目の当たりした点の方が大きいのでは?西洋の支配階級エリートが連呼する民主主義って今となってはIllusionって感じる一般市民が増えてる中、有権者の手で何かできるとしたら統治制度的に世界でも米国だったんだろうけど、そこで暗礁に乗り上げ気味な状況。う~ん、これから米国、世界はどうなるんでしょうか。
カリフォルニア州Wordwideユニタリー課税
米国でも高税率、過剰規制、高コストで常にAnti-Businessの最先端を行くカリフォルニア州。大手ハイテクの創業者たち本人の多くはとっくにTexas、Florida、Nevada州等の州外に引っ越してしまってる。州税法は資産課税が憲法的に認められない連邦税法と異なり、Wealth Tax(富裕層の資産時価に課税する税制)とか州議会が通せば可能だからカリフォルニア州脱出はますます拍車が掛かるかもね。ただ、カリフォルニア州のWealth Taxは可決されると2026年1月に過去遡及するっていうことだから既に手遅れ?AlphabetのSergey Brinはチャッカリ1月前の滑り込みセーフでNevadaに脱出してしまった。
法人税の世界でも「ユニタリー課税」っていう面倒な概念をカリフォルニア州が取り入れたのは1930年台っていうから「さすが」。その辺りの州立法の変遷はチョッと混沌としてるけど、州税務当局(Franchise Tax Board (FTB))は当時からこのユニタリー課税をWordwideに当然の権利のように適用してた。「Wordwideのユニタリーなんてとんでない!」って思うかもしれないけど制度としてはその昔に定着していたものに戻るだけ。Get back to where you once belong!90年前半はWordwideで申告してる日本企業もあって、実際にWordwideユニタリーの申告書を作成した経験がある。う~ん今となってはいい経験(?)
ユニタリー課税って何?
ユニタリー課税の話しをするには州法人税の基本的な姿に触れる必要がある。さらに州法人税の姿を理解するには憲法に触れる必要がある。州税の勉強は各州独自の税法を知るっていうよりも憲法、特にCommerce ClauseやDue Process Clauseの勉強だからね。
州税と連邦税
チョッとラフに言ってしまうけど、米国は州が先に存在したんで1776年に独立戦争その他の理由で連邦政府で国になる際の決め事として通常国家主権に生得的に認められると考えられるWelfare、Taxing、Policeパワー等は全て州に帰属し、連邦政府は憲法が明言する特定の事項だけを管轄するっていう制度(Federalism)が誕生した。でないと全州(当時は13州)による批准が困難だったからだ。特に課税権に関してはIEEPAのポスティングでも触れた通り「課税権はDestroyする力」として最も恐れられ、州は州議会で可決させればWealth TaxにしてもIncome Taxにしても法的には何でも可能な一方、連邦政府にはIncome Taxや資産税の課税権は認められなかった(正確には課税する際には州の人口数に基づいて負担を配賦等の縛りで実現は実質不可能)。1913年に戦費が嵩み、16th Amendmentが批准されて初めて連邦政府にIncome Taxを課す権利が認められる。それまで100年以上、連邦の歳入は関税(苦笑)、タバコ税や酒税が主だった。ただ1913年前にも「Excise Tax」の名でIncome Taxめいた課税は散見されたようだけどね。1909年のActは、名称はExcise Taxだけど米国源泉の事業所得は実質ネット課税とか。1913年頃から今でもお馴染みの「US Trade or Business (USTOB)」的な概念があり、後年Withholding Taxとして定着する米国源泉所得のグロス課税も既に導入されている。日本だと明治時代から大正時代に移るころの話しだ。
1936年には今日のインバウンドクロスボーダー課税の原型がほぼ出来上がっていてUSTOBに従事している者(正確には今のCodeにも864とか865辺りに片鱗が残る「an office or place of business within the United States (USOPB)」もUSTOBと同列だった)にはネット課税、USTOBに従事せずに米国源泉の投資所得を得ている者にはWithholding Taxっていう制度が確立された。ただForce of Attractionって言ってUSTOBやUSOPBがあると米国源泉所得はUSTOBやUSOPBに関係なくても全てネット課税だった。USTOBがある場合、ECIのみがネット課税っていう現在の制度は1966年まで待たないと登場しない。Activityテスト、Assetテスト、またはチョッと特殊なローンオリジネーション系の所得カテゴリーに属さない所得、主に棚卸資産を含む米国源泉の動産譲渡益は何らかのUSTOBがあればUSTOB活動と関連していてもしていなくても自動的にECIっていう概念は1936年から存在したForce of Attractionの片鱗だ。これが理由でResidual Force of Attractionって言われる。連邦税の話しじゃなくて州税だったよね。ついついインバウンド課税で興奮してしまいました(ゴメン)。
連邦は連邦でややこしいけど、州には連邦には見られない特殊な問題がある。すなわち米国企業でも必ずしも各州に課税権があるとは限らない点、そして課税権が認められても単州でオペレーションしていない限り、企業の所得全額を課税対象とはできない点だ。50州で全額課税されたりしたら課税所得は所得の5000%だからね。これらは憲法のCommerce ClauseやDue Process Clauseに基づく制限。
Nexus
で、憲法に基づき州の課税権は州と納税者に何らかのミニマムなコンタクトがないと認められない。どこの州の裁判所がPersonal Jurisdictionを持つかって言う話しに似てるけど、課税権に至るミニマムコンタクトを「Nexus」っていう。米国で申告したりしている皆さんにはお馴染みの用語だね。Nexus Studyとか。このNexusも制度的には各州の法律で決まるけど、大概のケースで憲法上、Nexusが認められる最低限のレベルが規定されてるんで、USTOBどころの騒ぎではないほどいとも簡単にNexusができてしまう。1日従業員が出張に行ったとか…。もちろん実務的にどこまでやるかっていうのは各社合理的な範囲で判断せざるを得ないけど、M&AでターゲットのDDすると「この州にNexusがあり得るけど申告してない」みたいなFindingが出てくることが多い。同じNexusでもIncome TaxとSale Taxでは異なったり、Commerce Clauseの適用が米国企業と外国企業で異なったり込み入る検討だ。
Apportionment Factor
で、Nexusがあると課税権は州に認められるけど、その上で州は企業全体の所得のうち自州に帰する額を算定しないといけない。これも憲法に基づく判例でApportionment Factorって言われる分数で配賦する。従来はSales、Payroll、Assetの3つの平均だったけど、雇用や投資は優遇したいっていう背景でSales FactorがDouble Weight(Sales Factorだけ2倍にして全体を4で割る)になったりし始めて、そのうちそんなパフォーマンスもまどろっこしくなったのかSales Factorだけにしてしまった州が多い。
Apportionment Factorの適用って、本来であれば企業が各州に持つ機能・リスクを基にArm’s-Length Principle(ALP)で各州に落ちるべき所得を認定する代わりにフォーミュラを利用しているもの。「一企業の中で州毎にALPの計算何てできる訳ないじゃん」って思うかもしてないけど、実はOECDのPE帰属所得(Article 7)の計算は一つの法人の所得を架空の本支店間の契約に基づき機能・リスクを認定し、その上で通常のALP(Article 9)を適用するっていうもので、通常の移転価格(Article 9のみ)以上に、その適用前段階で困難な概念。PE帰属所得の認定時にこのOECDのコンセプトを反映した米国の条約は多くないけど、日米租税条約のArticle 7はそんな数少ないOECD型なんだよね(RIP…)。米国では架空の機能・リスク訳に基づく本支店間のフィクションはあくまでのPEのネット所得を特定するためだけの目的で、実際に本支店間に取引がある訳ではないっていう考え方が原則だけど、BEATの財務省規則だけは変で、Internal Dealingとか言ってフィクションを実際にあるかのように規定してるんだよね。
ALPの代わりにそのProxyとしてApportionment Factorで各州に帰する所得を決めるっていう手法は最高裁でも合理的ってお墨付きをもらってるんだけど、これを係争が多いALPベースの移転価格にも流用したらどうか、っていう話しは古くから燻ってるんだけど移転価格の専門家からしてみるとALPは科学的に見える一方Apportionment Factorは妥協が過ぎるって移るのかTake Offしない。ゾンビになったピラー1のAmount Aとか言い出すまでOECDはALPの守護神だったしね。Amount AはALPとフォーミュラベースを共存させるっていう無理な設計。ALPベースの移転価格に関して余りに係争が多いのはそうだけど、州税の係争を見てるとApportionment Factorにしたからって実務負荷が下がるとは思えないよね。究極的には2017年の米国税制改正で提案されてたDBCFT的な制度にしてしまえばALPもApportionment Factorも不要になるけどね。Apportionment Factorを適用する州税の世界では一企業内で低税率州にBase Erosionしたりすることはできない。う~んBEATも要らないね。
ついついイランとかMAGAとかに触れてしまったこともあり長くなってきたんでここからは次回。今日のところは州税は「Nexusがないと課税できない」そして「Apportionment Factorで自州に帰する所得をフォーミュラで算定する」っていう2つの原則を覚えて頂ければOK。
次回はこの原則適用時のユニタリー課税の考え方に関して。