Tuesday, July 26, 2022

失速BBBAの法案に見る米国税制の方向「Leveraged Spin」(6)

前回のポスティングでは、主にLeveraged Spinに対する規制強化を狙ったBBBA法案のオリジナルバージョン文言の混迷ぶりに触れた。その後、法文とは異なるJCTの説明文が出た後、BBBA法案自体もアップデートされ、趣旨的には出資資産の簿価はまず最初にControlledによって継承される債務で減額され、与力があれば、その金額がBootとSecurities双方の非課税枠となるというものに変身した。普通そうだよね。セカンドアルバムにしてようやく真価を発揮した感じ。

セカンドアルバムと言えばもちろんビートルズの「With the Beatles」! UKデビューアルバムの「Please Please Me」に続くUK第二弾だ。ビートルズ好きな人なら知っていると思うけど、本国UKのEMI/パーラフォン・レーベルと米国子会社キャピタルレコードでは発売されるアルバムや同じ名前のアルバムでも収録曲やジャケットが異なる。SGT Pepperでさすがに統一されたけど、その直後のMagical Mystery Tourでまた乖離。その後のWhite Album、Abby Road、Let It Beは同じ。

特に初期のアルバムは両国で全然違ってて、米国デビューは「Meet the Beatles」。米国のアルバムってUKではシングルとか、4曲で構成されるEP(そんなもんみんな知らないようね~)でしか公表されてない曲が入ってたり、それらをCompilationして独自のLPが出てたりして無茶苦茶。ジャケットのデザインも米国は独自。ジャケットにしたってアーティスト側は考えてデザインしてるはず。ビートルズ自身やプロデューサーのGeorge Martinにとって米国キャピタルレコードの勝手なアルバム構成やランダムな公表は結構なフラストレーションだったらしい。キャピタルレコードはEMIの子会社だったんで余計に理不尽。子会社のくせに、って。のび太みたい。それはそうだろう。デビュー当時はともかく、アーティストとして高度な作品をアルバムでパッケージとしてプレゼンしているRubber SoulやRevolverに至っても米国バージョンは収録されてる曲数が少なく、あれじゃ意図した作品にならない。インパクトやメッセージが全然伝わんないよね。

日本ではどっちかって言うと初期は米国キャピタルレコードに準じるリリースだったはず。小学生低学年の頃はどうせLPなんて買えなかったからあんまりシリアスな問題じゃなかったけどね。でも、当初米国のパターンを踏襲していた日本では、本国UKのデビューLPのPlease Please Meとかリリースされてないので街には存在してなくて、新宿とか売ってた「輸入盤」もほぼ米国バージョンだったんで、Please Please MeのLPは限られたオタクな友人の間では幻のLost Arkみたいな伝説の存在だった。そこで、その昔、国外出張なんてめったになかった父が珍しくロンドンに出張した際に、お願いして買ってきてもらったのが懐かしい。デビュー曲のLove Me DoもUKシングルバージョンだけ別Takeって噂で聞いてたんで、Love Me Doのシングルもついでに買ってきてもらったんだけど、UKのシングルって表紙とかないんでビックリ(少なくとも父が買ってきてくれたやつは)。ただ白い紙のスリーブにレコードが入ってるだけなんだよね。レコードは真ん中に大きく「45RPM」って書いてあってタイトル「Love Me Do」ってあるだけ。それが逆に「本場」っぽくて気絶しそうに悩ましかったのを覚えてる。闘牛士にはならなかったけどね(ギター好きな人なら何言いたいか分かるね?)ちなみに記憶に残ってる父の海外出張はロンドン以外だとナンとベイルート。実家にはいまでもベイルートの遺跡の写真がいっぱい飾ってある。今ではなかなか行けないよね。

で、日本のビートルズLPのリリースって最初は米国リリースをフォローしてたようだけど、途中からいいとこ取りみたいになり、確かHelpの頃は既にUKバージョンに準じてた。米国バージョンのHelpはピュアにサントラで、映画で使用されているビートルズ以外の楽曲が半分くらいを占めててチョッとRip-Offっぽい感じ。A Hard Day’s Nightも同じ。米国では映画会社のUnited Artistsが出版してたからしょうがなかったかも。でも、A Hard Day’s NightのUKバージョンは本国UKでは第三弾のアルバムで、前作2枚と異なり全てオリジナル作品で構成されている。まだLennonがドミナントだった頃で、13曲中9曲に関して主たるComposeそしてリードボーカルを担当してる。また、Harrisonの曲はゼロで、Starrのボーカル用にLennon・McCartneyがプレゼントしてる曲もない。全曲、質が高く、すでに実力が開花しまくってて通常のロックグループのコード進行とは一線を画す曲も多い。以降のさらなるBreakthroughを十分に予感させてくれるアルバム。これをバラバラにして異なるジャケットで出版してしまう米国独特のセンス、って一体なんなんでしょう。

で、一線を画すコード進行って言えば、UKセカンドアルバム「With the Beatles」の一曲目にいきなり登場してBlown Awayされる「It Won’t Be Long」。小さいころ英語の意味わかんなかったけど、要は「もう直ぐ」ってことだよね。この「Be Long」と「till I belong to you」の「Belong」をかけてる。「Please Please Me」の通常の「Please」と動詞の「Please」を並べてるのに似たDouble Meaning的な言葉遊び。「Yeah」の掛け合いが「She Loves You」を彷彿させるけど、それもそのはずで、It Won’t Be LongをアビーロードのEMIスタジオで録音したのは、She Loves Youのレコーディング直後だったそうだ。どっちもノリノリで今聞いてもすごい曲だけど、It Won’t Be Longは最初のサビ(Every Nightで始まるところ)がなんと7小節なんだよね。Rockで7小節ってチョッとノリ悪いんじゃない、って思うかもしれないけど、一瞬アレって思わせる斬新な効果はあるものの違和感ゼロで凄い。しかもその部分のコード進行って、It Won’t Be LongはE Majorの曲なんだけど、EからいきなりCに行くんだよね。そもそも曲のオープニングがマイナーだし。EからCに行く際も最初はアレって感じるけど、それがまた気持ち良くて2回目からはすごく自然な進行に感じられる。コード進行を考える際にC調に置き換えるとその関係が分かり易いけど、EとCの関係って、C調だったらA♭。う~ん、いいね。

さらにその次のブリッジ(「Since you left me」で始まる部分)のコード進行は常軌を逸してる(大げさ?)。Bob Dylanをして「It Won’t Be Longのコード進行はOutrageous」と言わせたくらいだ。Lennon曰く「ビートルズがIt Won’t Be Longで「Aeolian cadences」を利用しててすごい」ってロンドンタイムスが品評したことで、ティーンのファンを超えて中流階級のオーディエンスを酔わせて獲得する契機となったそう。Lennon自身はもちろん「Aeolian cadences」みたいな理論でコードを構成したつもりはなく、直観で作曲したんで、Aeolian cadencesって言われても何のことかチンプンカンプンで、珍鳥の名前かなんかだと思ったそうだ。実際にはロンドンタイムスの品評は同じくWith the Beatlesに収録されている「Not a Second Time」の話しだったという説もあるけど。Aeolian cadencesって要はコード進行の話しで、Aeolian自体はマイナースケール同様で、最後の音のひとつ前の音に当たる6度がフラットになってるもの。って言ってもBidenのBBBAのオリジナルバージョンと同じくらい何言ってるか分かんないけど、It Won’t Be Longで言うと、ブリッジは「E->D#+5->D6->C#7」って半音下降して、そこから「A->B->F#7->B7」って流れてく。そこからまた例の7小節の「E->C->E」に。エンディングはShe Loves Youが6thなのに対しIt Won’t Be LongはMaj7(僕は個人的にユーミンコードって呼んでたけど)。しかも最後にBreakがあって、また別の半音下降で「G6->F#6->F Maj7->E Maj7」って。凄い。でも結局It Won’t Be Longってシングルカットもされず、ライブ・パフォーマンスの記録もない。ビートルズってそういう隠れた名曲多いよね。

BBBA法案ではSecurities交付はどう課税されるはずだったか?

すっかりセカンドアルバムってところから話しが脱線してしまったけど、前述の通りBBBAの改定法案では出資資産の簿価から継承債務を差し引いた残りの与力は、BootだけでなくSecuritiesも加えた総計が非課税となるかどうかの判断に用いられる。概念的にはそれでやろうとしていることと整合性が生まれてスッキリする。すなわち、債務継承、現金等のBootを使用してDistributingの既存債務返済、Securitiesを利用してDistributingの既存債務返済、の3通りのLeveraged Spin手法全てに簿価制限を適用している。なんだけど、それでも細部は難しい。法案では、詳細は財務省に規則作成権限を付与してるんで、もしBBBAができてたら財務省が苦労して規則を策定したのだろう。2017年のTCJAがらみの規則もまだまだ出揃ってないんで、BBBAが頓挫してまたTCJAの規則策定作業に戻れることになったね。PTEPの規則とか2021年中には出てるはずだったのにどうなったんでしょうか。そろそろだよね、さすがに。

11月3日の改正法案をよく読むと不明点というか、実際の適用時に直面したであろう複雑性が浮かび上がる。BBBAによる手当ては、Securities利用に対抗するため、Securitiesに関しては、DistributingがControlledのSecuritiesを受け取った後、それをDistributingの既存債権者、通常は投資銀行、との間で債務をスワップする部分を課税取引とするものだ。すなわち、もともとDistributingがControlledに資産を出資した際の含み益課税とは異なるステップに対する課税になるけど、Securitiesと既存債務の交換に関して簿価が不足してて課税って、それは一体どんな性格の取引なんだろうか。現状ではSecuritiesの分配はDistributingにとって通常非課税になるようにストラクチャーするんで、あまり深く考える必要はないんだけど、課税になる部分があるとすると、それは資産交換、すなわちSection 1001の通常のGain/Lossの算定をすることになるんだろう。

Gain/Lossの算定をするには、当然Securitiesの簿価を決める必要があるよね。それって結構複雑怪奇で、この話しをするにはSection 361を解剖、じゃなくて分解する必要がある。Section 361って買収型の組織再編とスピン時のD再編の双方に適用があるんでかなり分かり難いけど、実はスピンを想定して考えるほうがSection 361の真価を理解し易い。ということで次回はSection 361を若干In-Depthに攻めてみたい。楽しみにね!