前回は、スピン時にControlledに債務を付け替える手法として、単純に継承させる方法およびControlledが借り入れをして現金をBootとしてDistributingに交付し、この現金を使ってDistributingが既存の債務を返済する方法、という二つの原始的なものが存在し、これら双方の手法は付け替える債務の金額がD型再編時に出資される資産の簿価を超えると、Distributingに課税が生じる点に触れた。ちなみにIRSによるRuling(事前個別通達)を申請する際には、返済対象となるDistributingの債務が、スピンを念頭に急に借り入れられたものでない点、また債権者が関連者でない点、等の追加のRepが要求される。これは法律と言うよりは、Ruling時のガイダンス。
ソフト事業とハード事業の例でみると、ソフト事業をスピン目的でD型再編で子会社化する際、Corporate Finance的な見地から適正なレベルの負債をソフト事業に非課税で付け替えることは、出資対象資産の税務簿価が十分に存在しないと不可能。無形資産のように簿価がない資産が多いっていう仮定だと、大きな課税を覚悟せざるを得ない状況となり、スピンを実行するメリットが大きく低減する。
で、そこで登場するのがControlledが株式と同時に「Securities」をDistributingに交付し、このSecuritiesをDistributingの債権者に分配、すなわち既存の債務と交換するという第三の手法。Securitiesの交付・分配がD型再編時に適格交付資産になると、出資対象資産の税務簿価に基づく金額のLimitationがない。この点をうまく活用すると、経済的にソフト事業に配賦されるべき合理的な債務額を出資資産の税務簿価に囚われずに付け替えることができる。
ControlledのSecuritiesの利用法。
僕が最初にLeveraged Spinに興味を持った当時、というと結構昔の話しでThe Beatles時代には遡らないにしても、Paul McCartneyがツアーでようやくThe Beatlesの曲を多めにフィーチャーするようになってきた頃(Drive My Carで始まるセットは良かったよね。その後のHello Goodbyeで始まるセットはPost-LindaだったせいかもっとThe Beatlesだったね)なんだけど、D再編時にControlledがDistributingに交付するSecuritiesを、Distributingが実際に既存のBondholderと交換したりしてた。それが達成したいEnd Resultsではあるんだけど、かなりの手間だよね。
そこで、投資銀行が仲介するより効率のいいストラクチャーが徐々に浸透する。このパターンの初期ストラクチャーは、投資銀行が既存のDistributingのBondをオープンマーケットで買い集めてDistributingの債権者を一元化した上、ControlledのSecuritiesと交換するというもの。格段に取引の効率性が高くなる。で、ControlledのSecuritiesを受け取った投資銀行はこれを市場に再販するんで、元々Distributingの債権者だったBondholderのうち、引き続き投資を継続したい場合にはControlledのSecuritiesを取得すればいいし、換金したままでいいケースは、元々投資銀行によるBond取得で現金を受け取っておしまい、ってことになる。これらの一連の取引ステップは一環したプランに基づき実行される。
投資銀行が仲介するパターンは、個々の債権者と直接債権を交換する手法に比べて格段に効率はいいけど、それよりも更に効率のいいストラクチャーに進化していく。投資銀行にDistributingが一旦直接債務を発行する手法だ。この最新型のパターンでは、スピンに関連して、Distributingが投資銀行から直接一旦借り入れをする。その際に、この債務はスピンのD再編時にControlledがDistributingに交付するSecuritiesで直後に返済されることが合意される。Distributingは投資銀行から借り入れた資金を使って、既存のBondをCallして返済してしまう。後は予定通り、ControlledのSecuritiesでDistributingの投資銀行からの債務を返済し、投資銀行はControlledのSecuritiesを市場で売却する。結果は同じだけど、取引効率は更に改善する。
Securitiesとは?
Securitiesを活用したDistributingの債務のControlledへの付け替えは、実態としては債務の継承に近い。にもかかわらずSecuritiesを使うストラクチャーには簿価制限がないとなると、何がSecuritiesなのか、っていう単純な検討が最重要になる。Securitiesって、他の局面でも使用される用語なんで注意が必要。例えば、Section 165(g)で無価値になった場合にみなし譲渡損が認められるのも対象はSecuritiesだけど、Section 165(g)の目的では法人の債務の多くがSecuritiesに区分される。一方、組織再編時のSecuritiesは税法には定義がなく、Common Lawでその意味を理解する必要がある。
Common Lawの性格から、機械的なテストがある訳ではないけど、基本的な基準はSecuritiesがEquityに近い長期に亘るProprietary持分に当たるかどうかっていう点。その際に返済原資が事業にリンクしているかとか複数のファクターを加味して総合的に検討する必要があるとは言え、結局のところ決め手になるのは債務の返済期間だ。Law FirmやBig-4のNational Officeによってリスク許容度は若干異なるものの、一般的には7年程度と考えられている。5年を切るNoteを組織再編目的でSecuritiesと言ってくれるLaw Firmはないんじゃないかな。
スピン+RMT+DeSPACでSPACが所有する現金をどうやってDistributingに戻すかっていう点が難しい検討になる、って前回触れたけど、スピン時に現金を直接Distributingに戻すことができるのは資産簿価が限度で融通が利かない。そこでSecuritiesを活用できないかな、っていう検討になるけど、Controlledが交付するSecuritiesを適格資産とするためには債務を7年間アウトスタンディングにする必要がある。Controlledに現金ニーズがあれば、それでもいいのかもしてないけど、De-SPACしてControlledに現金が移管されるにもかかわらずSecuritiesに基づく債務を長期に亘り返済することができないと、変なバランスシートになってしまう、っていう点にどうアプローチするべきか、っていうCorporate Finance的な検討が必要となる。
Securities活用に対する財務省の反応
という訳で、SecuritiesはLeveraged Spinのストラクチャリングには欠かせないツールだけど、チョッと便利過ぎてIRSの反応が怖い(?)、って思うよね。特に投資銀行が仲介するパターンでは、Distributingが投資銀行から融資を受ける時点で、既にControlledのSecuritiesで返済することが決まっている。スピンとかの話し以前に、素人でもこれって本当の債務者は最初からContolledなんじゃない?って疑問が出てくるよね、普通。真の債務者の特定に関しては、Southwest ConsolidatedとかPlantation Patternとかの判例を考えると、一般的には最初からControlledじゃん、って言われてもおかしくない。でもLeveraged Spin時のこの点に関するIRSのスタンスは寛容で、Distributingを債務者と見てくれると考えていい。チョッと長くなってきたんで、IRSの反応に関してはもう少し詳しく次回。