それにしても凄まじいお金の使いぶりだ。3月のAmerican Rescue Plan(コロナ対策)、American Jobs Plan(インフラ)、American Families Plan(社会保障)を合計すると何と$6Tの歳出。
$6Tって巨額過ぎてピンと来ないんで、どうやって肌感覚で理解するべきか苦労するけど、例えばこれを10年かけて使うとすると、今後10年間毎日、1,650億円使うことができる計算になる。10年間毎日。こんなお金を使うべきかどうかは、金額の規模そのものもそうだけど、使い道もよく考えないといけない。DCのポリティシャンたちにこんな巨額のお金を渡し、それを賢く、かつ透明性高く、規律をもって使えるか、っていう点だ。既に可決済みのコロナ対策American Rescue Planを見る限りどうだろうか。$2Tのうち実際に市民に直接的に恩典があるのは10%程度。他はコロナに関係あるものないもの、民主党とコネがある団体、セクター、財政規律に欠けてコロナと関係なくもともと財政が逼迫してた州の救済、等盛りだくさん。結局のところ民間企業と異なり業績管理とか株主とかSECとかない訳だから、無駄が多く、透明性には欠け、またそもそもDCのポリティシャンにクリエイティビティとか期待できないし、もっと民間の力を活用した方がいいのでは、って思ってしまう。社会政策で最低限必要な部分は政府、それ以外は民間ってして、ポリティシャンはPrivateセクターが余計な規制や過度な税金で苦労せずに創造力を最大限発揮できるような環境を整えて欲しい。
American Families Plan
先日公表された個人所得税増税案を含むAmerican Families Plan。ファミリープランね。歳出側としてはPre-Schoolや短大の無償化を始めサンタさん、じゃなくてサンダース大統領の政策の多くが具現化されている。ゴメン、大統領はバイデンでした。きちんと運用してくれるのであれば国民に対する投資なので悪いお金の使い方ではない。無駄使いや財源の当てのない公務員年金プランとか、財政規律のない州政府の救済とか、余り有益でない規制を増やしてそれを監督するための組織費用とか、に比べれば国民の教育や健康維持に税金を使うのは払う側として納得感が高い。その際、恩典を受ける側の責任というか、どの程度、短大で頑張る必要があるのか、とか、そんな資金を受け取る学校側の体制が十分か、等の付随議論も忘れずに徹底して欲しい。ホワイトハウス案ではそこは未定。
税額控除拡充案
税金って言っても歳出側に属する策だけど、税額控除を拡充させようという提案。そのうちいくつかはコロナ対策American Rescue Planで既に時限立法された規定を恒久化しようというもの。政府を肥大化させる際の常套手段と言えるけど、まずはクライシスを演出し、国民がビビったところで時限立法。そして後日、恒久化という流れだ。失業保険にしてもそうだけど、もちろんもらう側は長期に亘りもらえる方がありがたいのは当たり前。問題はより多くの国民が政府の支援に頼り始めるってことが貧古層からの脱出や、総合的に国民の健全な生活に繋がるのか、っていう問題。勤労意欲への影響や雇用を必要とする事業主、特に個人事業主、の求人や人件費への影響。これらの施策はデータ的には必ずしも効果的ではないようだし、そもそもせっかく個人が自由を謳歌できる米国で、実質政府に食べさせてもらっているような状況になると、管理される側としての独立性が失われるよね。このバランスをどう考えるかは最終的には各国民が投票と言う行為を通じて参政し決定されていく。
で、恒久化や改訂が提案されているのは、子女税額控除、扶養家族介護税額控除、低所得者勤労税額控除。子女税額控除に関しては元々コロナ前は$2,000だったんだけど、6歳以上の子に関しては$3,000に、6歳未満のケースは$ 3,600への引き上げられていて、これらを恒久化。さらに子女税額控除額が算出税額を上回る場合に差額を現金還付する還付方式の税額控除に変更するとしている。
次に13歳未満の子女および一定要件を充たす他の扶養家族にかかわる保育や介護費用の50%税額控除額の上限額を$4,000に拡大恒久化。$4,000は対象者が1名の場合で、2名以上の場合は$8,000が上限となる。3人いても$12,000にはならない点に注意。
さらに低所得勤労税額控除の適応対象を子女のいない勤労者にも拡大するという新規定を提案している。
ちなみにこれらの恩典はもちろんだけど所得制限がある。
増税案
一方で巨額の歳出をファイナンスする側の増税案内容は大概においてバイデン選挙活動中の提案に準じるもの。とは言え、改めてキャピタルゲインが連邦所得税だけで43.4%にしないとフェアではないと言われるとM&Aとかのストラクチャリングを考え直さなきゃ、って思うけどね。キャピタルゲイン増税を含むバイデン政権個人所得税増税案に関しては次回詳しく。