Thursday, August 6, 2009

時代に逆行(?)アメリカ国際課税ルール(12)

前回のポスティングでは米国税務目的で算定される外国子会社のEarningsを圧縮することによるマジック、また圧縮テクニックとして常套手段として用いられる海外子会社買収時のSec.338選択に関して触れた。

*オバマ政権による改定

以前のポスティングに書いた通り、改定案では、米国が海外子会社から配当を受け取る際に、みなしで支払ったと取り扱われる外国の法人税の金額を「外国子会社の合算」ベースで計算することと規定している。すなわち、仮に累計Earningsと比べて累計法人税額が高い、いわゆる「High Tax Pool」を持つ外国子会社から配当を受け取ったとしても、その配当に対して外国で支払われたと取り扱われる外国法人税は、High Taxプールの子会社のみのEarningsと法人税で算定する(従来の方法)のではなく、「Low Tax Pool」を持つ外国子会社を含む「全ての外国子会社」のEarningsと法人税の「合算額」に基づいて算定する必要が生じることとなる。

となると、従来のように「High Tax Pool」を持つ海外子会社だけを「つまみ食い」して配当させて、高額の間接外国税額控除を取るという手法は認められない。

*算定法

改定案に基づく具体的な間接外国税額控除の算定法は次のようなものとなる。ある年に間接外国税額控除の対象となる外国法人税は、その年に外国で計上される外国法人税に「その年に配当(Subpart F等に基づくみなし配当額を含む)され米国で所得認識される金額」と「その年の外国子会社のEarningsの合計額」の比率を掛けて決定される。

この算定式に基づいて、間接外国税額控除の対象とならない金額は「繰延外国法人税」となり、将来に繰り越される。繰延外国法人税は毎年累計され、将来、繰延Earningsが米国に配当された時点でその配当額が繰延Earningsに占める比率に基づいて間接外国税額控除の対象となる。

*米国多国籍企業の対応策

この改定案が本当に法律化されるとなると、実際に法律が効力を持ち始める前に「High Tax」プールからの配当を緊急に実施するなどの対策を実行する米国多国籍企業が多いだろう。合算で平均レートを用いることになっても、個々の外国子会社の実効税率は高いに越したことはなく、その意味で今後もEarningsの圧縮は継続される。その効果が以前ほどではないということだ。

Earningsがマイナスの外国会社がある場合には、合算ベースでの実効税率の算定にプラスの効果が出てくる。

また、今までは配当を行わない会社のEarnings(=E&P)の算定は比較的簡便に算定していたようなケースもあるが、今後は全ての海外子会社(CFCではないが、間接税額控除の対象となる10/50法人を含む)のEarningsを毎年きちんと把握しなくてはいけないという実務的な副作用もある。

*直接外国税額控除との関係

現時点での改定案を見ると、今回の改定は間接外国税額控除のみに影響がある。配当に対する源泉税等に適用される直接外国税額控除には特に影響がない。

次回のポスティングでは外国税額控除に関して提案されているもうひとつの改定案に関して触れる。