前回はオバマ政権による米国国際課税の強化案の一つの柱となる「Anti-Deferral」に関して触れた。基本的にマッチング・コンセプトであると書いたが、最近行われた会合で財務省もまさしくこの点に触れ、所得は海外に留保している(=米国では未だ課税されていない)一方で、費用は全て米国サイドで損金処理できる現行の法律は「Best of both world(いいとこ取り)」であるとして改定案の正当性を強調している。
Anti-Deferralでは、海外の所得が米国に配当され課税所得となるまで一部費用の損金算入を繰り延べるというものであるが、普通の配当に加えて米国では会社法上は譲渡対価または償還であるような取引が「みなし配当」となることも珍しくない。このようなみなし配当が認定されるケースの取り扱い、またCFCが途中でCFCでなくなってしまうようなケースの取り扱い等、実際に運用するとなると直面する技術的な問題は多いだろう。
さて、オバマ政権の国際課税強化案は既に取り上げた「Check-the-Boxの適用制限」、「Anti-Deferral」に加えて「外国税額控除の制限強化」の3本柱で構成されている。今回からは3本目の柱となるこの外国税額控除に触れる。
*外国税額控除の制限強化
オバマ政権は外国税額控除に関して2つの制限強化を提案している。一つは間接税額控除を利用する際に必要となる「受取配当に対して外国でいくら法人税を支払ったとするか」という算定に係るもの、もうひとつは「誰が外国で法人税を支払ったかと取り扱われるべきか」という点だ。後者はどちらかというとかなり技術的な問題であり、ルクセンブルグのような国に米国企業が「Reverse Hybrid」主体を設立しているような特異な局面に適用される。一方、前者に関しては、米国親会社が受取配当を受けて間接税額控除の算定をする際に、一定の配当額に対してできるだけ多くの外国税を引っ張ってこようとする「High Tax Pool」テクニックは米国多国籍企業に広く利用されており、インパクトが大きい。
*間接税額控除
間接税額控除は海外子会社等から配当(Subpart F所得とか株式売却時のSec. 1248みなし配当を含む)を受ける際に、その配当原資が既に外国で課税された後の金額となることから、配当対する益金算入は一旦税引前の段階に戻し、その上で制限枠の範囲で米国の(Pre-Creditの)税額から外国で日払われたと取り扱われる税額を差し引くというものだ。趣旨的には日本で2009年3月まで存在した制度と同じものとなるが、その規定の内容はいろいろな意味で異なる。
間接税額控除の算定を行うためには、配当を受け取るごとに、配当は「外国でいくら税金を支払った後に受け取っているものなのか」という基本的な計算をする必要がある。長年に亘り海外で事業を展開しているケースでは、海外子会社の所得を毎年全額配当することは稀だ。となると、今受け取る配当に関して、一体いついくらの税金を外国で支払ったのか、という認定は何らかの「仮定」に基づいて行う必要がある。
今回の改定案のターゲットにされているのはまさしくこの仮定をどのように行うかという部分となる。この話しを分かり易くするためには米国の間接税額控除の仕組みを若干理解する必要が出てくる。次回のポスティングから間接税額控除の概要に触れてみたい。