*IRS税務調査マニュアル
IRSはこの程、米国の事業主体等が「外国人」に対して何らかの支払いを行う際に課せられる源泉税の徴収義務に対する税務調査強化を狙い、この分野に係る税務調査マニュアル(Internal Revenue Manual 4.10.21.1)を完成・公表した。今後の税務調査では、当マニュアルに基づき外国向け支払いに対する源泉税の徴収をきちんと行っているかどうかが問われることとなる。
*日本企業と源泉税
この源泉税、日本企業の米国事業主体には極めて関連が深い。米国から日本親会社に支払う配当、利子、ロイヤリティー等は源泉税の対象となるか、または日米租税条約で源泉税が免除されているとしても報告の対象となるからだ。
そこで今回から何回かに分けて日本親会社を含む外国人への支払いに対する源泉税システムの基本的な考え方およびIRS税務調査マニュアルの内容に関してポスティングしてみる。
*いつ源泉税の徴収が必要となるか?
源泉税徴収の必要が生じるのは「米国源泉」で「ECIでない」「FDAP」を「外国人」に支払う場合である。更に源泉徴収義務がある支払いに関して「租税条約」にて源泉税が免除されている場合にはその範囲で徴収が必要なくなることもある。
上の条件のエレメントに関して各々もう少し説明すると次の通りだ。
*FDAPって何?
FDAPは「Fixed or Determinable Annual or Periodical」Incomeの略であり「フダップ」または「エフ・ダップ」と発音される。フダップの読み方を知っている人でも、ECIではないという意味で使われるN-ECIが「ニッキー」(または発音の聞き方次第では「ネッキー」)と言われることがある点は知らないケースが多いだろう。ニッキーを知っていれば米国税務中級クラスだ。
基本的に源泉税の対象となる支払いはこの「FDAP」タイプのものだ。しかし、支払いが「FDAPかどうか」の見極めで混乱するケースが多い。
というのもFDAPというフレーズを形成している「Fixed」とか「Determinable」、「Annual」、「Periodical」というひとつひとつの単語は全く意味を持たないからだ。FDAPとなるのに別に支払いが年に一回(=Annual)である必要もないし、定期的(=Periodical)である必要もない。不定期の支払い、または一回切りの支払いでも立派にFDAPとなる。また「Fixed or Determinable」という部分も支払い金額が決まっている、または決めることができる、という程度の意味で、日本企業が通常に関与する一般的なケースでは支払いを行う際に支払額が分かっているのが当然であろう(でないと支払えない?)。
となるとFDAPとは一体何か?誤解を恐れずに敢えて言ってしまえば「全ての支払い」である。唯一(に近い)の例外は資産の購入対価(例、仕入れ、固定資産取得)で、それ以外の支払いは取り合えずFDAPだと考えるのが無難であろう。
上述の通りこのFDAP(=資産取得対価以外の全ての支払い)が源泉税の対象となるのはFDAPが「米国源泉」であり、かつ「米国事業所得(ECI)ではない」ケースだ。次のポスティングではこの点に関して触れる。