CA州のLLCはその総所得に準じて算定される「LLC Fee」を支払う義務があるが、LLC Feeに対して昨年、CA州裁判所(Superior Court)で憲法違反という判決が2件下されており、Feeの存続が危ぶまれている点は2007年9月5日のポスティングで触れた。(「http://ustax-by-max.blogspot.com/2007/09/callc-fee.html」)。判決は現在、控訴審で引き続き争われている。
*LLC Feeの州法ついて改訂
CA州のLLC Feeが憲法違反と判断された原因はその算定法に州内外の総所得をCA州 に「配賦按分」する仕組みがなく、LLC全体の総所得に基づきFeeが決定されるためであったが、2007年10月10日に法制化された新LLC Fee法(AP 198)では、LLC Feeの算定過程で総所得に「CAを源泉とする所得の%」を乗じる「配賦按分」が導入されることとなった。
新しいLLC Fee法によるとFeeの算定は従来通り売上原価、その他費用を差し引く前の「総収入」を基に算定されるが、Feeの算定基となる総収入は州法人税(Franchise Tax)を算定する際に使用される「売上ファクター%」を乗じた後の金額となる。売上ファクターに基づいて「CA州帰属」と配賦按分された金額が$250,000に満たないケースではゼロ、その後は累進で金額が増えていき、年間総所得が$5,000,000以上となるとFeeは$11,790となる。
新しい算定法は2007年1月1日またはそれ以降に開始する課税年度に適用されるため、暦年を課税年度とする企業では2007年から新方式でのFee算定が認められる。
*2006年以前への影響
今回の法改訂は一審の違憲判決を受けてのものである点は間違いない。一時は強気であったCA州も複数の訴訟で負けていることから何らかの対策を余儀なくされたということであろう。新しいLLC Fee法には一応「この変更をもって2006年またはそれ以前の課税年度に対するLLC Feeのあり方の是非を詮索するべきでない」とし趣旨の文言が入っている。
しかし一方で、万一2006年またはそれ以前の課税年度に関してLLC Feeが違憲という結果が出た場合には、還付対象となる金額は「違憲の原因とされる配賦按分がなかったがために過大となっていた部分に限る」という規定もきちんと盛り込まれている。すなわち、新しいLLC Fee法と同様の算定を過年度にも適用し、実際に支払った金額が過大となる場合には、その超過部分のみを還付するというものである。
このような還付方法が規定されるのは、現状の訴訟結果をそのまま適用すると、LLC Feeは違憲でありその法律全体が無効となるからである。すなわち、違憲となる原因はCA州に配賦按分がないという理由であるが、そのインパクトは従来のLLC Fee法そのものが違憲ということである。となると違憲の法律に基づいて支払われたLLC FeeはそれがCA州内の総所得に帰属するものであるか否かに関係なく無効となる。そのような結果となると還付額が12億ドル(約1,440億円)に達するという試算があることから、所得税収入が年間約400億ドルであることと比較しても州にとっては結構痛い支出となる。今回の新法で規定される限定的な還付で済めばその額は僅か2億8千万(約336億円)となることから違憲判決の影響を最小限とすることができる。
*判決結果は?
現時点で控訴審の最終的な判断は出ていない。最終的に違憲という判断が下されたとしても新法が制定されたことによりそのインパクトは当初予想されていたものよりも小さいものとなるのは確かである。しかし、CA州内外での活動があるLLCにとって、2006年またはそれ以前の課税年度に関して部分的な還付が受けられるかどうかは判決次第であることに変わりはない。したがって今後の動向は引き続き注目に値する。