*Reverse三角合併の税務上取り扱い
Reverse三角合併の再編手法としてのメリット等は2007年5月1日のポスティングにて触れているが、今回は税務上の取り扱いについて解説する。前回のポスティングにて触れた通り、Reverse三角合併は他の合併に遅れて1971年の税法改正にて一定の要件下でタイプA再編として認められるようになった。しかし、Reverse三角合併に関してはForward三角合併と比べてより厳しい要件が規定されている。
*合併による消滅法人、存続法人の双方の「資産のほとんど(Substantially All)」が「保有(Hold)」されること
この規定はForward三角合併で触れた「Sub All」規定と同じであるが、次の二つの点でより厳しい。まず、Forward三角合併では買収される側となる消滅法人の資産に関してSub All規定が満たされていれば問題ない。一方Reverse三角合併の場合には消滅法人、存続法人の両法人の資産に関してSub All規定を満たす必要がある。Reverse三角合併においては買収される側の企業が法的に「存続法人」となるため、Sub All規定が存続法人に適用されるのは当然である。消滅法人は通常は三角合併のために設立される特別目的法人であるため、親会社の株式以外に大きな資産があるケースは少ない。合併対価として使用される資産、買収される企業の債権者への支払い等一定の資産はSub All規定の適用から除外される。
また、Forward三角合併の場合と異なり、Sub All規定を満たした資産は存続法人により「保有(Hold)」されなくてはならない。Forward三角合併の場合には「保有」という規定はなく、あくまでも「取得」となる。この差異により、Reverse三角合併により取得された資産(大概のケースでは存続法人にそのまま残っている資産)を再編後に新子会社に現物出資することが認められないこととなる。
*ターゲット企業の80%以上の持分が合併取引そのものにより移管され、その対価が親会社の議決権付き株式であること
Reverse三角合併においては、合併そのものにより取得されるターゲット企業の株式が80%以上である必要がある。この80%は税法上の規定では「Control」という用語が使用されている。適格再編に係るControlは(買収型のタイプD再編の場合を除き)、全ての議決権の80%以上、議決権を持たない株式の各々のクラスの80%以上の持分を意味する。この規定は、買収する側が前以てターゲット企業の20%を超える株式を持っている場合には、Reverse三角合併が適格とならないことを意味する。これにより「Creeping Acquisition(だんだん忍び寄るように株式を買い足していく手法を伴う買収)」ができない。
また、ターゲット企業の株式80%に対する合併対価は、三角合併の対価として発行される親会社の「議決権付き」株式である必要がある。この規定は通常の合併に対するタイプA再編の規定よりかなり厳しい。
Reverse三角合併は基本的に最終的に達成される企業形態が「株式交換」と同じである(この点に関しては2007年5月1日のポスティングを参照)。株式交換はタイプB再編である。しかし、Reverse三角合併に対する税務上の位置付けはあくまでも合併の一つでありタイプA再編の「変形」である。タイプB再編に関しては、再編取引にて80%の持分を一気に取得しなくてはいけないという規定はなく(すなわちCreeping Acquisitionが可能)、その意味でReverse三角合併に対してのみ設けられた特異な規定であるといえる。もちろん、タイプA再編となることから、対価として使用できる資産の種類は株式交換と比べて若干弾力的ではある。すなわち、タイプB再編では基本的に全て議決権付き株式を使用する必要があるが、Reverse三角合併ではターゲット企業の80%に相当する部分の対価が議決権付き株式であれば、残りの対価は現金等他の資産を利用することができる。
*孫会社の使用禁止
Forward三角合併のケースと同様に、Reverse三角合併を適格とするには、合併当事者は親会社が直接持分を持つ子会社である必要がある。再編目的での「Control」の要件を満たすには、株式を「直接」所有する必要があるためだ。