Saturday, July 14, 2007

三角合併(6) Forward三角合併の税務上取り扱い

三角合併の米国税務上の取り扱い

Private Equity Fundsの話題等かなり「旬」なトピックが多かったので、しばらく間があいてしまったが久々に三角合併に戻る。今までのポスティングを整理すると次の通りだ。

2007年4月27日 三角合併(1) 企業再編一般
2007年5月01日 三角合併(2) 他手法との比較
2007年05月03日 三角合併(3) 税務上の取り扱い
2007年05月20日 三角合併(4) 合併一般と適格再編
2007年05月28日 三角合併(5) 債務超過企業の合併

通常の合併(三角合併でないもの)がタイプA再編として適格となるための要件、特に「持分継続」の要件に関しては2007年5月20日のポスティングで詳しく触れた。そこでも解説した通り、タイプA再編は持分継続要件が他の再編タイプと比べて極めて甘い。質的には、合併の対価は「株式」でさえあれば議決権があってもなくてもよく、かつ普通株でも優先株でも構わない。また、量的には、対価の38%だけが株式のケースでも持分継続要件OKという最高裁判所の判例があり、IRS側も40%が株式で支払われていれば持分要件を満たすとしている。

このタイプA再編に係る規定は、対価の種類および量が厳しく規定される他手法と比べて極めて柔軟性が高い。「株式交換のタイプB再編」は基本的に100%議決権付き普通株式を使用する必要があるし、「株式による資産取得のタイプC再編」においても、対価の80%は議決権付き普通株式の必要があるからだ。

対価が議決権なしの優先株式でもいいとなると、かなり弾力的な再編を行うことができる。40%の株式(しかも議決権なしの優先株式でもいい)で適格再編とすることができるということは逆に言えば、合併対価の60%を現金、債券、その他の資産を使用できるということになる。

もちろんであるが、例え再編取引自体が「適格」となっても、現金等を受け取る株主はゲインを認識する必要がある。この点に係るメリット・デメリット、また他手法(特に出資を規定してSec.351)との比較は結構おもしろく、別のポスティングでそのうち取り上げる。

*三角合併の税務上の取り扱い

三角合併もタイプA再編として認められるが、通常の合併よりも税務上の制約が多い。三角合併自体は州法にて古くから規定されていたが、税務上は合併当事者ではない法人(すなわち親会社)の株式が使用されることから、1968年まではタイプA再編として「適格」とはなっていなかった(他のタイプとして適格になることはあったかもしれないが)。1968年の税法改正にてForward三角合併が、続いて1971年の税法改正にてReverse三角合併が一定の要件下でタイプA再編として認められるようになった。これはタイプC再編、タイプB再編に係る三角再編が各々1954年、1964年に適格と認定されたのと比べるとかなり遅い。

*Forward三角合併

上述の通り、合併が三角合併の形式を取る場合には、通常のタイプA再編と比較して若干制約が多い。追加要件はForwardとReverseでも異なる。Forward三角合併を通常のタイプA再編と比べた追加要件は次の通りである。なお、三角合併が下の要件を満たして適格となる場合、合併対価の柔軟性に関しては通常のタイプA再編と同様であり、その意味で依然弾力性は高い。

*三角合併に利用される子会社に対して80%の持分を持つこと

この規定は三角合併での対価となる株式を発行する親会社が、合併の受け皿となる子会社に対する最低限の持分を規定している。税法上の規定では「Control」という用語が使用されている。適格再編に係るControlは、全ての議決権の80%以上、議決権を持たない株式の各々のクラスの80%以上の持分を意味する。多くのケースで三角合併の受け皿となる子会社は、三角合併のために親会社が自分の株式を出資する形で100%子会社として特別に新設されることが多く、その場合には当然この規定は問題ない。

また、この目的でのControlは要件を満たす株式を「直接」所有する必要があるため、孫会社が合併の当事者となるような三角合併はタイプA再編としては適格にならない。この場合にはタイプB再編となることもある。

*再編により買収される企業の「資産のほとんど(Substantially All)」が取得されること

この規定は「Sub All」規定として知られており、タイプC再編に適用されることで一般的だ。同様の規定が三角合併に適用される。通常のタイプA再編にはSub All規定はないため、三角合併に適用される「追加」規定となる。

合併なのでどうせ全ての資産が法に基づき自動的に継承され、このSub All規定に意味がないと思われるかもしれないが、Sub All規定は合併当日の資産が全て存続法人に継承されれば満たされるという簡単なものではない。合併を見越して一部の事業をスピンオフしたり、特別な配当、償還を行ったりしている場合には、それらの資産も含めてSub All規定を満たしているかどうかが判断される。Sub All規定を満たしているかどうかの判断は個別の事実に基づき総合的に行われるが、Ruling目的では「ネット資産90%、グロス資産70%」の継承が求められる。通常の合併の場合にはSub All規定はないが、その場合でも余り多くの資産を合併を見越して手放していたりすると「事業継続」要件に触れる可能性がある。

*子会社の株式が対価の一部として使用されないこと

三角合併では合併当事者が子会社となるが、適格再編となるには合併の対価に子会社の株式が使用されてはならない。通常のタイプA再編では合併の際に子会社の株式を使用してはいけないという規定はない。ただし、その場合も「持分継続」要件を検討する際には親会社(通常の合併の場合の合併当事者)の株式のみを考慮すると指摘されている。

*もし合併が直接親会社と行われていたら通常のタイプA再編に適格であったこと

この要件は近年まで米国外の企業が親会社となる場合には、少なくともタイプA再編に関しては致命的な要件であった。通常の合併に対する適格再編の規定上、合併は米国の州法に基づく必要があったからだ。しかし、2006年に発表された財務省規則により一定の要件を満たす外国法に基づく合併もタイプA再編と認められるようになったことから、今後は外国の親会社が関与する三角合併もタイプA再編となることが可能となる。

*Reverse三角合併

長くなるのでReverse三角合併の税務上取り扱いは次のポスティングで触れる。