Friday, June 15, 2007

「ブラックストーン法案」遂に提出

6月8日のポスティングでPrivate Equity Fundsのひとつであるブラックストーンの上場とそれに絡むタックス戦略について書いた。その際に、今回のブラックストーンによる大胆不敵なタックス戦略に潜むリスクの一つとして「税法の改正」が挙げられる点に触れた。その時点では単なる潜在的リスクであったが、6月14日に「切迫」したリスクとなった。

*ブラックストーン法案

モンタナ州民主党上院議員のMax Baucusとアイオワ共和党上院議員Charles Grassleyの2人は、6月14日「アセット・マネージメント」業に従事するPTPは「法人」として課税するという内容の法案を提出した。法案は言うまでもなく近々に予定されているブラックストーンの上場スキームをターゲットにしたものだ(PTP課税とブラックストーンの手法に関しては6月8日のポスティングを参照)。

それにしても際どいタイミングだ。6月後半にブラックストーンの上場価格が最終化する前に何としてでも法案の提出をしたかったのであろう。

*法案の背景

以前のポスティングでも触れたが、フォートレスというヘッジファンドが実は既に同じ手法で上場を果たしている。フォートレスの上場とそのタックス戦略は我々タックスを専門とする者としてはかなりインパクトのある出来事であったが、その時点で即対抗法案の提出というような展開にはならなかった。今回のブラックストーン上場に関しては、その規模、加熱気味の報道、前評判等から「このまま放ってはおけない」ということであろう。

ブラックストーンの上場がこのまま成功すると、カーライル、KKR、TPG、アポロ、等の他のPrivate Equity Fundsが次々となし崩し的に同様の手法で上場に名乗りを上げて来るのではないかという危機感も今の時点で法案が提出された理由のひとつであろう。すでにヨーロッパ市場に一部Fundを上場させているところもある。

また、いわゆる「投資銀行」業務に携わる事業主体のうちPrivate Equity Fundsとかヘッジファンドのみが税法上の恩典を享受するという問題を是正しようというのもひとつの目的だと思われる。例えば、モルスタとかゴールドマンは法人税を支払って投資銀行業務を行っているからだ。このままでは不公平感から法人税という制度そのものの基盤を崩しかねないと懸念する向きもある。

*今後の展開

今後の審査がどのように進むかは未知な状態にある。選挙も近く、政治資金の大手供給先であるファンドをこのタイミングで敵に回すのは得策ではないという判断も働くのではないかとの見方もある。

以前にも書いた通り、PTPがパススルーとなるケースと法人扱いされるケースでは、投資家の収益フローに多大な影響がある。したがって、具体的な審査が今後どのような方向に向かうにしても、法改正のリスクがより具体的かつ切迫したものとなったことから、一定の「冷却効果」がある点は否めない。ブラックストーンの上場価格への影響がどれ位のものとなるか見ものである。

また、法改正がある場合には「グランドファーザー規定(過渡期間条項)」の適用があるかどうかも興味深いと6月8日のポスティングで書いたが、やはり法案には規定があった。すなわち、現時点で上場している、または上場の手続きに入っているPTP(すなわちフォートレスとブラックストーン)に関しては法人税が課せられるのは2012年6月14日以降に開始される課税年度(すなわち2013年度)からとされている。5 年間の暫定措置が長いか短いかは別として、事後立法のような形にはなっていない点は相変わらず合理性のあるフェアな取り扱いであると言える。6月14日とは法案提出の日であり、フォートレスとブラックストーンは5年間に亘りタックス戦略の恩典を受けることができる。

今回の法案の提出にひとつ面白い副作用がある。それは税法が改正されて2013年からブラックストーンに法人課税されると規定される場合、現行の税法ではブラックストーンはパススルーの取り扱いとなることを暗に裏書しているかのようにも取れることだ。もしそうだとすると今回の上場を取り巻くタックス戦略の不確実性は大きく減少する(価値評価を行う上でのリスクファクターの織り込みが簡単になる)。ただし、現行の法律のままでも、適用に問題があるとIRSが判断する場合には、税務調査等通常のプロセスを踏んで更正等を行う権利がIRSにある点は言うまでもない。

今回の法案の内容だけではまだまだ手緩いという指摘も出てくるであろう。まず、第一に今回の法案は上場する場合にのみ適用される。したがって、非上場のFundsには影響はない。現時点ではほとんどのPrivate Equity Fundsおよびヘッジファンドが非上場である。特に6月6日の「Private Equity Fundsの享受する税務上の恩典」で触れたパススルー扱いで認められている「Carried Interest」の取り扱いに対する批判は多い。これらのことから将来的に新たな税制改正案が提出される可能性もある。

いずれにしても、今後の展開にますます目が離せない状況となった。