Wednesday, November 22, 2023

Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (3)

前回はKiller B規則を読むには避けることができないSection 367の理解のうち、Section 367が誇る長い歴史、そして1932年当時のオリジナル立法趣旨を脈々と受け継いでいるSection 367(a)のアウトバウンド規定に触れた。1932年から30年後の1962年にThe Beatlesが、じゃなくて議会がケネディ政権の下CFC課税のSub Fや1248規定を導入し、元祖Anti-DeferralのSection 367の役割は低下するかと思いきや、その後も時代を経て進化する異なるポリシーが次々と加味され、クロスボーダー課税にかかわる広範な規定が満載されたとてつもなく複雑な法体系に変身を遂げた。その一例として1990年代のインバージョン対策、Helen of Troy規則の話しに至ったけど、(a)だけでもまだまだきりがなさそう。Section 367(a)を熟知してたらそれだけで十分に食べていけるだろうからその全容を数回のポスティングで片づけるのは非現実的なんでこの辺にしないとね。さらに今年も12月29日とかにCAMTの膨大な規則案とかが突然公表されてマイアミビーチが台無しになりそうな気配なので、その前にKiller Bくらい片づけないと、ってThanksgivingを目の前にチョッと焦ってきてます。ということで(a)はここで強制終了。

Section 367(d) と(e)

それでは(a)が終わったんで次は(b)だねって思ったでしょ?そうだったら「It's easier than learning your ABC's」で「My little baby sister can do it with ease」になっちゃうんでそうじゃないんですね。これらのフレーズはもちろんLocomotion!Grand Funkのバージョン聴くとここ「Ease」じゃなくて「Easy」ってきこえるんだけどグラマー的にはEaseかな?Grand Funk Railroadとか今の読者にはもう馴染みないよね?伝説の1971年後楽園(東京ドームではない)落雷ライブとか。口パクだったんでは?っていう噂はチョッとBummerだったけど。1975年の全米ツアーを収録したライブアルバム「Caught in the Act」はライブアルバム名盤の一つ。Purpleの大阪や武道館ライブの「Made in Japan」やZeppelinのNYC MSGライブ「The Song Remains the Same」とかに並ぶ。PurpleのMade in Japanは一切オーバーダブがない一発取りでコストが掛からず$3,000程度で済んだって話しらしいけど、その実力は凄い。個人的に技術を見極めることができるのはギター部分なんでBlackmoreのライブパフォーマンスには舌を巻くけど他のメンバーの技術も一聴して卓越してることが分かる。うま過ぎ。ZeppelinのMSGライブは結構後からスタジオで手が加えられたって話し。当時、ミキシングの会社に勤めてる先輩がいて、MSGパフォーマンスの生テープと加工後の2つを比較したことがあるようなこと言ってたけどPlantのボーカルには相当な手直しがあったに違いないって言ってた。真偽はともかく幼かった(?)僕はライブはライブって単純に思ってたんでZeppelinの話しは結構ショックだったのを記憶している。確かにオープニングのRock and RollのボーカルってMSGより以前のライブをBootlegで聴くとスタジオ盤と一緒でちゃんとCでボーカルが始まるけどMSGのやつって短3度低く下げてAで歌い始めるよね。曲のキーがAだからAでも外れてはないけど声が出なくなってたのかな。でもスタジオ盤と違う音程で始まるボーカルって妙に臨場感があってそれはそれでワクワク。ただライブパフォーマンスの実力的にはPurpleには及ばないのは明白。まあ格好いいからそんなことはどうでもいいだろう。日本でPurpleとZeppelin聴いてたその昔し、両バンドはブリティッシュロックの双璧っていうようなイメージを持ってたんだけど、米国で暮らすようになって気づいたのは少なくとも米国でのCommercialレベルの成功は圧倒的にZeppelin。PurpleはSmoke on the Water(個人的にはこの曲がPurpleの代表作って言うのはかなり抵抗あるけど野球場とかで今でもQueenのWe Will Rock Youとかと並ぶ応援歌の定番だから仕方ないか…)は知っててもそれ以上じゃないケースが結構あるんだよね。それだけにMade in JapanはPurpleにとって人生のハイライトだったっていうのが分かるね。ちなみにこれらのライブ名盤は3つとも全て2枚組だったんで、定価が2000円じゃなくて倍の4000円とかで限られたお小遣い内の予算では新譜に手が届かず、Disk Unionとか、もうひとつ名前忘れちゃったけど新宿西口辺りのレコード屋で輸入盤の中古とか探して手に入れたものだ。Purpleの「Made in Japan」は日本版は「Live in Japan」ってタイトルだったけど僕は新宿で輸入盤を購入してたんで「Made in Japan」盤だった(中身は同じ)。あの頃から80年代にかけてMade in Japanの製品がグローバルマーケットを席巻してたんでシャレでつけたタイトルだろうけどね。う~ん、時代の流れは怖い。他国で暮らした読者は感じることがあるだろうけど、日本はチョッと独特で、でも世界でも稀に見る質の高い国で、かつ資源がないとか地政学的に独自のリスク管理が問われるんで、欧州とか米国の短期的なトレンド、歪曲が多いメディア報道に基づく情報、海千山千の外交力に惑わされたり、国外をお手本にした小手先の政策・対応ではなく奇想天外な展開で全く別物になるであろう次の世界を見据えた賢い選択をして欲しいものだ。で、PurpleとZeppelinはブリティッシュだけど、Grand Funk Railroadはもちろんバリバリのアメリカン。「We're an American Band」だからね!古き良き時代のアメリカンRockって、独特の下品さ(悪い意味ではなく)が丸出しでそこがまた格好いいよね。所詮Rockだからね。

で、なんで(a)の次が(b)じゃないかって言うと(b)はKiller B的には主人公なんで、まずはSupporting Castに軽く触れてから満を持して(b)とかその傘下の規則、特にKiller Bをトリガーした2011年の最終規則にImmerse、すなわち没頭する予定だからだ。

僕たちがPracticeしてて(b)を除いて頻繁に戦うことになりがちなのは(a)の次に(d)かな~。(d)は無形資産を351や361の非課税規定に基づき外国法人に移管する際、(a)に規定される通常の含み益課税ルールの代わりにロイヤルティーストリームに置き換えて所得認識すること、っていう規定。移転価格やっている読者の方なら「それってsection 482の2文目のCommensurate with Incomeじゃん (「CWI」、日本語だと所得相応性基準)」って思うはず。概念は同じで非課税規定を使わずに関連者に無形資産を移管する場合は482のCWIを考えて、非課税規定を利用している場合は(d)を考える、って覚えておくと当たらずしも遠からず。ちなみに2017年の税制改正TCJAで無形資産の定義が変わり、従来取り扱いがあやふやだったGoodwillも今では正式に(d)目的の無形資産に含まれる。また、TCJAではSection 482に3つ目の文が足され、IPはAggregationして価値を評価するように、ってDisaggregateして個々のIPを過小評価できなくしている。Secton 482ってたった3文であれだけの税務Practiceに至るってすごいよね。もちろんRegulationsはあるけど、それだって「-1」から「‐9」までだし、規則案だって主にSecuritiesのGlobal Dealingにフォーカスしたものが数点で、Sub CとかSub Kに比べたら規則のボリュームもそれほど多いとは言えない。ALPは基本事実認定なんでルールは少なくて当然かもね。

(d)と並んで(e)も頻繁に登場する。インバウンドPractice的には特に(e)(2)が多いかな。(e)(1)の対象になるスピンオフはコストが掛かるから比較的稀だもんね。(e)(2)は例えば100%日本親会社に所有される米国子会社の清算時に適用があり得る。

Section 367(b)

そしていよいよSection 367(b)。(b)のタイトルはシンプルに「Other Transfers」で、その守備範囲の広さを予感させてくれるもの。昔のポスティングで触れた通り、テクニカルに言うと条文のタイトルに法的効果は一切ないけどね。で、条文本文を読むと(a)でカバーされない資産移管に関しては「section 332, 351, 354, 355, 356, または361」適用時に財務省規則で規定されない限り外国法人は米国税務上も外国法人と取り扱うっていうもの。ただ、厳密には(a)と(b)は相互排除の関係にはなく同時適用もあり得る。条文は基本それくらいのことしか書いてないんで行政府の財務省に規則策定権を丸投げして、(a)以外でも非課税の恩典を制限するルールを規定するようにっていうもので、Section 1502読んでも連結納税のルールが全く分からないのと同様、367(b)だけ読んでも何も分からない。

条文だけ読むと余りに漠然としてるけど、1975年の立法趣旨を読むと外国法人の(当時はSub Fで)課税されていない留保所得がSub Cの非課税規定で米国に還流されるタイプの取引が一番の懸念だったことが分かる。この趣旨に沿った規則を策定しなさいっていう使命を全うするため、90年代から財務省は実に多くの規則を公表してるけど、中でもKiller Bに直結することになったのは2011年に最終化されたsection 1.367(b)-10の「Triangular再編に絡む親会社株式取得」を規定した規則(「2011年最終規則」)。この2011年最終規則は中でも、Triangular再編に絡んで外国法人がE&Pの移管を伴うことなく、現金等の資産を米国に還流するような取引にフォーカスがあったと言える。

2017年TCJAとsection 367(b)

チョッと前まで連載してたFIRPTA系のポスティングで、TCJA以降のsection 367(b)は抜本的に見直しが必要、って書いたと思うけど、これはまさしく上述の1975年立法趣旨に反映されているsection 367(b)がフォーカスして取り締まろうとしていた取引の大半がTCJAで合法的または存在しなくなってしまったからだ。すなわちsection 367(b)は外国法人の留保所得が非課税のまま米国に還流されないよう立法された訳だけど、TCJA導入時に過去の(正確には1987年以降の)留保所得は低税率で一括課税され、導入後はGILTIで毎期合算されることになったんで、そもそもCFCの留保所得が米国で非課税っていうケースが激変してしまった。Sub Fも未だに健在だ。さらに、High Tax Exclusion、Deemed Tangible Income Return (QBAI)のシールド、別のCFCがTested Lossを認識してくれて自分のTested Incomeをオフセット、等の隙間規定で多くの困難を乗り越えて(英語で言うところのJump through the hoopsして)GILTIの対象とならない外国源泉留保所得があれば、それを米国法人株主に分配しても一定要件下で100%の配当所得控除が認められて非課税になるため、その手の留保所得は合法的に非課税で米国に還流可能になり、367(b)のフォーカスは根底から無意味化したことになる。

だったらsection 367(b)自体撤廃したらいいじゃん、って思うかもしれないけど一度出来た規則はなかなかなくならない。100%配当所得控除は法人にしか適用がないし、法人が受け取る配当もHybridだと100%所得控除の適用がないとか、確かにテクニカルにはsection 367(b)が全く不要になった訳ではないのは財務省の言う通り。Killer Bにかかわる2011年最終規則も引き続き重要って宣言している。

Killer Bは2011年最終規則に違反しない形で進化してきた。前々回のKiller Bシリーズ冒頭で触れた通り、財務省はその適用法が気に入らなかったため、2014年と2016年にNoticeを公表し、今回の規則案に至っている。では2011年最終規則ってどんな内容?ってところからは次回。

Sunday, November 12, 2023

Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (2)

前回のポスティングではKiller Bをキックオフしたけど、Killer Bを語るには、まずsection 367(b)の話しをしないとね、ってなって、さらにsection 367(b)の話しをするには、Section 367全体の話しをしないと、ってところで終了していた。そういえばチョッと前、って言っても一年くらい前かな、に流行ってたSZAの「Kill Bill」って曲があって詩はチョッと怖いけど曲は良くてWestsideに沈んでいく真っ赤な太陽が摩天楼のガラスに反射しているの見ながら黄昏れたりする時にピッタリの曲調だった。どうもこのKill Billって聞くたびにKiller Bを連想してしまってせっかくの黄昏感が台無し(?)でした。

Section 367

さて冒頭で触れた通りsection 367(b)の話しをさざるを得なくて、Section 367(b)の話しをするにはSection 367全体のフレームワークに触れておく必要があるってことでまずはSection 367の超ハイレベルオーバービュー。Section 367ってSub CのM&AとかのCorporate Tax絡みの規則とクロスボーダー課税のブリッジ役を果たしてる条文。なのである程度双方を知らないと理解が進まないSuper-ComplicatedかつInterestingな条文。

Section 367自体は今のCodeでは300番台ってことから分かる通りCorporate規定のSub Cに属する。感覚的にはSub Cっていうよりもクロスボーダー課税に属するって頭の中で整理しているPractitionerが多いんではないでしょうか。前々回のポスティングでも触れた通りSection 367は(a)から(f)で構成されるけど、他の多くの条文に見られる(a)で一般規定して(b)以降は例外や定義みたいなストラクチャーではなく、(a)、(b)、(c)…が各々異なる目的で独立している。とは言えSection 367全体に共通なテーマがある。それはSub Cをそのまま適用すると(Pureな国内取引だったら)非課税になるタイプの取引、具体的にはsection 332, 351, 354, 355, 356, 361等で非課税になる取引、に外国法人が関与している場合にSub Cの非課税措置をオーバーライドするっていうもの。含み益があれば課税するぞ、っていうものもあれば、Sub Cの非課税措置を実現するには追加の条件が課されたりする。

Section 367(a)とSection 367の歴史

Section 367のトップバッターは「一番レフト高田」(知っている人いる?)じゃなくて、もちろんSection 367(a)。(b)から始まる訳ないもんね。(a)はOutbound系の規定でSub Cの世界だけで考えれば非課税になるであろう資産移管でも、米国人が「外国法人」に資産移管を行う場合、「譲渡益」を認識するかどうかの目的のみ、その外国法人は米国税務目的で「法人」とは取り扱わない、っていう規定。このアプローチ回りくどくて面白しろいよね。例えば普通だったらSection 351の適用があり得る出資に対して移管先の法人が外国法人の場合はSection 351を認めない、って直接的に非課税措置を停止するんじゃなくて、移管先の外国法人を法人じゃない、ってすることで間接的にSection 351が不適用になる、っていう仕組み。移管先が法人じゃなかったら当然だけどSection 351の適用はないもんね。ただこれは含み益を持つ資産に対するオーバーライドなんで、含み損を持つ資産の譲渡には適用がない。すなわち(a)を使って含み損をトリガーすることは認められない。マンハッタンの道路みたいにOne-Way Streetだ。

う~ん、何で敢えてこんなアプローチを選んだんだろう、っていうのは個人的に昔から七不思議で、古い立法趣旨とか読んだことあるんだけど今一つ良く分からなかった。おそらく多くのSub Cの非課税措置を一気にTurn-offさせる手法としては容易だったんだろう。それはそうだよね。Sub Cっていうからには法人にかかわる規定なんで「あなたは法人ではありません」って宣言されてしまったら多くのSub C規定の適用はないもんね。

Section 367を紐解いくと、何と言ってもまずその歴史の長さに驚かされる。Section 367の前身にあたる条文はSection 112の一角を占める112(k)として 1932年に登場してる。1932年って言ったら100年近い昔じゃん、ってビックリ。詳細は異なるとは言え、こんな法律の大本がそんな昔に出来ていて、その後の企業側の再編Structureの進化やクロスボーダー取引のあり方の変遷と共に条文およびその傘下の規則も進化してきたっていう沿革は米国税務の法体系の複雑さ、そして人によっては面白さ、に繋がる。当時のCodeに規定されるSection 112は原則、資産譲渡は課税取引ってした上で現在のCodeのSub Cで規定される非課税措置、Section 351や組織再編のSection 368を例外として規定しているパワフルなSection。でSection 367の前身部分はその更に例外、ってことでオリジナルバージョンで既に「外国法人は法人とは取り扱わない」っていうアプローチを確立している。Section 1001とSub Cを一つのSectionでバッサリ片づけるって今の複雑なCodeを知ってたら考えられる?しかも当時はカナダをタックスヘイブンみたいに利用していたとのこと。

Section 112(k)によるアウトバウンド資産移管に対する網掛けって観点から「1932年」ってタイミングを考える際、これが「1962年以前」(当たり前だけど)っていう文脈はよ~く認識しておく必要がある。

1962年がどうした、って?もちろんThe Beatlesがデビューシングル「Love Me Do」を当時のEMI Studio、今のAbbey Road Studioでレコーディングした年だ。もともと1962年の新年早々にDeccaっていうレーベルのオーディションがあって、なんとそれには落ちてるんだよね(笑)。先見の明がなかったとしか言いようがない。で、そのオーディションのテープ(正確にはReelのテープを基に作成したマスターレコードでバイナルよりも固いアセテート版のレコード)を持ってマネージャーのBrian Epsteinが根気よくあちこちに売り込み行った際にEMI傘下のParlophoneレーベルのGeorge Martinの目に留まり、EMI Studioでオーディションに漕ぎつけたってことらしい。George Martinは歌唱力には評価を示したらしいけど、当時ドラマーだったPete Bestの力量に不満足で、直後にドラマーはRingo Starrに変わっている。その頃に既にAsk Me WhyとかPlease Please Meとかレパートリーにあったっていうから曲つくりの才能も相当早くから開花してたんだね。Please Please Meに至っては録音が終わった瞬間にGeorge Martinが「たった今、君達にとって初のチャート1位になる曲のレコーディングが終了した」とメンバーに宣言したのは有名な話し。それくらいの自信作だ。今聞いても格好いいもんね。G、A、Bって上がってくBreakみたいなリフとか。B面のAsk Me Whyもいいよね。ちなみにLove Me DoのレコーディングはPete Bestに変わって登場したRingo StarrにもGeorge Martinは満足できなかったようでセッションドラマーのAndy Whiteがピンチヒッター的にドラムを叩いてるTakeもあるということ。Ringo Starrはタンバリンとマラカス(苦笑)を渡されたって話し。George Martinってドラマーにうるさかったのかもね。それはそうだよね。バンドの屋台骨みたいな存在だからね。Pete Bestの脱退劇の直後だけにタンバリンとマラカス渡されたらRingo Starrも落ち着かなかっただろうね。ただ、結局その直後からRingo Starrのドラムは安定感があるということでGeorge Martinの評価も高くなっていったそうだ。よかったね。Ringo StarrのドラムってBeat感っていうかドライブ感があって格好いいよね。そんな出だしでレコードデビューし、その後は未だに匹敵するバンドはいない存在になるんだね。So the story goes…。

Love Me DoはどのTakeが最初にシングルカットされて、とかその後のEPのバージョンは別のTakeだとか、その後もBootlegとか出回ってて結局どのバージョンがRingo Starrのドラムなのか超分かり難いんだけど、UKバージョンのLove Me Doのシングル(B面がP.S. I Love You(日本のPink Sapphireじゃないからね。彼女たちのP.S. I Love Youも恰好よかったけどね))はRingo Starrだっていう話しがあったんで、小学生の頃、父がロンドン出張に行くっていうんでシングルをお土産に買ってきて欲しいってお願いして入手した。今から思えば父はThe Beatlesとか全然興味なかったんで、わざわざロンドンでレコード屋さん探して(Google Mapとかもちろんないからね)良く買ってきてくれたものだ、と今になって感謝。で、手渡されてビックリだったのは、シングルって日本だったら写真付きのジャケットモドキの表紙があってそれらしくできてたんだけど、UKのやつって黒い硬いドーナツ穴のレコードがただ白い紙のスリーブに入ってるだけなんだよね。「ワ~、本場は違う」って大感激だった。ああいうドキドキ感って、携帯があれば何でもかんでも全てのOuttakeとか動画が瞬時にどこからでも聴いたり見たりできる今の時代には逆に存在しないよね。感動が少ないっていうか。そんな風に思うこと自体Old-Fashionなんだろうけど、AIとかDeep Fakeで一体全体何が本当なのか全く分からない世界にまっしぐらの人類はこれからどうなってしまうのでしょうか。

で、結構派手に脱線したけど、1962年はケネディ政権下、CFC課税制度、すなわちSub Fが導入された年。そしてSection 367とは親戚関係にあると言えるSection 1248もCFC課税を完結させるために1962年に同時規定されている。Sub Fは世界のCFC課税やタックスヘイブン税制のお手本だけど、これ自体60年前、Anti-Deferralは100年近くだから新参の他国や国際機関とかとは年季が違うよね。まあ長くやってればいいとは限んないけど、今や議会よりも国際機関が世界の議会みたいな存在だもんね。誰が選挙で選んだんでしょうね~。え、誰も選んでないって?欧州とか見てると外交能力には一日の長があって「さすが」って感じ。余り神髄に触れない方がいいね。「これカットして下さい」(苦笑)って感じのコメントかもね。

で、CFC課税っていう概念がない時代、外国法人は原則米国課税対象じゃないんで、含み益を持つ資産、当時はHTVのIPとかじゃなくて主に投資資産、を外国法人に非課税規定を利用して移管されてしまうと所得が米国に還流されるまで課税できなかった。それで登場するのが後のSection 367(a)を含むSection 112(k)だ。元祖Anti-Deferralだよね。1962年のSub F導入後、外国法人に投資資産を移管した後の収益に一定の網を掛けることはできるようになったと言えるけど、その後、Section 367は衰えるどころか様々な異なるポリシーを取り締まる膨大かつ複雑極まりない法体系として大成長していく。1986年のPFIC導入後も同じ。

長らく米国クロスボーダー課税に関与しているPractitionerは覚えてると思うけど、実はひと昔前まで、Section 367とパラレルでアウトバウンド現物出資時に含み益に課税するっていう条文がもうひとつ存在した。1997年に撤廃されたSection 1491~1494だ。これはExciseタックス、すなわち懲罰税で法人税じゃなかったけど、パートナーシップや信託に対する拠出もカバーしててより広義なもので趣旨はSection 367(a)に酷似。Section 1491~1494の撤廃は、法人に関してはSection 367(a)で引き続き課税取引なんで、むしろパートナーシップへの出資にかかわる制限緩和の側面が強いな~、っていうのが撤廃された当時の個人的な印象だった。その点は議会も十分に認識していてSection 1471~1474撤廃と同時にパートナーシップへの非課税出資を活用(濫用?)したIP等の国外逃避プラニングに網を掛けるためSection 721に(c)を新設して財務省に濫用防止規則策定権を与えている。その後、しばらく音沙汰がなかったんだけど、時間を空けて2020年に規則が最終化されてる。最初に出された規則案に比べて適用対象が狭義になったりしててウェルカムだったけど罠みたいな規定なんで今でも要注意。Section 704(c)のRemedial Method of Allocationが重要な役割を果たすんで、クロスボーダー専門のPractitionerも当規則を機にSection 704(c)を復習した方が多いのではないでしょうか。

上述の通り、Section 367(a)は資産移管がsection 332, 351, 354, 355, 356, 361にて外国法人に移管される場合、その外国法人は米国税務目的で「法人」とは取り扱わない、っていうアプローチだけど、Sub Cの中にも当事者がCorporationかどうかは関係なく適用がある規則もある。そんなケースではSection 367(a)によるオーバーライドは原則ない。インバージョン対抗規則でIndirect stock transferになってとか狭義の例外は除いて。例えば、A型やD型再編の合併で存続法人の株式を受け取るターゲット法人の旧株主はSub CのSection 354で含み損益に課税はないけど、その適用に株主がCorporationじゃないとダメ、っていう要件はないんでSection 367(a)で急に課税になったりしない。それはそうだよね。株主は個人のケースも多いから。株主側の取り扱いはSection 354だけど、一方で合併当事者2社はCorporationでないと適格非課税再編にはならない。例えばForward Mergerで消滅法人が米国法人で存続法人が外国法人のケースがあるとすると、本来なら資産移管は非課税となるところを(a)がオーバーライドして譲渡人に当たる米国法人にSection 361(a)の適用が原則認められない、なので譲渡益には課税ってことになる。

ちなみに(a)がオーバーライドするのはあくまでもSub Cの世界で規定される非課税取引だけ(Section 1032は微妙だけどね)。全く別のCreatureと言えるSub Kのパススルー課税とかその他の規定には適用されない。もちろんSub K自体にもAnti-Abuseを含む恩典制限規則があるんで、Sub Kを活用するから常に非課税ってわけじゃないけど、少なくともSection 367(a)による制限はない。この点を利用して、バーガーキングとTim Hortonsの合併・一種のInversion取引でバーガーキングの米国人株主でファンドの3G Capitalがカナダに新設されたHold Co(米国税務上Corporation)の株式を受け取る代わりにをHold Co傘下のパートナーシップ持分を受け取ることで(a)を不適用にした取引は有名。バーガーキング取引は前回のポスティングで触れたUP-Cのストラクチャーでもあり、しかもパートナーシップ持分はUP-CのUpper-Tierの上場法人の株式とExchangeして換金できるばかりでなく、パートナーシップ持分自体も上場されていたというSuper-Interestingがストラクチャーだった。投資の神様Warren BuffetがHigh-YieldのPreferred Stockを$3B引き受けて取引に参加してて役者が揃っている取引だったね。さすがBerkshire!って感じの関わり方だ。Tim Hortonsってコービー屋さんでアメリカじゃあんまり見ないけど、地下鉄EからAir Train使ってJFK行く時はSutphin BlvdのAir Train乗り換え上りエスカレーターの手前に大きなお店があるよね。あそこ通るたびにSection 367(a)とかInversionを思い出す。読者の皆さんもMidtown Tunnelの渋滞を避けて安全策でAir Train使う時の乗り換えでSutphin Blvd駅を通過する際は必ずSection 367(a)を連想しながらエスカレーターに乗るように。

この例からも垣間見ることができるように、Section 367(a)はOutboundに対する一般的な禁止に加え、インバージョン対抗策の側面も兼ねている。っていうか1932年にはそんな立法趣旨はなかっただろうけど、Section 367のEver Changing Mood(いい曲!特にスローなピアノバージョンの方がお勧めです)的な拡大路線の一環で90年代前半から兼ねるように進化したって言う方が正確。インバージョン対抗規則と言えば2004年以降はSection 7874の方が主役だけど、それ以前の1996年には90年代前半のインバージョン、特にHelen of Troy取引に危機を感じた財務省がSection 367(a)の規則策定権に基づきSection 1.367-3で、一定要件下でSub Cの非課税措置を利用して実行されるインバージョン取引に関して米国人株主に課税すると規定している。この規則はその由来から今でも「the Helen of Troy regulations」として知られている。ただ、the Helen of Troy regulationsだけではインバージョンをスローダウンできなかったんだけど、その辺りは2016年になんと23回に亘るインバージョンシリーズのポスティング「Inversion/インバージョン(プラスSpin-Off)」で触れてるんで懐かく読んでみて欲しい。

で、Section 367はKiller Bポスティングの主人公格となる(b)以降続いていくけど、久しぶりの脱線も含めて長くなってきたんでここからは次回。

Sunday, November 5, 2023

Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (1)

しばらくFIRPTA課税系の話しだったけど、今回からはSub C/クロスボーダー課税ののKiller B。Sub C系のポスティングは久しぶりなんで皆さんもかなりExcitedなのでは?Sub Cって何って?ウ~ン、それはそうだよね。世の中の大半の皆さんはInternal Revenue Code読んで暮らしてる訳じゃないもんね。連邦の税法(Title 26)のSubtitle A、Chapter 1のSubchapter Cで「Corporate Distributions and Adjustments」という部分のことで、分配ばかりでなく組織再編、清算、出資、スピンオフ等のCorporate Taxを取り巻く法律。Corporate Taxっていうと「じゃあ、法人申告書のForm 1120作成するためには知っとかないとね!」って思う読者が居るかもしれないけど、実はそうではない。1120は多くの部分で個人所得税同様、何がGross Incomeで何がDeductionで、とかいつ支出を資産計上して、とかSub C以外の管轄の部分が多い。Sub CはCorporate間、Corporateと株主間の取引を管轄しているものだ。何はともあれ久しぶりにAll-InでSub Cなんで少なくとも僕にとってはExcitingなトピックだ。

話は迎えに行く、っていうか噂をすれば影がさす、じゃないけどFIRPTA系のポスティングのエピソード8で、Killer Bの規則ず~っと待ってるけど出てきたら面白いのにね~、って言った矢先にナント本当に規則案が公表されたんでビックリ。財務省はCAMTとかStock Repurchaseの規則策定で大忙しのはずなんでまさかと思っていただけに喜びもひとしおだ。

Killer Bってミツバチ?

一般読者はKiller Bって何って思うだろうけど、前々回もチラッと触れた通り、米国企業によるRepatプラニング。大雑把に言うとTriangular Reorganizationを利用して外国法人の留保所得を原資に米国親会社の株式を取得し、実質非課税で留保所得を米国に還流するストラクチャー。Killer BのBはBeeじゃないけど、もちろんKiller Beeにちなんだ名称。Killer Beeと言えば泣く子も黙る凶暴なミツバチだ。で、なんでBかって言うとB型再編が絡んでるから。B型って言うと血液型みたいだけど、もちろんそうじゃなくてSection 368(a)に規定されるTax-Free Reorganizationのことで A、B、だけでなくC以降Gまで7タイプある。代わりにAB型とかO型はないけどね。そのうちの(B)Reorganization、所謂「ビー・リオーグ」にちなんだ俗称だ。

Killer Bと対抗策

タックスプランニングと財務省規則の関係は、余り正しい表現じゃないかもしれないけど、多くのケースで「モグラ叩き」みたいなことが多い。規則が特定のストラクチャーに網を掛けようとするタイプの規定になればなるほどこの傾向は顕著。反対にどちらかっていうとPrincipleベースの規則の場合はモグラたたき的な問題は少ないけど、どうしても規則の適用範囲がよく分からなくなるんで課税関係の予見可能性が低下する。この問題を解消するため、米国のPrincipleベースの規則には多くの「Example」が記載され、実質それらがホワイトリストっていうかエンジェルリストみたいに受け止められ、Safe Harborみたいな機能を果たすようになる。例えば連結納税規則のInter-Company Transactionを規定している「-13」(ダッシュ・サーティン)はどんな取引にも適用可能なようにPrincipleベースの規則だけど(で、かつ天才的に良くできてる規則)、多くのExampleが記載されてるんで具体的な規則適用にかかわる理解を深めることができる。それでも2017年のTCJAでクロスボーダー課税に地殻変動が起きてからは、例えば連結納税子会社間Cross-ChainのCFC株式譲渡、その後一回CFCから配当があって、その後株式の価値が下落して第三者に譲渡、みたいな事実関係としてはシンプルな取引でも、どこでsection 1248の金額が決まりPTEPがどうなって、とか従来のPrincipleでは説明が難しくなることがある。

また規則内のExampleは、その前提条件が非現実的にシンプルかつタイトに設定されてるんで(英語で言うところの「Stylized」されてるんで)、例えば株主は一人で100%所有でひとつのクラスの株式しかなく云々とか、法人内の資産は一つとか、Exampleを見て取引をストラクチャーする際にはExampleの設定と現実の事実関係の差異がExampleの結果に影響を与えないかどうかを慎重に見極める必要がある。

で、Killer Bに対する規則は特定の取引に網を掛けるタイプだから上述の「モグラ叩き」的に規則で取り締まろうとすると形を変えた類似取引が再登場したりしてた。新種の凶暴なミツバチに襲われたら結構怖いね。元々2011年に最終化されたsection 367(b)の財務省規則に、外国法人がTriangular Reorganizationの一環で米国親会社の株式を取得する取引にかかわる取り扱いが規定された。で、この規則を適用してるんだけど、IRSの目から見ると規則を「悪用」して外国法人の資産を非課税で米国親会社に移管している、って受け止められる取引が散見され始めたんで、IRSは2014年に最初のKiller B Noticeを公表し、そのような特定の取引に対抗するために新規則を策定する旨を明らかにしている。2016年にはさらに別のNoticeで、2014年のNotice内容を反映して手を変え品を変え、みたいに登場してきた新種の同様取引にも網を掛けるって公表している。そしてようやく2014年のNoticeから10年近い年月を経て今回財務省規則案の公表に漕ぎつけたって訳だ。

もともとKiller Bっていう取引がUSタックス業界で知られるようになった頃から個人的にそのテクニカル面に魅了されていたんで、2014年や2016年のNoticeは興味深く読んだ。2016年と言えばファイザーのインバージョンを阻止するために超スピードで規則が出たり、コンプライアンス負荷が高いDebtを利用したBase Erosion対抗規則の1.385-3のファンディング規定が出たり、あの頃の勢いだと直ぐにでも規則案が公表されるかと思いきや、結局結構な時間を要したよね。その間に2017年税制改正があったんで、国外からのRepatにかかわる税制が大きく変わった点も影響しているのかもね。

Killer Bを語るには、まずsection 367(b)の話しをさざるを得ない。でさらに言えばSection 367(b)の話しをするには、Section 367全体のフレームワークをザックリとでも語る必要がある。これ結構込み入る予感なんでここからは次回。

Saturday, October 28, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (最終回))

結局長編になってしまったけど、前回のポスティングでようやくDC REIT、外国政府、QFPFを取り巻くFIRPTAアップデートをフィニッシュラインに到達させることができた。書いてて思ったけどREIT、特にFIRPTA課税が絡む外国人投資家にとってのREITって難しいよね。まだまだ読者の皆さんと一緒に細かい点を探求したかったけどキリがないんで一旦Wrap-Upする。またREITに逢う日まで。で、今回はボーナストラックとしてMiami Underground(Brooklynだっけ?)Long Versionの「DC REITのExit法」。それが終わったらKiller Bだからね。

DC REITのメリット

ここで初心忘れべからず、ってことでDC REITのメリットを復習しておく。REITがCorporateレベルで所有するUSRPIが所有資産の50%以上の場合、REITはUSRPHCになる(細かい定義は「FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (3))」を参照)。REITがUSRPHCの場合、通常のルールだと持分(=REIT株式)がUSRPIになるけど、REITがDC REITだとその株式はUSRPIとは取り扱われない、っていうのがDC REITのメリット。USRPIじゃないってことは、すなわち外国人投資家がDC REIT株式を譲渡してもFIRPTA課税の対象にならない、ってことになる。

ここでいくつか注意事項だけど、外国人投資家が認識するDC REITの株式譲渡益が必ずしも常に非課税って規定されてる訳ではない点に注意。FIRPTA課税の対象にならないイコール非課税とは限らないからね。実際には余り見られないシナリオだけど、外国人投資家がDC REIT株式を自己が従事する米国事業に関連して所有してたりしてしてすると株式譲渡益が事実関係的に本当にECI(FIRPTA規定によるみなしECIではなく)になるっていうケースはテクニカルにはあり得るよね。そんなケースではFIRPTAのSection 897はTurn-offできても、Section 864でECIになって871(b)とかSection 882の元祖ECI規定で課税される。元々、FIRPTAって元祖ECI規定じゃUSRPI譲渡益に課税できないGapを埋めるために制定されたものだから。

言うまでもないかもしれないけどDC REIT株式譲渡益がFIRPTA課税から免除っていうのは外国人投資家のみに関係する話し。DC REITなんでその定義から50%超の持分が米国人(Look-through所有者とか覚えてるね?)ってことだけど、米国人投資家にとってはDC REIT持分譲渡益に対する課税に特別な恩典はない。

またDC REITがFIRPTA課税からまるまる免除されるか、っていうとそうではなく、あくまで「株式譲渡益」に対する話し。例えば、同じUSRPI譲渡益でもDC REIT自体がUSRPI、例えば米国に所在する土地の所有権を譲渡すると、REITによる配当がUSRPI譲渡益に帰する範囲でFIRPTA課税の対象になる。REITはCorporationでブロッカー的な存在だけど、配当がUSRPI譲渡益に帰す部分はFIRPTA課税になるんで、申告法人税の対象で配当を受け取る外国人投資家は申告書を提出しないといけない。REITまたはREITをデラウェア州LPSのファンドが所有している場合にはファンドに源泉徴収義務も課される。この点に関してDC REITに特別な恩典はない。結果としてせっかく苦労してDC REITに投資しても、DC REIT自体がUSRPIを譲渡してしまうと、外国人投資家にとってその期の分配がFIRPTA課税の対象になってしまう。USRPI譲渡に帰する分配とCapital Gain Distributionが必ずしも同じものじゃない点は「FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (7))」の「Capital Gain Distribution神話」で触れてるんで復習しておいて欲しい。USRPIに帰する分配のルールは難しいよね。このルール、通常分配ばかりでなく、Liquidating Distributionにも適用あり、っていうのがIRSのポジション。331でも332でも関係ない。

上場REITの場合はDC REITでもそうでなくても所有持分が10%以下の投資家はUSRPIに帰する分配もFIRPTA課税から除外される。ただし、その場合も全く非課税って訳じゃなくて、通常の(=USRPIに帰さない)分配扱いになるんで条約で減免されてない限り源泉税の対象になる。ただ、FIRPTA課税対象じゃないんで申告書を出す必要はないっていう点は結構なメリット。

DC REIT投資Exit

という訳でせっかくREITの定款上外国人への株式譲渡を制限したりしてDC REITにしても、また外国人投資家の視点からはDC REITに投資しても、DC REIT自体がUSRPIを譲渡してしまっては、その期の配当やその後の清算分配、REITのCash Mergerの対価受け取りを含むDistributionがFIRPTA課税の対象になってしまって元も子もない。となるとDC REITに投資している外国人投資家は、DC REITがUSRPIを所有したままDC REITの株式を譲渡してExitする必要がある。そうじゃないとDC REITのメリットがない。この手のDC REITはファンドとかに所有されているケースが多いだろうからファンドに投資する際に、スポンサーにDC REITの株式自体を譲渡してExitするようSide Letterとかで要求することになる。スポンサーはそれに応じて「Commercially reasonable effortでそうします」ってことになる。

DC REIT自体がUSRPIを譲渡する代わりにDC REIT株式そのものの譲渡でExitを実現するためには、REIT内のUSRPIが分散型のストラクチャーは不向き。その理由でDC REITは特定のUSRPIのみを所有する所謂「Baby REIT」のケースが多い。Baby REITが持っている不動産を譲渡するタイミングが来たら、その不動産を所有しているBaby REITの株式を譲渡すればいいからだ。

で、Baby REIT株式譲渡自体は通常の株式譲渡と同じなんでSPAを締結して現金等を対価に譲渡すれば良くて、Baby REITがDC REITだとすると外国人投資家にAllocateされる株式譲渡益はFIRPTA対象外なんで、通常の所得源泉ルール・ECIルールで大概において非課税。DC REITに投資した目的達成、ってことになる。

問題は取得側。時価取引だけど株式を取得するんで株式がステップアップで時価ベースの簿価になってしまう。そこで通常はBaby REITの株式を取得した側はsection 332にならないように、例えば複数の主体を介して所有するとか、もっと一般的なのはUP-REITでREIT傘下にパートナーシップ区分されるOpCoがBaby REITを取得して、section 331でLiquidationしてOpCoレベルで資産そのものに対するステップアップを実現する方法。Section 331清算の場合、法人側も株主側も時価で物々交換した取り扱いになる。「え~、でもsection 331だったら株主のOpCoレベルだけじゃなくて、Baby REIT側もsection 336で課税取引じゃん」って思ったらB+。まずOpCoレベルは課税取引だけど、株式を時価で取得してるんで清算分配で受け取る不動産の時価と株主簿価は同じはずなんで経済的に譲渡益がないはず。これでAに昇格だね。

もう一方のBaby REIT側は複雑だ。331清算の分配はsection 336に基づいて 時価で資産を譲渡した取り扱いになるんで(概念的には時価ベースの自社株式と分配対象の資産を交換)含み益にフルに課税。これは通常の法人でもREITでも変わらない。REITは特殊な要件を満たすとは言えCorporationなんで、原則Reorganizationその他のSub C規定の適用がある。で、ここからがREITの特殊な恩典だけど、分配要件のポスティングで触れた通り、REITは課税所得相当額を配当すればREITレベルの課税がない。パートナーシップみたいなPureなパススルーじゃないけど、このDPDがあるんでパススルーチックになる。この取り扱いは清算分配にも適用があって、一旦REITレベルで331課税所得は生じるものの、清算分配で課税がなくなるという仕組み。

で、配当にはキャッシュがいるけど課税所得イコールキャッシュフローじゃないよね、っていう点は「FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (7))」の分配要件を復習して欲しい。Baby REIT清算を含む資産譲渡後のCroporate清算分配の場合、グロス資産の対価として現金を受け取ってるんでネット譲渡益に匹敵する現金は分配できるよね?う~ん本当にそうでしょうか。必ずしもそうなんないんじゃないかな~、って思う読者がいたらA+!もしBaby REITの内部資産の不動産の税務簿価が負債の金額を下回る場合、現金で受け取る対価は譲渡益より負債超過額分少ない。そんなケースでは清算分配できる現金が譲渡益を下回るんでそのままだとBaby REITレベルで課税所得が残ることになるよね。

またさらにややこしいことに、株式譲渡と同じREIT課税年度に取得側でLiquidationを敢行すると、売り手側は超Uncomfortableな状況になる。仮に株式取得前に通常の配当、例えばQ1とかQ2の通常配当、を受け取ってて同じ課税年度内に別の株主の手にあるとは言えsection 331という形で実質USRPIの譲渡が起こると、Q1とかQ2の分配がUSRPI譲渡に帰すってことでTaintされる恐れがあり、そうするとここまで苦労してDC REIT持分譲渡でExitを達成したつもりが何のことはないDC REITによるUSRPI譲渡と同じ状況になる。元々恐れていた状況に逆戻り。双六(今でもある?)でゴール1コマ手前までこぎつけて「振り出しに戻る」っていう状況だ。この理由で大概SPAのPost-ClosingのCovenantで清算するんだったら次の課税年度まで待つこと、とか契約的に縛りを入れることになる。たかがDC REITのExit、されどって感じで複雑~。

取得側のFIRPTA

取得側が外国人、または外国人投資家がいる場合、DC REIT株式の譲渡側で上述のような難関を乗り越えてFIRPTA課税から免除されても、FIRPTA問題は取得側が引き継ぐ結果となる。取得する方から見るとそんなことになったらOMGだよね。すなわちステップアップさせようと思ってsection 331清算させるとその分配がFIRPTA課税の対象になってステップアップができない。せっかく時価で資産を取得しているのに。

そんなケースではさらなるアクロバットが必要になる。分配をブロックするため通常のC Corporation、しかもその後の清算時にSection 332にならないよう複数のC Corporationを利用したストラクチャーで、REIT持分を取得し課税年度終了後に取得側がREIT選択、そしてsection 331みたいなストラクチャーを見たことがあるけど、入念なプラニングが必要だよね。この辺りの話しになるとポスティングとかで一般論を話すのは不適切っていうか、Top GunのKenny Logginsじゃないけど「Dangerousゾーン」に突入するんで必ずREIT専門のLegalおよびTax Advisorと慎重にストラクチャリングするように。他にもREITが組成する100%子会社は通常QRSになってDRE扱いになるんで、Reverse Subsidiary MergerがTax-Freeでできなくて、じゃあBやC reorganizationとか殿下の宝刀section 351?、とか、REIT適格要件維持、Prohibited Transactionとの問題とか検討事項は山積みだ。

UP-REIT

Section 331に絡んでOpCoの話しに触れたけど、この「UP-REIT」って「UP-Cみたい」って思う読者がいたらその通り!UP-CはUmbrella Partnership of C Corporationの略でもちろんパートナーシップの上にC Corporationがあるんで「UP」と掛けてる業界用語だけど(でも略語なんでUとPは必ず大文字で書くようにね)、ポートフォリオ主体をパススルーで所有しているPEファンドのExitを含むパススルー主体をPubicにする際に今ではすっかり確立された手法。投資銀行のSalesチームにも馴染みがあるんで株式のマーケティングにかかわるExecutionリスクが低いっていう恩典が大きい。もともとはBarns and Nobleの取引に始まり、その後、LazardのUP-Cで「Tax Receivable Agreement(TRA)」がUP-Cと一体化されて今日のUP-Cに至る。でも、このUP-Cってその昔はパートナーシップ税制のAnti-Abuseに抵触するんじゃないか、っていう不安が付きまとってた。そんな疑義を解消してくれたのが、90年代前半の不動産不況時にREITの傘下にパートナーシップを組成して、不動産のオーナーがREITではなく傘下のパートナーシップ(OpCo)に不動産を出資する取引にお墨付きを与えたAnti-Abuse規則内のExampleだ。UP-CやUP-REITの世界では「Example 4」っていうだけで何のことかすぐに分かるほど有名なExample。直前のExample 3もケイマンフィーダーとかに安心感を与えてくれる。面白いことにAnti-Abuse規則だけど、何がAbuseじゃないかっていう点をはっきりさせている点で貴重な規則。

Example 4の設定は、そのまま不動産をREITに出資するとREITはCorporationなんで、パートナーシップのsection 721と異なり80%支配要件があるsection 351に適格とするのは非現実的っていうもの。仮に支配要件を何らかのマジックで満たすことができてもREITなんでsection 351(e)でInvestment Companyへの出資になってsection 351にはいずれにしても不適格だろう。万一奇跡的にsection 351になったとしても不動産不況でSuper-Underwaterになってる物件が多く簿価を超過する負債のsection 357(c)課税とか、とにかくREITに出資するとただでさえ不況で窮地に立たされていた不動産オーナーにとって泣きっ面に蜂的な状況に陥る。そこでSuper Flexibleなパートナーシップ、OpCoをREIT傘下に組成してそこに出資、さらに旧オーナーに上場REIT株式とOpCo持分間で1対1のレシオでExchange権を付与して流動性も担保、それでもきちんとストラクチャーすればOpCoはPTPにならないっていう夢みたいなストラクチャー。

UP-CっていうのはこのUP-REITのテクノロジーをREIT以外のC Corporationに流用したもの。このことから「わ~、UP-REITってUP-Cみたい」って感じるのはそれはそうなんだけど、順番が逆で「UP-CってUP-REITみたい」って感じないといけない。その後、UP-REITもUP-Cもどんどん進化して今に至るし、今後も進化し続けるだろう。ストラクチャーやファイナンス法の進化は不況時に加速するんで2022年後半からの進化ぶりも目を見張るものがある。特にファンドの資金調達、BuyoutファンドによるNAVストラクチャー、Rated Feederとか次々に難関を乗り越えるVitalityは凄いね。UP-REITもDownREITとかパーシャルUP-REITみたいなストラクチャーが一般化したり。現政権の厳しいRegulatory環境下でもPrivate Industryの知恵は果てしない。

エピローグ

モビリティの高い世界のお金を米国不動産に投資してもらうため、ここ何年も自由化のトレンドが続いてたFIRPTA。以前触れた通り、不動産業界的にはFIRPTA自由化ではなくFIRPTA全面廃案が長年の悲願。議会には不動産業界の声を聴く耳を持つ議員が多い。それはそのはずで、州により偏りがある他の業界と比較して不動産は全州に関係するから。一方、ここに来て議会ではなく行政府のRegulatory環境が急に締め付け方向に振れてる感がある。今回のシリーズで触れたDC REITの規則案等の最終化の局面を含む要所要所でREIT等の進化には引き続き触れていきたい。

それでは次回はKiller Bでお会いしましょう。

Saturday, October 7, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (12))

遂にでた~、って感じで一昨日、10年近い歳月を経て、Killer B系の財務省規則案が公表された。年初から書いてるFIRPTA系のアップデート(8)で、IRA系のプレッシャーで従来からみんなが待ってる規則、特にPTEPの公表が延期されてて残念って話しをしたけど、その時に他にもみんな(?)が待ってる規則にKiller Bがあるね、って触れた。その時点では、まさかこんなタイミングで出てくるとは思ってもみなかったんだけどね。もしかしたら今シリーズで書いてるFIRPTA系の規則案の最終化も近いかもね。

一般読者はKiller B(BeeじゃないけどもちろんKiller Beeにちなんだ名称)って何のこと、って思うだろうけど、敢えて乱暴に言ってしまえば、Triangular Reorganizationを利用して外国法人の留保所得を原資に米国親会社の株式を取得し、実質非課税で留保所得を米国に還流するストラクチャー。主に367(b)の世界だけど、1032とか1248とかにも関係する話し。367ってSub Cに属するSectionだけどクロスボーダー課税とのブリッジの機能を果たしてる複雑な規定。367は(a)から(f)で構成されるけど、通常のSectionみたいに(a)が原則ルールで(b)以降はその詳解っていうんじゃなくて、各々が個別のポリシーマターに対応している。特に(a)と(b)は別ルールでStand Aloneな関係にあるって思っておく方が分かり易い。367は(a)にしても(b)にしても、Sub Cとクロスボーダー双方の規定を熟知してないと良く分からないんで、テクニカルに最難関の一つで魅せられるSectionだ。ただKiller Bが実行されてた当時と2017年税制改正後のクロスボーダー課税制度は根本的に異なるんで、Killer Bやその規則の役割も自ずと2017年末を境に大きく異なる。それを言い出すと、そもそも367(b)の役割は2018年以降抜本的に改訂しないとおかしいよね。それには法外な労力を要するだろうから近々には無理だろうし、確か財務省の規則策定プランにも、より広範な367(b)の見直しは含まれてないはず。残念。

ちょうど、FIRPTAの話しがかなり終盤に差し掛かってたところなんで、Killer BはFIRPTA直後に取り掛かりたい。乞うご期待。今回でDC REITの定義をWrap Upして、その後はどうしてももう一回別のポスティングにならざるを得ないと思うけど、DC REITのExitの話しまでできたら今回のFIRPTA特集はCompleteかな。せっかくDC REITに投資してもExitがREIT株式譲渡じゃないと意味がない。すなわちDC REITそのものがUSRPIを譲渡してしまうとその課税年度の分配はUSRPI譲渡益の範囲でFIRPTA対象なんで、DC REITに投資してる意味がない。となると外国人投資家としてはExitはREIT株式譲渡っていう形で実行して下さい、ってSide Letterとかでスポンサーにリクエストして、スポンサーはそれでは「Commercially reasonableな範囲で対応します」とか、投資家は「いや、文言は単にReasonableに変えてくれないか」とか、「Best effortではどうでしょうか?」とか歌舞伎のようなやり取りが付き物だよね。ファンド経由でREITに投資する際のスポンサーに対する押しの強弱は、一般にPEファンドやVCファンド投資時のECIとかの話しでもそうだけど、同じ外国投資家でも日本の投資家と他国の投資家で結構温度差がある。日本の投資家は概してスポンサーに物言わない傾向があるように思う。スポンサー側のFund Raiseはここ1年半不調だからLP側にLeverageがあって、スポンサーは結局多くの条件を飲んでるように見えるんでより有利な条件を引き出すようにね。

で、実際にマーケットでどんな風にDC REIT投資のExitが行われてるか、っていうチョッとDeepだけどDC REITの最も肝心な部分に触れて最終回かな。その直後にKiller B。今から楽しみだけど、既に心FIRPTAにあらず、じゃないから安心してね。

Non-Look-through所有者

前回のポスティングでは、REITがDC REITになるための「50%未満を直接・間接に外国人が所有している」っていう要件をテストする際にどこまでの間接持分を見るか、っていう点を規則案では「Non-Look-through」と「Look-through」の所有者に区分して考えるっていう提案になっている点に触れた。規則案ではREITがDC REITになるかどうか判断する際、「Non-Look-through所有者」だけをREIT株主として取り扱うとしている。Non-Look-through所有者でない者、すなわち「Look-through所有者」がREIT株式を所有している場合、Look-through所有者の持分を所有する者を見る、と規定している。Look-through所有者の所有者自身がLook-through所有者の場合、Non-Look-through所有者に辿り着くまで持分を紐解くことになる。

じゃあ、誰がNon-Look-through所有者かっていう最重要ポイントだけど、個人と(後述の外国人所有の特例を除く)C Corporation。この2つのタイプの所有者はパススルーじゃないんでそれはそうだよね、ってなる。REITやRICはテクニカルにはCorporationでパススルー・チックだけど実際にはDPDはあるけどパススルーでもないので後述の特別な規定対象。また非課税団体は法的な組織が信託でもCorporationでも、Non-Look-through所有者になる。外国政府はIntegral Partのケースも含め米国税法上はForeign CorporationなんでNon-Look-through所有者で、規則案では同様に外国政府と同じSectionでカバーされている「International Organization」もNon-Look-through所有者としている。Super-Exemptを含む州政府もNon-Look-through所有者。そうだよね。Look-throughする相手がいないもんね。PTPもNon-Look-through所有者。MLPみたいに上場後もパススルーStatusを維持しているところもNon-Look-through所有者になるってことなんだと思う。ちなみにMLPは普通に上場してるんで油断しがちだけど、パススルーなんで日本から直接投資したりしないようにね。30州のK-1とか送り付けられてきて「これ何ですか?」ってなったときは既に手遅れだから。さらにNon-Look-through所有者にはQFPFが含まれるってダメ押しがある。もちろん外国人として…。

ということは長らく仕方なく外国人として取り扱ってきた米国税務上パススルーを選択するケイマンフィーダーは、実はLook-through所有者なんで、フィーダーのLPが米国人だったらその分は外国人としてカウントしないでもOK、ってことなんだね!それはそのはずだったんだけど、従来の規則ではそうは読めなかったんで確認してくれて良かったです。

Look-through所有者と外国人所有の米国法人

こんな感じでNon-Look-through所有者の区分は大概において想像通りだけど、前回のポスティングでは、一点唐突な規定として外国人所有の米国法人(原文「Foreign-Owned Domestic Corporation」)に特別な取り扱いが規定されている、って不吉な予感を醸し出したところで終了していた。

で、規則案では、米国法人を含むC Corporationは原則Non-Look-through所有者だけど、濫用防止目的で外国人が価値ベースで25%以上所有する未上場(例によって正確にはRegularly Traded基準)の「米国」法人はLook-through所有者と取り扱うとしている。え~、C CorporationをLook-throughするって何それ~って感じだし、増してや25%ってどっから来たの?って感じだよね。

C Corporationをブロッカーにしている状況を問題視してるのは分かるけど、米国法人を通すってことはその部分はFIRPTAとか関係ないんで、DC REIT投資でもそうじゃなくてもWorldwideの全所得が米国で課税対象。今回の規則案では、その取り扱いはもちろんそのままで、だけど「あなたは米国人とは限りません」って言ってることになって「Worldwideで税金払ってんのに?」ってチョッと釈然としない。問題視されているストラクチャーはCaptiveなもので、例えば本当は100%外国人所有なんだけど、51%分は米国法人経由で投資してDC REITにして、Exit時にDC REIT株式譲渡益のうち49%がFIRPTA課税から免除されるようなかなり限定的なもので、合計で25%以上外国人所有っていう規則はBroad過ぎる気がしないでもないけどね。さらにポリシーマターとして納得いくかどうかとは別に条文的に25%基準でLook-throughとか認められるんだろうか、っていう法的な問題もある。で、米国法人の所有者が非上場の米国法人の場合、同じルールを連続適用して判断。非上場だから必ずしも株主が2~3人とは限らないんで実際の適用は負荷が高いケースも少なくないだろう。ちなみにC CorporationをLook-throughするこの特例は米国法人だけに適用があり得るんで、仮に100%米国人が所有する外国法人があっても、DC REITテスト時にLook-throughして米国人とすることはできない。

REITが所有するREIT持分

REITに所有されるREITの持分判断法は上場REITとそうでないREITで異なる。上場REITに関しては「FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (9))」で触れた通り、REIT株式が市場でRegularly Tradedの場合、5%未満の株主は「REITがその身分を実際に知らない限り」米国人としてみなしてよろしい、っていう面白いルールの適用がそのまま温存される。ご丁寧に仮に5%未満の株主がQFPFでもこの目的では「その身分をREITが実際に知らない限り(調べる必要はない)」米国人とみなしてよろしい、とされる。知らぬが仏って感じの規定で面白いよね。

DC REITかどうか判断しようとしている対象のREITが非上場のPrivateのREITの場合、規則案の対象そのものなんでもちろんだけど規則案で提案されるルールで判断。

また従来のルール通り、REITの所有者自体が上場REITの場合、上場REITがDC REITでない場合は、外国人所有となる。Private REITが所有者の場合、Private REITをLook-through所有者として持分を判断することになる。

たかがDC REITの持分、されどって感じだよね。

発効日と従来のストラクチャー

規則案は外国政府に関係する部分のみ早期適用が認められている。その他のQFRPやDC REIT部分は原則、規則が最終化された後の取引に適用があるとされる。だけど、この点には重要な但し書きがあり、最終規則の公表後に組成されるREITばかりでなく、REITがDC REITかどうかは過去5年間を見るので、その目的でも規則の適用があるとされる。この点は、25%の米国法人Look-throughと並んで物議を醸し出している部分で、例えば2024年1月1日に規則案の内容に準じた最終規則が公表されたとすると、1月2日に行われるDC REIT持分譲渡は、規則を過去5年間に亘って適用してその課税関係が決まることになる。REITを組成した段階ではまさか25%基準で米国法人をLook-throughするなんて考えてた納税者やアドバイザーは存在しないだろうから実質何の前触れもない過去遡及となる。

業界の集まりとかでIRS法務部高官の話しを聞くと「5年間の適用はチョッと評判が悪いね~」みたいな感じなので、この点は撤回されると考えていいだろう。ただ、25%の米国法人Look-throughは「そんな規則どっから来たの~?」って同じく評判が悪いけど、どうも「5年間の適用はチョッと議論があるみたい」っていう発言から25%Look-throughそのものは不動っていうニュアンスも伝わってきて怖い。裁判所で司法判断を仰ぐっていう最近お決まりのパターンで決まるんでしょうか。

ちなみに規則案前文では「最終規則が公表される前でも、規則案に反するストラクチャーは税務調査で問題視するかもしれない」って釘が刺されている。「え~、ストラクチャーした段階で存在しないルールなのに?」って思うけど、もちろんどっから出てきたか不明の米国法人25%Look-throughルールを税務調査で指摘されることはないと考えていい。おそらく外国人がREIT投資する際に49%は直接、残り51%は米国法人経由とかのあからさまなCaptiveストラクチャーが対象なんだろう。それらも現状の法律で否認が可能かどうか怪しいけどね。

ということで長編化したDC REIT、外国政府、QFPFを取り巻くFIRPTAアップデートにようやく終止符を打ち、次回はボーナス・トラックのBrooklyn Undergroundバージョン(何それ)で、DC REITのExit法に関して。そしてその後はもちろんKiller Bです。

Saturday, September 30, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (11))

前回のポスティングでは、REITがDC REITになるかどうかの判断時にQFPFを米国人、外国人のいずれと取り扱うかっていう点に触れた。規則案では条文に反して(?)米国人ってしてるけど、結果よりもどうやって法的にそんな結論に導けるかっていうのが主たるフォーカスだった。

で、今回はDC REITの判断にかかわる規則案の内容で最もBombshellと言える規定に触れる。楽しみ?

ところで、このDC REITって外国人投資家が米国不動産に投資する際にとってもありがたい存在で、もちろんDC REITになるようにストラクチャリングすることは多いけど、なぜ外国人が50%未満のREIT持分だとFIRPTAをオーバーライドして外国人投資家が非課税で持分譲渡できるのか背景が不明でチョッと不思議な規定。REIT譲渡益の少なくとも半分は米国人が普通に課税されるんで、外国人に帰する残りは非課税でもOKっていうことなんだろうか。でもDC REITをDC REITたらしめる米国人の株主は課税主体じゃないといけないっていう要件は見当たらないんで米国の非課税団体でも立派な米国人株主としてREITをDC REITにできる。となると半分は誰かが税金を支払ってるから、っている理由ではなさそうだね。普通の(REIT以外の)米国法人株式がUSRPIになるケースでは、米国人持分の大小にかかわりなく外国人株主の株式譲渡はFIRPTA課税対象。REITはロビー活動が功を奏してか特別な恩典が多い。USRPIから除外されるRegularly Tradedの5%ルールもREITだけは10%だしね。

間接持分とDC REIT

で、今回争点となるのはDC REITの定義「5年間を通じて外国人が直接・間接に価値ベースで50%未満の株式を所有」の「間接所有」をどのように解釈するか、っていう点。しつこいかもしれないけど、ここで言う外国人は「NRA、外国法人、外国パートナーシップ、外国信託、外国遺産(Estate)」でQFPFは少なくとも規則案に基づくと外国人扱いなのは前回のポスティングの通り。

DC REITは実はNon-FC REIT?

間接所有を考える際に、DC REITの定義を良く読んでみると恐ろしい事実に気づく。DC REITってその名を鵜呑みにすると「Domestically Controlled」だから米国人が支配している、すなわち米国人の持分・支配権が重要に聞こえるけど、条文では「直接・間接に「外国人」が50%未満の価値を所有しているREIT」がDC REITになると定義されている。すなわち米国人が支配しているかではなく、「外国人が支配していない」点がフォーカス、っていうか唯一の検討になるってこと。この定義を律儀に名称に反映するんだったら「Domestically Controlled」の代わりに「Non-Foreign Controlled REIT」、「Non-FC REIT」の方が正確。

米国人、外国人のどっちを引き合いにDC REITを定義するかで、間接持分にかかわるプレッシャーの方向が変わる。条文に基づいて、外国人が直接「または」間接に価値ベースで50%未満を所有してるかどうか判断しないといけなくなるけど、直接と間接を接続しているのは「Or」というDisjunctiveなんで、グラマー的にどっちでもOK。これが外国人にかかるっていうことは「外国人が直接持ってたらそれでアウト」、「米国人が直接持っててもそれを間接的に外国人がもってたらそれもアウト」、ってことになる。この条文のさりげない表現、なんか良くできてるよね。

規則案は話の持って行き方が工夫されている。挑戦的な規則を策定する際に良く見られるアプローチだけど、まず納税者にとって最も好ましくない解釈を提示して、その後でそれを若干緩和してみせるというもの。最初から緩和後の規定を提示されていたら、それに対して納税者が拒絶反応を示すような内容でも、最初にもっと凄い内容を提示されて大ショックの状態に陥り、その後で若干緩和されたバージョンを提示されるとそれがマシなので、いいDealかのように錯覚してしまうけど、そんな流れ。

完全Look-through

まずは最初のショック部分。手始めに、間接持分のひとつの解釈として全ての主体を個人株主に辿り着くまでLook-throughして、個人株主が外国人(NRA)なのか米国人なのかを見てDC REITかどうかの判断をするという規定が考えられますっていう切り出し。しかも、Look-throughになることが多くて納税者側の納得レベルも高いであろうパートナーシップだけでなく「米国法人を含む全てのタイプの主体をLook-through」するアプローチが考えられると釘を刺している。「え~、C Corporation全てLook-throughってどういうこと~?」ってなる。

ちなみに外国人の定義に外国パートナーシップが含まれるんで、従来は外国パートナーシップをLook-throughするのは相当な勇気が必要で、そんな度胸のあるPractitionerは少なく一般には外国パートナーシップは外国人と取り扱い、それでも他の米国株主を見てDC REITになるようにストラクチャリングしておくのが一般的だったと思う。例えばケイマンフィーダーが米国税務上パートナーシップになってる場合、仮にその上に米国人パートナーが存在しても、ケイマンフィーダーが所有するREIT持分は「外国人」所有として考えざるを得なかった。逆にデラウェア州LPSみたいな米国パートナーシップはパートナーを見るまでもなく米国人なんだよね、っていう解釈にもなるけど、パートナーが全員外国人投資家だったりするとチョッと不安だった。一方で米国のC Corporationが株主に居る場合、特にC Corporationに複数の株主が存在する場合は、必ずしも100%確証度合いはなかったかもしれないけど、米国人株主と取り扱う点に一般Practice的に多くの不安はなかったように思う。

「全ての主体を個人株主までLook-throughって何それ~?」ってなったところで、緩和策の提示。さすがにそれでは可哀想なので、っていうか正確に言うと複数のTierを介した投資や多くの株主が存在するケースでは納税者・IRSの双方にとって管理運営可能性が欠けるのでベストではない、としている。さらに条文解釈上もDC REITの定義は「Foreign Person」(NRA、外国法人、外国パートナーシップ、外国信託、外国遺産(Estate))に基づくので、必ずしも個人株主の外国・米国区分だけに基づく判断が法律の意図とは言えない、としている。「なんだビックリさせるな~」って油断したところで満を持して挑戦的な規則案が登場する。

限定Look-through

チョッと安心した状態で「緩和策」が提示されるんだけど油断大敵。限定Look-throughっていうアプローチにしたとのこと。「限定」っていう表現はフレンドリーに聞こえるし、限定Look-throughに関する話しの持って行き方も工夫されている。まず、納税者としても「それだったら仕方ないね」とか「それはそうだよね!」って思える極端な例で始まる。

たとえばUSRPIしか持たないREITの49%株主がNRA(これは間違いなく外国人扱い)、残り51%株主は米国パートナーシップだとする。49%株主がREIT持分を譲渡する場合、通常だったらFIRPTA課税の対象になるけど、REITは51%を米国人(米国パートナーシップはパススルー課税の場合も税法の定義上は米国人)に所有されていて外国人所有が50%未満なので、DC REITとなりFIRPTA課税対象にならずに非課税っていうポジションがあり得る。っていうか条文を文字通り適用するとそんな結果にならざるを得ない。FIRPTA課税ケースを自主的に課税取引と取り扱うことはできないだろうし。ただ、米国パートナーシップのパートナーが外国法人だったりする場合、従来から「これ本当にDC REIT?」っていう疑問は存在していた。どちらかというと結果がしっくりこないこんな例が冒頭に来るんで「確かにLook-throughしないのはおかしいよね」っていう雰囲気にさせてくれる。そこでいよいよ登場するのが規則案だ。ワクワクする?それともドキドキ?両方だよね。

Look-through所有者とNon-Look-through所有者

で、規則案ではREITがDC REITになるかどうか判断する際、「Non-Look-through所有者」だけをREIT株主として取り扱うとしている。原文ではNon-Look-through Personなんだけど、Non-Look-through人、って火星人みたいで変だし、米国の法律で「Person」っていう表現を使用するときは税法に限らず一般に自然人だけではなく主体も含むんでここでは「所有者」って意訳しておく。Non-Look-through所有者でない者、すなわち「Look-through所有者」がREIT株式を所有している場合、Look-through所有者の持分を所有する者の比率に準じて米国・外国を識別するとしている。当然だけど、Look-through所有者の所有者自身がLook-through所有者の場合、Non-Look-through所有者に辿り着くまで持分を紐解いていく必要がある。

外国人所有の米国法人

誰がNon-Look-through所有者でLook-through所有者なのかは大概において想像通りだったんだけど、一点唐突な規定がある。外国人所有の米国法人(原文「Foreign-Owned Domestic Corporation」)の取り扱いだ。これ結構長くなりそうなんでここから次回。

Friday, September 29, 2023

FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (10))

さて、前回はQFPFって一体どこの人?ってところで時間切れになった。QFPFはFIRPTA規定目的(for purposes of section 897)では、外国法人にも米国非居住者個人(NRA)にも当たらない、って条文で規定されてるんで、だったら米国法人または米国人に決まってんじゃん、ってことになるよね。米国税法上、米国人と外国人はMutually Exclusive、すなわち互いに排他的な関係にあるんで、両方ってことはないはず。また、必ずどっちかになる必要もある。すなわち米国人でも外国人でもない、って状況はない。前回、宇宙人に触れたけど、落ち着いて(?)考えてみたら税法上は米国人を定義して、それ以外は外国人という構成なんで宇宙人は外国人だろう。もちろん宇宙人が「Person」っていう前提で。

どっちにしてもQFPFがFIRPTA課税の対象じゃないんだったら別にどっちでもいいじゃん、って思うかもしれないけど、それはあわてんぼうのサンタクロースさんだ。特定の人、ここではQFPFっていう主体だけど、が米国人なのか外国人なのかで、FIRPTAの他の規定に大きな影響があり得るからだ。QFPF自体のFIRPTA除外適格有無とは別の話し。ちなみにQFPF神話って既に触れたかどうか自分で忘れちゃったんで、書いておくけど、QFPFはFIRPTAの対象にならないって規定されているだけど、不動産投資が非課税って規定されている訳ではない。それらは通常の税法で決められる。QFPFが外国人でないと取り扱われるのはFIRPTA(Sectio 897)目的のみなんで、他の税法を適用する際は外国の年金基金として取り扱われる。現実にはほぼあり得ないかもしれないけど、QFPFが実際に米国に不動産を直接所有していてアクティブにManageしてたとすると、不動産譲渡益はFIRPTAがなくても別の例外がない限り通常のECIルールで課税されるんで、「私はQFPFです」って言っても「フ~ン、で?」ってなるから注意。

DC REIT

QFPFが米国人なのか外国人なのかで、FIRPTAの他の規定に大きな影響があり得る、って上で書いたけどその最たるものがREITがDomestically Controlled(DC)に当たるかどうかの判断時。う~ん、ようやくDC REITに来たね。感無量。

REIT持分(株式)は大概においてUSRPIだけど(そうじゃないケースがあり得る点は今回のシリーズを通して何回か触れてると思うんで「なんで?」って思う読者が居たら過去のポスティングを読んでみて欲しい)、REITがDC REITだと過去5年にUSRPHCだったことがあるか、とか市場でRegularly Tradedで持分が何%か、とかを考えることなく、DC REITの持分はUSRPIにはならない、って規定されている。USRPIじゃなければ、FIRPTAの適用はないから外国人が認識する持分譲渡益は通常非課税となる。

ここでは一貫してDC REITって表現を使うけど、テクニカルにはREITに加えて後年RICにも同じ取り扱いが追加され、今ではREITとRICをまとめて「Qualified Investment Entity(「QIE」)って言って、DC REITも正式にはDC QIEって言う。だけど、DC QIEとかって未だにスンナリと入ってこない読者(っていうか自分?)も少なくないだろうから、使い慣れてて舌も滑らかなDC REITにしとく。どうせ大概においてREITの話しだし。RICって40年投資法管轄で、BDCとかを含むリテール商品。リテールなんで市場でRegularly TradedだったらFIRPTAの適用は大概ないもんね。僕のDC REITの話しはBDCを含むRICにも同様に適用がある、って覚えておいてくれたらそれで十分。

DC REITがUSRPIじゃないんでFIRPTAの適用はない、っていう点には重要な但し書きがある。すなわち、REITの持分そのものを譲渡した結果の譲渡益はFIRPTA不適用なので大概において外国人にとって非課税だけど、DC REITの分配がDC REIT内のUSRPI譲渡益に帰する部分には免除はない。この点「FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (7))」のREIT Net Capital Gain分配神話で結構触れたんでを見てみて欲しい。DC REITの清算分配も同様で免除はないっていうのがIRSのポジション。

じゃあ、どんなREITがDC REITになるかっていうと、「Domestically Controlled」って名の通り、米国人に支配されるREITなんだけど、税法では「5年間を通じて外国人が直接・間接に価値ベースで50%未満の株式を所有しているREIT」って定義されている。この目的の外国人は、FIRPTA対象となるNRAと外国法人に加え、外国パートナーシップ、外国信託、外国遺産(Estate)と定義されている。

これだけ見ると、DC REITの認定に特に論議を呼ぶ感じを受けないかもしれないんだけど、実はそうでもない。例えば、「直接・間接に」っていう部分の何をもって「間接持分」を加味して判断するか、っていうのは必ずしも明確でなかった。唯一、何らかの規則があるとするとREITの分配を所得認識する立場にある者を株式所有者と取り扱うという点くらい。

また、REITの株主の特定も必ずしも容易ではない。例えばREITが上場してたら5%株主でもない限り分からない。この点に関してはREIT株式が市場でRegularly Tradedの場合、5%未満の株主は「REITがその身分を実際に知らない限り」米国人としてみなしてよろしい、っていう面白いルールがある。この手の事実認定で純粋に「Actual」な知識だけを基にしているのは結構珍しい。大概、Actualに加えて「Reason to know」的なエレメントがあるんだけどね。Actual Knowledgeは、わざわざ調べなければ分からないんで、DC REITになりたい場合、私は知りませんって言ってしまえば米国株主になるという不思議な規定。またPrivateのREITでも仮にパートナーシップをLook-throughして間接持分を決めようとすると、ファンドに直接投資しているLPまでは分かってもその上のFeederやFund of Fundとか辿っていくととてつもない数のメンバーがいる可能性もあり捕捉が不可能。市場でRegularly Tradedじゃないのがファンドだから5%未満のルールもないし、反って複雑だ。ちなみに株式が市場でRegularly TradedなREITが別のREITを所有してる場合、所有者の上場REIT自身がDC REITでない場合は、外国人が所有していると取り扱われる。一方、REITを所有する株主のREITが上場REITじゃない場合、株主のPrivate REITを所有する米国人株主の比率に準じて米国人が所有しているって取り扱われる。

たかが、50%未満を外国人がもってるかどうかの判断なんだけど、なんか難しくなってきたね。

DC REITとQFPF

で、ここまで書けばQFPFとDC REITの関係にかかわるテーマは分かったと思うけど、QFPFはNRAでも外国法人でもないんで、普通に考えれば米国人。ってことはREITがDC REITかどうかを判断する際、すなわち5年間を通じて「外国人」が直接・間接に価値ベースで50%未満の株式を所有してたか、ってテストする際、QFPFが所有するREIT株式の価値は「外国人所有」にはならないはず。議会が熟考した上に条文そのものにFIRPTA目的ではQFPFはNRAでも外国法人でもない、って明確に規定されてるんで、一見それ以上の議論にはならないように見える。「QFPFは外国法人だが、Section 897(a)、すなわちFIRPTA課税から免除する」みたいな他の表現を使いたければ、条文をそんな風に策定すればよかった訳だから。実際にもともとPATH Actの規定はそれに近い。それを「わざわざ」2018年のTechnical Corrections Actで現状の文言に変更してるしね。

条文解釈とポリシー

条文っていうのは明確に書いてある部分に関しては、どんなにポリシー的に好ましくなくても真っ向から対立するような解釈は誰にも認められないはず。あなたはAではない、って条文に書いてあって、ポリシー的にいかがなものか、という観点で法の適用時に「この目的ではあなたはAと取り扱います」とか言われ始めると何を信じていいか分からないもんね。連邦憲法上、議会が制定するStatuteは憲法、条約と並び米国の「Supreme」な法律だからね。また三権分立の観点からも議会が制定した法律を行政府が書き換えるのはおかしいはず。

つまり条文っていうのは良くも悪くも明確に書いてある部分に関しては、対立するような解釈や処理は認められないのが原則。仮に立法趣旨的に条文が間違いに近い場合でも。例えば2017年にSection 958(b)(4)っていう「CFCやUS Shareholderの判断時に外国人から米国人の持分をDownwardにAttributionはしません」っていう条文が撤廃されてDownward Attributionがフルに適用されるようになったけど、撤廃の趣旨とか関係ない部分への影響が大きい。趣旨から外れてても条文だけ読むとDownward Attributionはフルに適用されるんで、Technical Correctionが制定されるまでは他のポジションを取るのは厳しい。例えばデラウェア州LPSのPEファンドが外国法人のポートフォリオに投資することになる場合、従来からのパターンだとSubpart Fを避けるためケイマンAIVを利用するけど(ここ数年デラウェア州LPSもSubpart Fの「Inclusion目的」では米国外LPS同様ってルールに変更されてるけど、ケイマンAIVと異なりデラウェア州LPSはパートナーシップレベルで米国株主である点は従来のまま。Section 1248とかの適用の恩典をスポンサーが追求する場合はその方がいいかもしれないけど今日のテーマには関係ないんでそのうち別企画で)、もし外国法人ポートフォリオがTop Coでその傘下に米国子会社と外国子会社があったとする。Section 958(b)(4)が存在した時代は、Top Co傘下の外国子会社がCFCになることはなかったけど、Section 958(b)(4)が撤廃されてフルにDownward Attributionの適用が開始された後は、一転してCFCになる。なぜかって言うと、Top Coが所有する外国子会社の持分はDownward Attributionを介して米国子会社が所有してるとみなされるんで、外国子会社は米国法人に100%所有されてることになり結果CFCとなる。「でも、Top Coは外国法人だし、ファンドもケイマンAIVを使ってるからテクニカルにCFCでも関係ないじゃん」って思う読者がいたらなかなか鋭くてBプラスはもらえる。どうしてAじゃないの?って言うとAIVの上のTop SideにAIVの10%持分を所有する米国人LPがいるとInclusion Shareholderが誕生してしまうからだ。他に米国人の10%LPが居なくて、たった一人10%持ってても、Top Coが傘下に所有する外国子会社はDownward Attributionで既にCFCになってるから、Subpart FやGILTI(正確にはTested Income)を合算しないといけなくなる。「え~、そんな~」って思う結末だけど法律だから仕方がない。この点に気づいたら惜しみなくAがもらえてMagna Cum Laude。「そんなんだったら外国子会社Check-the-BoxしてDRE扱いしたらいいじゃん」って思う人が居たら凄い。AプラスでSumma Cum Laudeで卒業。

行政府の規則策定権

話しを財務省規則に戻すけど、僕が規則策定権云々とか言うまでもなく、もちろん財務省やIRSの法務部は規則策定権の重要性や限界は百も承知だから、付与されてる権利の範囲で規則を制定している、っていう点はSuper-carefulにサポートしようとする。時としてストレッチっぽいサポートも見られるけどね。近年ではsection 385の規則(Debt/Equity Classificationのはずが規則はBase Erosion対抗策)、section 7874(Inversion)系の一部の規則(特にsubstantial business activities要件の厳格化、skinny-down防止、等)、米国パートナーシップをSubpart FやGILTIのInclusion Shareholderでなくした規則、GILTIのHigh-tax exclusionの拡張、などがストレッチっぽい規則として思い浮かぶ。結構多いね。この手のストレッチ規則は、冒頭に、条文に基づきどうして行政府に規則策定権が付与されていると考えているか、っていう点が延々と説明される。その説明が長ければ長いほど、逆に規則策定権は眉唾ものと言える。でなければ多くの紙面をなぜ規則が策定できるのか、っていう入口部分にそこまでのエネルギーを費やす必要はないもんね。

DC REITとQFPF(Reprise)

2019年の規則案ではQFPFのDC REIT判断時の取り扱いに関して明確な言及はなかったんで、一般的には「条文にNRAでも外国法人でもない、って書いてあるから米国人扱いしていいんだよね~?」ってチョッとものおじする感じでアプローチしてた。だって条文に書いてなければ、QFPFの二番目のFは「Foreign」だし、そもそもFIRPTAの話しが出てくる時点でForeignってことなんで、これを「米国人です!」って真っ向から宣言できるかどうか、ってチョッと腰が引ける感じがあった。ただ、逆に「Section 897(DC REIT規定はSection 897の一部)の目的で、外国法人にもNRAにも当たらない」ってSupreme Lawに名言されてたら、それ以外の取り扱いをするのはもっと腰が引けるよね。それとも、外国法人やNRAじゃないけど、外国人(Foreign Person)って考えるのかな~、とかどんどんIllogicalな心配が増える。

そんな状況だったんで、2019年の規則案公表後、「QFPFの取り扱いを明確化して欲しい」っていうコメントが多く寄せられていた。もちろん多くのコメントは単に「明確化」するというよりは、「条文通り米国人扱いするって念のため再確認して欲しい」っていう意味だったんだけどね。特に、QFPFから多額の資金調達をしているOpen-EndedのヘッジファンドやClosed-Ended でもPEに比べてTermが長いHybridファンドとかは確実性を確保するため、QFPFがDC REIT判断時に外国人にならない点を切望していた。

で、今回の規則案。結論から言うとDC REIT判断目的ではQFPFは外国人、すなわちREITがDC REITになり難くなるっていう規定。ポリシー的にこの結果に全く驚きはない。だって外国のペンションファンドを米国人って取り扱って、QFPFではない他人のFIRPTA課税関係に影響を与えるって概念的に変だもんね。問題は条文にはそうは書いてない、って点だよね。

条文解釈部分に関しては苦しいけど、一応、骨子としては「そうなんじゃないかな~」って前から思ってて上述もしてるけど、「条文はQFPFは外国法人やNRAではないって言ってるけど、外国人じゃないとは言ってない」ってこと。これは僕も前から何回も考えてた理論だけど、外国人の定義が「外国法人、NRA、外国パートナーシップ、外国信託、外国遺産(Estate)」だからロジック的になかなかチャレンジングだ。まるで「約束はしたけど守るとは言ってない」的に言い訳にも聞こえる。

ただ、もう少し文脈を考えると必ずしも不可能な解釈ではないかもね。以前のポスティングで触れた通り、FIRPTAの課税っていうのはNRAと外国法人に適用。なんで、QFPFがNRAでも外国法人でもないっていう表現は、「暗に」QFPF自体のFIRPTA課税にかかわる規定だという読み方。その上で、REITがDC REITになるかどうかは「外国人」ベースなので、その目的でQFPFが何者なのかは別の観点から考えてもよろしい、という解釈は不可能ではないかも。残りの正当化はそもそも「QFPFに対する恩典が間接的に他の外国投資家を優遇するような結果はおかしいし、議会はそうは意図していない」ってもの。

まあ、納税者側の希望としては条文をドラフトする際は、落ち着いて、その文言が他の規則や広範な事実関係に与えるであろう影響を十分に考慮した上で、Blunt Instrumentにならないようにお願いします、ってくらいだろうか。

で、DC REITに関して、規則案ではもっと凄いBombshellすなわち衝撃的な驚きが規定されているんで、それに関しては次回。規則案制覇までもう一歩!