マイクロソフトによる「ヤフー買収案」、JP Morganによる「Bear Stearns買収案」に関しては過去のポスティングで触れたが、その後の展開がかなり興味深いので簡単に動向を追ってみたい。
まずヤフーだが、依然としてヤフー経営陣は買収案を拒否しているのはご存知の通りだ。株価に関しては買収案直後に$30弱に上がって以来、$20台後半で推移している。マイクロソフトが$31で買うと言っているにも関わらずそこまで株価が上がらないのは通常の買収発表時に常に見られる現象である。買収は発表されても、最終的に実現するまでには株主の承認、独禁法の問題、その他いろいろな不確実性がある。それを織り込むと買収価格までは上がらない。不確実性が大きければもちろん買収価格との差異も大きくなる。「買収が成立する」と信じているのであれば$20台後半で株式を買い、買収が$31で成立した時点でキャピタルゲインを期待することができる。ちなみにこれは現金で$31もらえる場合に有効な考え方であるが、後述の通り、対価が株式となる場合にはもう少し複雑となる。
当初はマイクロソフトが買収価格を上げるのではないかという憶測もあったが、ここに来て逆に価格を下げるのではないかという報道もある。他に救世主が現れないままだが、ヤフー経営陣が買収発表から2ヶ月間頑張っている。
買収対価が株式となる場合には「買い手」側の株価の推移が買収価格に影響を与える。AOL株式が下落してプレミアムが消滅したAOLとTime Warnerの合併がいい例であろう。今回の買収案では対価の50%相当が株式で支払われる。したがってA型非課税再編となるであろう点は前回のポスティングで触れた通りである。具体的にはヤフー一株当たりに対してマイクロソフト株式0.9509株が支給される。マイクロソフト0.9509株は買収案発表時点でこそ$31の価値があったのだが、その後株価が落ちたため今ではそれより低い。したがって、買収時点で$20代後半でヤフー株式を購入してキャピタルゲインを狙ったとしても、マイクロソフトの株価が落ちる限りキャピタルゲインの金額が確定しない。その場合にはヤフー株式を購入すると同時に、マイクロソフトの株式を空売り(Short Sale)しておけば理論的にはリスクヘッジが可能なはずだ。
一方のBear Stearnsに関しては当初の買収価格が$2であったが、株価は買収発表後も$2まで下がることはなかった。最低でも一瞬$3弱となっただけでしばらくは$4~5位でさまよっていた。上述のヤフーのケースで見られる通り、買収の発表があると買収が成立しないリスクが織り込まれて買収価格よりも若干低い株価で推移するのが一般的だが、それは買収がプレミアム価格で行われる際にしか通用しない常識のようだ。Bear Stearnsのケースではどちらかと言うと「最終的に$2ってことはないだろう」と読んだ投資家が多かったのであろうか株価は$2まで下がることはなかった。案の定、数日後にはあっさりと買収価格は$10に増額されている。それでもここ一年だけで見ても$150の株価をつけた銘柄であるだけにサブプライム問題恐るべしと言える。