前回および前々回のポスティングで触れた通り、米国財務省は2007年10月25日に米国の適格企業再編を規定するSec.368に係る最終施行規則を発表した。前回は「再編後の資産・株式譲渡」のうち「Distribution(分配)」によるものに係る適格再編への影響をカバーしたが今回は分配以外の手法で行われる譲渡に関して触れる。
*再編後の資産・株式譲渡
前回のポスティングで説明を加えたが、条文の規定を満たしている再編案に関して、再編後に取得した株式または資産が譲渡される場合には、そのような再編後の譲渡が「適格再編」であるかどうかの決定に与える影響を検討する必要がある。
*分配以外の資産・株式譲渡
最終規則が発表される以前の規則案では、適格再編となる取引に基づいて取得された資産・株式が「適格グループ」内の事業主体に譲渡される場合には、適格再編の位置づけに問題はないとされていた。適格グループの定義は前々回のポスティングで触れた事業継続要件で規定されるものに等しい。
規則案ではこの目的での譲渡の対象となる資産・株式には「買収企業(買収する側)」の株式は含まれないという例外が規定されていた。ここで言う買収企業は合併の場合の存続法人を含む。すなわち、買収企業の株式の譲渡は潜在的に適格再編を適格ではなくする可能性があるということであった。
規則案に対して、買収企業の株式の譲渡に関しては別途「持分継続」を規定した財務省規則であるSec.1.368-1(e)にて十分規定されているので、敢えて今回の規則で制限を設けなくてもよいというコメントが企業側から寄せられ、財務省はこれを認める形で規則を最終化している。すなわち、今回の最終規則では、適格再編となる取引に基づいて取得された資産・株式が「適格グループ」内の事業主体に譲渡される場合には、適格再編の位置づけに問題はないという考え方を継承し、更に譲渡対象となる資産には買収企業の株式が含まれるものとされた。ただし、持分継続を含む他の適格要件を満たす必要があることは言うまでもない。
*パススルー事業主体に対する株式譲渡
今回の最終規則が発表される以前は、適格再編により取得したターゲット(T)企業の株式をグループ内のパートナシップのようなパススルー事業主体に譲渡すると問題が生じるリスクがあった。今回の最終規則により、パススルー事業主体が実質的に適格グループ法人と同様の位置づけにあると認められる場合には、そのような譲渡が認められる。
2007年10月29日のポスティングで触れたが、事業継承条件を検討する上で、適格グループ内法人がパススルー事象主体に対してSec.368(c) Controlに準じる持分を持つ場合には、そのパススルー事業主体が所有する法人株式もSec.368(c) Controlの有無を判断する目的で数えても良いとされる。同様の考え方であるが、Sec.368(c)に準じる持分を適格グループ法人に所有されるパススルー事業主体はパススルー事業主体自体が適格グループ法人に準じるという取り扱いを受けることができる。
したがって、パススルー事業主体にT株式が譲渡されたとしても、パススルー事業主体が適格グループ法人同様に取り扱われることができる主体でれば、そのような譲渡をもって再編が非適格とされることはない。