Monday, December 29, 2025

DC REIT判断時のCorporation look-throughルール短命で削除

ゆく年くる年の前にチョッと時間あるんで今回はREIT関係の2025年新規則草案に関して。

FIRPTA/REIT

REITの持分は大概において(必ずしもそうじゃないんで要注意だけど)FIRPTA課税対象のUSRPIに当たるんで、外国人による持分譲渡損益は原則ECIとして申告課税対象になる。REIT持分が公認取引所で流通されてる場合には、10%超(REITやRIC以外は5%超)の持分を所有していない限りUSRPIには当たらないとかいくつか例外があるけど、REITに関しては他のUSRPIとの比較で有利な「Domestically Controlled(DC)」例外がある。すなわちDC REIT持分はUSRPIに当たらないと規定され、外国人が譲渡しても申告課税の対象にならない。この例外、正確にはUSRPHCに区分されるRICも含む「Qualified Investment Entity(QIE)」に適用があるけど、FIRPTAの話しなんで簡便的にREITって言っておく。QIEなんて言うと一般読者にしてみると「何それ?」ってなるしね。

DC REITを含むFIRPTAやREITの詳細は2022年規則草案が公表された頃に連載した「FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案)」で触れてるんでそちらを参照して欲しい。

2022年DC REIT規則草案「CorporationのLook-through」

2022年も終わろうとしていた12月29日、複数の駆け込み規則のひとつとしてDC REITをカバーした規則草案(2022年規則草案)が公表された。さすがにもう新しい規則とか出ないだろうって油断してマイアミビーチでキューバンコーヒー三昧してたんで面食らったのを覚えてる。

DC REIT持分がUSRPIでないとすると、当然、どんなREITがDC REITに位置付けられるかが重要。以前も触れたけど、DC REITって言うけど、実際の判断時にはDomestically Controlledかどうかよりも「ForeignにControlされてない」っていう認定が重要。原則ルール的には過去5年間継続して外国人が直接・間接に50%未満の持分しか持っていないREITがDC REITになる。

外国人がどれだけの持分%を直接・間接に所有されているかを判断する際、2022年規則草案では「Look-throughアプローチ」を正式に定義して採択。当アプローチ下では、直接にしても間接にしても「Non-look-through主体」のみがREIT持分を所有していると取り扱われる。逆に「Look-through主体」に所有されている持分はLook-through主体の所有者が間接所有していると取り扱う。ここまでは「なるほど、それはそうだよね」って感じ。米国税務上パススルー課税に区分されるパートナーシップとかをLook-throughするのは自然ば話しだ。

で、米国税務上法人課税に区分される主体、ここでは簡単にCorporationって言っておくけど、は一般的にはNon-look-throughって規定されてるんだけど、2022年規則草案では公認取引市場で流通していない(非上場って言っておくね)米国Corporationの持分25%以上を外国人が所有している場合は、そんなCorporationはLook-through主体と取り扱うと規定した。米国Corporationだから、REIT持分譲渡益を含むWorldwide所得全額に課税されるんだけど、REITがDCがどうかの判断目的ではパススルーかのように一定要件下でLook-throughしますっていうもの。CorporationをLook-throughするって一体全体どっからそんなルールが来るの?って驚愕をもって受け止められた。

2024年最終規則

2024年4月24日、納税者からの規則策定権や規則の内容そのものに対する反論、また必ずしもUpper Tierの持分所有者の特定が容易ではないっていうルール適用時の実務的な障害、その他の理由に基づく撤回要求にもかかわらず、財務省はそれらの見解には全て「Disagree」ということで、米国CorporationのLook-through主体ルールが最終化された。ただし、2022年規則草案ではLook-throughがトリガーされる外国人が所有%が25%以上だったけど、最終規則ではこれを50%以上に緩和し移行措置も規定した。このトリガー持分の引き上げをもってCorporationのLook-throughルールのScopeは「Significantly narrow」になったって財務省は胸を張ったけど、基本的なCorporationのLook-throughルールは同じ。前回のExcise TaxのFunding規定からPer Seルールを除去することで「Substantial modification」って言ってたのと似ている。納税者としては釈然としないところだったけど、後は法廷で司法府の判断を仰ぐのみ。法廷に持ち込むにはStandingが必要なので誰かがCorporationのLook-throughルールに基づき課税されるのを待つ必要があった。2024年最終規則に関しては当時「FIRPTAアップデート(DC REITのC CorporationのLook-throughルール最終化)」で詳細を説明してるんで参照して欲しい。

2025年新規則草案CorporationのLook-throughルール削除

CorporationのLook-throughルールはどれだけおかしなルールでも最終化されてしまったんで法廷で無効化されるまでは万事休すって思われてたけど、2025年にDe-Regulations志向の新政権が誕生し、他の多くの眉唾な規則と並び、改訂が期待されていた。そんな期待に応え、2025年10月21日に新たな規則草案が公表された。

最終規則公表後も引き続き納税者からCorporationのLook-throughルール撤回を求めるコメントが寄せられ続けた。適用時の実務的な困難さ、条文と不整合、米国Corporationはフルに課税主体、等のコメント全てに財務省は合意し、米国Corporationはその持分構成にかかわらず全てNon-Look-through主体とした。この新ルールの正式適用開始日は規則が最終化された日以降だが、2024年4月25日、すなわちCorporationのLook-throughルールが最終化された日、以降の取引、さらに2024年4月25日より前に効果を持つEntity Classificationを4月25日以降に選択したケース、に新ルールの適用を認めている。

Excise TaxのFunding規定を含む他の規則もそうだけど、規則が条文とかけ離れたアクティビスト的な方向に行っていたのを普通に戻してくれてて納税者としては納得感が高い。ポリシー的にDC REIT判断時にCorporationをLook-throughしたいのであれば、憲法の観点からもExecutive Branchの行政府ではなく、立法府のきちんと議会が法律を変えて実行するべきだろう。