Saturday, August 31, 2024

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (6)

前回のポスティングでは法人税率に触れたんで今回はどちらかというと個人所得税関係。法人税が歳入に占める割合が8%程度なのに比べて2023年会計年度ベース(2023年9月期)で個人所得税は$3,713Bで歳入の80%以上を占める。正確にはこの金額所得税に加えて社会保障税(FICA・SECA)が含まれる。個人所得税は歳入への影響が大きいことに加え、有権者を直撃する税金なんで当然市民の関心は高い。

2025年TCJA CliffはGILTI、FDII、BEAT、一括償却とか法人税周りの規定も対象だけど、金額的にもポリティカルにも個人所得税の規定をどうするかがフォーカス。一般有権者には「GILTIレートを16%に引き上げずに13.125%に据え置くことにしました」って言っても「ギルティー?なにそれ?」ってなって琴線に触れることはない。「個人所得税率を39.6%に引き上げずに37%に据え置くことにしました」って言う方が分かり易いし選挙でも受ける。

個人所得税と法人税で歳入の90%を占めるけど、残りの10%は何かっていうと関税、Excise Tax、連邦準備委員会の歳入などで構成される。この数字だけ見てもトランプの思い付きの「所得税を関税に置き換える」っていうアイディアはDOA。でもタイムマシーンで前回触れた憲法の16th Amendmentが批准された1913年当時に戻ると連邦の歳入の90%は酒税(Liquor、Beer、Wine)そしてタバコ税っていうExcise Taxが占めていた。16th Amendmentは最後まで抵抗したWyoming州(さすが!)が世界大戦はもはや不可避っていうプレッシャーで折れて批准が達成された。それでIncome Taxが逆に90%を占めるに至る。Wyoming州って全米で最初にLLC法を導入したり実はデラウェア州よりも先を行く州。今でも個人所得税も法人税もない。冬もう少し温かければいいんだけどね~。

YellowstoneのNorth Gateから北上して一旦Wyomingの州境を超えてMontana州のLivingstonっていう宿場街みたいなところでSteak食べて一休。Livingstonの数ブロックで構成されるDowntownは雰囲気あるよね。たまに貨物列車が通過する音とか、なぜかいつも商店街(?)の向こうにたまたま満月が見えて。で、Interstate 90で一気にBillingsへ。その先の分岐で94に行くか90のまま行くか迷って、でも90にStayして、そのまま法定速度80Mなんで10%くらいの猶予を加味して90M(それでも周りが広すぎてバックしてるとは言わないけど止まってるみたい!)で南下する感じで突き抜けて再度Wyoming州経由South Dakota州まで突き抜けるコースは何回体感してもLiberateされるんで機会があったら皆さんもぜひ。Interstate 90ではどこから出現するのか分からないけど急に後ろにHighway Patrolが居たりするんだよね。The Wyoming Highway Patrolだ。レンタカーでランダムのFlorida、Georgia、Alabamaとかのナンバープレート(レンタカーに多いよね。特にFlorida)だったらいいかもしれないけど、自分のマシーンでNew Yorkプレートだと何か一本釣りされた感じ。

1918年に憲法18th Amendmentが批准されて米国は禁酒法時代になり、その後、憲法21st Amendmentで1933年に禁酒法が撤廃されるまでthe Wyoming Department of Law Enforcementは禁酒法違反を取り締まるのが唯一の使命だったっていうから凄い。1933年に禁酒法が撤廃されると同時にDepartment of Law Enforcementは解体されて、「the lives, property and constitutional rights of all people in Wyoming」を守るっていう使命のWyoming Highway Patrolが誕生して今日に至る。常に憲法に忠実な使命だ。

で、Pulloverされて路肩に停車。そこまではどこの州のInterstateでも同じ。Wyoming Highway Patrolに免許証みせて、「何マイルで飛ばしてたと思う?」って聞かれたら「う~ん、よく見てなかったんですが89マイルくらいでしょうか…?」とか言うと「ははは、ほとんど100マイルだよ。Good Try」ってなる。「ええ~空いてたんでついうっかりしていました。実は今日中にMount Rushmoreに着きたくて焦っていました」(Mount Rushmoreは少なくとも夏は11時までPublicにオープンしている)とかいう展開になり「それは急いだほうがいいね。だけどスピード出し過ぎないように。Good Luck。Interstate 90のトラフィックにのるまで先導してあげましょう」とかで一件落着になる。いつもなるとは限んないんで責任持てないけどね。

米国って禁酒法が終わってまだ90年しか経ってないんだよね。NYCでも「Speakeasy」バーが今では観光ノリで残ってるから、Mount RushmoreからSioux Falls(スーフォールスって読みます)、La Crosse、Madison、Chicago、Youngstown、とか通ってようやくLincoln Tunnel抜けてManhattanに戻ったらWyomingの景色を思い出しながらSpeakeasyでWind-downというかChillしてみてね。この旅程ある程度ゆっくり消化するにはYellowstoneから始まっても最低1週間は必要。西海岸から出発する場合は2週間ほど見ておくと随所で楽しめる。NYCから出発して西まで行って帰る往復だと、道中WFHで仕事しながらだろうから1か月以上必要かもね。でも価値あるからぜひ。

Tax Credits

ハリスの個人所得税関係の提案はWealth Transfer策のRefundableクレジット系が多い。トランプ提案同様、財源を含む具体的な詳細は分からず選挙後の実効性は不明。17歳未満の扶養子女に関して認められる個人所得税の税額控除(Child Tax Credit 「CTC」)を$3,600へ引き上げ、さらに新生児は$6,000というスーパーサイズCTC。CTCは所得制限があったり還付ポーションがあったりそれ自体複雑な規定だけどCTCセッションじゃないんでCTCの金額面にフォーカスする。

もともと$1,000だったCTCは2017年のTCJAで$2,000に増額されている。ところがこの$2,000のCTCも2025年TCJA Cliffのひとつで何もしないと2026年から自動的に$1,000に戻ってしまう。それは大変っていうことで両候補が自分が当選したら$1,000に戻さないどころか増額しますっていう提案をしているというのが背景。実はCTCにはもう一つ特筆すべき展開があって実は今年下院を通過した法案パッケージにCTCの$2,000引き上げが盛り込まれていた。The Tax Relief for American Families and Workers Actだ。この法案、CTCばかりでなくTCJA規定で2025年を待たずに既に自動改訂で憂き目にあっている規定の悪影響緩和が含まれてた。すなわち、R&D支出の資産計上の延期、100%ボーナス償却の復活、支払利息損金算入制限163(j)のベース額EBITをEBITDAに戻す、というビジネス関連のGoodiesだ。さらに条約を締結できない台湾に恩典を与える規定も入っていて盛りだくさんな法案だった。下院では両党、特に中庸派からサポートされて可決された。民主党の急進派はビジネスに甘い、共和党のFreedom Caucus派は就労義務に近い要件を直近過年度の状況を適用して判断できるCTCは勤労意欲にマイナス、という異なるイデオロギーで反対に回っていた。上院では共和党の反対で否決されている。

もともとサンダースよりも急進派の上院議員として知られるハリスがCTC増額を提案するのは自然。VP候補のワルズもミネソタ州がTrifectaになった段階で$1,750っていう全米で最も寛大な前払い・還付CTCを州レベルで可決させている。さらにワルズは州居住者240万人にRebateを交付したり、その財源として高額所得者の控除を減額、事業に対してはGILTIを州税にも導入、高額投資所得に1%のInvestment Tax導入、とカリフォルニア州をも超えるWealth Transfer派として知られているんでハリスの提案と整合性があるポリシー導入の実績を持つ。ちなみに「ミネソタ州でGILTI合致して歳入に大きく寄与するようなMNCとかあるんだっけ?」って不思議に思うかもしれないけど、実はUnited Health Group、Target、Best Buy、3Mなどはミネソタ州が本店所在地だ。ただ、これらのポリシーの影響で個人の高所得者は隣のSouth Dakota、南のTexasやFloridaのような個人所得税のない州に移住したケースが多いというセンサスデータがあるようだ。州税だったら引っ越せば解決するけど連邦で同じことされると市民権返上でもしない限り移住で税負担をManageすることはできない。

一方不思議なのはトランプ陣営。VP候補のJDバンスがOver-the-topの$5,000CTCを提案している。バンスは$2,000のCTCを否決した上院の議員。当人は上院投票の日、選挙活動でDCにいなかったということで投票はしてないらしいけど、この手の歳出に慎重な共和党支持の有権者からしてみると何ソレって感じだろう。寛容なCTCや同様のポリシーを支持するんだったらわざわざトランプに票を投じなくてもハリスに入れたらいい訳だからこれで有権者受けするんだろうか。しかもCTC増額を敢えて先制攻撃したのはバンス。ハリスはお株を取られては大変と、慌てて反撃に応じるがさすがのハリスもAcross-the-boardに$5,000は無理と判断したのか$3,600を提案。$5,000って聞いた後だと「結構セコイね」って感じるかもしれないけど、元々$1,000だからね。今でこそ時限立法で$2,000になっているけど。前回のポスティングで触れたポール・ライアンの「ポリティカルに延長せざるを得ない規定は時限でもいい」っていうコメントは言い当ててるよね。でもバンスが$5,000ってAll-Inだったんで何とかRaiseしないと急進派としては恰好つかないってことで新生児には$6,000を提案している。コストは組み合わせ次第だけと$1.3Tは下らないと言われてて「まるで軍拡戦争」って揶揄されたりしてる。

民主党がTrifectaになったらCTC増額は十分にあり得るけど、共和党がTrifectaになったからと言って$2,000に躊躇してたんだから$5,000のCTCになるとは考え難い。勝敗を左右するSwing Stateで受けたいっていうのは分かるけど党や候補者としてどんな国にしたいかっている大枠ポリシーのフレームワークの中で規律ある提案にしないと信憑性に欠ける。

ハリスは他にもEarned Income Tax Credit(EIC)から扶養子女要件撤廃、初めてマイホームを購入する者に$25,000のクレジット等を提案している。これらの恩典はもちろんだけど所得制限が設けられるんで一定の所得に達するとPhase-outされ最後は恩典ゼロになる。

ということで今日は両候補とCTCでした。