Thursday, December 28, 2023

Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (5)

前回のポスティングでは、Killer Bの舞台を整えるために、Triangular取引、主にT株式100%取得を達成するための会社法メカニズム、Reverse Triangular Mergerのステップに触れた。BuyoutファンドによるLeverage導入とかチョッと脇道に逸れたけど、Black DogやLocomotionじゃなくて安心だったね。

で、今回はReverse Triangular Mergerに関連するM&A系の話しの後、2011年最終規則に至ってKiller BにZoom In予定。あくまでも予定だからね。途中でまたPurpleがどうのこうのとか脱線して興奮しないよう戒めて臨みます。何と言ってもシャレじゃなくて本当に2023年も後わずか。財務省も相当気合い入れて次々と年末滑り込みガイダンス乱発し始めてるんでそれらのCatch-upが大変だけど、そんな中2年以上も「Coming to a theater near you」っていうTrailerを見せながら未だTheater near meに来てないPTEP規則案は限定的なガイダンスを除き結局来年までお預けっていうことで、ガッカリというかチョッとひと安心。あんなの出たらそれ読んで大枠理解するだけで1週間とか掛かりそうだもんね。前文込みで果たして何ページになるでしょうか。200ページは軽いだろうから500ページ行くかどうかが予想の分かれ道かもね。ただ、PTEP規則案は以前のポスティングで触れた通り、テクニカルなチャレンジが多すぎて一気に出せず、2部作になるとのこと。コンチェルトみたいに3部作じゃなくてよかったね。一部でも少ない方が読んで理解するの楽だもんね。

コンチェルトと言えば独断で言うとバッハのイタリアンコンチェルトの右に出る作品はない。コンチェルトなんで3部作だけど、F Majorの第1部アレグロ、同じくF Majorの第3部プレストは快活感に満ち溢れていて最高。第2部はマイナー、1と3がF Majorなんで、こちらはD Minorだけど、いかにもルネッサンスの短調バロックで、教会とかでシンミリと聴く感じ。昔しレコードで聴いてた頃から第1部が終わると「針を手で上げて(笑)」いきなり第3部に飛ばしたりしてたもんだ。不躾っていうかエチケット違反だったかもね。本当にクラシックやっている方が「両端楽章より美しいマイナー調の第2部がベスト」っていう発言をされていたのを聞いて「そんなもんなんだね~。プロに言わせると」って思ったことがある。コンチェルトだけど、鍵盤単楽器。バッハの頃はクラヴィーア、英語風に言うとハープシコードだったんだろうけど、今ではハープシコードとピアノの対抗バージョンがあったり、どのバージョン聴いても美しく華やか。まあどちらか一方を選べって言われたら迷うけど、元祖ハープシコードバージョンで2段の鍵盤で、弦を弾くまでのコンマのタメみたいなあの感じに一日の長がある気はするけど。ピアノの鍵盤の白黒が逆だったり17世紀っぽくてカッコいい。実はその昔ピアノ弾けた頃、第1部のアレグロは何とか最後まで弾くことができた。F MajorだけどバッハなんでLennonの曲みたいに(全然違う?)知らない間に変調して最後の最後にまた冒頭のF Majorに戻るみたいな難解な構成。第3部もいつか弾いてみたいと思いつつ、人生の大半をUS Taxに費やすことになってしまい、鍵盤に触れる機会もなくなり現時点までその夢は叶ってない。まあ、当面Martha My Dearや、In My Lifeのバロック風間奏の回転を上げる前のA Majorバージョンをポロポロと合わせて5分くらい弾いて気晴らしとします。

上場企業買収とReverse Triangular Mergerワンステップ

で、本題に戻ってReverse Triangular Merger。前回触れた通りReverse Triangular Mergerはその1ステップだけでT株式100%取得可能なデラウェア会社法のマジックの一つ。1ステップでの100%株式取得は、上場企業のM&AにもPrivate Dealにも同様に適用できる。Private Dealで株主が複数存在するケースで、株式買収というストラクチャーを選択する場合、大概において会社法上の形式はReverse Triangular Mergerで一気に終了させる。ターゲットがPrivateでも上場企業でもReverse Triangular Mergerは会社法上の合併なんで、T側のBoardの合意がMust。敵対買収、HostileなSituationには使えない。実際にはHostileで始まるDealも多くのケースで途中から「渋々」Friendlyになったりするけどね。

上場企業のM&A時には追加の検討がある。すなわちReverse Triangular Mergerを利用する際のひとつの難点として、株主による合併承認に関してProxy Statementの送付が必要になる点。ProxyはSECのレビューが必要で、コメントレターの有無やその対応に要する時間にもよるけど、株主承認を得るまでに平均3~4か月とかの時間が掛かる。特に合併対価が現金ではなくP株式の場合には審査により時間を見ておく必要がある。P株式が上場している場合、買収に費やすP発行株式数次第でP側の株主承認とか、P側のStock Exchangeのルールも気にしないといけない。

現政権下の過剰気味なRegulatory環境下では、株主承認に要する時間とは別にHSRやCFIUSその他のRegulatory承認に要する時間も加味してタイムラインを熟考する必要がある。ただ、仮にRegulatory審査が長引く場合も、一旦株主承認を得れば、その時点でT社Boardのレブロンその他の受託者義務は終わるはずで、その後に第三者が登場してくるリスク、所謂「Interloper」リスク、は株主承認さえ得ることができればその時点で終了するはず。

Regulatory承認に要するタイミングは業種や各Dealの規模、Pの所在地その他の状況で千差万別だけど、それとは別に確実に要する時間として株主承認のための3~4か月がある。SECのコメント内容によってはさらに数か月長引くリスクもあり、この時間はPにとって結構長く感じられるだろう。Closingが遅れれば遅れるほど、不確実性が増すからね。2020年3月…とか。

Tenderと組み合わせの2ステップ

そこで検討される変形ストラクチャーが、最初にTender Offerで一定%の持分を取得し、Back-EndでReverse Triangular Mergerを実行して100%持分取得する2ステップストラクチャー。Tender Offerは株主に直接譲渡判断を訴えるんで、Reverse Triangular Mergerワンステップと異なり、その時点ではターゲットBoardの合意は不要。すなわちHostileな状況でも適用可能なストラクチャーだ。ただ、上述の通り、PureなHostile Takeoverっていうのは実際には近年は少なく、Hostileで始まっても途中から「Friendly(苦笑)」Dealに生まれ変わるケースが多い。2023年にはHostile Offerがいくつか登場しHostile・Defense時代の再来かって話題になり、局面次第ではHostile Offerも健在ってことを思い出させてくれた。ポイントは、Hostile Dealの場合、BoardがOnboardじゃないんで(洒落です)、いきなりReverse Triangular Mergerを適用するオプションがない、ってこと。

もちろん、Boardの合意はあるに越したことはない。Schedule TOがファイルされてTenderをLaunchした後、10日以内にBoardはTenderに対するBoardとしてのオピニオンを表明する。Tenderなんでもちろん最終判断は個々の株主だ。その際にBoardは「反対」ってなると株主がTenderに応じるかどうかの判断にネガティブな影響を与える可能性がある。こんなことからTenderを利用した2ステップのストラクチャーもタイミング的な魅力からBoardが賛同を得て実行されるケースが大半と言えるだろう。

で、買収を2ステップでストラクチャーする目的は、最初のステップで十分な持分を取得できれば、2つ目のステップのReverse Triangular Mergerは既成事実なんで形式的なもの、っていう点。Tender Offerは形式的に超Ruleバウンドなんで面倒ではあるけど、テクニカルには21日で終わるんで早い。「でもMergerはProxyとかで時間掛かるって言ってたじゃん」って思うかもしれないけど、そこが2ステップのキーと言える部分で、Tender Offerで十分な持分を取得してれば、2つ目のステップは通常の合併(Long-Form)に求められる諸々のステップはスキップして即実行できる。所謂Short-Form、またはMedium Form Mergerだ。一般的には90%の持分を最初のTenderで取得する必要がある。でも90%って結構なハードルで、この点に対処するため従来は2回目のTenderをしてみたり、Top-Upって言って無理やりTが追加株式をPに発行して90%を目指したりしたけど、どちらもベストな解決にはならない。そこでデラウェア会社法マジックが登場。デラウェア会社法ではTenderで50%超(またはTのCharterで合併承認に求められる%が高い場合にはその%)を取得してれば追加の株主承認なしで、すなわちProxyに時間を費やすことなく、速攻で2番目ステップのReverse Triangular Mergerを完了させることができる。デラウェア会社法マターなんで専門のLegal Advisorに聞いてもらう必要があるけど、担当したDealを見る限り、Tender終了と同時に第2ステップのReverse Triangular Mergerを完了している。エ~早。ってことはTenderをLaunchしてから21日に買収完了も夢ではないってことになる。

承認に要する%を取得したんだから株主総会による承認は形式に過ぎず、その意味でShort-Form Merger規定は合理的だ。泣く子も黙るDGCL Section 251(h)。税法以外のSection番号とかほぼ知らないけど、これだけは良い子のみんなが知ってるSectionだ。ただ、251にしても実際には詳細な要件があるんで必ずデラウェア会社法のLegal AdviceがMustだからね。

2ステップはうまくいけば早いけど、Regulatory承認に手間取ったりすると時間的なメリットは失われる。その間Interloperリスクは付きまとうし。また特にPが自分の株式でT株式を取得する場合(その場合は用語的にTender Offerとは言わずExchange Offerって言ったりするけど趣旨は同じ)、Tenderのルール自体が複雑でLegal面での検討はむしろ増えるかも。友人のCorporate Lawyerが「正直、DealがTenderやExchange Offerじゃないと内心ホッとする」って言ってたけどそんなもんかもね。

Dealストラクチャーは他にもHorizontal Double DummyとかLLCの活用とかVariationはきりがなくて楽し過ぎるんだけど、Killer Bの話しだったのを思い出したんで我慢の子でこの辺にして2011年最終規則に移るね。

2011年最終規則

Killer Bのポスティングを開始した際のイントロで触れたけど、2011年最終規則(section 1.367(b)-10)は上の例だとMerger Subに当たる子会社「S」がM&Aの一環で、P株式をS株式以外の資産を使って取得し、P株式をTの取得対価とする取引にかかわるもので、PまたはSの少なくとも一社が外国法人のケースに適用がある。厳密に言うと適格組織再編で使用が認められるPのLong-Term Securitiesにも適用があるけど、ここでは簡便的に「P株式」、またSによるS株式以外の資産を用いたP株式・Securitiesの取得を「P株式取得」っていう表現で統一しておく。上述の「普通の(?)」のデラウェア会社法に基づくM&A時にPがTをP株式で取得するケースでは第一ステップでPはS株式と交換で自社株式をSに移管するけど、Killer B規則が歴代共通して問題視している取引は、S株式「以外」の資産でP株式をSが取得しているもの。最重要条件なんで常にこの点をListen to the music playing in your headみたいに念頭に置きながらKiller Bを考えるように。でもあんまりこれしているとTuesday afternoon is never endingで、ず~っと火曜日の午後のままになるんで注意が必要。Lady Madonnaだね!

今回の規則案に至るKiller Bの沿革をおさらいしておくと、最初は2006年のIRS Noticeで警鐘が鳴らされたのが僕が記憶する限り最初のメジャーイベント。2007年には2006年のNoticeを補強する追加Notice公表。これらのNoticeを踏襲する形で、2008年に暫定規則が公表されている。その後、2011年に最終規則が公表され、当最終規則に準拠する形でマーケットで進化(?)してきたストラクチャリングに網を掛けるため2014年に新たなNotice公表。2014年のNoticeを加味したストラクチャリングの進展にさらに網を掛けるために2016年に補強Noticeが出て、今回の2023年の規則案、となる。凄い紆余曲折でまるでSection 304とSection 367(a)の関係みたいだ。この沿革を見て頂くと、2016年から2023年までのタイムラグが比較的長く、なぜ僕の首がどんどん長くなっていったか理解してもらえるだろう。しかもCAMTだのIRAのクレジットだので財務省は東奔西走なんで、眠れる森の美女みたいに100年後かな~って半分あきらめてたんだけど、近くの国の王子様が急に現れたのでしょうか、急に眼を覚まして公表されて興奮してしまったっていう経緯。

かなり遡るけど、2006年のNotice等の沿革は今回の規則案を知る上で貴重な文献なんで軽く触れておきたい。とは言え、例によって長くなってきたんでここからは次回かな。まずいね。2023年も後4日。大晦日は「US Taxゆく年くる年」にならないといけないんで、今年中にKiller B終わんないね。2023年中に後一回はKiller Bのポスティングを捻じ込みたいところ。幸いにも(?)South Beachはとても涼しく天気いまいち。North BeachとかFort Lauderdaleとかに至ってはまるでハリケーンでも来てるかのような強風が吹いててBeachで仕事するVibeではない。屋内でCubaコーヒー飲んでイタリアンコンチェルト聴きながらUS Tax三昧しなさい、っていう神様の思し召しなのでしょう。どうせもうすぐNYCに戻るしね。