Monday, November 1, 2021

バイデン増税案大幅縮小「法人税率据え置き」(1) 代わりに会計利益に15%AMT?

下院歳入委員会が9月中旬に公表した法文ドラフトの読解がようやく一段落して、Let it Beの新譜デラックスバージョンのOuttrack(この話しはいつかどこかでね。長くなりそうなんで今回は我慢します)も暗記するほど聴きまくったこの期に及んで、結局、民主党内の調整難航の末、増税案は暗礁に乗り上げ、大幅縮小を余儀なくされた新法案が公表された。前回のポスティングまで何回かに亘って触れた「Downward Attribution禁止撤廃」は何とか新法案にも反映されてて、生き延びてるんだけど、さすがにオリジナル下院案のように2017年に過去遡及して修正という無謀な規定ではなく、法改正が施行された後に変更となっている。修正申告とか大量にしなくていいんで良かったです。いまさら965のTransition Taxの再計算とか士気が低下しちゃうもんね。Downward Attributionの話しはまだ続くからね。今日はチョッと余興で15%のAMT。

法人税率21%据え置き

28%それとも25%、はたまた26.5%?ってここ何か月も冷や冷やさせられてきた法人税率だけど、ナンと結局21%に据え置きの気配。今週公表された新たな下院法案には法人も個人も税率引き上げには言及されてない。意外などんでん返しだけど納税者にとっては吉報。GILTIも結局ピラー2を無理やり押し付けた張本人国としての自覚に目覚めたのか15%程度に終焉する見込み。グリーンブックとかの今までの勢いは何だったの?って感はあるけど、DTAの洗い替えで会計上のペーパー利益を期待していたようなところは別として、まずはホッとした方も多いだろう。

それにしても紆余曲折あり過ぎ。そもそも2020年から既にお金をバラマキ過ぎて急激なインフレになり、国内のオイル・ガス産業を徹底冷遇した結果燃料費高騰してOPECに泣きつく始末だし、コロナ系の潤沢な失業手当その他で労働力の確保が思うようにいかなかったり、サプライチェーンも大混乱。飛行機だってSouthwestの大量キャンセルの時はWN(SouthwestのTwo Letter CodeはSWじゃなくてWN。SWは既に取られてたんで最初はOEとかだったけど、せめてWが入るようにってWNになったという経緯)に乗る機会少ないから気にしてなかったけど、Americanまで多くのフライトが客室乗務員がタイムリーに手当てできず大量キャンセルされたりとか、スーパーの品薄や食材の価格高騰とか身の回りで直接感じる実害が多い。

経済にそんな向かい風が吹き荒れる中、この期に及んで十分な政策議論もないまま慌てて200兆円に「減額」した歳出を敢行しようとする無理やりさや歪が露呈して審議も暗礁に乗り上げているのでは。オリジナルの350兆円よりマシとは言え、それでもまだ国家予算的には身の丈に余る計画。バージニア州の知事選やバイデンがヨーロッパに発つ前に大きな法案を通して白星を獲得しないと、って逸る気持ちは分かるけど、成果をアピールするためにっていうエゴだけではなく、未来の世代に大きな負債を残すとてつもない歳出になる訳だから一般市民にも納得が行くよう十分に議論を尽くしてほしいところ。ワシントンって市民感覚からかけ離れがちだけど、ますますOut-of-touchさ加減が加速しているような感じ。

バイデンもヨーロッパに発ち、気候変動対策とか話すんで、今後も地球が住み易いところであり続けるために世界で力を合わせてもらいたいところだけど、世界の重鎮が専用ジェットで集まったり、ローマでは80台以上のセキュリティ自動車を引き連れて動き回ったりして、それで「カーボンをゼロにしましょう」とか話し合っても、自分自身が実行できていない善行を他人に勧める偽善の代表みたいで説得力に欠ける。州民には外食を禁じて自分だけは高級レストランで200万円のディナーをエンジョイするカリフォルニア州知事のニューサムとか、政治家の偽善ぶりが過ぎるけど、まあ、人の世なんてそんなものなんでしょうか。

気候変動大使のジョンケリーに至っては別に行ってもプラスにならない気候変動賞みたいな授賞式に自家用ジェットでカーボンを散らしながらアイスランドに登場し、「趣旨的におかしいのでは?」という現地記者の質問に「自分のような世界を股に掛ける重要人物にとっては(原文は「somebody like me who is traveling the world」)には当然かつ唯一の移動法」と断じている。一般庶民と自分は異なる、と言わんばかりで、国民の公僕たる政治家とは思えぬ横柄さ、というか政治家ならではの横柄さで笑わせてくれる。本当に地球のこと考えてんの、って疑いたくなってしまいます。そんな政治家たちに200兆円もの巨額の使途を決めさせる訳だから見ものだよね。既にコロナで軽く6~700兆円近く使った上に。単位が豪快過ぎて感覚が麻痺する規模だ。

財務諸表利益15%AMT

で、法人税率は据え置きの可能性大とは言え、代わって今までの審議では求心力に欠けていたというか、取り沙汰されることもなかった「財務諸表利益15%AMT(代替ミニマム税)」がここに来て息を吹き返してきた動きは、バイデン増税案の影響をモデリング化して試算してきた米国多国籍企業にとっては不意打ち。実はこの15%AMTは結構痛い。法人得税の表面税率そのものよりも、GILTIのCbC化、支払利息損金算入の新たな制限と並び、嫌な規定と密かに恐れられていた案だからだ。

15%AMTの基本的な設計は、2017年の税制改正で撤廃された旧AMTに似ている。財務諸表で認識される会計上の利益のうち各法人に帰属する部分を取り出し、15%AMT用に新たに規定されるAMT繰り越しNOLをマイナスしたネット利益に15%掛け、そこからこちらも新たに規定される15%AMT用のFTCをマイナスして暫定15%AMTを計算する。この暫定15%AMTが通常の法人税を上回る場合、超過額を15%AMTとして支払いなさい、というものだ。ここで言う通常の法人税はBEATミニマム税も含む。BEATミニマム税と異なり15%AMTは将来、状況が逆転して通常の法人税が暫定15%AMTを超える課税年度において、その差額を上限に15%AMTクレジットとして使用することができる、というもの。連結納税しているケースは同じ算定を連結納税単位で行うことになる。

15%AMT対象法人

で、15%AMTの計算自体はあくまでも納税者単位、すなわち米国で申告している法人、または連結納税してるんだったら連結納税グループ単位でするんだけど、そもそもどの法人が15%AMTの対象法人かっている判断時にはまた例によってグループの「Aggregate(合算)」規定がキックインしてくる。合算が求められるのは、あくまでも15%AMT適用対象とかどうかに適用されるテスト基準値を満たしているかどうかの判断時だけ。BEATの適用対象テストと同じだ。ちなみに15%AMTが導入されたとしても旧AMTの代わりと言われていたBEATはなくならず共存するようだ。

BEAT同様、合算対象の複数の主体は「一人の納税者」としてテストするという規定なんだけど、この一人の納税者っていう概念を、実際には一人ではない複数の主体相手に正確に適用するのは結構難しい。BEATの時も2018年12月の規則草案、2019年12月の最終規則、と財務省が苦労してどうやって合算対象を特定するか、とか計算法を規定しようとしてたけど、それでも未だ争点が残ってて、2019年12月の最終規則と同時にこの点にかかわる新たな規則草案が公表されている。一筋縄ではいかない様子が分かる。

合算規定

対象テストの分析だけで数回のポスティングを要しそうだけど、日本企業にとっても他人ごとではないんでサワリというか真髄部分には触れておきたい。

まず、15%AMTの対象はS Corp、REIT、RIC以外の法人のうち過去3年間平均調整財務諸表利益(「Average Annual Adjusted Financial Statement Income」(略して「3年平均会計利益」って言っとくからね)が$1B超の法人とされる。法人の設立地や居住地は問わない。仮にグループ法人とか持たないStand-Aloneの米国法人が一社っていうなかなか実際にはあり得ないSituationがあったとすると、その法人の財務諸表を基に判断することになる。

で、さらに日本企業の米国子会社とかインバウンド企業に関しては、追加の要件があり、計算に取り込む対象グループの範囲を小さくする一方、テスト基準値となる3年平均会計利益も10分の1の$100Mに減額する別テストがある。インバウンド企業は、上の$1B原則テストとこのインバウンド企業$100Mテストの「双方」を充たして初めて15%AMT対象になると読める。「利益が$1Bあるんだったら$100Mもあるに決まってるじゃん」って思うかもしれないけど、計算法が異なるんで、「$1Bあるけど$100Mはない」っていう結果も十分に想定される。

BEATの計算時に登場する「Gross Receipt」は税法上定義のある数字だけど、会計利益って当然だけど会計原則に基づく数字なんで、3年平均会計利益は税引前なのか税引後なのか、とか新たに定義を規定しないといけなくてウルトラ面倒。このあたりの定義は合算の話しの過程等で必要に応じて順々に触れたい。

で、$1B原則テストもインバウンド企業$100Mテストも、申告単位になる各法人または連結納税グループだけで判断するんじゃなくて、上述の通り、関連者が存在する場合にはグループ合算ベース。具体的には、BEATの合算規定同様、Section 52っていうWork Opportunity Creditの計算時に一人の雇用者(Single Employer)と取り扱われる複数の主体は、15%AMT適用対象テスト時にも単体の納税者として取り扱う必要がある。Section 52はCorporationでない主体も対象とするんで注意が必要だけど、Corporationの世界での適用は「Controlled Group」のメンバーの話し。ただし、通常のControlled Groupメンバーは80%以上の資本関係を持つ面々だけど、Section 52目的では50%超の資本関係が基準になる。

ちなみにBEAT法文(Section 59A(e)(3))もそうなんだけど、合算テストの対象法人の定義には誤りとしか思えない部分がある。今回の15%AMTの適用対象テストにかかわる合算の法文も同じ誤りがあって、おそらくいつも同じ文言をコピペして使いまわしてるんだろう。

どこがおかしいかっていうと、Section 52はControlled Groupメンバーを規定しているSection 1563(a)を参照していて、このメンバーには資本関係があれば外国法人も自ずと含まれる。Section 1563には別の規定があって、Controlled Groupメンバーの中でも、米国で法人税申告するようなメンバーを特別に「Component」メンバーとして定義している。これがSection 1563(b)だ。Section 1563(b)は(a)とは異なる目的で使われるので、ECIのない米国外法人は含まれないとか、複数の追加要件がある。ところが、15%AMTの合算対象メンバーを規定している法文では、Section 52、すなわちCorporationの世界では50%超ベースに置き換えたSection 1563(a)のメンバーを参照しておきながら、Section 1563(b)(2)の(C)と(D)は無視するように、と規定している。(C)はECIのない外国法人は除外するって規定だけど、そもそもSection 1563(b)は元々見てないんで全く不要というか混乱の基。Section 1563(b)の世界に突入すると、課税年度に何日メンバーだったらComponentメンバーになるとか他にも追加要件があるんで、間違えてそっちも見始めたりして混乱の温床だ。何とか法文最終化する前に直してほしいところ。

次回は$1Bと$100Mの計算法。