Monday, July 25, 2011

2011年米国タックスの行方(3)- Repatiriation(続3)

前回までのポスティングで 米国企業が低税率国に所得を溜め込んだ「埋蔵金」を米国税負担ナシに米国に持ち返る作戦について触れてきた。ひとつのテクニックとしてDeadly DというD型再編を利用したものがあるが、それがなぜSec.367に抵触しないと考えられていたか(少なくとも納税者側の主張では)というところまで来た。

前回は地震の話しが長かったので、今回は直ぐにタックスの話しに入る、はずだったのだが、実は4月のお天気のいい日曜日にロサンゼルスで「震災チャリティーコンサート」が開催された。そのイベントに、たまに集まってジャムってたガレージバンドとして出演することになり、久しぶりに野音でライブという状況となった。バンドはBeatles Tribute(つまりコピーバンド)で、Beatlesの人前ライブとしては結果的に最後となった伝説のApple Corpビル(Sevile Row, London)屋上でのパフォーマンスをコピーして演奏してみた。若い方のために付け加えておくと、ここでいうAppleという会社はBeatlesが設立した会社で、iPhoneとかを製造しているあのAppleとは関係ない。

ライブ動画のリンクはこちら

僕はJohn Lennon役で(ライブでは真ん中)、どことなくスムースじゃない感じのソロ(Get Back)の一方、天才的(僕がではなく、レノンが)にドライブ感のあるリズムギター、の再現に苦労した。本来であればエピフォン・カジノのサンバーストを剥がして木目っぽいナチュラル仕様としたギターを使用するべきだったのだが、今回は赤のストラトで勘弁してもらった。イフェクターなしでいきなりツイン・リバーブにぶち込んだ割にはいい音だったように思う。指のスピードは中学生の頃の10分の1くらいだったけど、エフェクターなしのドライブ感はこの歳になってやっと出せるようになったのかな、と自負している。ブロードウェイ・ミュージカルの「Rain」みたいに衣装も揃えるか、という話しも出たがさすがにそれは遠慮させてもらった。

*Sec.367(a)(5)と簿価調整

前回のポスティングで書いた通り、米国企業がDeadly Dストラクチャーを利用して買収資金を外国から米国に持ち返るのを非課税で実行する際には、Sec.367(a)(5)の簿価調整をどのように考えるかが鍵となる。この簿価調整は基本的に米国から外国法人に移管される資産の持つ含み益を、米国で将来的に課税できるように、資産の代わりに米国法人が持つ外国法人の株式税務簿価を下方修正するためのものだ。

以前のポスティングで触れたDeadly D再編の例示パターンだと、ParentがTargetの資産(時価100、税務簿価ゼロ)を外国子会社に移管している。その対価として外国法人から受け取る現金100を非課税でParentが受け取ることがDeadly Dの醍醐味となる。なぜ非課税化というとこれがD型再編に当たるという主張に基づき、そこでSec.367 が登場してくる。

納税者の主張は、Sec.367に引っかからないようにするために求められる簿価調整を、Parentが元から持っていた外国子会社の株式に対して行うことで満たしているというものだ。以前のポスティングからの例示パターンでいくと、Parentの外国子会社の税務簿価は100なので、Targetが外国子会社に移管した資産の含み益である100に当たる金額の簿価調整をして、Parentの外国子会社の税務簿価はゼロとなる。

この簿価調整が十分条件であれば、確かにDeadly Dは納税者が狙った効果を得ることができる。

IRSはこのような調整は意図されているものとは違うというポジションを取っている。すなわち、簿価調整は米国法人が外国法人に資産を移管した対価として受け取った株式に対して行わなくてはいけないというものだ。上の例ではTargetが外国子会社に資産を移管した対価は現金で、納税者が簿価の減額をしている対象となる株式は取引以前からParentが持っていた株式だ。この点に関しては367(a)(5)の財務省規則が2008年に(確か・・・)発効してIRSのポジションが明確になっている。なお上の取引には更に「Indirect Stock Transfer」というSec.367の中でも特に難解な規定の絡みもあるが、Indirect Stock Transferは(このようにスローなポスティングのペースでは)2年くらいかけてカバーするようなことになり兼ねないので、もう少し時間ができたら(すなわちRetireしたら?)じっくりと書き上げてみたい。

という分けで延々と続いたRepatriationは一旦終了し、次回のポスティングからは次のトピックとして約束してあったSch. UTPに移る。