2010年の8月31日から「失効間近のブッシュ減税」というシリーズで2001年と2003年の大型減税が一気に2010年末で失効する点、またこの延長を巡って民主党と共和党でせめぎ合いが続いている点について触れた。
ブッシュ減税は全所得層に恩典をもたらしたが、所得税の最高税率が39.6%から35%、キャピタルゲインと配当が15%の特別税率、また遺産税を撤廃したり、と基本的に高所得者層に対する恩典が目立った。共和党の支持ベースを考えればこれは当然のことだ。減税の内容とその失効の影響に関しては上の「失効間近のブッシュ減税」を参照して欲しい。
2010年の失効に際して、オバマ政権は年収25万ドル(夫婦合算申告ベース)までの納税者に対する減税は延長するが、これより所得が上の高所得者層の税率は2001年時点の最高39.6%に戻すというポリシーを公にしていた。これも民主党の支持ベースを考えれば当然のポリシーだろう。
中間選挙で共和党が勝ち、民主党のポリシー通りの延長は可能性薄と見られていた。実際にここ数日、下院が25万ドルまでの納税者に対する減税を延長する法案を可決したが、上院を通過する見込みはなく、このままだと全ての減税が失効してしまうという最悪の事態を招くことにもなり兼ねない状況であった。
今夜、一部報道によるとオバマ政権は、一般家庭への減税を延長するためには高所得者層の減税をも期間限定で延長する以外に方法はないと判断したようで、全ての減税を2年間の期間限定で延長という方向で共和党、議会と調整に入るようだ。また、2010年のみ撤廃という異例の取り扱いが話題の遺産税に関しては、税率35%、控除枠$5 Millionで復活というのが有力恒久案だ。
さらに毎年納税者を冷や冷やさせるAMTの免税枠の増額延長(AMTパッチ)も今回のオバマ提案に基づき2年間(2010年と2011年)延長されるようだ。AMTパッチの毎年のドタバタに関しては2007年12月14日の「混迷極める米国議会のAMT対策」を参照して欲しい。これで日本人派遣員の年末グロスアップも多額のAMTを回避する形でできる方向で日本企業もハッピーだろう。
AMTパッチの件と減税の延長は注目度が高かったので取り急ぎ。