*2001年・2003年ブッシュ減税
ブッシュ元大統領が政権を取ってまだ勢いがあった2001年および2003年に実行した二つの減税は歴史に残る大型減税であった。アフガンとかイラクとかで嵩む戦費にも係らず、あれだけの大型減税を実行できた当時の影響力、手腕はみごとだったと言える。
減税の柱は「個人所得税率の低減」、特に累進の最高税率が39.6%から35%に引き下げられたインパクトは富裕層には大きかっただろう。また投資所得に対しても手厚い。ほとんどのキャピタルゲインに対する税率が20%から15%に引き下げられたばかりでなく、従来は通常所得として課税されていた(すなわち最高39.6%だった)配当課税もキャピタルゲイン同様に15%とされた。
また、当時55%(免税枠100万ドル)だった遺産税に関しては税率を毎年低減させていき(と同時に免税枠を毎年増額させていき)、2010年には完全撤廃という随分と大胆な改革で臨んだ。当時、遺産税を専門にプラクティスしている友人に「2010年以降どうすんの?」と質問した記憶がある。
*時限爆弾だったブッシュ減税
これだけの減税を実行するともちろんそれなりの歳入減となる。財政のバランスを考えて(というか不均衡になるには違いはないが、不均衡の額を圧縮して見せるため)、この減税にはひとつの大きな「キャッチ」があった。それは2001年および2003年に実行された減税の全ては「2010年末をもって失効」するというSunset条項が盛り込まれていた点だ。
2010年なんて凄い未来、と皆考えていたが「光陰矢の如し・・・」で今はもう2010年だ。Y2Kから10年たってしまったことになる。イラク戦争のここまでの泥沼化、オバマ政権の誕生、CDOとCDSとかを起因とする前代未聞の金融危機、の全てが起こる前の段階では、どうせ2010年までには減税は恒久化、または最悪でも延長されるでしょ、というのが一般的な(というか楽観的な)見方であった。
しかし2010年の夏が終わろうとしている現時点でも延長すらされていない。今年は中間選挙の年に当たり、政治的に考えて11月の選挙前に延長の議論に終止符が打たれる可能性は低いとの見方もある。
米国の悲惨な財政状況を考えると全ての減税を延長するのは難しい気がするが、経済の先が見えない状況で国民のオバマ政権への失望感も出始めていることから、今後の展開は全く予想不可能だ。
次の2回のポスティングではこのブッシュ減税失効の影響を考えてみたい。