Monday, December 8, 2008

源泉税徴収に対するIRS税務調査強化(4)

ここ何回か米国における外国人に対する支払いに適用される源泉税のポスティングをしてきた。

2008年11月7日のポスティングでは、 IRSがこの分野(=源泉税の徴収義務)での税務調査強化を狙い、新たに税務調査マニュアル(Internal Revenue Manual 4.10.21.1)を完成・公表した点に触れ、今後の税務調査では、当マニュアルに基づき外国向け支払いに対する源泉税の徴収をきちんと行っているかどうかが問われることとなる旨を説明した。

*源泉税の徴収義務はとうとう「Tier 1」対象に?

税務調査マニュアルの完備だけでも、IRSがこの分野にいかに気合いを入れているかが計り知れるというものだが、ここにきて源泉税の徴収が税務調査の際についに堂々「Tier 1」の殿堂入りする予定があるというニュースが飛び込んできた。

となると税務調査が入るとR&Dクレジット、製造者控除(Sec.199)などのHigh Profileなポジションと並び、税務調査官の裁量の余地なく、源泉税に係る調査が入ることになる。これはIRSが単に法準拠の徹底に気合が入っているという状態を通り超して、この分野であれば確実に追徴できる可能性が高いとふんでいることを意味する。

*Tier 1って何?

Tier 1というのは税務調査の際にIRSが調査対象とするポジションを重要度別に区分しているTierシステムの中でも「IRSからみて戦略的に最重要項目(Issues of High Strategic Importance)」と位置づけられるもので、タックス・ポジションの中でも特別な「エリート(?)」だ。

このTierシステムはIRSの中でも大企業を中心に税務調査を行う「LMSB(Large and Mid-Side Business)」部門が税務調査を効率よくかつ標準化された形で実行することを目的に策定したシステムで、脱法的な取引(Abusive Tax Avoidance Transactions)の取り締り等と並び、LMSBの重要イニシアティブのひとつとなる。ちなみにここで言う「Large and Mid-Size」とは資産が$10 Million超の事業主体と定義され、S Corpやパートナシップ、LLC等のパススルー事業主体も含まれるとされる。

TierシステムにはこのTier 1以外に、Tier 2の「税法準拠にかなり問題があると思われる項目(Issues of Significant Compliance Risk)」、Tier 3の「特定の業種に係る重要項目(Issues of Industry Importance)」がある。

*Tier 1と認定されると・・・

どのようなポジションがTier 1に含まれるとされるかはIRS税務調査に係る特定の業種または特定の法的な問題点等の専門家による「推薦」に基づく。推薦されたTier 1「候補」はCompliance Strategy Council(CSC)(Style Councilではない-名曲「My Ever Changing Mood」は皆さん知ってますよね?ピアノバージョンの方が圧倒的にお勧め)というチョッと怖い名前の審議会で協議された上、「選定」されると晴れてTier 1項目となる。

納税者側から見るとTier 1に含まれる項目は、税務調査に入られた場合には、ほぼ必ず調査対象とされ、その取り扱いに関しては調査官レベルでの裁量がなく、全国LMSBレベルで統一された取り扱いを受けることとなる。制度的には「必ず調査対象となる」はずなのだが、実際にはとても目立つTier 1項目が税務調査が入ったにも係らず調査対象取引と選定されなかった例も個人的に見たことあるので「ほぼ必ず」と表現しておく。

ということで外国人への支払いに対する源泉税がTier 1の仲間入りを果たした暁には、日本企業の米国現地法人においても、外国への支払いの管理、正確な報告(Form 1042S、Form 5472等)、W-8BENのきちんとした受け取り、などの準備をますます抜かりなく整えておく必要がある。