Sunday, May 25, 2008

ゲイカップルの結婚と連邦税

カリフォルニア州最高裁は先週2008年5月15日に同性婚を禁じた州法を違憲とする判決を出し、ゲイカップルの結婚を認めた。このニュースは米国ではかなり大きく取り上げられ、ニュース番組では賛否両論、熱のこもった議論が展開されていた。同性婚を法的に認めたのはマサチューセッツ州に次ぐ二州目となるが、カリフォルニア州の政治的影響力が強いことからその反響は大きい。

*米国での結婚

米国憲法上、婚姻は州の法律により規定される分野であり、その意味で米国における結婚は全てどこかの州(DCを含む)の法律に基づくものである。また同じく憲法上の規定である「Full Faith and Credit」条項に基づき、他州での法的な権利はどの州でも認められるというのが原則であることから、どこかの州で結婚した後、他の州に引っ越しても婚姻関係はそのまま認められ、他州で結婚をし直す必要はない。

*連邦税への影響は?

結婚しているとしていないでは連邦税法上の取り扱いも大きく異なることがある。例えば「夫婦合算申告(Married Filing Joint)」は結婚しているカップルのみに認められる申告方法だし、カップルの一方にのみ所得がある場合でも他方の者がIRAに加入できる「Spousal IRA」も結婚しているカップル間でのみ可能である。

上述の通り、通常、結婚しているかどうかは州法の規定に基づいて判断されるため、カリフォルニア州またはマサチューセッツ州で「結婚」したゲイカップルに対しては連邦税法上「結婚しているカップル」と認められてもおかしくないはずである。ところがその行く手を阻む法律がある。

*連邦「Defense of Marriage Act」法

DOMAとして知られるこの法律の趣旨は大別して二つある。まず、ゲイカップル間の結婚に関しては他州がそれを認めていたとしても自州ではそれを認める必要はない、というものだ。これは基本的に上述の「Full Faith and Credit」条項の影響を取り消すものである。

しかし、Full Faith and Credit条項は連邦憲法上の規定だ。憲法の規定を議会が制定する法律で取り消すことができないのは明白であり、この点に関しては多少不思議な法律だ。ただし、他州の法律が自州の法律、政策に真っ向から対立するような場合には特別な考え方があったり、Full Faith and Creditをどのように実践するかに関して連邦議会にある程度の権限が与えられていたり、とかなり実態は複雑だ。当然、DOMAは違憲だという訴訟が起きてはいるが現時点では最高裁判所はこの点の審理を受け付けていない。米国の連邦最高裁判所は裁量的管轄(Writ of Ceciorari)に基づき好きなケースのみを取り上げればよいからだ。

DOMAのもうひとつの規定は州法の規定に係らず「連邦法」目的ではゲイカップルの結婚は結婚とは認めないというものだ。この規定により、例えカリフォルニア州またはマサチューセッツ州で立派に結婚していると認められていても、ゲイカップルである限り連邦税法上は結婚していることにはならないことになる。したがって、現時点では夫婦合算申告もできないし、Spousal IRAへの加入もできないこととなる。

DOMAのこちらの規定は、フェアかどうかは別として、連邦法目的で結婚をどう定義するかという検討事項であり、この点は連邦が州の法律に縛られずに勝手に決めることができる問題である。これは、州法に基づき設立されるCorporation、GP、LP、LLC、LLP、LLLP、Trustといった事業主体(これらの事業主体は州法に基づき設立される)を連邦税法上、どのように取り扱うかを連邦が勝手に決めることができるCheck-the-Boxルールを見ても明らかだ。

*本家カリフォルニアでは

カリフォルニア州では州最高裁の判断よりも早く、2007年より州にきちんと「婚姻届」を提出した「Registered Domestic Partners(RDP)」は法律上、夫婦としての取り扱いが認められるようになった。また、カリフォルニア州等の西部州の多くは夫婦間の財産権規定として「Community Property」法を採択している。これらの目的でもRDPは夫婦同様に取り扱われるようになるらしい。時代の流れと共に法律も着実に変化していくのが実感できる。