Thursday, May 8, 2008

米国パートナーシップと外国人パートナー(1)

*外国人に対する米国課税

米国から見た外国人(非居住者および外国法人等)が米国に投資する場合には当然米国の税務関係をチェックする必要がある。外国人に対する米国の課税方法は所得が「投資所得(Non-ECI FDAP)」の場合と「事業所得(ECI)」場合に対するものに大別される。Non-ECI FDAPは30%(または租税条約の低減レート)の源泉税で課税関係が終了するが、ECIは申告書(1040NRまたは1120F)を提出し、必要経費を控除した後のネット所得に累進税率を適用して税金を処理する。

なお、FDAPとECIを対義語のように使っている参考書のようなものがあるが、それは大きな間違いだ。FDAPというのはあくまでも米国源泉の所得のタイプに係る色付けであり、FDAPでも事実関係次第ではECIとなる場合もあればNon-ECIとなる場合もある。FDAPがECIとなるかどうかは基本的に、その所得が米国事業の資産から生み出されているものか(Asset Test)、または米国事業の活動から生み出されているか(Activity Test)により決定される。一方でFDAPではない米国源泉所得は「Force of Attraction」規定に基づき、外国人が米国にて事業を営んでいる場合には自動的にECIとなる。ただし、このForce of Attraction規定は租税条約のPE規定によりOverrideされるケースがほとんどだ。

*パートナーシップ経由の米国投資

外国人が「直接」株式、債券等に投資したり、または支店のような形態で事業を営んだりするケースと同様に、上述の課税関係はパートナーシップ(税務上パートナーシップと取り扱われるLLC等を含む)を経由して外国人が受け取る所得に対しても適用される。すなわち、米国のパートナーシップが投資所得を受け取り、それがNon-ECI FDAPと取り扱われるのであれば、それらの所得の外国人パートナーに配賦される部分は30%(または租税条約の低減レート)の源泉税の対象となるし、一方でパートナーシップが米国で事業に従事している場合には、外国人パートナーも事業に従事していると取り扱われ、事業所得のうち外国人パートナーに配賦される部分は、外国人パートナー側で申告所得として税金を納める必要がある。

*パートナーシップによる源泉徴収義務

パートナーシップが米国で事業に従事している場合には、外国人パートナーは配賦される(実際に現金等で分配されなくても)事業所得を申告所得として認識し申告を行う必要がある。外国人に申告させて税金を支払わせる場合には、外国人が実際には何もしないのではないかという危惧が財務省に常に存在する。米国内に居住している米国居住者や市民権を持っている者と比べると、米国の法律が及ばない外国に住んでいる非居住者に対しては、申告・納税義務を無視されても米国政府が取れる対抗策はかなり限定されていることから、財務省が危惧を持つことは当然である。そこで、取り合えず税金を何らかの形で源泉徴収してしまって、後で非居住者に申告をして過不足調整(多くの場合で還付請求)をさせようとする仕組みがいろいろな局面で確立している。

パートナーシップに投資する外国人パートナーに対してもこのような仕組みができあがって久しい。すなわち、四半期毎に外国人パートナーに配賦される事業所得に対して累進税率の最高税率を適用して、税金をIRSに予納する義務がパートナーシップにある。外国人パートナーに配賦される事業所得というのは、現金分配のことではなく、パートナーシップ合意書に基づきキャピタル勘定にクレジットされる金額のことである。

*最終財務省規則

財務省はこの程、パートナーシップが外国人パートナーに配賦する事業所得に対する源泉徴収義務に係る「最終財務省規則」を発表した。以前は源泉徴収はパートナーシップの事業所得のみを基に行う必要があったが、数年前に公表された暫定規則からの流れで「外国人パートナーが認識するパートナーシップ以外の米国での活動から発生する損失」の影響を条件付きで加味してもいいという方向に最終化された。これは米国で複数の事業(複数の米国パートナーシップも含む)に投資している外国人にとっては吉報だ。

次回のポスティングではこの最終規則の内容に関して説明する。