TCJAがトランプ大統領の署名により可決されてから今日2018年12月22日でちょうど1年。アニバーサリーを迎えて様々な思いが頭をよぎる。一年前、最終化された条文を急いで読んで受けた新税法のイメージと、この一年、解析をし続け、不明点が浮き彫りになり、とてつもない量の財務省規則草案が公表され、という進化(深化?)を経た結果今日抱いているイメージは結構異なっていると言える。
法人税引き下げ、米国から国外への販売・ライセンス・サービス提供に低税率を規定しているFDII、設備投資に対する即時償却、など、分かり易い恩典のイメージは確かにそのまま威力を発揮していて、悪いニュースは各社敢えて公表は控えてるんだろうという点を割り引いても、米国経済は基本的に好調に推移しているように見える。
昨日のWSJにも、税制改正一周年を記念して「再び競争力を付ける米国経済(America is Competitive Again)」というタイトル、「税制改正はホワイトハウスが狙った通りの経済・雇用効果を実現(The tax cuts of 2017 have boosted growth and job creation, just as the White House team intended)」というサブタイトルで高らかそこの効果を特集している。ちなみに当記事の著者は当時の国家経済会議委員長のGary Cohnなので当然ポジティブなトーンに終始しているが、米国において肌で感じるビジネスの動向と整合性がある内容だと思う。Gary Cohnの論調は説得力がある。ゴールドマンサックスの元社長だから、相当のやり手だろうし、そんな感じが滲み出てて力強い。ちなみに、最近は、彼が社長の頃、NYCやLVその他でお金使いまくってたJho Low率いる1MDB絡みのビジネスがアジアで始まってたって切り口でメディアに登場することが多かったけど、久しぶりに本道に返り咲いた感じの記事で健在ぶりを披露してくれた。
WSJの記事によると、経済成長率は2018年第三四半期までの9カ月通算3.3%(年率換算)で、これは13年振りの高成長率。トランプ政権誕生時に米国の経済成長率を3%台に戻すという目標を掲げた時点では、オバマ政権下の「New Normal」だった2%台を超えるのは無理というのが「有識者」の一般的な見方だった。たった1%じゃん、って思うかもしれないけど、米国規模の経済が、1%高い成長率を達成するということは、雇用、賃上げ、財政、等にとてつもなく大きなインパクトがある。
企業による米国回帰の動きも顕著しかも迅速で、500社を超える大手企業が、賃上げ、特別ボーナス支給、雇用拡大を発表し、600万人の従業員が何らかの恩典を享受しており、実に89%に上る経営者が税制改正の影響に基づき、従業員に対する報酬パッケージをアップグレードする予定だというサーベイ結果が出ている。経済が好調な状況で雇用環境も申し分ない。2018年に入ってから210万人の雇用増、失業率は3.7%と1969年以来のベスト記録。求人が失業者数より多い状況となり、賃金もアップ。2018年の賃金上昇率は3.1%と過去数十年で最高。低所得者層の賃金アップ率は更に高く4%を記録しているそうだ。経営者にとって頭痛の種は人材確保。
Capexは2017年比較で1,800億ドル(約20兆円)アップ、住宅関連以外の不動産投資は16%(1993年以来の高水準)、知的財産関連投資は10%(1999年以来の高水準)各々前年対比アップとなっている。税制改正のOpportunity Zone条項に基づく特定のエリアへの投資意欲も盛ん。
また、注目の海外からの米国への資金還流に関しては、前年同期1,280億ドルのところ、2018年の最初の3四半期で5,710億ドルを記録している。米国企業による海外子会社からの資金還流だけど、従来は四半期400億ドルが平均だったらしい。これが税制改正直後は一気に3,000億ドルに跳ね上がり、その後、500億ドルから1,000億ドルレベルに落ち着いてきた模様。資金還流のテクニカル面は後半チョッと触れたい。
でも法人税減税で、国家財政がマイナスになるので、税制改正はよくない、と言う声は未だに良く聞かれる。この点に関しては、政策決定時に国家財政に与える影響を加味するのは当然、とした上で、雇用、賃金水準がこれだけ上昇すれば、税収ベースの拡大に繋がる、また連邦政府が恒常的に赤字となっている主たる原因は、歳入が少ないからではなく、歳出が連邦政府の域を出る分野にまで拡大し、制御不能に陥っている点、としている。すなわち、いくら増税しても歳出をコントロールするまで財政赤字は解決しない、ということだ。
ポリシーや経済的な議論はさておき、テクニカルな面からは斬新なクロスボーダー課税およびその複雑さは特筆に値するだろう。法律が審議されている当時から可決に至るバタバタのローラーコースター期間に想定されていた新税制下のクロスボーダー課税に対するザックリとしたイメージは、米国もテリトリアル課税に移行し、その代わりに旧税制下で蓄積された海外留保所得は制度移行の代償(?)として低税率で一括課税、一部BEATのような特殊なBase Erosion対策が講じられ、またCFCが無形資産から超過利益を生み出している場合にはミニマム税が課される、とは言え基本的には海外所得は非課税、というような大枠だった。
法律可決後、間もない頃から、ちゃんと法文読み始めてみると、そんな生易しいものでないという発見に驚愕することとなる。制度移行で留保所得に一括課税された後、待ち受けている新制度は、語弊はあるけど全世界連結納税に近いGILTI。それに追い打ちをかける形でBEAT、Section 163(j)、Hybrid禁止(2日前にこちらも財務省規則草案公表)とこれでもか、って感じ。以前の全世界Deferralシステムと比べて、より厳しく、またコンプライアンス負荷が高いクロスボーダー課税制度になってしまった、という発見だ。
結局のところ、ヘッドラインだったテリトリアル課税を規定している100%配当控除の恩典を受けることが可能な事実関係は極端に少ない作りになっている。特に今後発生する海外所得に関しては、GILTIからシェルターされるCFCの有形償却資産の10%リターンと、複数のCFCを持つ米国株主が米国側のGILTI算定時に、CFCからロールアップしてくるTested Lossで、他のCFCからロールアップしてくるTested Incomeを相殺した際に、プラスのCFCのE&PにはTested Incomeでかつ米国株主側で超過利益となるはずの金額でも、GILTIがプッシュダウンされて戻ってくる際にGILTI「課税済み」とならない部分があるけど、これもテリトリアル課税の恩典を受け得る数少ない原資だ。ただ、優先順位的に、分配はまず課税済留保所得から行われていると取り扱われるから、留保所得一括課税の影響もあり、テリトリアル課税の恩典を受けることができる分配原資に辿り着くことがあるのかどうか、も怪しい。で、未だ規則案出てないけど、100%配当控除を規定している245Aも他のクロスボーダー課税に勝るとも劣らない複雑な規定だ。
上のWSJの記事にもある通り、以前よりは資金還流が税務的に容易になったのは事実。ただ、この点に関しても配当する側の源泉税の問題以外にも、CFCに対する米国株主側の株式簿価増減と課税済所得の還流にかかわるキャピタルゲイン認識の複雑な複合問題、等で一般に考えられるよりも資金に手が付けられない局面は多い。その際、CFCの株式簿価はかなりキーとなる検討なので、税務属性の管理に余り高い意識があるように見受けられない日本企業にとって、M&A時のTDDとかの局面も含めて、今後より高度な検討が強いられる分野となるだろう。
2017年の大統領選挙の結果、誕生が可能になったTCJA。もし選挙結果が異なっていたら米国経済も大きく異なっていただろう。ヒラリークリントンが大統領になっていたら、タダですら財産没収の域に達していると言っても過言ではない米国税制を更に高税率とし、キャピタルゲイン認識には6年間の保有期間を課したり、オバマ政権下でチョッと息が詰まるような「なんでそんなことDCの連邦政府に言われないといけないんだろう?」的な、本来主権国家同様の州政府権限をオーバーライドするような諸々の連邦政府発の行政規制がそのまま継続、または増大していただろうし。
という訳で、もう1年経ったというべきか、未だ1年しか経っていないと言うべきか。TCJAと寝食を共にしてきた身としては、TCJAが存在しなかった時代の税法や生活(大袈裟?)を考えるのは難しい。この法律の解析、適用は未だ始まったばかり。86年の税制改正がそうだったように、今後、何年、何十年も掛けて新たな「Body of Law」が構築されて行くことになるだろう。ロング・ジャーニーは始まったばかり。
Saturday, December 22, 2018
Sunday, December 16, 2018
米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(6) – BEAT財務省規則案(2)
で、結局、Pullman Loafは早々に売り切れてたんで、代わりにブリオッシュを買って始まったBEAT規則案のMorning After。幼少の頃、家の近くにあった「アートコーヒー」って店で母がブリオッシュよく買ってて、朝しょっちゅう摘まんでた影響で、時折ブリオッシュが無性に食べたくなる癖がまたしても店頭で頭を擡げてしまった。
規則案の中でも特筆すべき規定は昨日のBreaking Newsで触れているけど、若干もう少し真面目に解説した方がいいBEAT関連項目に関して、今回から数回に亘って触れてみたい。その後、約束通り、FTC、そして更にその後にSection 163(j)と、乞うご期待。でも、その間にもいろいろと気が散る題材が登場してきそう。米国事業に従事している(=ECIがあるという意味)パートナーシップ持分を外国人が譲渡した際の取り扱い、GILTIおよびFDII控除を規定するSection 250、そしてFTCと切っても切れない縁にあるPTI、100%配当控除を規定しているSection 245Aとか、今後も盛沢山そうなので、その都度、Breaking Newsには触れざるを得ない。となると、全て書き終えるのは更に数年(?)を要するかもね。国際税務業界の感覚として税制改正内容の具体的な方向性の探求は始まったばかりで、この長い冒険の旅、オデッセイは何年も続くというもの。楽しい本読んでたり、映画見てたりしても、いつかは終ってしまうのに比べて、国際税務のジャーニーは終わりがないのが嬉しい(?)。
ここに来てなぜ規則案が大量に公開されているかっていうと、いくつか側面はあると思うけど、財務省規則っていうのは普通は過去に遡及して効果を持つことはない。もう少し正確に言うと、最終規則は、最終規則そのものが公布された日、最終規則の基となる規則案(案そのものに法的効果はなし)、または暫定案(法的効果はあるが、一定期間を過ぎて最終化されない場合にはSunset)、が公布された日、IRSが「こんな規則を策定します」っていうNoticeを発行した日のいずれか早い日より前に効果を持つことは認められない。規則によっては納税者の選択で「早期適用」のオプションが規定されることも多いけど、これはあくまでも納税者側が自分の希望で勝手に適用するもの。規則の公布は米国連邦政府の官報または公報に当る「Federal Register」に掲載する形で行われる。ちなみに、規則が一般に公表される日、例えばBEAT規則案だったら2018年12月13日、は実際にFederal Registerに当規則案が掲載される日より数週間早い。過去訴求を認めないこの一般原則の例外として、「法改正に基づき迅速に策定される規則」、って日本語にするとチョッと固いけど、原文で言うところの「Promptly Issued Regulations」っていうのがあって、議会により法律そのものが新たに制定され、その日から「18カ月以内」に当法律に関して策定される財務省規則は、法律制定日まで遡って効果を持たせることができるというものがある。米国税制改正となるTCJAは2017年12月22日(後、1週間でAnniversary!)に署名されて正式に法律になっているので、2018年6月21日までに規則を最終化させることができれば、その内容全てが税制改正が適用される2018年課税年度(ほとんどの米国企業は2018年1月1日に開始する課税年度から新法適用)の初日から適用となる。
もうひとつの理由は、法的な制限ではなく、とてつもなく複雑な新しい法律を納税者に適用させるに当たり、何とか12月末までにできるだけのガイダンスを発行しておきたいという純粋なコンプライアンス面の検討。2018年12月決算の法人税申告そのものは2019年10月が最終期限だけど、予定納税、延長申請とか、また決算書上の法人税引当計算に関するガイダンスの必要性は待ったなしの状況だ。
という訳で洪水のように規則案が連発されていることになる。
で、BEATに戻ると、規則案では、まず諸々の定義を列挙した直後、誰がBEATの対象となるかという最重要検討事項でキックオフされている。これは物事の論理的な始め方と言えるけど、法文の方に目を移すとストラクチャー的にそのようなアプローチは難しく、大概、課税の概要から始まり、その後に適用対象納税者を含む、諸々の定義が来ることがほとんど。BEATを規定しているSection 59Aも、BEATミニマム課税概要から入って、法文で適用対象者の話しが出てくるのは、しばらく経ったSubsectionの(e)。法文をレターサイズにプリントすると、4ページ目で登場してくるキーとなる定義だ。規則案ではまず、この部分を入口で処理している。
BEAT適用対象者の基本は比較的シンプル。すなわち、S法人、RIC、REITを除く米国税務上Corporationと扱われる事業主体(便宜上、以下「法人」とする)。特に内国法人に限定されていない点に注意。ただし、過去3年平均売上が$500M未満(売上基準)、またはBase Erosion%3%未満(Base Erosion%基準)のいずれかの条件を充たす場合は適用除外となる。ちなみに銀行、証券会社のグループに含む納税者は3%ではなく2%。売上基準目的では、パートナーシップ持分を保有する米国法人は持分相当のパートナーシップ売上を加味する必要がある。
Base Erosion%は毎期の損金算入額に占めるBase Erosion Benefitsの占める%だけど、規則案では何を分母や分子に反映させるか、っていう点に関して、追加規則が規定されている。ここの部分はBase Erosion Paymentsから何を除外するかっていう部分と密接にリンクしているので、後日触れるBase Erosion Paymentsにかかわる話しを読んでからの方が分かり易いかもしれないけど、米国移転価格税制に規定されるService Cost Method(「SCM」)に準拠している役務提供対価、適格デリバティブ、Total Loss-Absorbing Capacity (“TLAC”)に基づく支払い、は分母・分子の双方から除外すると規定されている。TLACがBase Erosion Paymentsではないと規定された点は前回のポスティング通り。また、仮に為替差損益が関連者間取引を基に発生していても分母・分子の双方から除外される。逆に米国からInversionした企業に支払うCOGSや再保険プレミアムは分子・分母の双方に加算するとしている。更に、ケースとして多くはないと思うけど2018年1月1日以降に終了するCFCの課税年度が留保所得一括課税の合算課税年度となる場合、一括課税を現金部分は15.5%、それ以外は8%と低税率とするために計上される想定控除額は分母に加味が認められる。
ここまでのベーシックな売上基準やBase Erosion%基準そのものに関して、特に刺激的な部分は皆無と言えるけど、法文では売上基準、Base Erosion%基準の判断をする際に、特定のグループの数字を合算して行うこと、としている。所謂「Aggregationルール」に基づく「グループ合算規定」だ。法文では、Work Opportunity Credit(WOC)というおよそ国際課税に従事している者には馴染みのない条文を参照して、WOCで一人の雇用者と取り扱われる法人グループは、売上基準とBase Erosion%基準の判断時も「一人の納税者」として取り扱うと規定している。WOCのグループは、最終的にはSection 1563(a)のControlled Groupを80%以上ではなく、50%超基準で適用したものとなる。
Section 1563(a)のControlled Groupは世界中のグループ法人を含み、特に外国法人だからという理由のカーブアウトはない。法文にはなぜか、Section 1563(b)(2)(C)に規定される「外国法人はECIの部分を除き対象外」という部分に触れ、この除外規定は適用しないとしている。以前、BEATが法律として誕生した頃の今となっては懐かしいポスティングでも触れたけど、この除外規定の不適用は「弘法も筆の誤り」的な法文のドラフティングエラーとしか思えない。クロスボーダー課税の初心者であれば、Section 1563(a)のControlled Groupのメンバーの定義と、Section 1563(b)のComponentメンバーの定義がごちゃごちゃになりがちだって言うのは理解できるけど、海千山千の天下の上院財政委員会のスタッフライターはそんなことは百も承知のはず。Section 1563(a)には最初から外国法人も分け隔てなく含まれているので、その定義に何の影響も持たないSection 1563(b)で除外している外国法人を慌てて元に戻す、そんな必要もないはず。ただ、法文は全世界グループを意味しているっていう意気込みだけは充分に伝わってきていた。その上で、更に法文は、売上基準適用時に、外国法人に関して加味するべき売上は、米国申告課税対象となるECIに帰属する金額のみとしていた。
このグループ合算規定の解釈は実は結構チャレンジングで、もし全世界グループを合算するだけでなく、グループを一人の納税者と取り扱うとすると、全世界のグループ内法人間売上は消去することになり、計算に加味しなくていいように取れる。そもそもBase Erosion Paymentsは多くのケースで全世界グループの法人間の取引なだけに、Base Erosion%基準の算定時にまさかそれらを消去してしまうのはあり得ない。そこで、大方の解釈、というか個人的な解釈として合理的だと考えていたのは、売上基準目的では、外国法人のECI部分の売上と米国法人の売上に関して、その範囲のみで考えて内部取引がある場合には、消去するのではないか、というものだった。またBase Erosion%基準に関しては、Base Erosion Paymentsの定義がAggregationルールに基づくグループ規定とは異なるので、単純合算ではないかと考えていた。
この点に関して規則案では上の考え方に準じる規定となっている。すなわち、Aggregationルールで一人の納税者と取り扱われるグループは、50%超の資本関係にある米国法人とECI部分(語弊はあるけど分かり易く言うと米国支店部分)のみで構成されるとしている。また、米国と租税条約を持つ国の外国法人が内国法の米国事業活動とかECIではなく、PEプロテクションを適用して、PE帰属所得のみ米国で申告課税の対象とするケースでは、ECIに代わりPE帰属部分のみがAggregationルールでのグループに入ると規定されている。
この規定を基にAggregationルールを整理すると、売上基準に関しては、50%超資本関係にある全世界グループ内の「米国法人」の売上のみを合算する。唯一の例外は、外国法人でECIまたはPE帰属所得があるとして支店として納税申告をしているようなところがあれば、そこに反映されている売上は合算する。グループに含まれる米国法人間の内部取引に基づく売上は消去する一方、全世界グループの他の外国法人はAggregationルールのグループに含まれないことから、米国法人とグループ外国法人の売上は消去されない。例外は米国法人と米国支店間の内部取引でこれは消去される。また、これらの消去だのなんだのと言うルールはあくまで、売上基準の適用時にかかわるもので、Base Erosion Paymentsが何かという判断とは一切関係ない。
次のBase Erosion%基準だけど、こちらは基本的に消去するものはなく、米国法人および支店申告をしている外国法人がECIまたはPE帰属所得のネット課税所得算定時に取り込む、控除額全額合算が分母となり、各社のBase Erosion Benefitsの合計が分子となる。
また、グループメンバーの構成はBEAT適用課税年度末時点で毎期確定する必要があり、一旦確定したら、そのメンバーが過去3年を通じてメンバーだったかどうかにかかわらず、該当メンバーの過去3年の売上を参照することとなる。グループメンバーは固定ではなく、当然流動的なので、このようなルールが必要となる。
グループメンバーの中に異なる課税年度を持つ米国法人が存在することもあるけど、売上基準およびBase Erosion%基準は、算定を行おうとしている納税者本人の課税年度を基に合算する必要がある。例えば、3月課税年度の米国法人が12月課税年度の米国法人をグループメンバーに持つ場合、3月課税年度の米国法人がBEAT適用対象となるかの判断をする際には、12月課税年度のメンバー法人の4月から3月までの売上、費用、またBase Erosion Benefitsを切り出して合算し、基準額を算定することとなる。逆に、その12月課税年度の米国法人は、自分がBEAT適用対象となるかどうかの判断時に、3月課税年度のメンバー法人の1月~12月の数字を合算する。結果として同じグループ内で、一方はBEAT適用対象で、他方はそうでない、というようなケースも理論的には想定可能となる。グループメンバーに自分と異なる課税年度を採択している際、他のグループメンバー法人のために、自分の決算期以外の期間にかかわる金額を確定してあげないといけないという手間が増える。この算定は、何らかの合理的な方法を使用のこと、と規定されているので、必ずしも仮決算をする必要ななさそう。異常項目がなければ単純な按分計算でもいいように読める。
また細かい話しだけど、合算対象期間がBEAT適用課税年度外となる場合も構わず合算は必要と念押しされている。それはそうだろう。これは、例えば、12月決算の米国法人は2018年1月からBEAT対象となっているんで、2018年12月課税年度に自分がBEAT適用対象かどうかの判断をAggregationルールに基づいて行う必要があるけど、3月課税年度の米国法人がグループメンバーに存在する場合、3月課税年度の法人は2019年3月31日の課税年度に初めてBEAT対象となる。12月課税年度の法人がグループ合算計算を行う際に、3月決算の法人のBEAT対象期間外となる2018年1月~3月の金額もきちんと加味しなさい、という規則。
また、グループ内に銀行、証券会社がメンバーとして存在する場合はグループ全体に2%基準が適用 されるっていうのが原則だけど、銀行および証券業のグループに占める売上比率が2%未満の場合には、通常のルールに基づいてBase Erosion%基準は3%となる。
これで皆さん、誰がBEAT適用対象納税者となるか理解できたと思うので、次はBase Erosion Payments等に関して。
規則案の中でも特筆すべき規定は昨日のBreaking Newsで触れているけど、若干もう少し真面目に解説した方がいいBEAT関連項目に関して、今回から数回に亘って触れてみたい。その後、約束通り、FTC、そして更にその後にSection 163(j)と、乞うご期待。でも、その間にもいろいろと気が散る題材が登場してきそう。米国事業に従事している(=ECIがあるという意味)パートナーシップ持分を外国人が譲渡した際の取り扱い、GILTIおよびFDII控除を規定するSection 250、そしてFTCと切っても切れない縁にあるPTI、100%配当控除を規定しているSection 245Aとか、今後も盛沢山そうなので、その都度、Breaking Newsには触れざるを得ない。となると、全て書き終えるのは更に数年(?)を要するかもね。国際税務業界の感覚として税制改正内容の具体的な方向性の探求は始まったばかりで、この長い冒険の旅、オデッセイは何年も続くというもの。楽しい本読んでたり、映画見てたりしても、いつかは終ってしまうのに比べて、国際税務のジャーニーは終わりがないのが嬉しい(?)。
ここに来てなぜ規則案が大量に公開されているかっていうと、いくつか側面はあると思うけど、財務省規則っていうのは普通は過去に遡及して効果を持つことはない。もう少し正確に言うと、最終規則は、最終規則そのものが公布された日、最終規則の基となる規則案(案そのものに法的効果はなし)、または暫定案(法的効果はあるが、一定期間を過ぎて最終化されない場合にはSunset)、が公布された日、IRSが「こんな規則を策定します」っていうNoticeを発行した日のいずれか早い日より前に効果を持つことは認められない。規則によっては納税者の選択で「早期適用」のオプションが規定されることも多いけど、これはあくまでも納税者側が自分の希望で勝手に適用するもの。規則の公布は米国連邦政府の官報または公報に当る「Federal Register」に掲載する形で行われる。ちなみに、規則が一般に公表される日、例えばBEAT規則案だったら2018年12月13日、は実際にFederal Registerに当規則案が掲載される日より数週間早い。過去訴求を認めないこの一般原則の例外として、「法改正に基づき迅速に策定される規則」、って日本語にするとチョッと固いけど、原文で言うところの「Promptly Issued Regulations」っていうのがあって、議会により法律そのものが新たに制定され、その日から「18カ月以内」に当法律に関して策定される財務省規則は、法律制定日まで遡って効果を持たせることができるというものがある。米国税制改正となるTCJAは2017年12月22日(後、1週間でAnniversary!)に署名されて正式に法律になっているので、2018年6月21日までに規則を最終化させることができれば、その内容全てが税制改正が適用される2018年課税年度(ほとんどの米国企業は2018年1月1日に開始する課税年度から新法適用)の初日から適用となる。
もうひとつの理由は、法的な制限ではなく、とてつもなく複雑な新しい法律を納税者に適用させるに当たり、何とか12月末までにできるだけのガイダンスを発行しておきたいという純粋なコンプライアンス面の検討。2018年12月決算の法人税申告そのものは2019年10月が最終期限だけど、予定納税、延長申請とか、また決算書上の法人税引当計算に関するガイダンスの必要性は待ったなしの状況だ。
という訳で洪水のように規則案が連発されていることになる。
で、BEATに戻ると、規則案では、まず諸々の定義を列挙した直後、誰がBEATの対象となるかという最重要検討事項でキックオフされている。これは物事の論理的な始め方と言えるけど、法文の方に目を移すとストラクチャー的にそのようなアプローチは難しく、大概、課税の概要から始まり、その後に適用対象納税者を含む、諸々の定義が来ることがほとんど。BEATを規定しているSection 59Aも、BEATミニマム課税概要から入って、法文で適用対象者の話しが出てくるのは、しばらく経ったSubsectionの(e)。法文をレターサイズにプリントすると、4ページ目で登場してくるキーとなる定義だ。規則案ではまず、この部分を入口で処理している。
BEAT適用対象者の基本は比較的シンプル。すなわち、S法人、RIC、REITを除く米国税務上Corporationと扱われる事業主体(便宜上、以下「法人」とする)。特に内国法人に限定されていない点に注意。ただし、過去3年平均売上が$500M未満(売上基準)、またはBase Erosion%3%未満(Base Erosion%基準)のいずれかの条件を充たす場合は適用除外となる。ちなみに銀行、証券会社のグループに含む納税者は3%ではなく2%。売上基準目的では、パートナーシップ持分を保有する米国法人は持分相当のパートナーシップ売上を加味する必要がある。
Base Erosion%は毎期の損金算入額に占めるBase Erosion Benefitsの占める%だけど、規則案では何を分母や分子に反映させるか、っていう点に関して、追加規則が規定されている。ここの部分はBase Erosion Paymentsから何を除外するかっていう部分と密接にリンクしているので、後日触れるBase Erosion Paymentsにかかわる話しを読んでからの方が分かり易いかもしれないけど、米国移転価格税制に規定されるService Cost Method(「SCM」)に準拠している役務提供対価、適格デリバティブ、Total Loss-Absorbing Capacity (“TLAC”)に基づく支払い、は分母・分子の双方から除外すると規定されている。TLACがBase Erosion Paymentsではないと規定された点は前回のポスティング通り。また、仮に為替差損益が関連者間取引を基に発生していても分母・分子の双方から除外される。逆に米国からInversionした企業に支払うCOGSや再保険プレミアムは分子・分母の双方に加算するとしている。更に、ケースとして多くはないと思うけど2018年1月1日以降に終了するCFCの課税年度が留保所得一括課税の合算課税年度となる場合、一括課税を現金部分は15.5%、それ以外は8%と低税率とするために計上される想定控除額は分母に加味が認められる。
ここまでのベーシックな売上基準やBase Erosion%基準そのものに関して、特に刺激的な部分は皆無と言えるけど、法文では売上基準、Base Erosion%基準の判断をする際に、特定のグループの数字を合算して行うこと、としている。所謂「Aggregationルール」に基づく「グループ合算規定」だ。法文では、Work Opportunity Credit(WOC)というおよそ国際課税に従事している者には馴染みのない条文を参照して、WOCで一人の雇用者と取り扱われる法人グループは、売上基準とBase Erosion%基準の判断時も「一人の納税者」として取り扱うと規定している。WOCのグループは、最終的にはSection 1563(a)のControlled Groupを80%以上ではなく、50%超基準で適用したものとなる。
Section 1563(a)のControlled Groupは世界中のグループ法人を含み、特に外国法人だからという理由のカーブアウトはない。法文にはなぜか、Section 1563(b)(2)(C)に規定される「外国法人はECIの部分を除き対象外」という部分に触れ、この除外規定は適用しないとしている。以前、BEATが法律として誕生した頃の今となっては懐かしいポスティングでも触れたけど、この除外規定の不適用は「弘法も筆の誤り」的な法文のドラフティングエラーとしか思えない。クロスボーダー課税の初心者であれば、Section 1563(a)のControlled Groupのメンバーの定義と、Section 1563(b)のComponentメンバーの定義がごちゃごちゃになりがちだって言うのは理解できるけど、海千山千の天下の上院財政委員会のスタッフライターはそんなことは百も承知のはず。Section 1563(a)には最初から外国法人も分け隔てなく含まれているので、その定義に何の影響も持たないSection 1563(b)で除外している外国法人を慌てて元に戻す、そんな必要もないはず。ただ、法文は全世界グループを意味しているっていう意気込みだけは充分に伝わってきていた。その上で、更に法文は、売上基準適用時に、外国法人に関して加味するべき売上は、米国申告課税対象となるECIに帰属する金額のみとしていた。
このグループ合算規定の解釈は実は結構チャレンジングで、もし全世界グループを合算するだけでなく、グループを一人の納税者と取り扱うとすると、全世界のグループ内法人間売上は消去することになり、計算に加味しなくていいように取れる。そもそもBase Erosion Paymentsは多くのケースで全世界グループの法人間の取引なだけに、Base Erosion%基準の算定時にまさかそれらを消去してしまうのはあり得ない。そこで、大方の解釈、というか個人的な解釈として合理的だと考えていたのは、売上基準目的では、外国法人のECI部分の売上と米国法人の売上に関して、その範囲のみで考えて内部取引がある場合には、消去するのではないか、というものだった。またBase Erosion%基準に関しては、Base Erosion Paymentsの定義がAggregationルールに基づくグループ規定とは異なるので、単純合算ではないかと考えていた。
この点に関して規則案では上の考え方に準じる規定となっている。すなわち、Aggregationルールで一人の納税者と取り扱われるグループは、50%超の資本関係にある米国法人とECI部分(語弊はあるけど分かり易く言うと米国支店部分)のみで構成されるとしている。また、米国と租税条約を持つ国の外国法人が内国法の米国事業活動とかECIではなく、PEプロテクションを適用して、PE帰属所得のみ米国で申告課税の対象とするケースでは、ECIに代わりPE帰属部分のみがAggregationルールでのグループに入ると規定されている。
この規定を基にAggregationルールを整理すると、売上基準に関しては、50%超資本関係にある全世界グループ内の「米国法人」の売上のみを合算する。唯一の例外は、外国法人でECIまたはPE帰属所得があるとして支店として納税申告をしているようなところがあれば、そこに反映されている売上は合算する。グループに含まれる米国法人間の内部取引に基づく売上は消去する一方、全世界グループの他の外国法人はAggregationルールのグループに含まれないことから、米国法人とグループ外国法人の売上は消去されない。例外は米国法人と米国支店間の内部取引でこれは消去される。また、これらの消去だのなんだのと言うルールはあくまで、売上基準の適用時にかかわるもので、Base Erosion Paymentsが何かという判断とは一切関係ない。
次のBase Erosion%基準だけど、こちらは基本的に消去するものはなく、米国法人および支店申告をしている外国法人がECIまたはPE帰属所得のネット課税所得算定時に取り込む、控除額全額合算が分母となり、各社のBase Erosion Benefitsの合計が分子となる。
また、グループメンバーの構成はBEAT適用課税年度末時点で毎期確定する必要があり、一旦確定したら、そのメンバーが過去3年を通じてメンバーだったかどうかにかかわらず、該当メンバーの過去3年の売上を参照することとなる。グループメンバーは固定ではなく、当然流動的なので、このようなルールが必要となる。
グループメンバーの中に異なる課税年度を持つ米国法人が存在することもあるけど、売上基準およびBase Erosion%基準は、算定を行おうとしている納税者本人の課税年度を基に合算する必要がある。例えば、3月課税年度の米国法人が12月課税年度の米国法人をグループメンバーに持つ場合、3月課税年度の米国法人がBEAT適用対象となるかの判断をする際には、12月課税年度のメンバー法人の4月から3月までの売上、費用、またBase Erosion Benefitsを切り出して合算し、基準額を算定することとなる。逆に、その12月課税年度の米国法人は、自分がBEAT適用対象となるかどうかの判断時に、3月課税年度のメンバー法人の1月~12月の数字を合算する。結果として同じグループ内で、一方はBEAT適用対象で、他方はそうでない、というようなケースも理論的には想定可能となる。グループメンバーに自分と異なる課税年度を採択している際、他のグループメンバー法人のために、自分の決算期以外の期間にかかわる金額を確定してあげないといけないという手間が増える。この算定は、何らかの合理的な方法を使用のこと、と規定されているので、必ずしも仮決算をする必要ななさそう。異常項目がなければ単純な按分計算でもいいように読める。
また細かい話しだけど、合算対象期間がBEAT適用課税年度外となる場合も構わず合算は必要と念押しされている。それはそうだろう。これは、例えば、12月決算の米国法人は2018年1月からBEAT対象となっているんで、2018年12月課税年度に自分がBEAT適用対象かどうかの判断をAggregationルールに基づいて行う必要があるけど、3月課税年度の米国法人がグループメンバーに存在する場合、3月課税年度の法人は2019年3月31日の課税年度に初めてBEAT対象となる。12月課税年度の法人がグループ合算計算を行う際に、3月決算の法人のBEAT対象期間外となる2018年1月~3月の金額もきちんと加味しなさい、という規則。
また、グループ内に銀行、証券会社がメンバーとして存在する場合はグループ全体に2%基準が適用 されるっていうのが原則だけど、銀行および証券業のグループに占める売上比率が2%未満の場合には、通常のルールに基づいてBase Erosion%基準は3%となる。
これで皆さん、誰がBEAT適用対象納税者となるか理解できたと思うので、次はBase Erosion Payments等に関して。
Saturday, December 15, 2018
米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(6) – BEAT財務省規則案(1)
本当に思った通りだった。何と昨日2018年12月13日の遅くに、米国財務省は待望のBEAT財務省規則案をまたしても「いきなり」公表。最近の財務省はヤバ過ぎで、ここ2週間強の間に、Section 163(j)、FTC、そしてBEATと、合計すると1,000ページ近い規則案パッケージを矢継ぎ早に公表している。財務省やIRSはCompetency毎にそればっかりやっている知見を集積した専門チームが多数あるからいいけど、一人で読んで理解する側はもうなかなか付いていけない。
「FTCはテクニカルなので乞うご期待」のはずが、BEATは日本企業の関心が高いので乞うご期待、に急遽変身せざるを得ない状況だ。ただ、救いとしてはBEAT規則案はFTCに比べると断然分かり易い。敢えて言えば、PEに帰属する所得の計算を、条約アプローチでPEを独立事業体のように見て、単体の資産、リスク、機能に基づいて行う際のInternal Dealingの部分の理解が難しかったけど、後は読み易い。とは言え、意外な結果となっている部分もあり、結構興味深い読み物と言える。まだまだ細かい点はこれから何年もオサライし続けないといけないけどね。
細かい点は話しているとキリがないんだけど、「Breaking News」的なハイライトは次の通り。
法文では適用法が不明気味だったAggregationルール。これは、BEAT適用法人となるかどうかの$500M売上基準、そして3%基準およびNOLを使用している年度のNOL加算調整額の決定の二つの目的に使用されるBase Erosion%を算定する際に、グループ合算ベースで算定しましょうっていう部分。この目的でのグループは、基本的には50%超の資本関係で結ばれる全世界法人グループは一社扱いっていうSection 52のコンセプトを基にしているけど、規則案では、Aggregationルールに含まれるのは米国法人および外国法人の米国申告課税対象となるECI部分のみと規定している。すなわち、ECIを持たない外国法人はグループ合算に含まれないし、ECIがある外国法人もあくまでECI部分のみが合算される。さらに、ECIではなく、PE条項を基に外国法人が米国申告課税を行うケースでは、PE帰属部分のみがAggregationルールのグループに属するように計算する。
次にNOL。まずは大方の予想通り、単年はプラスの課税所得で、これを過年度からの繰越NOLで全額相殺する場合、BEATの修正課税所得は、マイナスではなくゼロの通常課税所得にBase Erosion BenefitsおよびNOLのBase Erosion%相当額を加算することが正式に確認された。これは以前、上院財政委員会の首席顧問弁護士と直接話した時に、議会側の意図はそうだと聞かされていたので驚きはないけど、実際に規則を目の当たりにしてみるとショックもひとしお。規則案ではBEAT計算は課税所得の再計算ではなく「Add-back」方式だと強調している。
これはBad News気味だけど、この規定はあくまでも単年ではプラスの課税所得があり、過年度からのNOL繰越で課税所得をゼロにしているケースの話し。該当課税年度単年ベースで欠損金となる場合は、当然、加算調整もマイナス額を起点として行うことができる。
一方、NOL使用年度の修正課税所得算定時に、使用しているNOLのいくらを加算調整するかっていう部分は思わぬGood News。すなわち、一般にはNOL使用年度のBase Erosion%を使うんだろうな~、って思われていたんだけど、ここは一転(というか今までは全く不明だったんだけど)、NOL発生課税年度のBase Erosion%を使用するとされた。更にその結果、BEAT規定そのもののが存在していない2017年12月31日以前に開始する課税年度から繰り越されるNOLに関しては 、NOL発生年度にBase Erosion Benefitsという概念自体が存在しない訳だから、Base Erosion%はゼロとなると明記されている。Good times bad times you know I had my share…って感じ。ロック好きな人は分かるね?ちなみに今後発生するNOLに関しては、毎期、Base Erosion%が何%だったかってトラッキングして、使用時にはどの年度のNOLだから、ここはBase Erosion%がどれだけで、とか結構実務的対応は面倒そう。更に明記されてないけど、この目的では3%未満のBase Erosion%でもNOLはその分Taintしてるって取り扱うと考えるのが自然だろう。
後、目新しい規定としては、(旧)163条(j)(アーニングス・ストリッピング規定)に基づいて、外国関連者への支払利息が非適格支払利息として過年度から繰り越されているケース。新Section 163(j)の先行ガイダンスとして4月(だっけ?)に公表されていたNotice 2018-28では、旧Section 163(j)の繰越利息が外国関連者への支払いに基づく場合、新Section 163(j)で損金算入される時点でBEATのBase Erosion Paymentsに当ると明言していた。これは、 Section 163(j)は新旧共にそうだけど、未使用額は繰り越されるって言っても法的な立て付けは、将来年度に新規に支払ったり発生したりしていると取り扱うという点を基にした解釈。Notice 2018-28ではこれを文字通り適用して、繰り越されている支払利息は将来課税年度に発生していると取り扱われるのだから、そのタイミングでBase Erosion Paymentsになるのは当然としていた。それはそれで文言的には合理的な解釈ではあった。でも、今回の規則案では、将来発生しているというのは、あくまでも繰り越しメカニズムであり、実際には以前の課税年度に発生しているのだから、旧Section 163(j)に基づく繰越額は、損金算入タイミングでBase Erosion Paymentsにはならないとしている。財務省もなかなかリーゾナブル。
もう一つ、なんか意外だったし、そんなことまで良く考えるよね、って感じだったのが、Base Erosion Paymentsを特定する際に、「Payments」は現金である必要はないって始めて、その流れで、適格出資、適格清算、組織再編等を通じて、外国関連者から資産取得するケースもBase Erosion Paymentsになるっていう点。これらの取引は非課税だったり、ステップアップがなくて譲渡人の税務簿価を引き継いだりするけど、そんなことはBase Erosion Paymentsかどうかの判断には関係はないそう。税務簿価を引き継ぐのだから、Base Erosion Benefitsの算定は引き継がれた税務簿価を基にした償却額となるとしている。
その一方、外国関連者からの原物分配で資産を取得する場合には、対価が存在しないのでBase Erosion Paymentsとはならないって規定している。適格清算で資産を受取るとBase Erosion Paymentsで、Currentの原物分配だとBase Erosion Paymentsではないという結果になるけど、適格清算は株式を放棄してキャンセルする部分が「対価」だから、同じUpstreamの資産移管でもBase Erosion Paymentsだったりそうでなかったりするということのようだ。
日本企業には余り馴染みがないかもしれないけど、米国MNCにはBig DealのService Cost Method(SCM)にかかわるBase Erosion Payments除外規定。米国移転価格税制の規則に規定されるSCM要件に準拠している役務提供対価はBase Erosion Paymentsから除外されるって法文に書いてあるけど、SCM要件を充たしているもののチョッとだけマークアップがあったりするケースはどうなっちゃうの、って2017年12月22日に法律が可決した、その瞬間から悲喜交々の議論がさく裂していたし、政府高官の発言にみな一喜一憂していた。で、結果は、単純にSCM要件を充たしているけどマークアップが存在するケースは、マークアップ部分のみがBase Erosion Paymentsになります、って言う分かり易いもの。
あと、銀行関係で皆が注目していた一つの規定を最後に一点。米国の銀行と並び、G-SIBsと言われる外銀大手は、米国に中間持株会社を設立し、そこで米国連邦準備制度理事会(FRB)が規定する総損失吸収力(TLAC)最低基準を充たさないといけなくて、そのために内部TLAC適格債というものの発行が義務付けられている。で、義務付けられているのにそれにかかわる支払いが法文上はBase Erosion Paymentsになり兼ねなくて、それはないでしょ、って感じだったんだけど、規則案ではめでたく除外とされた。ただし、除外の対象はFRBの要件額に限定。また、このTLAC要件は米国法人のみが対象となるそうで、外銀の米国支店には適用がない。なんで、TLACに対するBase Erosion Payments除外規定も支店には関係がないんだけど、今後、他国もFRB同様の要件を規則化する流れになることが予想されるらしく、それら国外法に基づく支払いの取り扱いに関しては、金融業界等からのコメントを反映して財務省がその取り扱いを引き続き検討するとしている。
まだまだ細かい規定は山積みだけど、ハイライトとしてはこんな感じでした。金曜日の夜も更けて、そういえば今週のTime Reportアップデートしなきゃ。明日は土曜日で、またPullman Loaf(旧称Pain de Mie)買いにミッドタウン早朝ドライブかな。
「FTCはテクニカルなので乞うご期待」のはずが、BEATは日本企業の関心が高いので乞うご期待、に急遽変身せざるを得ない状況だ。ただ、救いとしてはBEAT規則案はFTCに比べると断然分かり易い。敢えて言えば、PEに帰属する所得の計算を、条約アプローチでPEを独立事業体のように見て、単体の資産、リスク、機能に基づいて行う際のInternal Dealingの部分の理解が難しかったけど、後は読み易い。とは言え、意外な結果となっている部分もあり、結構興味深い読み物と言える。まだまだ細かい点はこれから何年もオサライし続けないといけないけどね。
細かい点は話しているとキリがないんだけど、「Breaking News」的なハイライトは次の通り。
法文では適用法が不明気味だったAggregationルール。これは、BEAT適用法人となるかどうかの$500M売上基準、そして3%基準およびNOLを使用している年度のNOL加算調整額の決定の二つの目的に使用されるBase Erosion%を算定する際に、グループ合算ベースで算定しましょうっていう部分。この目的でのグループは、基本的には50%超の資本関係で結ばれる全世界法人グループは一社扱いっていうSection 52のコンセプトを基にしているけど、規則案では、Aggregationルールに含まれるのは米国法人および外国法人の米国申告課税対象となるECI部分のみと規定している。すなわち、ECIを持たない外国法人はグループ合算に含まれないし、ECIがある外国法人もあくまでECI部分のみが合算される。さらに、ECIではなく、PE条項を基に外国法人が米国申告課税を行うケースでは、PE帰属部分のみがAggregationルールのグループに属するように計算する。
次にNOL。まずは大方の予想通り、単年はプラスの課税所得で、これを過年度からの繰越NOLで全額相殺する場合、BEATの修正課税所得は、マイナスではなくゼロの通常課税所得にBase Erosion BenefitsおよびNOLのBase Erosion%相当額を加算することが正式に確認された。これは以前、上院財政委員会の首席顧問弁護士と直接話した時に、議会側の意図はそうだと聞かされていたので驚きはないけど、実際に規則を目の当たりにしてみるとショックもひとしお。規則案ではBEAT計算は課税所得の再計算ではなく「Add-back」方式だと強調している。
これはBad News気味だけど、この規定はあくまでも単年ではプラスの課税所得があり、過年度からのNOL繰越で課税所得をゼロにしているケースの話し。該当課税年度単年ベースで欠損金となる場合は、当然、加算調整もマイナス額を起点として行うことができる。
一方、NOL使用年度の修正課税所得算定時に、使用しているNOLのいくらを加算調整するかっていう部分は思わぬGood News。すなわち、一般にはNOL使用年度のBase Erosion%を使うんだろうな~、って思われていたんだけど、ここは一転(というか今までは全く不明だったんだけど)、NOL発生課税年度のBase Erosion%を使用するとされた。更にその結果、BEAT規定そのもののが存在していない2017年12月31日以前に開始する課税年度から繰り越されるNOLに関しては 、NOL発生年度にBase Erosion Benefitsという概念自体が存在しない訳だから、Base Erosion%はゼロとなると明記されている。Good times bad times you know I had my share…って感じ。ロック好きな人は分かるね?ちなみに今後発生するNOLに関しては、毎期、Base Erosion%が何%だったかってトラッキングして、使用時にはどの年度のNOLだから、ここはBase Erosion%がどれだけで、とか結構実務的対応は面倒そう。更に明記されてないけど、この目的では3%未満のBase Erosion%でもNOLはその分Taintしてるって取り扱うと考えるのが自然だろう。
後、目新しい規定としては、(旧)163条(j)(アーニングス・ストリッピング規定)に基づいて、外国関連者への支払利息が非適格支払利息として過年度から繰り越されているケース。新Section 163(j)の先行ガイダンスとして4月(だっけ?)に公表されていたNotice 2018-28では、旧Section 163(j)の繰越利息が外国関連者への支払いに基づく場合、新Section 163(j)で損金算入される時点でBEATのBase Erosion Paymentsに当ると明言していた。これは、 Section 163(j)は新旧共にそうだけど、未使用額は繰り越されるって言っても法的な立て付けは、将来年度に新規に支払ったり発生したりしていると取り扱うという点を基にした解釈。Notice 2018-28ではこれを文字通り適用して、繰り越されている支払利息は将来課税年度に発生していると取り扱われるのだから、そのタイミングでBase Erosion Paymentsになるのは当然としていた。それはそれで文言的には合理的な解釈ではあった。でも、今回の規則案では、将来発生しているというのは、あくまでも繰り越しメカニズムであり、実際には以前の課税年度に発生しているのだから、旧Section 163(j)に基づく繰越額は、損金算入タイミングでBase Erosion Paymentsにはならないとしている。財務省もなかなかリーゾナブル。
もう一つ、なんか意外だったし、そんなことまで良く考えるよね、って感じだったのが、Base Erosion Paymentsを特定する際に、「Payments」は現金である必要はないって始めて、その流れで、適格出資、適格清算、組織再編等を通じて、外国関連者から資産取得するケースもBase Erosion Paymentsになるっていう点。これらの取引は非課税だったり、ステップアップがなくて譲渡人の税務簿価を引き継いだりするけど、そんなことはBase Erosion Paymentsかどうかの判断には関係はないそう。税務簿価を引き継ぐのだから、Base Erosion Benefitsの算定は引き継がれた税務簿価を基にした償却額となるとしている。
その一方、外国関連者からの原物分配で資産を取得する場合には、対価が存在しないのでBase Erosion Paymentsとはならないって規定している。適格清算で資産を受取るとBase Erosion Paymentsで、Currentの原物分配だとBase Erosion Paymentsではないという結果になるけど、適格清算は株式を放棄してキャンセルする部分が「対価」だから、同じUpstreamの資産移管でもBase Erosion Paymentsだったりそうでなかったりするということのようだ。
日本企業には余り馴染みがないかもしれないけど、米国MNCにはBig DealのService Cost Method(SCM)にかかわるBase Erosion Payments除外規定。米国移転価格税制の規則に規定されるSCM要件に準拠している役務提供対価はBase Erosion Paymentsから除外されるって法文に書いてあるけど、SCM要件を充たしているもののチョッとだけマークアップがあったりするケースはどうなっちゃうの、って2017年12月22日に法律が可決した、その瞬間から悲喜交々の議論がさく裂していたし、政府高官の発言にみな一喜一憂していた。で、結果は、単純にSCM要件を充たしているけどマークアップが存在するケースは、マークアップ部分のみがBase Erosion Paymentsになります、って言う分かり易いもの。
あと、銀行関係で皆が注目していた一つの規定を最後に一点。米国の銀行と並び、G-SIBsと言われる外銀大手は、米国に中間持株会社を設立し、そこで米国連邦準備制度理事会(FRB)が規定する総損失吸収力(TLAC)最低基準を充たさないといけなくて、そのために内部TLAC適格債というものの発行が義務付けられている。で、義務付けられているのにそれにかかわる支払いが法文上はBase Erosion Paymentsになり兼ねなくて、それはないでしょ、って感じだったんだけど、規則案ではめでたく除外とされた。ただし、除外の対象はFRBの要件額に限定。また、このTLAC要件は米国法人のみが対象となるそうで、外銀の米国支店には適用がない。なんで、TLACに対するBase Erosion Payments除外規定も支店には関係がないんだけど、今後、他国もFRB同様の要件を規則化する流れになることが予想されるらしく、それら国外法に基づく支払いの取り扱いに関しては、金融業界等からのコメントを反映して財務省がその取り扱いを引き続き検討するとしている。
まだまだ細かい規定は山積みだけど、ハイライトとしてはこんな感じでした。金曜日の夜も更けて、そういえば今週のTime Reportアップデートしなきゃ。明日は土曜日で、またPullman Loaf(旧称Pain de Mie)買いにミッドタウン早朝ドライブかな。
Saturday, December 8, 2018
米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(5) – 外国税額控除(1)
まさかSection 163(j)の財務省規則案公表から2日後に今度はFTCの規則案が公表されるとは・・・。Section 163(j)のパススルーの部分とか連結納税グループ内の配賦とかの理解で時間を掛けている間に、ボリュームこそ312ページとSection 163(j)の439ページには至らないけど、その内容の複雑さ、というか従来の概念からの乖離度合いの観点から、Section 163(j)の数倍複雑怪奇と言っても過言ではない凄いものが出た。覚悟はしていたけど、余りに凄くてSection 163(j)読む時間がなくなったばかりか、FTCの方は読んでもなかなか従来の感覚から頭を切り替え難い部分が山積み。
前回始めたばかりのSection 163(j)のポスティングを続けるか、いきなり脱線してFTCに鞍替えするか、しばらく迷ってたけど、国際税務に係わる者としてFTCの誘惑には勝てない。という訳で、Section 163(j)はFTCをカバーした後にまた、戻ってくるのでそれまでお預けということにする。でもその間にBEATの規則案とか出ちゃうとそっちもカバーしないといけないし、年末年始はどうなることか。CAとか行くと外に行きたくなるから、今回はNYCで財務省規則三昧のお正月にするのがいいかもね。NYCはまあまあ寒くなってきて、東京だったら真冬の一番寒い日くらいの気温の毎日だけど、こんなのはNYCとしてはまだまだ。でもマンハッタンの冬は、特に天気のいい日は寒いとは言えピシッと気が引き締まって気持がいい。今日は週末だったんで、朝からMadison Square Parkの辺にパンを買いに行ったんだけど、朝で道も空いてて、ついついMidtown EastからFDRを南にグルっと回ってバッテリートンネル経由、Westside Highwayに出て、西からMidtownのFlatironに戻るような遠周りをしたくなってしまった。週末のマンハッタンは、短時間の違法駐車も含めて(?)車止め放題だし。パン買って、Gasoline Alleyでカプチーノ買って、財務省規則読んで(笑)、いい感じの土曜日の朝でした。
で、FTCにしても、他の規則案にしても、規則「案」(=Proposed)っていうのはあくまでその名の通り草案なので、法的効果もないし、内容自体、最終化される際に変更がある。FTCの規則案を読んでて思うけど、これだけ複雑なものを財務省やIRSが限られた時間内で際どい判断を下した結果の集大成としての規則案パッケージなので、最終化の暁には結構異なる姿に生まれ変わる可能性は大きい。
FTCの規則案が複雑となる背景には、今回の税制改正が基本的に米国クロスボーダー中心の改正であり、クロスボーダー課税のあり方を根本的に変えてしまったという点が挙げられる。しかも一から書き換えるのではなく、既存の法律の上に大量の新しい規則をダンプしたもんだから、より難しい法律となっている。1年前の今頃は、税制改正可決前夜で、米国も単にテリトリアル課税になって、間接税額控除が撤廃で終わりなのかな~って単純に考えていた。蓋を開けてみてビックリ。海外留保所得一括課税に始まり、グローバル連結納税とでも言える恐怖のGILTI合算課税、海外源泉配当に対する100%配当控除、米国法人税率の21%への引き下げ、Subpart F所得合算課税や少し前に触れたSection 956のは温存、と余りに新しい概念にその全体像の把握に皆数カ月を要する状況だった。これだけクロスボーダー課税のあり方が変わってしまっては、FTCも大幅な見直しを強いられる。
特にこれからはGILTI合算課税で毎期多くの国外所得を米国で強制合算させられ、その弊害を最小限とする唯一の手段は他でもないFTCということになる。BEATにでも引っかかってしまうと、FTCの効果は帳消しだから、CFCを多く持つ米国MNCは詳細なモデリングを通じた定量分析に明け暮れる毎日だろう。
財務省規則の内容は次回から少し時間を掛けて説明したいけど、取りあえず特筆するべき点をいくつか挙げておくと、GILTI合算でSection 78グロスアップされる法人税額は、法文をそのまま読むとGeneralバスケットに行くけど、規則案ではGILTIバスケットに属するとしてくれている点。「くれている」というと全員に有利な感じがしてしまうけど、この額がGILTIバスケットになるのがいいか、Generalバスケットになるのがいいかは個々の納税者のFTCポジション次第。
一方、米国株主がCFCから受け取る配当、利子、賃貸料、ロイヤルティーはLook-Through規定があるけど、結構期待されていたCFCのTested IncomeにLook-throughして、結果として米国株主が受け取るこれらの所得をGILTIバスケットに帰属させるという案は認められていない。
ということでFTCは相当テクニカルなので乞うご期待。
前回始めたばかりのSection 163(j)のポスティングを続けるか、いきなり脱線してFTCに鞍替えするか、しばらく迷ってたけど、国際税務に係わる者としてFTCの誘惑には勝てない。という訳で、Section 163(j)はFTCをカバーした後にまた、戻ってくるのでそれまでお預けということにする。でもその間にBEATの規則案とか出ちゃうとそっちもカバーしないといけないし、年末年始はどうなることか。CAとか行くと外に行きたくなるから、今回はNYCで財務省規則三昧のお正月にするのがいいかもね。NYCはまあまあ寒くなってきて、東京だったら真冬の一番寒い日くらいの気温の毎日だけど、こんなのはNYCとしてはまだまだ。でもマンハッタンの冬は、特に天気のいい日は寒いとは言えピシッと気が引き締まって気持がいい。今日は週末だったんで、朝からMadison Square Parkの辺にパンを買いに行ったんだけど、朝で道も空いてて、ついついMidtown EastからFDRを南にグルっと回ってバッテリートンネル経由、Westside Highwayに出て、西からMidtownのFlatironに戻るような遠周りをしたくなってしまった。週末のマンハッタンは、短時間の違法駐車も含めて(?)車止め放題だし。パン買って、Gasoline Alleyでカプチーノ買って、財務省規則読んで(笑)、いい感じの土曜日の朝でした。
で、FTCにしても、他の規則案にしても、規則「案」(=Proposed)っていうのはあくまでその名の通り草案なので、法的効果もないし、内容自体、最終化される際に変更がある。FTCの規則案を読んでて思うけど、これだけ複雑なものを財務省やIRSが限られた時間内で際どい判断を下した結果の集大成としての規則案パッケージなので、最終化の暁には結構異なる姿に生まれ変わる可能性は大きい。
FTCの規則案が複雑となる背景には、今回の税制改正が基本的に米国クロスボーダー中心の改正であり、クロスボーダー課税のあり方を根本的に変えてしまったという点が挙げられる。しかも一から書き換えるのではなく、既存の法律の上に大量の新しい規則をダンプしたもんだから、より難しい法律となっている。1年前の今頃は、税制改正可決前夜で、米国も単にテリトリアル課税になって、間接税額控除が撤廃で終わりなのかな~って単純に考えていた。蓋を開けてみてビックリ。海外留保所得一括課税に始まり、グローバル連結納税とでも言える恐怖のGILTI合算課税、海外源泉配当に対する100%配当控除、米国法人税率の21%への引き下げ、Subpart F所得合算課税や少し前に触れたSection 956のは温存、と余りに新しい概念にその全体像の把握に皆数カ月を要する状況だった。これだけクロスボーダー課税のあり方が変わってしまっては、FTCも大幅な見直しを強いられる。
特にこれからはGILTI合算課税で毎期多くの国外所得を米国で強制合算させられ、その弊害を最小限とする唯一の手段は他でもないFTCということになる。BEATにでも引っかかってしまうと、FTCの効果は帳消しだから、CFCを多く持つ米国MNCは詳細なモデリングを通じた定量分析に明け暮れる毎日だろう。
財務省規則の内容は次回から少し時間を掛けて説明したいけど、取りあえず特筆するべき点をいくつか挙げておくと、GILTI合算でSection 78グロスアップされる法人税額は、法文をそのまま読むとGeneralバスケットに行くけど、規則案ではGILTIバスケットに属するとしてくれている点。「くれている」というと全員に有利な感じがしてしまうけど、この額がGILTIバスケットになるのがいいか、Generalバスケットになるのがいいかは個々の納税者のFTCポジション次第。
一方、米国株主がCFCから受け取る配当、利子、賃貸料、ロイヤルティーはLook-Through規定があるけど、結構期待されていたCFCのTested IncomeにLook-throughして、結果として米国株主が受け取るこれらの所得をGILTIバスケットに帰属させるという案は認められていない。
ということでFTCは相当テクニカルなので乞うご期待。
Wednesday, November 28, 2018
米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(4) – Section 163(j)(1)
大方の予想より数週間遅れて、11月26日に漸く公表されたSection 163(j)の財務省規則案。500ページに上るっていう恐怖の噂があったけど、実際には439ページ。
Section 163(j)の基本的な考え方は比較的単純だ。すなわち、毎課税年度、損金算入が認められる事業目的の支払利息は、修正課税所得(Adjusted Taxable Income 「ATI」)の30%、事業目的の受取利息、そしてフロアファイナンス支払利息、を上限とする、というものだ。
従来、世界最高税率だった2017年以前は、借入は米国で最大限化するというのが、米国MNCのタックスプラニングの定石だったけど、税率の低減、少し前に触れたSection 956の影響で異なるアプローチが可能となったクレジットサポート(詳しくは「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)Section 956温存と財務省規則案(2)」を参照)、そしてこのSection 163(j)の登場で、ファイナンスの在り方も随分と異なってくる。日本企業が想像する以上に、米国MNCに与えるSection 163(j)の影響は大きく、結果として、グローバルファイナンスの在り方を、上述の諸々の新しい環境、更にGILTIを含む他の新規定も複合的に加味して、自社の数字をモデリングして徹底的な定量分析を行っている。
で、冒頭で触れた通り、Section 163(j)の基本的なアプローチは一見実にシンプル。毎課税年度、損金算入が認められる事業目的の支払利息は、ATIの30%、事業目的の受取利息、そしてフロアファイナンス支払利息、を上限とする、というもので、このアプローチ自体、他国のものと比べて特段、有利不利を提供するようなものでない気がする。ATIはザックリとEBITDA(後年はEBIT)に類似するけど、ネット支払利息の損金算入をEBITDAの30%に限定するっていうのは国際的なスタンダードに近い。BEPSは基本全く相手にすることなく、アクションプランに対しても徹底して無視を決め込んでいるに近い米国だけど、Section 163(j)は期せずして(?)アクション4に近い。
では、なぜこの一見、かなりシンプルな条文に439ページに上る規則が必要となるのか?またなぜ439ページ使って規定しても、不明確な部分が残るのか?規則案でも相当なページを割いているパススルー、連結納税グループ、CFCの取り扱い、などが主犯格と言えるけど、今回から数回掛けて、財務省規則案の規定内容を見ながら考えていきたい。
まずは、Section 163(j)の対象となる利息の定義。議会の立法趣旨に基づくと、Section 163(j)は、税法上、利息と取り扱われる金額が対象となるが、これは例えば、OIDとか、税法上利息として取り扱われる金額が含まれることとなる。旧Section 163(j)では、税法上の利息に加えて、利息同様(=Equivalent)の金額、特にSecurity Transfer契約に基づく利息相当額にも適用があるとされていたが、今回のSection 163(j)の立法趣旨にはそのような拡大解釈をする余地はないように見えてて、この部分はプラニングの余地が残るって思われていた。ところが、規則案の蓋を開けてみてビックリ。Section 163(j)で損金算入制限対象となる支払利息は、税法上、利息として取り扱われる費用ばかりでなく、金銭の使用対価として支出される実質的に利息と「同等」の費用を広義に含むとされ、いくつかの例を見ると旧Section 163(j)に勝るとも劣らない広義なものとなっている。これって行政府側の越権行為?
次にSection 163(j)の屋台骨となる制限枠。制限枠は「事業目的受取利息」、「フロアファイナンス利息」そして「ATI」の3つで構成される。Section 163(j)の一つの複雑さは、対象納税者を法人に限定せず、個人事業主等にも拡大している点だ。新旧のSection 163(j)を比較すると、大きな差異がいくつかあるけど、その中の一つがこの対象納税者の範囲拡大。個人の支払う利息は、「事業目的」、「投資目的」、「私用目的」に大別されるけど、Section 163(j)は、このうち事業目的の部分のみに適用がある。複数の活動が混在する場合には、従来、主に投資目的の支払利息がいくらかを決定する目的で「トレーシング規定」という考え方が存在していた。ところが規則案ではトレーシング規定は踏襲せず、どちらかと言うと按分するようなイメージ?ここはもう少し読ませて下さい。事業目的の中で、適用免除事業がある場合には、各事業に供される資産の税務簿価で按分となっているけど、そのルールと混同しないようにしないとね。
法人に関しては、仮に借入の使途目的が事実関係的に投資に当る場合でも、全額、事業目的として取り扱うとしているけど、問題はパートナーシップ。Section 163(j)はパススルーであるパートナーシップに対して、支払利息の損金算入制限計算をパートナーシップレベルで行うよう規定している。一見、「別にそれでいいじゃん」って思うような内容に見えるかもしれないけど、事業主体レベルの課税のないパートナーシップに対して事業主体レベルで制限を加えるなどと言うハイブリッドなアプローチは、パススルー課税と事象主体課税のバランスが崩れ、パンドラの箱を開けてしまったような事態を招く。このパートナーシップの取り扱いはSection 163(j)の中でも最もテクニカルに複雑な部分となる。今回の財務省規則案でも相当なページを割いているけど、まるでパンドラの箱の底にエルピスが残っているかのように、何となくスッキリしない部分が多い。何回も読み直せばシックリ来るのかもね。それにしてもパートナーシップにかかわる規定の複雑さには驚愕。Section 163(j)の話しだけど、Sub K知らないと読んでも全く理解できないだろう。
Section 163(j)に基づく制限対象が「事業目的」の支払利息に限定されることから、制限枠を構成する受取利息もミラーイメージで、事業目的で受け取るものに限定される。上述の通り、法人は全ての活動が事業所得とみなされるので、適用免除事業を除けば単純に全利息をネットすればいい。個人は事業目的の支払利息と受取利息を決定の上、両者を比較するこになる。この点に関して、規則案で興味深かったのは、パートナーシップ側で投資目的と区分される支払利息および受取利息についても、C Corporationに配賦される金額は、原則として事業目的として取り扱う、としている部分。まあ、そうしないと、C Corporation自らでは達成できないことを、パートナーシップを組成して簡単にやれちゃうことになるから、当然、そのような規定が想定はされてた。でも、パートナーシップ側で制限を算定する訳だから、利息のどの部分がどのパートナーに帰属して、しかも各々のパートナーがC Corporationかどうかに基づいて取り扱いがことなるってパートナーシップ側の処理としてはかなり面倒。
次にフロアプランファイナンスに基づく支払利息。これは追加枠と言う形で規定されているけど、このような支払利息があれば、実質、Section 163(j)から免除されると考える方が分かり易い。フロアプランというのは米国小売業、特に自動車ディーラーが店舗に並べておく棚卸資産をファイナンスする方法だけど、Section 163(j)では自動車の販売またはリースに伴い、自動車を担保に受ける融資と規定している。自動車ディーラー業界のロビー活動の賜物だ。ちなみにここで言う自動車には「公道で人や物を運搬する目的で自己推進する車両」に加え、「ボート」および「農耕用作業車」が含まれる。規則案では、ここで言う自動車に、建設機械が含まれるかどうか議論されているけど、立法過程で議会にはそのような意図は見受けられない、として結果として含まれないとしている。建設業界のロビー活動の失敗なんだろうか。
で、一番肝心となる制限枠はATI。ここからは結構DeepかつPurpleなので、次回。
Section 163(j)の基本的な考え方は比較的単純だ。すなわち、毎課税年度、損金算入が認められる事業目的の支払利息は、修正課税所得(Adjusted Taxable Income 「ATI」)の30%、事業目的の受取利息、そしてフロアファイナンス支払利息、を上限とする、というものだ。
従来、世界最高税率だった2017年以前は、借入は米国で最大限化するというのが、米国MNCのタックスプラニングの定石だったけど、税率の低減、少し前に触れたSection 956の影響で異なるアプローチが可能となったクレジットサポート(詳しくは「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)Section 956温存と財務省規則案(2)」を参照)、そしてこのSection 163(j)の登場で、ファイナンスの在り方も随分と異なってくる。日本企業が想像する以上に、米国MNCに与えるSection 163(j)の影響は大きく、結果として、グローバルファイナンスの在り方を、上述の諸々の新しい環境、更にGILTIを含む他の新規定も複合的に加味して、自社の数字をモデリングして徹底的な定量分析を行っている。
で、冒頭で触れた通り、Section 163(j)の基本的なアプローチは一見実にシンプル。毎課税年度、損金算入が認められる事業目的の支払利息は、ATIの30%、事業目的の受取利息、そしてフロアファイナンス支払利息、を上限とする、というもので、このアプローチ自体、他国のものと比べて特段、有利不利を提供するようなものでない気がする。ATIはザックリとEBITDA(後年はEBIT)に類似するけど、ネット支払利息の損金算入をEBITDAの30%に限定するっていうのは国際的なスタンダードに近い。BEPSは基本全く相手にすることなく、アクションプランに対しても徹底して無視を決め込んでいるに近い米国だけど、Section 163(j)は期せずして(?)アクション4に近い。
では、なぜこの一見、かなりシンプルな条文に439ページに上る規則が必要となるのか?またなぜ439ページ使って規定しても、不明確な部分が残るのか?規則案でも相当なページを割いているパススルー、連結納税グループ、CFCの取り扱い、などが主犯格と言えるけど、今回から数回掛けて、財務省規則案の規定内容を見ながら考えていきたい。
まずは、Section 163(j)の対象となる利息の定義。議会の立法趣旨に基づくと、Section 163(j)は、税法上、利息と取り扱われる金額が対象となるが、これは例えば、OIDとか、税法上利息として取り扱われる金額が含まれることとなる。旧Section 163(j)では、税法上の利息に加えて、利息同様(=Equivalent)の金額、特にSecurity Transfer契約に基づく利息相当額にも適用があるとされていたが、今回のSection 163(j)の立法趣旨にはそのような拡大解釈をする余地はないように見えてて、この部分はプラニングの余地が残るって思われていた。ところが、規則案の蓋を開けてみてビックリ。Section 163(j)で損金算入制限対象となる支払利息は、税法上、利息として取り扱われる費用ばかりでなく、金銭の使用対価として支出される実質的に利息と「同等」の費用を広義に含むとされ、いくつかの例を見ると旧Section 163(j)に勝るとも劣らない広義なものとなっている。これって行政府側の越権行為?
次にSection 163(j)の屋台骨となる制限枠。制限枠は「事業目的受取利息」、「フロアファイナンス利息」そして「ATI」の3つで構成される。Section 163(j)の一つの複雑さは、対象納税者を法人に限定せず、個人事業主等にも拡大している点だ。新旧のSection 163(j)を比較すると、大きな差異がいくつかあるけど、その中の一つがこの対象納税者の範囲拡大。個人の支払う利息は、「事業目的」、「投資目的」、「私用目的」に大別されるけど、Section 163(j)は、このうち事業目的の部分のみに適用がある。複数の活動が混在する場合には、従来、主に投資目的の支払利息がいくらかを決定する目的で「トレーシング規定」という考え方が存在していた。ところが規則案ではトレーシング規定は踏襲せず、どちらかと言うと按分するようなイメージ?ここはもう少し読ませて下さい。事業目的の中で、適用免除事業がある場合には、各事業に供される資産の税務簿価で按分となっているけど、そのルールと混同しないようにしないとね。
法人に関しては、仮に借入の使途目的が事実関係的に投資に当る場合でも、全額、事業目的として取り扱うとしているけど、問題はパートナーシップ。Section 163(j)はパススルーであるパートナーシップに対して、支払利息の損金算入制限計算をパートナーシップレベルで行うよう規定している。一見、「別にそれでいいじゃん」って思うような内容に見えるかもしれないけど、事業主体レベルの課税のないパートナーシップに対して事業主体レベルで制限を加えるなどと言うハイブリッドなアプローチは、パススルー課税と事象主体課税のバランスが崩れ、パンドラの箱を開けてしまったような事態を招く。このパートナーシップの取り扱いはSection 163(j)の中でも最もテクニカルに複雑な部分となる。今回の財務省規則案でも相当なページを割いているけど、まるでパンドラの箱の底にエルピスが残っているかのように、何となくスッキリしない部分が多い。何回も読み直せばシックリ来るのかもね。それにしてもパートナーシップにかかわる規定の複雑さには驚愕。Section 163(j)の話しだけど、Sub K知らないと読んでも全く理解できないだろう。
Section 163(j)に基づく制限対象が「事業目的」の支払利息に限定されることから、制限枠を構成する受取利息もミラーイメージで、事業目的で受け取るものに限定される。上述の通り、法人は全ての活動が事業所得とみなされるので、適用免除事業を除けば単純に全利息をネットすればいい。個人は事業目的の支払利息と受取利息を決定の上、両者を比較するこになる。この点に関して、規則案で興味深かったのは、パートナーシップ側で投資目的と区分される支払利息および受取利息についても、C Corporationに配賦される金額は、原則として事業目的として取り扱う、としている部分。まあ、そうしないと、C Corporation自らでは達成できないことを、パートナーシップを組成して簡単にやれちゃうことになるから、当然、そのような規定が想定はされてた。でも、パートナーシップ側で制限を算定する訳だから、利息のどの部分がどのパートナーに帰属して、しかも各々のパートナーがC Corporationかどうかに基づいて取り扱いがことなるってパートナーシップ側の処理としてはかなり面倒。
次にフロアプランファイナンスに基づく支払利息。これは追加枠と言う形で規定されているけど、このような支払利息があれば、実質、Section 163(j)から免除されると考える方が分かり易い。フロアプランというのは米国小売業、特に自動車ディーラーが店舗に並べておく棚卸資産をファイナンスする方法だけど、Section 163(j)では自動車の販売またはリースに伴い、自動車を担保に受ける融資と規定している。自動車ディーラー業界のロビー活動の賜物だ。ちなみにここで言う自動車には「公道で人や物を運搬する目的で自己推進する車両」に加え、「ボート」および「農耕用作業車」が含まれる。規則案では、ここで言う自動車に、建設機械が含まれるかどうか議論されているけど、立法過程で議会にはそのような意図は見受けられない、として結果として含まれないとしている。建設業界のロビー活動の失敗なんだろうか。
で、一番肝心となる制限枠はATI。ここからは結構DeepかつPurpleなので、次回。
Saturday, November 17, 2018
米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(3) – GILTI (6)
何とか今回でGILTIの最初の財務省規則案にかかわるポスティングを終わらせて、次の大型規則案に間に合わせることができそう。何と言っても、Section 163(j)の支払利息の損金算入制限にかかわる財務省規則案が今週にも公表されるのでは、と戦々恐々としていたんだけど、結局、東海岸は既に金曜日の夜。となると、規則案の公表は来週明けの感謝祭直前を急襲、というパターンなんだろうか。Section 163(j)って、ATIの30%を超える事業活動関連のネット支払利息は損金算入繰延っていう、一見、実に人畜無害な規定だけど、規則案は500ページにも及ぶと噂されている。しかも、パススルー主体のパートナーシップに、事業主体レベルで損金算入制限を適用するという前代未聞のEntityアプローチを採択していることから、この部分にかかわるガイダンスが複雑怪奇となることが想定されるけど、この部分はナンと後日、別のパッケージでカバーされると言われている。もし本当にパートナーシップに対する取り扱い抜きで、500ページに及んでるんだったら凄い。Section 163(j)は連結納税グループ単位で適用されることが前回のNoticeで明らかにされてるけど、その際、損金算入制限額、またその繰越額をどうやって個社への配賦するのか、連結納税グループに後から参加してくる法人が持ち込む繰越額に対してSRLY同様の制限が規定されるのか、損金制限に抵触する場合の連結納税グループ内株主側の子会社株式簿価をどうやって調整するか、連結納税グループ内に不動産事業、農業、公共ユーティリティとかSection 163(j)適用免除事業が存在する場合どのように取り扱いのか、とかが盛沢山に規定されてんのかもしれない。
まあ、未だ公表されてないSection 163(j)の規則案の内容を詮索して今から心配し始めるのも、Bar Examで開始と同時に全問目を通した結果、最後に方に「Evidence」の問題があるのを知って「ヤバい」ってドキドキして、最初の「Community Property」系の比較的簡単な問題までもミスしちゃう、みたいな間抜けな展開なんで、さっさとGILTIに戻りたいけど、Section 163(j)の関係では、実はGILTIの算定基となるCFC側のTested Income (Loss)を算定する際に、CFCにSection 163(j)の適用があるのかないのかっていう点は未だに不明。Section 163(j)の財務省規則案で触れられる可能性大なので、この点はGILTIにも影響大だ。
で、今回は、GILTI財務省規則案の特筆すべき規定の中で、過去のポスティングで未だ触れてない項目いくつかに関して。
米国株主側でGILTI合算額を算定する際、Tested Incomeを計上しているCFCの有形償却資産(QBAI)の簿価総額に10%を掛けるっていうステップがある点は以前の「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(3) – GILTI (4)」触れてるけど、この「簿価」っていうのは、通常のMACRSより償却期間が長い定額法となる米国税法に規定される「Alternative Depreciation System (ADS)」っていう償却法で算定する必要がある。ADSは、E&P、その昔AMTのサブセットだったACE、主に国外で使用される資産、その他、非課税団体へのリース資産とか、特別な目的で登場してくるMACRSと比べて不利な償却法だ。また、NOLの使用タイミングその他の理由で、MACRSみたいな加速度償却を取りたくない場合には、納税者側の選択で通常の資産にもADSを適用することが認められる。
で、このADSを適用して、全CFCの簿価を算定することになるけど、そんな計算今までしたことないケースも多いだろう。その場合、財務省規則案は、個々の資産の取得時点に遡って正確な簿価算定をするよう規定している。大変な作業だ。しかも、この簿価は四半期毎の平均と規定されているので、四半期毎に各資産のADSベースの簿価を算定することが求められる。四半期毎の平均って言われて、Section 956を連想した人は米国クロスボーダー課税の青帯(?)だ。帯の色って世界中、または各道場や流派とかでどの程度似てるのか良く知らないけど、米国の空手道場、特に子供たちの部は、白と茶と黒だけではなく、茶に至るまでのステップが細分化されていて、子供たちが半年に一回、道場でテストを受けて昇格し易くできてる。モチベーションが高まるし、道場で昇格試験を受ける時は、毎月の「お月謝」に加え、「受験費用」が掛かるところが多いので、経営する側としても好ましいのかな、っていう側面もある。白、黄色、オレンジ、グリーン、青、とか道場によって順番が異なってたりパープルが入ってたりすることもあるみたいだけど、プログレスしていく。同じ色の中にもソリッド、すなわち一色の帯に加えて、黒の線が入ったストライプと呼ばれる格があり、同じ色であればストライプが入っている帯の方が格上となる。例えば「オレンジ・ストライプ」は、オレンジより上、グリーンより下、に位置する格付け、みたいな感じ。なんで、青帯は結構上位。
チョッと、QBAIの平均とSection 956の数字の取り方の整合性で脱線したけど、気を取り直して、QBAIの話しに戻ると、CFCが12月未満の短期課税年度となる場合、法文だけを読むと12カ月のフルの課税年度と同様に、QBAI全額に10%掛けるようにも読めるが、規則案では短期課税年度の場合には期間に準じて低減したQBAIを基にNet DTIRを算定するように、と釘を刺している。まあ、それはそうだよね。米国株主の変更に伴う課税年度適合要件などの理由で、CFCが3カ月の短期課税年度となる場合、米国株主は3カ月相当のTested Incomeだけを基に、Net Tested Income (Loss)を算定するんだから、そこから差し引くNet DTIR、すなわちみなしルーティン所得の算定を12か月ベースで行うのは算数的におかしい。
また、QBAIの算定をする際、CFCが持分を保有する米国外パートナーシップの有形償却資産は、まずパートナーシップ側でネット簿価を算定し、その額をCFCがパートナーシップの持分に準じて取り込むとされる。ただし、通常の規定通り、パートナーシップ所有の有形償却資産ネット簿価を取り込むことができるのは、あくまでプラスのTested Incomeを持つCFCのみとされる。ここはそんなこと明記しなくてもいいような気もしたんだけど、念のために明記したんだろうか。すなわち、仮にCFCが保有するパートナーシップから有形資産の残高を持分に準じて取り込んだとしても、CFC自体にTested Incomeがなければ、法文上、そこから米国株主にQBAIがフローアップしていくことはないはず。
で、いよいよGILTI規則案の話しも終盤に差し掛かり、「Getting very near the end」で「Sorry but it's time to go」となり、「Hope you have enjoyed the show」で「We'd like to thank you once again」って気持ちだけど(この辺の文言は何か分かるね?そう「Reprise」!)、最後に連結納税グループでの適用法。簡単に言うとGILTIは連結納税グループ単位で合算額を計算することになるけど、最終的には米国株主となる各法人にGILTI合算額を按分しているような考え方。このようなアプローチを、単純にGILTI合算額をグループ計算して、各法人に配賦って規定せずに、Tested Loss、有形償却資産ネット簿価(すなわちQBAI)、CFC支払利息および受取利息各項目はグループで一旦合算の上、各項目をTested Incomeを持つ法人にTested Incomeの比率で配賦して、その後、各法人がGILTIを算定というアプローチを規定している。実質的に連結納税グループでの合算ベースだけど、各法人のGILTI額が個別に決定されるため、連結納税規則に基づく子会社株式簿価の調整や、各法人が保有するCFCへのGILTIの再配賦などを同時に管理可能となる。よく考えてるよね。この部分はGILTIを規定しているSection 951A下の規則案ではなく、連結納税を規定している一連の規則に追加される形でSection 1.1502-51となる。
まだまだ、Anti-Abuse規定とか尽きないけど、週明けの500ページのSection 163(j)規則案に備えてこんなとこかな。GILTI関係では12月公表と言われるFTCパッケージで規定が期待される、Section 78のグロスアップや、従来からのLook-Through規定のバスケットの行き先がどうなるかって点は今から楽しみ。
まあ、未だ公表されてないSection 163(j)の規則案の内容を詮索して今から心配し始めるのも、Bar Examで開始と同時に全問目を通した結果、最後に方に「Evidence」の問題があるのを知って「ヤバい」ってドキドキして、最初の「Community Property」系の比較的簡単な問題までもミスしちゃう、みたいな間抜けな展開なんで、さっさとGILTIに戻りたいけど、Section 163(j)の関係では、実はGILTIの算定基となるCFC側のTested Income (Loss)を算定する際に、CFCにSection 163(j)の適用があるのかないのかっていう点は未だに不明。Section 163(j)の財務省規則案で触れられる可能性大なので、この点はGILTIにも影響大だ。
で、今回は、GILTI財務省規則案の特筆すべき規定の中で、過去のポスティングで未だ触れてない項目いくつかに関して。
米国株主側でGILTI合算額を算定する際、Tested Incomeを計上しているCFCの有形償却資産(QBAI)の簿価総額に10%を掛けるっていうステップがある点は以前の「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(3) – GILTI (4)」触れてるけど、この「簿価」っていうのは、通常のMACRSより償却期間が長い定額法となる米国税法に規定される「Alternative Depreciation System (ADS)」っていう償却法で算定する必要がある。ADSは、E&P、その昔AMTのサブセットだったACE、主に国外で使用される資産、その他、非課税団体へのリース資産とか、特別な目的で登場してくるMACRSと比べて不利な償却法だ。また、NOLの使用タイミングその他の理由で、MACRSみたいな加速度償却を取りたくない場合には、納税者側の選択で通常の資産にもADSを適用することが認められる。
で、このADSを適用して、全CFCの簿価を算定することになるけど、そんな計算今までしたことないケースも多いだろう。その場合、財務省規則案は、個々の資産の取得時点に遡って正確な簿価算定をするよう規定している。大変な作業だ。しかも、この簿価は四半期毎の平均と規定されているので、四半期毎に各資産のADSベースの簿価を算定することが求められる。四半期毎の平均って言われて、Section 956を連想した人は米国クロスボーダー課税の青帯(?)だ。帯の色って世界中、または各道場や流派とかでどの程度似てるのか良く知らないけど、米国の空手道場、特に子供たちの部は、白と茶と黒だけではなく、茶に至るまでのステップが細分化されていて、子供たちが半年に一回、道場でテストを受けて昇格し易くできてる。モチベーションが高まるし、道場で昇格試験を受ける時は、毎月の「お月謝」に加え、「受験費用」が掛かるところが多いので、経営する側としても好ましいのかな、っていう側面もある。白、黄色、オレンジ、グリーン、青、とか道場によって順番が異なってたりパープルが入ってたりすることもあるみたいだけど、プログレスしていく。同じ色の中にもソリッド、すなわち一色の帯に加えて、黒の線が入ったストライプと呼ばれる格があり、同じ色であればストライプが入っている帯の方が格上となる。例えば「オレンジ・ストライプ」は、オレンジより上、グリーンより下、に位置する格付け、みたいな感じ。なんで、青帯は結構上位。
チョッと、QBAIの平均とSection 956の数字の取り方の整合性で脱線したけど、気を取り直して、QBAIの話しに戻ると、CFCが12月未満の短期課税年度となる場合、法文だけを読むと12カ月のフルの課税年度と同様に、QBAI全額に10%掛けるようにも読めるが、規則案では短期課税年度の場合には期間に準じて低減したQBAIを基にNet DTIRを算定するように、と釘を刺している。まあ、それはそうだよね。米国株主の変更に伴う課税年度適合要件などの理由で、CFCが3カ月の短期課税年度となる場合、米国株主は3カ月相当のTested Incomeだけを基に、Net Tested Income (Loss)を算定するんだから、そこから差し引くNet DTIR、すなわちみなしルーティン所得の算定を12か月ベースで行うのは算数的におかしい。
また、QBAIの算定をする際、CFCが持分を保有する米国外パートナーシップの有形償却資産は、まずパートナーシップ側でネット簿価を算定し、その額をCFCがパートナーシップの持分に準じて取り込むとされる。ただし、通常の規定通り、パートナーシップ所有の有形償却資産ネット簿価を取り込むことができるのは、あくまでプラスのTested Incomeを持つCFCのみとされる。ここはそんなこと明記しなくてもいいような気もしたんだけど、念のために明記したんだろうか。すなわち、仮にCFCが保有するパートナーシップから有形資産の残高を持分に準じて取り込んだとしても、CFC自体にTested Incomeがなければ、法文上、そこから米国株主にQBAIがフローアップしていくことはないはず。
で、いよいよGILTI規則案の話しも終盤に差し掛かり、「Getting very near the end」で「Sorry but it's time to go」となり、「Hope you have enjoyed the show」で「We'd like to thank you once again」って気持ちだけど(この辺の文言は何か分かるね?そう「Reprise」!)、最後に連結納税グループでの適用法。簡単に言うとGILTIは連結納税グループ単位で合算額を計算することになるけど、最終的には米国株主となる各法人にGILTI合算額を按分しているような考え方。このようなアプローチを、単純にGILTI合算額をグループ計算して、各法人に配賦って規定せずに、Tested Loss、有形償却資産ネット簿価(すなわちQBAI)、CFC支払利息および受取利息各項目はグループで一旦合算の上、各項目をTested Incomeを持つ法人にTested Incomeの比率で配賦して、その後、各法人がGILTIを算定というアプローチを規定している。実質的に連結納税グループでの合算ベースだけど、各法人のGILTI額が個別に決定されるため、連結納税規則に基づく子会社株式簿価の調整や、各法人が保有するCFCへのGILTIの再配賦などを同時に管理可能となる。よく考えてるよね。この部分はGILTIを規定しているSection 951A下の規則案ではなく、連結納税を規定している一連の規則に追加される形でSection 1.1502-51となる。
まだまだ、Anti-Abuse規定とか尽きないけど、週明けの500ページのSection 163(j)規則案に備えてこんなとこかな。GILTI関係では12月公表と言われるFTCパッケージで規定が期待される、Section 78のグロスアップや、従来からのLook-Through規定のバスケットの行き先がどうなるかって点は今から楽しみ。
Thursday, November 8, 2018
米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(3) – GILTI (5)
ようやくGILTI関係のポスティングも終盤を迎えつつある感じで、チョッとひと安心ってところだけど、今後の財務省規則案公表の連打を考えると恐ろしい。パッと思いつくだけでも、新Section 163(j)、FTC、BEAT、FDII、GILTI控除、100%配当控除、ハイブリッド、などなど錚々たる面々が続く。どれも一筋縄ではいかぬ問題が山積みのいわくつき条文だけに、各々相当な長編となるはず。感謝祭からお正月までは規則案のReadingだけで毎日日が暮れそうだ。そうこうしている間に12月22日は税制改正可決のアニバーサリー。全てはあの日から始まった新税法に基づくWhole New Worldのクロスボーダー課税。未だたった一年しか経ってないとは思えないほど、随分と新しいクロスボーダー課税システムを考えさせられてきた。これかも長く考え続けることになるんだろうけど。
今日はGILTI規則案の中でも、個人的には意外な規定となっていた米国パートナーシップが米国株主としてCFCを保有する場合の取り扱い。チョッと複雑なので、皆さん準備(覚悟?)はいいでしょうか?
以前から何回もしつこいけど(本当に)、米国株主側の属性となるGILTIに関して、CFCレベルの属性だった従来のSubpart F所得合算課税の法的インフラを流用して、課税を実行しようとしているため、必然的に今まで直面したことない検討事項に出くわすことになる。今回の税制改正は、特にクロスボーダーの課税ルールを大きく変更しているけど、税法を一から書き換えているのではなく、既存の法律に上乗せする形で大量の条文を追加している。そのため、新しい税法を理解するには従来からの税法を良く知らないと始まらないし、今までの考え方がそのまま使える部分、新しい考え方が必要となる部分、と頭を良く整理しながらアプローチしないと訳が分からなくなりがちだ。
そんな混乱の一つに米国パートナーシップとGILTIの取り扱いが挙げられる。規則案のアプローチを語る前に、GILTI課税をする際に利用される従来のSubpart F所得合算方法に関して簡単に触れてみたい。元々、Subpart F所得はCFC側の属性で、CFCがCFCであり続ける限り、その課税年度終了時に「米国株主」となっている者が、各CFCのSubpart F所得の自己持分相当、すなわちPro-Rata持分、を課税所得に合算することになる。ここで言う米国株主とは、外国法人の少なくとも10%の議決権または価値を保有する「米国人」を意味する。米国人とは、米国市民および居住者、内国法人だけでなく、米国パートナーシップ、米国遺産、米国信託を含むとされる。パートナーシップはパススルーだけど、米国パートナーシップはCFC課税目的では一人の米国株主と取り扱われる。米国パートナーシップが米国株主となる場合、パートナーシップ側で合算されるSubpart F所得は他の所得同様に各パートナーに配賦される。CFCで計算してそれが最終額となる従来のSubpart F所得に関しては、これだけの規定で十分に機能していた。ところが、GILTIはCFCからフローアップしてくる項目だけでは完結せず、その後、株主側で合算したり、そこから合算ベースのNDTIRを差し引いたりと加工が必要となる。どのレベルで米国株主側の算定を行うのか、っていうのが重要となる訳だ。これは従来のSubpart F所得にはなかった新しい概念。
10%保有しているかどうかの判断は、直接、間接保有に加えて広範なみなし持分規定を適用して判断する。このみなし持分判断時に、従来は外国からのDownward Attributionを加味しなくても良かったものが、税制改正で免除規定が撤廃され、Downward Attributionを加味しなくてはいけなくなったのは以前から何回か触れている通り。Downward Attributionに関してはそのうち、それだけに特化したポスティングを企画したい。
で、規則案では、米国パートナーシップが10%以上保有するCFCに関して、パートナーの間接持分が10%未満の場合には、GILTIはパートナーシップレベルで算定し、その額をパートナーに配賦するとしている。このアプローチは既存のSubpart F所得合算のパートナーシップレベルで最終決定するアプローチに準じている。一方、パートナーの間接持分が10%以上、すなわちパートナー自身も米国株主扱いに至る間接持分を保有する場合には、パートナーは間接持分に準じてLook-throughする形でCFCからGILTI算定に必要な各項目の金額を取り込み、パートナーが保有する他のCFCの金額と合算してGILTI算定を行うとしている。
え~、間接持分が10%未満、10%以上のパートナーが混在しているケースはK-1作るの面倒くさそう。まずパートナーシップが自らのレベルでCFCからGILTI計算に必要な項目、すなわちTested Income(Loss)、QBAI、支払利息、受取利息、のPro-Rata持分を吸い上げ、そのうち間接持分10%以上のパートナーにはそれらの額各々を各パートナーの704(b)配賦比率で個々に配賦する。で、次にパートナーシップレベルに残っている各項目、すなわち間接持分10%未満のパートナー達に帰属する部分は、パートナーシップレベルでGILTI計算までして、GILTI合算額そのものを各パートナーに配賦する、っていうような作業になるように見える。
なかなかクリエイティブなハイブリッド処理法と言える。規則案の前文ではポリシー的な議論を展開して、このような変わったアプローチをサポートしようとしている。もし従来の米国株主の定義を無視して、米国パートナーシップを常にLook-Throughとしてしまうと、パートナーシップが10%以上保有している、すなわち米国株主となるケースでも、間接持分が10%未満となるパートナーがパートナーレベルで米国株主にならないように見え、GILTI合算をしなくてもいいような結果となるので適切ではない、としてピュアなAggregateアプローチを否定している。このアプローチは、パススルーっぽい考え方ではあるけど、Subpart F所得の合算を規定している法律ではサポートできない。
一方、ピュアなEntityアプローチ、すなわち、常にパートナーシップレベルでGILTI合算を計算し、結果を各パートナーに配賦する方法は、間接持分が10%以上のパートナーは、パートナーレベルで米国株主に準じる立場にあり、そのようなパートナーが、当該パートナーシップを介さずに他のCFCの米国株主となっている場合には、実質、一人の米国株主が2つのGILTI計算に基づく合算を行うこととなり、GILTIが米国株主レベルの属性である点に矛盾するとして、こちらも不適切だと結論付けている。でも、元々、法律では、外国法人や外国パートナーシップはLook-Throughするよう規定されてるけど、米国パートナーシップに対してLook-Throughを規定している条文はない。
となると、規則案のハイブリッドアプローチのうち、間接持分が10%のパートナーにGILTI各項目を配賦する部分は条文ではサポートできないことになる。しかも、規則案前文では散々、間接持分が10%のパートナーを「米国株主」って表現しているけど、定義的にそうなるにしても、ピックアップする所得はないはず。この点、なぜか法曹界も問題視している様子もないし、チョッと不思議。このまま最終規則化されてしまうんだろうか。
今日はGILTI規則案の中でも、個人的には意外な規定となっていた米国パートナーシップが米国株主としてCFCを保有する場合の取り扱い。チョッと複雑なので、皆さん準備(覚悟?)はいいでしょうか?
以前から何回もしつこいけど(本当に)、米国株主側の属性となるGILTIに関して、CFCレベルの属性だった従来のSubpart F所得合算課税の法的インフラを流用して、課税を実行しようとしているため、必然的に今まで直面したことない検討事項に出くわすことになる。今回の税制改正は、特にクロスボーダーの課税ルールを大きく変更しているけど、税法を一から書き換えているのではなく、既存の法律に上乗せする形で大量の条文を追加している。そのため、新しい税法を理解するには従来からの税法を良く知らないと始まらないし、今までの考え方がそのまま使える部分、新しい考え方が必要となる部分、と頭を良く整理しながらアプローチしないと訳が分からなくなりがちだ。
そんな混乱の一つに米国パートナーシップとGILTIの取り扱いが挙げられる。規則案のアプローチを語る前に、GILTI課税をする際に利用される従来のSubpart F所得合算方法に関して簡単に触れてみたい。元々、Subpart F所得はCFC側の属性で、CFCがCFCであり続ける限り、その課税年度終了時に「米国株主」となっている者が、各CFCのSubpart F所得の自己持分相当、すなわちPro-Rata持分、を課税所得に合算することになる。ここで言う米国株主とは、外国法人の少なくとも10%の議決権または価値を保有する「米国人」を意味する。米国人とは、米国市民および居住者、内国法人だけでなく、米国パートナーシップ、米国遺産、米国信託を含むとされる。パートナーシップはパススルーだけど、米国パートナーシップはCFC課税目的では一人の米国株主と取り扱われる。米国パートナーシップが米国株主となる場合、パートナーシップ側で合算されるSubpart F所得は他の所得同様に各パートナーに配賦される。CFCで計算してそれが最終額となる従来のSubpart F所得に関しては、これだけの規定で十分に機能していた。ところが、GILTIはCFCからフローアップしてくる項目だけでは完結せず、その後、株主側で合算したり、そこから合算ベースのNDTIRを差し引いたりと加工が必要となる。どのレベルで米国株主側の算定を行うのか、っていうのが重要となる訳だ。これは従来のSubpart F所得にはなかった新しい概念。
10%保有しているかどうかの判断は、直接、間接保有に加えて広範なみなし持分規定を適用して判断する。このみなし持分判断時に、従来は外国からのDownward Attributionを加味しなくても良かったものが、税制改正で免除規定が撤廃され、Downward Attributionを加味しなくてはいけなくなったのは以前から何回か触れている通り。Downward Attributionに関してはそのうち、それだけに特化したポスティングを企画したい。
で、規則案では、米国パートナーシップが10%以上保有するCFCに関して、パートナーの間接持分が10%未満の場合には、GILTIはパートナーシップレベルで算定し、その額をパートナーに配賦するとしている。このアプローチは既存のSubpart F所得合算のパートナーシップレベルで最終決定するアプローチに準じている。一方、パートナーの間接持分が10%以上、すなわちパートナー自身も米国株主扱いに至る間接持分を保有する場合には、パートナーは間接持分に準じてLook-throughする形でCFCからGILTI算定に必要な各項目の金額を取り込み、パートナーが保有する他のCFCの金額と合算してGILTI算定を行うとしている。
え~、間接持分が10%未満、10%以上のパートナーが混在しているケースはK-1作るの面倒くさそう。まずパートナーシップが自らのレベルでCFCからGILTI計算に必要な項目、すなわちTested Income(Loss)、QBAI、支払利息、受取利息、のPro-Rata持分を吸い上げ、そのうち間接持分10%以上のパートナーにはそれらの額各々を各パートナーの704(b)配賦比率で個々に配賦する。で、次にパートナーシップレベルに残っている各項目、すなわち間接持分10%未満のパートナー達に帰属する部分は、パートナーシップレベルでGILTI計算までして、GILTI合算額そのものを各パートナーに配賦する、っていうような作業になるように見える。
なかなかクリエイティブなハイブリッド処理法と言える。規則案の前文ではポリシー的な議論を展開して、このような変わったアプローチをサポートしようとしている。もし従来の米国株主の定義を無視して、米国パートナーシップを常にLook-Throughとしてしまうと、パートナーシップが10%以上保有している、すなわち米国株主となるケースでも、間接持分が10%未満となるパートナーがパートナーレベルで米国株主にならないように見え、GILTI合算をしなくてもいいような結果となるので適切ではない、としてピュアなAggregateアプローチを否定している。このアプローチは、パススルーっぽい考え方ではあるけど、Subpart F所得の合算を規定している法律ではサポートできない。
一方、ピュアなEntityアプローチ、すなわち、常にパートナーシップレベルでGILTI合算を計算し、結果を各パートナーに配賦する方法は、間接持分が10%以上のパートナーは、パートナーレベルで米国株主に準じる立場にあり、そのようなパートナーが、当該パートナーシップを介さずに他のCFCの米国株主となっている場合には、実質、一人の米国株主が2つのGILTI計算に基づく合算を行うこととなり、GILTIが米国株主レベルの属性である点に矛盾するとして、こちらも不適切だと結論付けている。でも、元々、法律では、外国法人や外国パートナーシップはLook-Throughするよう規定されてるけど、米国パートナーシップに対してLook-Throughを規定している条文はない。
となると、規則案のハイブリッドアプローチのうち、間接持分が10%のパートナーにGILTI各項目を配賦する部分は条文ではサポートできないことになる。しかも、規則案前文では散々、間接持分が10%のパートナーを「米国株主」って表現しているけど、定義的にそうなるにしても、ピックアップする所得はないはず。この点、なぜか法曹界も問題視している様子もないし、チョッと不思議。このまま最終規則化されてしまうんだろうか。
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