Wednesday, December 28, 2016

米国タックス行く年・来る年(5)トランプ政権・下院共和党の税法改正案

前回2回のポスティングでは税法改正とM&Aストラクチャーの関係に触れた。ここらで2017年の税法改正の展望に移ってみたい。とは言え、現時点ではまだ確固たる方向性が決まった訳ではないので、改正の内容を詳細に検討するというよりも大きな方向性を掴んでおけば十分だろう。詳細は2017年の春の展開を見ながら考えていきたい。

ここ8年、掛け声はあったもののオバマ政権下で本気で抜本的な税法改正が行われる気合を感じたことはない。ねじれ現象にあったため、大統領府も議会も最初から試合を捨てていたような気がする。それがトランプ政権の誕生で一気に大型税法改正が現実味を帯びてきていて経済界の期待も大きい。どのような具体的な法律となるにしても、減税、国際課税のテリトリアル化、を通じて米国企業の競争力を高める方向となるだろう。

まず、税法改正のフレームワークだが、現時点で改正の叩き台と考えられているプランは、大別してトランプ次期大統領のものと下院共和党の「Blueprint」と呼ばれるものの二つがある。トランプのものは選挙運動中に発表されていたもので、もう一方の下院のBlueprintは2016年6月に下院議長(House Speaker)のPaul Ryanと下院歳入委員会長のKevin Bradyの両名により公表されてしているものだ。この2つのプラン、同じ共和党案として共通点もあるし、方向的には整合性があるものの、現時点では二つの別のプランであり詳細は異なるという点はよく理解しておいた方がいい。

現時点の最重要アクションプランは、トランプ案および下院Blueprintに基いて自社のタックスポジションがどのようになるかの早急なモデリングだろう。特に後述の「国境税調整」とテリトリアル課税に移行する経過措置としての米国外の子会社(CFC)に眠る埋蔵金の一括課税、の影響を把握しておくことは今後の企業戦略の立案にも大きな影響があるはずだ。日本企業的には、米国企業を買収して付いてきたケース以外では、米国の下にCFCを多く抱えているケースは少ないと思われるので、前者のインパクトの検討が重要なように思われる。また税率が下がることは間違いないので2016年3月期には損金は前倒し、益金は繰り延べ、という当然の戦略が必要となる。

両案を具体的に見ていきたいけど、まず法人税率はトランプ案は15%、下院Blue Printは20%だ。どちらにしても現行の35%と比べるとかなり低い。15%と言えばタックスヘイブンの域だ。両案ともにAMTは廃止だ。思い切りがいい。日本も一気に15%とかできれば凄いのにね、って思うけど、実は米国の税収に占める法人税の割合は僅か10%程度と余り大きくない。これは多くの国内事業がパススルーの形態を取っているからだ。

一方で個人所得税は税収の50%弱を占めるし、かつパススルー事業体の課税は最終的には個人に配賦されているケースが多い。なので最終的には個人所得税率が気になるところだ。こちらは両案ともに12%、25%、33%の3つの税率区分となり、現行の39.6%からやはり減税となる。上述のパススルーから配賦されてくる所得に対してはトランプ案ではパススルーに留保したら(すなわち分配がなければ)15%、下院Blue Printでは分配の有無にかかわらず25%となる。前回、前々回に触れた通り、キャピタルゲインに対する税率はM&Aのストラクチャリングに大きな影響を持つが、トランプ案は現状維持、ただし実質増税だったNet Investment Income Taxの3.8%は撤廃となる。下院Blue Printのキャピタルゲイン課税は面白く、キャピタルゲインは50%非課税とするので半額が課税となり、実質最高税率は16.5%となる。低税率区分に属する納税者にも平準化されて恩典が与えられるのでいい案かもね。個人所得税目的でもAMTは撤廃だ。AMTは面倒なので無くなるとスッキリする。

設備投資減税も凄い。双方共に基本的には支出年度に全額損金算入となる。トランプ案では製造目的に供される資産が対象だが、下院Blueprintでは有形・無形の事象資産全てが対象となる。その代わりネット支払利息の損金算入には制限が加えられ、トランプ案では設備投資の全額損金を選択する場合にはネット支払利息は損金不算入、下院案では常に損金不算入となる。これは投資をレバレッジでファイナンスして、支出を損金算入し、更にファイナンスコストも損金算入するという「ダブルディップ」を禁止するためだ。それにしても大胆。

税率が下がる分、課税ベースは拡大される。両案ともR&Dクレジットのみは聖域的に温存するが、他の様々な特殊恩典(例、製造者控除)は撤廃する。面白いことに下院Blue PrintではLIFOも温存するとしている。LIFOは決算書とのConformity要件があり、IFRSで禁止になったと思うけど、米国ではSECがIFRSを結局認めていないので未だUS GAAPの世界のままだ。

海外子会社に対する国際課税に関してはトランプ案は改正後は分配の有無にかかわらず一律10%課税、移行時の経過措置として現時点の留保金に一括10%課税と言われているが、選挙運動中の案で現時点でもこの案のままかどうかは若干不透明な部分がある。下院Blue Printは100%の完全テリトリアル課税に移行するとし、移行時の経過措置として現時点の留保金を現金で持っているケースには一括8.75%、他の資産で持っているケースでは一括3.5%課税としている。下院Blue Print下では以前のキャンプ案同様8年間の分割払いが可能となる。

下院Blueprintで最も物議をかもしているのは「Border Adjustable Tax(国境税調整)」というものだろう。ここからは次回。

Sunday, December 25, 2016

米国タックス行く年・来る年(4)税法改正とM&A

前回のポスティングでは税法改正、特に税率およびどのようなタイプの所得が低税率の恩典を受けることができるか、という点のM&Aストラクチャーに与える影響を実際のディール例を見ながら考えてみた。この手の話しは決してアカデミックな話しで終わる訳ではなく、日本企業がM&Aを実行する際にターゲット株主の構成、また希望する課税関係をよく理解してストラクチャーを検討することの重要性を示唆している。

例えばWarren Buffet先生のBerkshireが絡んでいたバーガーキングのInversion取引。この取引に関しては今年の5月15日に「Inversion/インバージョン(22)「Inversion規則とBurger King」」というポスティングで少し詳しく触れているので詳細はそちらを参照して欲しいけど、あのDealは通常のInversion取引と異なり、カナダの持株法人の下にパートナーシップが組成される形で実行されている。どう見てもバーガーキングの旧大株主である3Gが株主レベルの課税を嫌がり、Section 367を逃れるためにSection 721でいける、すなわちSection 367の影響を受けない、パートナーシップへの出資扱いとなるストラクチャーを構築しようにみえる。なかなかCreativeなストラクチャーだ。

日本企業が関連するディールにもとてもハイテクなものもある。例えば1990年に松下がMCAを$6B以上で買収した際の取引だ。MCAの大株主の1人に当時77歳となるMCAの会長Wassermanという重鎮がいた。Wassermanといえばスピルバーグの師匠と言われる位だからハリウッドの長老である。そんな彼の持つMCA株式は簿価が低く、Wassermanは課税取引で株式を売却することに難色を示していた。当然、年齢的に株式を相続させることができれば、その時点で簿価がステップアップするという読みもあっただろう。ちなみにWassermanはこのディールの12年後となる2002年にビバリーヒルズで息を引き取っている。

そんなハリウッドの大物が非課税を望むケースでは、どのような手法を駆使してでも取引の彼の部分は非課税とするのが、会計事務所、弁護士事務所、投資銀行の使命となる。買収が成功すれば高いFeeを受け取ることになる投資銀行にしてみれば特にそうだろう。そこで、Wassermanが非課税で売却に参加できるよう、WassermanはMCA株式を新設法人に現物出資し、その替わりに優先株式を受け取っている。このイノベーティブなSection 351の適用で持分継続とか気にすることなくWassermanの部分は非課税とすることができているストラクチャーとしているところが特徴だ。この手法はその後1997年にSection 351の改正、すなわち(e)と(g)の追加、で同じ形では再現できなくなっているが、姿かたちを変え脈々と生き続けている。

となぜか又してもM&Aの話しに終始してしまったけど、次回こそ2017年に考えられる税法改正に関して。

Saturday, December 24, 2016

米国タックス行く年・来る年(3)税法改正とM&A

前回のポスティングではオバマ政権下の8年間で蓄積された反ビジネス悪規制のひとつと位置付けられる過少資本の最終規則、特にFunding規定の撤廃・廃案の可能性に関して触れた。今回は税法改正とそのM&Aに対する影響等に関して簡単に触れてみたい。

税法改正の経済活動に与える影響は一般に大きいが、特に税率とどのような所得が低税率の対象となるかというポイントはM&Aのストラクチャリング等、Corporate取引に大きな影響を与える。その相関関係は過去のDealの変遷を見てみると良く分かる。2001年~2003年のブッシュ減税(息子の方)でキャピタルゲインは15%課税となり、また初めて配当もキャピタルゲイン税率の対象となった。

2006年にClosingされたBoston ScientificによるGuidantの$27Bのメガディール。ビジネス的にはAOL・タイムワーナー以来の大型M&Aの失敗例として引き合いに出されることが多い不名誉なものだけど、この買収では、買収対価が60%株式+40%現金だった点が当時、税務業界では話題になった。買収は、上場企業の株式を買収する際の典型であるReverse Triangular Mergerという形で行われているが、税務上、この形が適格再編となるには対価の80%が株式で構成されていないといけない。敢えて60%しか株式としないことで、取引は課税取引となっている。ということは株主レベルで、受け取る対価のうち現金は40%しかないのに、全額課税となったことになる。対価を80%株式としないでも、例えばReverse Triangular Mergerの直後にBoston Scientificが子会社、またはSMLLCを設立してそこにターゲット法人であるGuidantを合併でもさせれば、今度はみなしForward Mergerとして適格にすることができただろうに、それもせず敢えて課税取引にしているように見える。

この頃から株主レベルの課税を気にしないM&Aのストラクチャーが結構目に付くようになる。2007年のTD BankによるCommerce Bankの買収に至っては、同じくReverse Triangular Mergerで株式対価がナンと75%という際どい課税取引だった。80%にしたら非課税の適格再編になるにもかかわらず、だ。ひとつの見方としては、株主レベルのキャピタルゲインが15%であれば、誰も余りそこは気にしないでDealをストラクチャーしてもいいレベルというものがある。課税取引なので、もちろん株式の税務簿価はステップアップする。更に株主の中にはTax-Exemptのペンションとか、また売り手そのものは課税されないパススルーのFundとかが多く含まれていた可能性もある。

2005年のSBCによるAT&Tの買収も興味深い。同じくReverse Triangular MergerでAT&Tを買収し、対価は株式100%だったのでそれ自体は非課税再編だが、買収直前にターゲット側のAT&Tは$1Bもの現金配当を実行している。しかもこの配当、買収がClosingすることが条件だったという。ターゲットの株主が内国法人であればDRDを使えるのでキャピタルゲインより好ましいことが多いが、旧来は個人の株主は同じ課税取引であれば配当よりもキャピタルゲインを好むというのが常識だった。それが2003年のブッシュ減税で配当が15%課税になったため、このようなストラクチャーが可能になったと考えることができる。

同じく2005年のVerizonによるMCIの買収は100%株式対価のForward Mergerだったんだけど、AT&Tと同様、売却直前にMCIにより現金配当が加味された取引だ。電話会社の買収は巨額の配当が付き物なんだろうか?Forward Mergerは課税となると法人および株主の双方で二重課税となるのでこの手の取引には再編そのものの適格性に影響がないよう気を使うだろう。いずれにしても配当の税率が低いからこそ可能なストラクチャーと言える。もちろん今でもキャピタルゲインの方がキャピタルロスと相殺できるとか、簿価をリカバーできるとか、メリットは残っているが、配当とキャピタルゲインとの税率差がなくなったことでストラクチャリングのオプションは増えたと言えるだろう。

この2003年のブッシュ減税は10年間で自動的に失効するきまりだったので(2001年の減税分はその後2年間延長されてそれらも2012年までは有効となっていた)そのまま放っておくと2012年にブッシュ現在が失効しそうになっていた。失効してしまうと税率が上がるばかりでなく、配当に対する優遇税制も失われる。15%が急に39.6%に跳ね上がることもあり得た訳だ。その直前には慌てて配当を出す企業が多かったが、結局ギリギリにブッシュ減税の多くは恒久化され、ハイエンダーと呼ばれる高所得者だけに減税効果がなくなる形で決着が付いた。

今回もし本当に法人税率が35%から15%(または20%)、また個人所得税も39.5%から33%に下がる、かつ3.8%のInvestment Taxも廃止されると株式市場、M&Aには追い風だろう。特にクリントンが当選していたら、税率は良くても現状維持、更に最悪なことに長期キャピタルゲインに適格となる保有期間が一年からナンと6年に延長というとんでもないアイディアだっただけに、株式市場やM&Aへの冷却効果は凄まじかっただろう。配当がキャピタルゲイン税率の対象となるための保有期間が60日なのに、売却をキャピタルゲインとするのに6年って言うのは不合理な話しだ。幸いにもこれらの税法は今では実現の可能性がなくなっている。

次回はもう少し、2017年に考えられる税法改正に関して。

米国タックス行く年・来る年(2)過少資本最終規則はそのうち廃案(?)

前回から2016年後半の米国税務的な展開のまとめと2017年に注目すべき動向に関して書き始めたけど、最初に触れておきたいのが過少資本最終規則の今後の末路。わずか2ヶ月チョッと前に鳴り物入りで発行された規則がそんなに簡単に廃案になってしまうことは現実的にあり得るだろうか?前回も書いたけど個人的には十分にあり得ると思っている。

文書化要件は2018年の新規借入から要求されるだけに、2017年にもし最終規則が廃案になってしまうと、日の目を見る前に消滅してしまうことになる。ただ、仮に廃案になったとしても、規則の爪痕は若干残るのも間違いない。すなわち、関連者間の借入にかかわる文書化に関しては従来は指針が何もなかっただけに、1.385-2に規定される詳細な規則は、仮に最終規則が廃案になってもCommon Lawを補足するような位置付けとして、文書化のベンチマークを設定した形で生き続けていくだろう。規則案時代から強調されている通り、文書化要件は決して新たなものではなく、従来から守られるべき模範的なプラクティスというのが財務省のスタンスだ。ここは確かにその通りで、従来から関連者間では規律に欠ける借入が横行していた点は否めない。ただ、規則の一部としてではなくCommon Lawの補足のような形で生き残る場合には、最終規則の文書化要件のように買掛金とか未払金とかの流動負債を含む全ての借入に関して文書化が必要だったり、実態にかかわらず文書化がないとEquityになったり、とかいう極端な適用は実質無くなることが期待される。

文書化要件はもしかしたらそのまま規則として生き残るかもしれないが、真っ先に廃案のターゲットとなるのは挑発的な内容の使途・Funding規定だろう。こちらは2016年4月4日以降の借入およびFunding規定を誘発する分配等の3つの取引に対して既に適用が開始されている。ただし、移行措置期間が設けられており、4月4日以降の取引で規則に基づきEquityとなってしまう借入が存在する場合も、実質2017年1月20日からEquity扱いが開始される。その扱いが嫌ならそれまでにRecap等で是正措置を取りなさい、ということなんだけど、この1月20日というのはナント奇しくもトランプ大統領の就任式がDCで行われる日だ。最終規則の移行措置期間は、連邦政府の規則等が記載される連邦官報(Federal Register)に最終規則が公表されてから90日と規定されている。もしかして選挙結果が分からなかった10月当時、最悪トランプが勝利しても、何とか就任式までにはFunding規定位は法的な効果を持たせたいと願い、90日を逆算して規則の発表を急いだと思うのは考え過ぎだろうか?深遠な世界で、そんなのは財務省の先を読む力を買いかぶり過ぎだと言われてしまえばそれまでだけど、余りに偶然だ。

さて、規則の廃案だけど、具体的なメカニズムは大別すると2つ。まずは議会が「Congressional Review Act(5 U.S.C. § 801-808)」(CRA)という法律に基き行政機関である財務省が策定した規則を取り消す手法がある。このCRA、近年余り登場しなかったが最近またメディアとかで見かけるようになったNewt Gingrichの「Contract with America」(懐かしい響き・・)の一環で1996年に制定された法律だ。

このCRAで規則を廃案とするには下院・上院双方の決議が必要となる。最高裁が下した憲法上の要件で、CRAも他の連邦法と同様に大統領に拒否権を持たせる必要があり、そのためねじれ現象下でCRAを利用するのは難しく滅多に成功しない。行政機関の制定する規則はほぼ常に現行の政権は指示するからだ。2001年にブッシュ政権(息子の方)が大統領になって直ぐに、労働省の職業安全衛生局が制定した規則を議会がCRAで廃案としたが、その際も大統領がクリントンから変わって直後の動きだった。

CRAで規則を廃案とするには、規則が最終化してから議会開会日ベースで60日以内の決議が必要となる。このタイミング的な意味で、オバマ政権はできるだで現政権下で議会の開会が60日に足るよう、したがって議会がCRAで廃案を決議してもオバマ大統領が拒否権を発動できるよう、規則を通したかっただろうが、10月以降の開会日は上下院で異なるけどザックリと月10日前後のペースなので、過少資本の最終規則はとても間に合わっていない。そこで、ブッシュ政権誕生時と同様にいくつかターゲットとされる規則のひとつとなっている。

そもそも議会は過少資本規則の最終化に最後まで反対していたので、この流れは十分に現実味がある。議会は財務省に再三に亘り規則を現状の形で最終化しないように文書で抗議しており、それらの忠告を無視する形で一方的にしかも短期間に規則が最終化されたことでかなり怒っている。下院歳入委員会長自らがトランプ政権に最終規則の撤回を求める信書を送っているくらいの勢いだ。米国議会って納税者の味方で結構頼もしい。

CRAで廃案となる規則は、対象となる規則そのものが無効となるばかりでなく、将来的に財務省は同様の規則を策定することができなくなる。ただ、議会はいつでもSection 385自体を修正できるので、条文そのものを変えて別のスコープで財務省に規則策定の権利を付与することはいつでもできる。

2つ目の方法に、議会による法律ではなく、行政機関そのものに規則を撤回される方法もある。ビジネスに重荷となる規則はオバマ政権下で多く制定されているが、それら数百の規則を一気に撤回する方向が模索されている。その中には過少資本の最終規則に加え、FATCAの規則も含まれている。財務省自らによる撤回は、規則を策定する手続きと同様の手続きで進める必要がある。すなわち、規則策定案とかその理由を公表するところから始まる。撤回の理由は最終化前に財務省に送られている数多くの経済界のコメントを参照すればそこに既に大量の理由を見出すことが可能だろうから、理由には事欠かないはず。実際にこの手の手続きを進めるのは財務省次官補レベルとなることから、そのポジションに実際に選任された役人が登場する3月以前の撤回は難しいかもしれない。

議会または財務省が速攻で廃案としない場合にも、今後の税法改正の流れで、過少資本税制そのものに自然と意味がなくなる可能性も大だ。下院のBlue Print(改正案)によると現金ベースの課税に移行する一環で支払利息の損金算入そのものが撤廃される可能性もあり、そうなれば現状の「何が借入で何がEquityか」という面倒な問題は存在しなくなる。この点は従来の税法に対する批判のひとつで、そもそも税法が借入を有利に扱うから(MMセオリーにも繋がる)みんなが借入を好むのだ、という至極最もな分かりやすい議論だ。

さらに元々、過少資本の最終規則はInversionを念頭に策定されていたはずだが、米国法人税がもし15%~20%になれば、そして更にテリトリアル課税となれば、誰も慌ててInversionなどしなくなるだろう。Inversionしていない最初からの外国企業も米国の課税所得を圧縮する必要は無くなり、誰もDebt Pushdownとか考えなくなるはず。むしろ、逆にどうやって海外から米国に所得を持ってくるかというのがプラニングの焦点となる。前から共和党が言っている通り、これがInversionを無意味にする唯一の方法だ。いくら網を掛けても、北風が強く吹いても誰もコートを脱がないのと一緒でInversionはなくならない。そもそもInversionをする企業は別に財務省を困らせようと思って実行している訳ではなく、世界の競争相手と競合するのに米国企業を頂点とする企業形態では税法的に余りに不利だから実行する訳で、その意味でもMNCに対して使い勝手のいい税法とすることがInversionを絶つ唯一の合理的な解決策となる。

このように過少資本の規則を取り巻く今日の環境は公表時点の10月13日とは余りにかけ離れていて、その廃案は、特に使途・Funding規定に関して、時間の問題のような気がする。

次回はトランプ政権誕生と今後の米国税法の動向に関して。

Friday, December 23, 2016

米国タックス行く年・来る年(1)過少資本最終規則はそのうち廃案(?)

2016年も早くも12月後半となってしまったけど、米国税務的にはいろいろと忙しい一年だった。トランプ政権の誕生で2017年は更にDisruptiveな一年となること確実だ。Disruptiveっていうのは最近ではPositiveな表現なようで、テクノロジーその他の進化が激しい中、Status Quoは認められないってことのようだ。

今回から数回、行く年来る年ということで2016年のハイライトそして2017年に注目のトレンドとかを個人的な視点からまとめてみたい。まず今回は2016年後半のおさらいから。

2017年から全くフォーカスの異なる新政権ということもあり、現財務省は2016年後半のこの期に及んで乱発的にかなりの数の規則を発行しまくっている。ここ2ヶ月位のスパンで見ても発行された規則の数、またその重要性の高さは凄まじい。さながらオバマ政権の花火大会終了直前のクライマックス連発打ち上げ花火のよう。花火と言えば、旧正月の香港ビクトリアハーバーのやつとか、NYCの独立記念日のも豪快でいいし、最近でこそ海外の花火もハイテクになったけど、やはり夏の河川敷きとかで企画される昔からの日本の花火大会のものが情緒深い。古くからの和火の影響で色が豊富で繊細さがあり球状で掛け星、と味がある。小さかった頃、多摩川大橋の辺でやってた花火大会をうちの2階にあった洗濯物干し場のバルコニーみたいなところから「アイスキャンディー」(米国で言うところのPopsicleです)食べながら見た日が懐かしい。

さて、ここ2~3ヶ月クライマックス花火シリーズで発行された規則を列挙してみるとその内容の充実振りが分かるだろう。過少資本の最終規則(Section 367)は今更言うまでもなく、12月にはKiller B系の取引に更に網をかけクロスボーダーの三角合併の扱いに大きな影響を与えるNotice(2016-73)、USドル以外の外貨を機能通貨としている支店等のQBUの為替差損益の認識を規定した暫定規則(Section 987)、スピンオフ+適格組織再編である「Morris Trust」取引に対する制限の更なる厳格化(Section 355)、Foreign Goodwillを非課税で外国法人に移管する適格出資や組織再編のシャットダウン(Section 367(d))、買収の合意に達しておきながらもっといいDeal(Superior Proposal)が出てきたりしてFiduciary Outに基いてClosingしない際にターゲットが買収を断念する側に支払う「Break Up Fee」の扱いに対する新たな指針(Section 1234A)、FTCを算定する際に海外の資産を米国で課税所得を認識することなくステップアップさせて人工的にHigh Tax Poolを作り出すCovered Asset Acquisition規則(Section 901(m))、デルタワンその他のEquityオプションに基く「配当」を源泉税対象とする規則(Section 871(m))、最近のポスティングで触れたホットドッフスタンドのスピンオフ規制(Section 355)など。

凄いラインアップだ。これをひとつひとつ解説など試みようものなら2017年が終わってしまいそうだ。オバマ政権の過剰規制は高税率と並び、ビジネス界で不評だったのでその意味ではトランプ政権誕生のひとつの理由となったとも言える。トランプ政権はオバマケア、ドッドフランクに代表されるこれら「悪法」90%を政権誕生100日以内に廃案にすると言ってくれていて頼もしい。

税法的には廃案を望む声が一番高いのはもちろんSection 385の過少資本最終規則だろう。個人的な予想だけど、過少資本最終規則は今の形では夏まで持たないのではないか、と推測(期待?)している。もしかしたらSection 1.385-2の文書化要件はそのまま残るかもしれないけど、Section 1.385-3の使途・Funding規定の部分はSection 385下で財務省にあんな規則を策定する権利が付与されているかどうか自体も怪しい上に、その内容たるやルービックキューブの色合わせをさせられているように膨大な数のピースを繋ぎ合わせて扱いを検討しないといけないとんでもない代物だ。518ページ読破した個人的にはそのまま在ってくれてアドバイスするのも知的な謎解きという観点だけからは悪くないかもしれないけど(Short-term Debt Instrumentの定義のところは除いて・・)、実際のビジネスの局面であのルールに対応させられるのは米国への投資意欲減となること間違いなく好ましくないほどこの上ない。

では本当にこんな発行ホヤホヤな規則を簡単に廃案にすることは現実的だろうか?その実現性に関する法的なフレームワークは次回。

Thursday, November 10, 2016

トランプ政権と米国タックス

11月8日の米国大統領選挙は結局、保守派の勝利でトランプ政権が誕生した。日本のメディアなんか見ると全くの予想外な結果で、しかも世の中終わってしまうかのような勢いの報道もあったりして実際の米国での感覚とは少し温度差がある感じ。

米国のメディアも直前までクリントン有利って報道し続けていたけど、実際のお茶の間感覚では必ずしもそうではなかったと思う。トランプが有利とまでは言わないまでも、どっちが当選しても失望するタイプの選択だっただけに投票してみるまで国民の真意は分からなかった。まさしく良くも悪くも民主主義。ちなみに米国大統領選挙の実施日は11月最初の月曜日の次の火曜日って決められているので算数的に11月8日っていうのは可能な日程では一番遅い。それだけ余計にサスペンスが多かったということになる。

選挙結果を目の前に各自の反応はまちまちだけど、これで世の中終わってしまうかと言うともちろんそんなことはなくて、人間の社会は放っておくと独裁者や暴政の手に落ちることが歴史上明らかなので、米国の憲法にはそうならないようできるだけの知恵・安全策が反映されている。なんと言っても徹底した三権分立。日本も一応三権分立だけど、実態として米国では本当により機能していて、行政機関が議会から権限を委譲されることなく法律を策定するようなことはない。なので、大統領府にいるトランプ政権が特定の宗教の人を入国させないとかいう法律を策定できる訳でもなく、仮に議会がそのような法律を制定しても裁判所が憲法に照らし合わせて合法性を判断する。なので候補者として行っていた過激な演出も法の前には実行困難なものも多いことになる。ただ、そんなことはトランプ陣営だって聞いている方だって最初から百も承知の上でのパフォーマンスだったと言える。

米国の大統領選挙の仕組みは他の国の選挙制度と比べるとチョッと分かり難い。知ってる人も多いと思うけど、憲法上はElectoral Collegeと呼ばれる僅か538人の「選挙人グループ」が大統領を選ぶと規定されており、国民全員に憲法上投票権がある訳ではない。この538人の選挙人は下院議員数(ザックリと州の人口に基いて配賦された数)と上院議員数(人口にかかわらず各州2名)の人数分各州に割り当てられている。で、この選挙人がどう投票するかは各州の法律(連邦憲法ではない)に規定されていて、原則は各州の得票数に準じて勝った政党にその州の全選挙人が投票するとされている。ただ、これも絶対的なものではなく、2州は州単位ではなくより小さな地区(District)の結果に基いたり、歴史的に稀ではあるけど、州の結果に背いた投票をした選挙人も居る。これらの複雑な規定も基本的には三権分立と同じ目的で、権力の集中、暴政の誕生を防ぐのが元々の狙いだろう。

なのでニュースとかで得票数ではクリントンが勝っていたと言っても制度上意味がない。ゴアとブッシュ(JR)の最初のShowdownでも、得票数ではゴア、選挙人数ではブッシュと、同じことが起こっていた。米国大統領選挙に関しては選挙人の得票こそが全てとなる。選挙人による投票は11月の国民投票とは別のもので、来年の1月6日に実施される。

米国でもリベラルなNYCとかではかなりガッカリしている人たちも多い。小学校のようなレベルでも朝礼で心配しないようにみたいな話しが先生からあったり、中高校生だと学校で泣き出す子がいたり、精神的にショックなケースに備えて精神科のカウンセラーが学校にしばらく常駐したり、と確かに米国でも従来の大統領選挙では考えられない反応が見られる。

ではどうしてこういうことになったんだろうか。米国ではこの8年間、「連邦」政府がヘルスケア等にまで手を出して(おそらく本来は違憲)ますます巨大化、それに伴って増税という建国・憲法の趣旨から遠ざかり、サンダースのような社会主義者に近い候補まで台頭していた。で、そんなトレンドをリバースしたいと願っている保守層は僕の回りにも実際には結構いた。Taxed Enough Alreadyとボストン茶会をかけた「Tea Party」とかが有名だ。投票とは余り関係ないと思うけど、Section 385の財務省規則にしてもかなり乱暴だ。

そんな保守層は結構居るなとは肌で感じていた、とは言えやはり共和党候補がトランプというのは抵抗も大きかったと思う。一方でクリントンも人格的な意味での信用・人望はおそらく日本で感じられるよりも相当低く、結局のところ候補者個人のレベルだとどっちが当選してもガッカリという前代未聞の厳しい選択となっていた。

で、候補者が2人ともダメなら、せめて党是的なイデオロギーで「Minimum Federal Government」「Maximum Individual Freedom」の実現に少しでも近い共和党にかけようと思った保守的な市民は少なからず居たのではないだろうか。マスメディアで報道されがちな「無知で貧しい白人」の票もあったのは数字的にそうなんだろうけど、それだけだったらメディアの予想があそこまで外れるのもおかしいし、またあれだけの得票、Sweepは説明し難い。

隠れトランプ、すなわち政策的には減税、小さな連邦政府を達成したいが人前でトランプ支持と公言するのはちょっと憚れるみないな層が相当居たのではないだろうか。それはアメリカに住んでいて税金を支払っていれば良く分かる。NYC税とかSE Taxとか入れるとオバマ政権下では実効税率が50%を超えているような状況もあり得るので「Taxed Enough Already」は本当にその通り。にもかかわらずクリントン政権になって、もっと課税しないと不公平みないな流れは本来の米国的、すなわち自己責任の「Live Free or Die」的なパイオニア精神とは程遠いように感じている人は多い。

今回の選挙結果、両院も共和党が制したことからねじれ状態から開放され、ようやく抜本的な税法改正、減税の実現が現実のものとなる可能性が大だ。トランプ案は法人税(というかビジネスに対する課税でパススルーも含む?)はナンと15%とタックスヘイブンの域に突入する超低税率を提案しているし、個人所得税トップレートも現行の39.6%から33%に低減しさらに累進税率区分(Bracket)を単純な3つのブラケットにまとめるとしている。かなり大胆。いくらSupply Side Economicsとは言え、余りの歳入減となりそうで財政大丈夫?って思うけど現実のものとなったら凄い。特に15%の法人税は低い。繰延税金資産とか持ってるところは資産が目減りするので戦々恐々かも?

また、小さい連邦政府の標的#1で違憲に近いオバマケアの撤廃はどうだろうか。余りに複雑な法律なので即撤廃は難しいようにも思えて、トランプが公約している「初日に即廃案」は現実的には難しいだろう。でも大きな改正が入ることはまず間違いない。

懸念の外交、通商等は不明な点が多いけど回りにブレーンが付いて何とか現実的な方向に行くことを願いたい。Global Economyを反転することもできないし、させたところで米国の製造業の競争力が増す訳でもないとう点は誰かが猫ちゃんの首に鈴を付ける覚悟で進言してあげないとね。

Saturday, October 15, 2016

米国過少資本税制規則とうとう最終化

結局みんなが言ってた通りだった。とても最終化に耐え得るとは思えない挑発的かつ越権行為的な規定満載の過少資本税制規則案が、緩和措置は追加されたとは言え、Funding規定とか入ったまま骨子的には規則案を踏襲する形で10月13日に最終化された。規則「案」と異なり最終規則なので規定される発効日より法的な効果を持つ。

まず驚かされるのがそのボリューム。規則案は前文含めて120ページで、あれも読むのに時間掛かったけど、今回はナント実に518ページ!その辺の小説より長い。

それにしてもこれだけ最終化が待たれていた規則も近年珍しいだろう。まるでBeatlesとかの超一流アーティストの熱狂的ファンが次のアルバム発売を待っているように、税務業界一同、財務省高官の発言に一喜一憂して、その内容を垣間見ようと必死だった。 Beatlesは僕が幼少の頃には解散してしまったが、友達のお兄さんが詳しくて、最後のLPが出るらしいとズッと騒いでいたのを覚えている。お兄さん曰く、BeatlesのJohn LennonがYokoって日本人に騙されてBeatlesが解散してしまうってことだった。未だそんなに物事シンプルでないと理解する前の歳だったので、確かにちょっと魔女みたいなYokoが悪者に見えていた。で、待ったあげくにLet It BeというLPが発売された。そのお兄さんが手にした新品のレコードのジャケットからはなんとも言えないいい匂いがしてたのがまるで昨日のよう。昔のLPには必ずジャケットにタスキみたいなのが付いてて変な日本語タイトルみたいなのが書いてあったけど、そこに「さようならビートルズ。最後の云々・・」みたいに書いてあったのを今でも鮮明に覚えている。ちなみにBeatlesと言えば、バンド前期にツアーしてた時代のドキュメンタリーフィルムが最近公開されている。映像はほぼ見たことあるもののコレクションだけど、音質が格段に改善されていて結構良かった。マイナーな劇場でしかやってなくて、Audienceの年齢が高いけど(自分も・・)、好きな人にはお勧め。それにしても彼らはいつ見ても格好いい。

最終規則発行の「X-Day」は最後まで極秘扱いだった。当初はLabor Day(9月前半)と言われ、それが過ぎると10月1日と言われていた。でも10月1日って土曜日だけど・・、って不思議だった。案の定10月1日もHoaxで、そのまま何もなく過ぎそうだったんだけど、その時点で規則は財務省から大統領府にある行政管理予算局(OMB)の内部局であるOffice of Information and Regulatory Affairs(OIRA)に回されるという新局面を向えていた。

このOIRA(オイラ?)、情報規制局とでも訳すのがいいかもしれないけど、各省庁が発行する規則をレビューして場合によっては差し戻したりするところ。基本的に90日以内にレビューを終えるということになっている。OIRAに規則が回されたということは財務省側としては規則を最終化したという意味を持ち、その時点で規則は90日以内に最終化される、または差し戻されて長期化、等の可能性があり、いろんな展開を深読みする者が後を絶たず戦々恐々な状況となった。

でも結果としてはOIRAは数日でレビューを完了したことになる。518ページの長編を。OMBとかOIRAとか言っても所詮ホワイトハウスに属するということから最終的に民主党として選挙前に何が何でも最終規則を発行するというポリシーに影響されたのかも。

で、最終規則だけど、挑戦的な規則案の内容に対して納税者側から数多くの「Thoughtful」なコメントが寄せられました、と財務省は言っている。そして、こららのコメントに対しては「CarefullyにConsider」したとのこと。メジャーなコメントに対しては財務省側の反応・対応が記されている。余りに読み応えがある長編力作なので今後時間を掛けて解析していかないといけないけど、まずは規則案からの代表的な変更点に関して取り急ぎ触れてみたい。他にも細かい変更等あるのであくまでも速報的に理解して頂きたく。

まず一番目に付いたのは文書化要件の適用開始時期の延期。規則案では規則最終化時点以降のローンが対象とされていたけど、これが最終規則では2018年1月1日に延期。更に規則案では融資時点から30日以内に同時文書化することが義務付けられていたけど、最終規則では申告書提出までに用意されていれば同時文書化の要件を満たすとされる。まるで移転価格の文書化だけど、申告タイミングになるとどうしても申告期限ギリギリに用意されるような慣習となり、Busy Seasonの負荷がますます高まりそうでチョッと心配。

また、規則案では文書化がないと問答無用にローンがEquityになると規定されていたが、ここも若干緩和され、グループが一般的に文書化要件を守っているのであれば、個々のローンに文書化がされてなくても、即Equityとなるのではなく、反証可能な推定事実としてEquity扱いとされる。すなわち、推定事実は納税者がConvincingな文書以外の事実関係をもって反証可能ということだ。ただ、これは文書化を無視しても大丈夫ということではなく、あくまでも通常は文書化要件を守っている納税者にのみ与えられるBreakとなる。

次に、最終規則では規則の対象となるローンが米国の事業主体が借り手となるケースに限定された。規則案では80%の資本または議決権で結ばれる全世界グループの事業体間の全てのローンが対象とされていたが、これは例えば、UKとオランダとか、シンガポールからマレーシア、とか米国の支払利息とは一切関係ない局面にも厳密に言えば規則が適用されることを意味していた。となると、これらのローンに関して米国規則に基づく文書化をする者はいないと思われることから、それらのローンは全て米国税法の目から見るとEquityとなる。「米国の納税者じゃないから関係ないじゃん」って思うかもしれないけど、実はFunding規定等の適用において局面によってはとんでもない結果となることがあり得た。ほぼ実務的に対応不可能と考えられていただけに正式に対応しなくて良くなったのは一安心。

また、意外だったのはひとつのローンを部分的にEquity、部分的に借入れと扱う権利を明確にしていた規則案は撤廃され、その権限は将来の検討に委ねるとしていること。このBifurcation(二分化)規定はかなりその意味が詳細に説明されていたので、あっさりと撤回されてしまったのは、やはり、例えば$100Mのローンのどの部分をIRSがEquityと認定するのかっていうのは余りに議論のあり過ぎる事実認定だということだろう。

規則案の中でも一番評判が悪く、かつSection 385で議会が財務省に与えている権限を超えていると考えられるFunding規定はそのまま最終規則でも生き延びている。ただ、配当に関しては2016年4月4日(規則案が公表された日)以降かつEGグループの一員であった期間のE&Pを超えなければ、それを借入れでファイナンスしていても問題がないとされる。規則案に規定されていたFunding規定の考え方をまともに適用すると、ひとつのローンがFunding規定に基づきEquityとなる局面で、そのローンの返済がRedemption(株式償還)となり、グループ間のRedemptionは基本Distributionとなることから、それが他のローンをEquityに変える、というドミノ効果があると批判されていた。最終規則ではFunding規定下でこのドミノ効果は反復的な適用はない点が明確にされている(一度はドミノ的となるがそれが終了したらその後はない)。

これらの緩和策を講じたことで、規則の適用対象となる納税者、取引は「Significant」に減りました、と財務省は胸を張るが、真偽のほどは「Only time will Tell」。

という訳で、ここ5ヶ月のローラーコースター的な展開は終わり、今後は最終規則の分析、対応アクションという新フェーズに移行していく。

ちなみに規則案が出た後の日本企業と外国企業の反応の温度差も興味深かった。日本企業以外のMNCの反応は新規則下で今後どのようにアーニングス・ストリッピングをしていこうか、というものだったが、従来から「きちんと?」科学的にアーニングス・ストリッピングを実行していない日本企業は文書化にどう対応するかという点が主たるフォーカスだった。Base ErosionしていないのにBEPS対応に追われる日本企業の構図とそっくり。日本では財務省がCFC課税を強化すると言ってるけど、米国企業と比べるとCFCを悪用しているケースは極端に少ないように思う。ただでさえ国際税務室のリソース確保に苦労している日本のMNC。今後どのように国際課税を管理していくかは大きなチャレンジだろう。