今日は連邦最高裁(SCOTUS)の主判事John Robertsの誕生日なんで敬意を表して(Inbound Fから脱線して)最高裁の話し!って勢いよく書き始めたのが1月27日だったんだけど、書き終わらなくてポスティングの今日には既に誕生日過ぎちゃいました。1月27日はモーツァルトの誕生日でもあるよね!フィガロの結婚聴いてフルーツタルトで時を超えて誕生日を祝いました。Robertsは1955年生まれだけど口頭弁論聞くと相変わらず頭脳明晰で議事進行も迫力満点で凄いね。トランプは1946年だから更に先輩だけど、彼らどんな遺伝子持って生まれたんだろうね。う~ん、Robertsは連邦憲法良く知ってるよね(SCOTUSの主判事だらか当たり前だね)。
で、この一か月ほど「最高裁はいつトランプ関税に関する判決を公表するの?」とか「私も還付もらえる?」系の質問が後を絶たなかった。メディアではなぜか1月9日とか、1月14日に判決が出る、とか根拠もない怪情報が出回ったりしてたんで余計に混乱するよね。
「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」
この関税のケース、正確には「LEARNING RESOURCES, INC., ET AL., Petitioners, v. DONALD J. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL., Respondents. 」と「DONALD J. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL., Petitioners, v. V.O.S. SELECTIONS, INC., ET AL.,
Respondents」の2つのケース(No. 24-1287とNo. 25-250)を共同訴訟化(Consolidated)したものだけど一般には簡単に「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」って呼ばれる。昨年11月5日の口頭弁論もRobertsが今日の弁論は「Learning Resources v. Trump, and the consolidated case」に関してっていうオープニングで始まってた。「Et al」っていうのは「その他」っていうことで他にも当事者が居る際に用いられる。「LEARNING RESOURCES, INC.」は、もともとDC Circuit控訴院の判決を不服として連邦政府側がSCOTUSに上告しているもので、もう一つの「V.O.S. SELECTIONS, INC」はFederal Circuit控訴院の判決に上告しているもの。双方ともに一審、控訴審共に原告が勝利している。法的な争点は双方同じ(後述のSubject-Matter Jurisdictionの件を除く)。
登場人物
2つのケースがConsolidateされてたり、被告数が多いんで当事者が多くて登場人物がチョッとConfusingだけど、最初のケースの原告で上告を受けて立ってるのは「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」。この2社、教材等のサプライヤーで関税で仕入コストが大きく上がり取り返しのつかない経済的な被害を受けたということ。Common Lawの裁判は被害を受けたものが金銭的な存在賠償を求めて起こすのが原則だから、被害を受けない(Standingがない)と訴訟を持ち込むことはできない。もう一方の「V.O.S. SELECTIONS, INC」ケースの方の原告は「V.O.S. Selections, Inc.」「Plastic Services and Products, LLC (商号 Genova Pipe)」、「MicroKits, LLC」、「FishUSA Inc.」、そして「Terry Precision Cycling LLC」の5社。さらにややこしいことに上告を受けて立つ者、すなわち裁判の対象となっている関税は憲法違反と主張する側、にはオレゴン、アリゾナ、コロラド、コネチカット、デラウェア、イリノイ、メイン、ミネソタ、ネバダ、ニューメキシコ、ニューヨーク、バモントの12州が含まれてる。
元々の被告で上告しているのは主権としての「the United States of America」、トランプ大統領、Department of Homeland Security (DHS)、 Kristi Noem (DHS長官)、Customs and Border Protection (CBP)、Rodney S. Scott (CBP長官)、USTR、Jamieson Greer通商代表、Howard W. Lutnick (商務長官)、加えて訴訟の被告には 財務省、Scott Bessent (財務長官)、商務省も含まれていた。
訴訟の争点
最初の争点は「The International Emergency Economic Powers Act (IEEPA)で国家緊急時に大統領に付与されている権限に関税を課すという行為が含まれているか」っていう点。これは議会が立法したIEEPAっていう法律に含まれる条文解釈(Statute Interpretation)の問題と言え、僕たちが日常、Internal Revenue Codeの条文が意図している意味が何かって格闘しているの同じ検討になる。次に仮にIEEPA による大統領への権限付与に関税を課す権利が含まれている場合、法律のその部分は立法行為を行政府に権限移譲することを禁じている連邦憲法に違反しているか」という点。憲法解釈の争点で主に「Non-delegation条項」(これはその名の通り)やCommon Lawの「Major Questions原則」(Majorな立法Questionは名言がない限り権限移譲されないっていう趣旨の憲法論)の視点での検討になる。最後の争点は法的管轄権にかかわるテクニカルなもので「Learning Resources, Inc.」の一審だった地方裁に法的管轄権(Subject-Matter Jurisdiction)があったかどうか、すなわちそもそも審議をする権限を持っていたかっていう点。この最後の点はこの手の連邦政府を相手取っての訴訟はCourt of International Tradeに持ち込まないとダメで通常の地方裁には管轄権がないという連邦政府側の議論で、一般にはそれは正しいって理解されているけど争点になっているのはIEEPAでそもそも関税を課す権利がないという話しになると地方裁にも管轄があるのではないかっていようなポイント。この点は口頭弁論ではハイライトされてなかった印象があるんでこれ以上は触れない。
訴訟の「争点ではない」ポイント
最高裁は司法府だから、関税を課すという政策が賢明なものか、とか効果があるかというような点には口を出さない。これらは憲法で認められる範囲で立法府の議会や行政府・大統領が決定すること。最高裁に判断が求められているのはあくまでも純粋に法的なもので、最高裁の審議は関税という政策を支持する、またはしないという視点ではない。これは他の最高裁のメジャーな判例も同じで例えば、死刑、拳銃等の武器保持権、Abortionとかメディア報道はとかく「最高裁が死刑容認…」とか「Abortion禁止…」みたいにフレームされることが多いけど、そうではなくこれらの権利が憲法的にどのように解釈され、是非があるのであれば誰が(Abortionに関しては主権を持つ市民が州の選挙・立法を通じて決めるべき)という判断をしていることになる。
また最高裁で審議の対象となってるのはIEEPAに基づく大統領権限だけで、他の法律に基づく関税、例えば232とか301とかに基づく関税には一切影響はない。仮に別の訴訟でも起これば別だけど、232や301はIEEPAと異なり関税を課す権利を大統領に明確に付与しており、また一定の限定的な範囲での権利と考えられることから今回、IEEPAに関して審議されている争点は余りないと言える。
口頭弁論
去年の11月5日10時04分に始まった口頭弁論はスケジュールされた1時間20分(原告・被告各々40分)をもちろん大幅に超過して3時間近くを要した。9人の判事による多くの質問が双方に寄せられた。
長いやり取りを詳細に説明するのは紙面の関係で不可能だけど、口頭弁論聞き終わった個人的なImpressionは次のような感じ。最初の争点であるIEEPAの大統領に対する権限付与に関税が含まれるかっていう点は条文の文言の「regulate… importation」のRegulateに関税を課すという行為が含まれれるかっていう点。連邦政府の弁護士(司法省のSolicitor GeneralであるJOHN SAUERが代表)は簡単に言ってしまえば輸入に対する「Regulate」の主たるツールは関税なのだから、この権利は含まれてないという解釈は不合理と言うもの。これに対して原告側の主張は関税を課す権利を与えている他の法律は明確に関税に触れており、関税に言及がないIEEPAでは関税を課す権利は付与されていないと解釈すべきというもの。IEEPAで認められる輸入の「Regulate」はQuota、Embargo、輸入Licenseなどという主張。IEEPAではこれらの権利を付与していると同時に最後に「or otherwise 」と記載されてて、条文解釈的にこのOtherwiseが意味する権限の範囲も議論されていた。またIEEPAを理由に関税を課した例はないという点も指摘していた。それに対して連邦政府はIEEPAの前身である1917年の「Trading with the Enemy Act (TWEA)」(法名がなまなましいね。Running with the Devilみたい)はIEEPA同様に「Regulate」っていう用語を使用してたけど、TWEA基づきニクソン大統領が平時に課した関税をCCPA(Federal Circuitの前身みたいな裁判所)が権限の範囲内とした例を持ち出して防御していた。ちなみにこのニクソンのケースの原告は「Yoshida International Inc.」っていうジッパーを日本から輸入していた日本企業だ。1975年のケース。1971年と言えば前回触れたBretton Woodsが崩壊した頃で、この関税も米国のMonetaryシステムを外国の侵略から守るみたいな理由付けだったらしい。なんかいつも変わんないね。
原告のCollateral議論、すなわち仮にIEEPAで関税を課す権利が大統領に付与されているという判断になる場合、その付与自体が憲法のNon-delegation条項違反というもの。Non-delegationはMajor Question原則とほぼ並行して議論されてたんでこの二つは正確に区分し難かったけど、連邦政府の言い分はNon-delegationは外交政策分野には適用はないというもの。一方、原告側は関税は課税権(Taxing Rights)であり、行政府に権限移譲は認められない立法府の権限の最たるものというもの。IEEPAに基づく関税が課税かどうかっていう点のやり取りは結構面白くて、連邦政府は「IEEPAを基に課している関税の目的は他国の通商や薬物にかかわる行動を制御」するもので「歳入はあくまで付随効果…」という苦しい抗弁。トランプは日ごろから関税でTrillion Dollarの歳入があるって豪語しているし、実際に関税で財政赤字(Deficit)は減っている。
判事の反応
リベラル派のSotomayer、Kagan、Jacksonは原告指示だろう。おそらくNon-delegationの複雑な連邦憲法違反という理由よりも条文解釈的にIEEPAのRegulateには関税は含まれてないっていうOpinionを書くんじゃないだろうか。他の憲法厳格主義派の6人だけど仮にThomasとAlitoが連邦政府の主張を支持とすると、他の4人のOpinionがどうなるかで決まる。この6人はLoper Bright(Chevron原則撤廃)やWest Virginia v. EPA(Major Questions原則を強固に)等でも表れている通り通常から行政府が大きくなるのを嫌う。口頭弁論でも連邦政府側のポジションに余り同調を示している様子はうかがえず残り4人のうち3人がIEEPAに基づく関税を支持するとはチョッと考え難かった。ただ最終的には判決を読むまで分かんないからね。
救済法・Remedy
仮にIEEPAに基づく関税が認められない場合、次に原告にどんな救済が認められるかっていう点が見もの。ちなみに今回、最高裁で審議されてるこのケースはClass Actionじゃないから訴訟という手続きの性格から原則、原告2+5社(口頭弁論では原告は5社って言及されてた)に対する損害賠償の話し。最高裁が何らかの救済を認める場合、自動的に他の輸入者に同様の救済があるということでは必ずしもない。既に地方裁やCITにIEEPAに基づく関税が不法と言う訴訟を持ち込んでいる他の原告は、地方裁等は最高裁の判決に準じた判決を出す義務があるので最高裁で不法という判決となる場合には他のLower Courtsの訴訟に関してもSummary Judgment的に原告が勝利し、同様の救済があることになるだと思う。ただし、口頭弁論でも少し触れられてたけど原告以外の輸入者に関しては全く異なる法源に基づく込み入った手続きになり実務的に還付作業は困難ではないかって議論されていた。
主判事のRobertsは憲法厳格主義であると同時にPragmaticなところがあり、オバマケアを違憲とすると医療保険市場が大混乱すると予想されたので5対4のCasting Vote的にオバマケアは「Taxing Rights」だから議会による立法は憲法違反ではないという詭弁(?)でオバマケアを違憲判決から救った実績がある。今回も同様にIEEPAに基づく関税は不法というSubstantiveな判断に至った上で、救済策としては何らかの実務的に対応可能な方法を提示するんじゃないだろうか。もちろんそうなるかどうかは分かんないし、どんな対応策があり得るか検討もつかないけど、例えば議会の立法に委ねる、または不法という位置づけを判決後のProspectiveな適用にするっていう可能性もあるかもね。
判決はいつ?
最高裁の手続きとして、口頭弁論が終わるとケースは「Submit」済みStatusとなり、その後、いつSCOTUSが判決を言い渡すかは2025~26年の会期が終了するのが6月だからそれまでには言い渡されるはずっていう点を除いて誰にも分からない。明日かもしれないし5月かもしれない。ただひとつ言えるのは9人の判事でどんな風にMajority Opinionを構築するかっていうすり合わせ(これは結論以上にデリケートなプロセス)に時間を要しているに違いないっていう点。特に救済策をどんなものにするかに頭を悩ませてる可能性はあるよね。