Wednesday, January 17, 2024

Killer B (Triangular Reorganizationを利用したRepatプラン) 財務省規則案 (7)

(チョッと遅くなったけど)明けましておめでとうございます!2024年もよろしく。皆様、新年はリラックスできまたでしょうか。新年早々の地震や羽田空港の衝突炎上にはビックリしたけど、被害を受けられた方には心からお見舞い申し上げると共に皆様のご無事をお祈りします。

1月の地震っていうと日本だと1995年1月17日の阪神淡路大震災を思い出す。またちょうどその1年前に当たる1994年1月17日には南カリフォルニアをNorthridge Earthquakeが襲っている。Northridgeの時はWest Los Angelesに居たけど、揺れるっていうよりも洗濯機や乾燥機の中で回ってるみたいだった。Santa Monica Fwy(Fwy 10)のLa Cienegaオーバーブリッジが落ちたり相当な被害だった。直後は周りのみんな非常食貯えたりしてたけど、天災は忘れた頃にやってくるんでその後の備えはどうなってしまったのでしょうか。当時は携帯とかSocial Mediaがなかったんで情報収集は不便だったかもしれないけど、逆にパニックやデマが少なかったように感じる。

で、新年早々Killer Bに戻るけど、前回のポスティングで特別なルールが規定される前のKiller Bの税務上の取り扱い、少なくとも納税者が税法を律儀に適用してそうだろうと信じてた取り扱い、に関してステップバイステップで触れた。

IRSによる新ルール

前回のポスティングでお分かり頂けた通り、Killer Bは決して脱法的な取引ではなく、当時のSection 367(b)傘下の規則やSection 1032等のルールを律儀にTriangular Reorganizationに適用して課税関係を決めていた取引だ。そんな適用に基づき「外国子会社でCFCのSの留保所得を現金でPに非課税で移管する」っていう結果となり、これは「外国法人の(当時はSub Fで)課税されていない留保所得が課税されることなく米国に還流される取引を取り締まる」っていうSection 367(b)の1975年当初からの立法趣旨に真っ向から対立し、当然ポリシー的に財務省やIRSは何とか手当てしないと不味いっていうまあある意味分かり易い展開となった。

で、どんな風に手当てしたかって言うと、Killer Bの第1ステップとなる「PがP株式を現金対価でSに移管」の現金移管をP株式移管とは別取引として「SによるPへのDistribution」とみなすというのが骨子。このルールが規定される前のKiller Bは、このステップを形式通りPが自社株式を対価に現金を受け取る取引、って整理してSection 1032でPに所得認識はない、としていた。もう一方の当事者となるSは単純に現金でP株式を取得したことになり、Sの手に入るP株式の簿価はSection 1012のコストベース。

Distributionとして取り扱われるってことは普通にSection 301でSのE&Pの範囲でPは配当所得を認識(2017年以前はDRDはない代わりにFTCはあり)、E&Pを超える額はまずPが所有するS株式の簿価を減額し、減額し尽くしたら超過額はS株式のみなし譲渡キャピタルゲインとなる。配当と取り扱われる金額に関してSのE&Pは減少。TCJA以降のGILTIの世界と異なり、SのE&PがKiller B以前にSub FとしてPで合算課税されるケースはかなり例外的だったと言えるけど、もしそんな所得があればE&Pは課税済み(Previously Taxed)になってるんで、その分は再度Pで課税されることはない。Section 367(b)の「外国法人の(当時はSub Fで)課税されていない留保所得が課税されることなく米国に還流される取引を取り締まる」っていう立法趣旨的にも既にSub Fで合算済みであればそんなE&Pがそれ以上の課税なく米国に還流されることは問題視されない。

更にIRSはSがP株式をPそのものから取得する代わりに、関連者が一旦PからP株式を取得し、Sがその関連者からP株式を取得するようなステップ取引にも同様のルールを規定するとしている。SがP株式を上場マーケットで取得とか、非関連者から取得する取引に関して特別なルールが必要か否かはパブリックコメントをリクエストしているに留まっていた。

「え~でもPからSへの現金移管がDistributionだったらP株式はSの手に渡んないじゃん」って不思議に思った読者が居たらちゃんと考えて読んでてくれてるんで偉い。本当にその通りで、この点をどうRecastして考えるかに関して2006年のNoticeでは特に触れられてなくて、2007年に慌てて(?)公表された補足Noticeでその部分の取り扱い意図が明確にされている。というか明確になっているように見えた。上述の通り、みなしDistributionをKiller Bの第1ステップとなる「PがP株式を現金対価でSに移管」する取引とは別取引と位置付けてる点をもってIRSがどんなRecastを念頭に置いていたかある程度図り知れてたけど。この点は実際の規則状の取り扱いに関して後述する。

2007年Notice

2006年のNoticeのインクが未だ乾き切っていない2007年5月、補足Noticeが公表されて、PからSへの現金移管をみなしDistributionと取り扱った直後に、同額がPからSにみなし出資されたって取り扱われる旨が確認されている。この段階でみなしDistributionにかかわる課税関係、主にPによるSのE&P額の配当所得認識だけど、を達成しながら形式はKiller B直前の大本の状態に戻る。さらにみなし出資されて元通りになった直後に、Killer Bの第1ステップとなる「PがP株式を現金対価でSに移管」って取引が生じた取り扱いとなり、このステップおよびその先のステップの取り扱いは従来のKiller Bにかかわるものと同じだと規定されている。

また、2006年Noticeで言及されていた関連者を介したP株式取得に加えて、2007年NoticeではPの株主からSがP株式を取得する取引にも網を掛けるとしている。P株主は持分次第で必ずしもSection 267とかでPやSの関連者には当たらないケースがある点に気が付いたのかもね。

2008年暫定規則と2011年最終規則

これら2つのKiller B Notice後、ついに満を持して2008年に暫定規則、続いて2011年に最終規則が公表される。ここからは次回。