Friday, January 13, 2023

2023年、明けましておめでとうございます!「2023年の米国市場はどんな?」

2023年、明けましておめでとうございます! 2022年は皆様にとってどんな年だったでしょうか。2023年も皆様にとって実りの多い年となることをお祈りしますね。僕個人的には、2022年の夏に「USデスク」っていうテクニカルなアドバイスに専念できるポジションに移籍できたんで、またひとつのマイルストーン的な年になったけど、そのおかげでマイアミビーチでキューバンサンドイッチ+Stone Crab食べてリラックスできる日は先送りとなり、結局のところ馬鹿の一つ覚えで、USタックス三昧の日々が続いている。オタクの宿命というかサガでしょうか。

NYCは12月一時急激に冷えて、街中でも朝晩は日本の数え方でマイナス15度とかになったんで慌ててフロリダに何日か避難して、ビーチでUSタックス三昧してた(なにそれ)。カリフォルニアに数日戻ろうかな、ともチラッと考えたんだけどね。カリフォルニアってお天気はいいんだけど、失政でNYCと同じように犯罪天国、MDRの近所のMar VistaとかVenice Beachとかまだまだホームレス多いし、それでいて個人の自由に欠ける社会主義や全体主義の国に居るみたいな重圧感があり、結局、アメリカでだんだん少なくなりつつある自由なバイブを感じることができるフロリダで、キューバンコーヒー飲みながら一年を振り返ることとなった。カリフォルニアやNYCの高税率と比べてフロリダは個人所得税もゼロだしね。って言っても引っ越すまではその恩典享受できないけど。そんなこんなで気のせか、Liberateされてよかったです。

で、太陽の下、Sub C関係のアップデートでもしようってワクワクしてサウスビーチに繰り出して調子が出てきた途端の12月27日に財務省がCAMT(キャムティーって呼ぶの覚えてるね?)や自社株買いのガイダンスを公表。さらにFIRPTAのQFPF、REIT関係の規則、さらにECIを生み出すパートナーシップ扱いされてるPTP持分譲渡時の源泉徴収にかかわるクラリ、とか同時に炸裂させた。チラッと読んだら期待以上にExcitingなものだったんで新年(って言ってももう七草がゆも終わってるけど)特別企画でこれらのガイダンスにハイレベルに触れて行ってみたい。今日は、新春特集で2023年米国マーケット動向に触れるけど。

ちなみにPTP持分譲渡にかかわる源泉は免除とかいろいろ紆余曲折があるけど、パートナー側の申告義務は2018年から一貫して適用があるからね。2023年からBrokerによる源泉徴収開始っていう点を「今年から申告が必要か~」とか勘違いして、5-year lateにならないようにね。

PTPに関してはボトムライン、間違ってもK-1を受け取るPTPに日本から投資したりしないように、っていう点に尽きる。特にRetail Investorには厳禁。税務上Corporationに区分されてるPTPだったら株式投資と同じだけど、90%適格所得テストとかで税務上パートナーシップに区分されると、どんなに少ない持分でもPTPの所得がパススルーされるんで、ECIとかあると超面倒。条約適格でもPTPには米国のオフィスとかあるだろうからPEプロテクションは効かない。条約でもしかしたら課税範囲は若干狭まるかもしれないけど、申告書出すこと自体致命的に面倒だから大したComfortにはなんないだろう。仮に連邦で1120Fや1040NR提出する覚悟を決めたとしても、州にも申告義務が生じたり、それも20州とか、とんでもないことになる。米国内のRetail InvestorだってそんなK-1受け取ったら気絶しそうになるんで基本1099を受け取る投資しかしない人たちが大半だ。投資する前に調べるようにね。SECにファイルされているFormとかProspectusとか見たら書いてあるはずだから。

米国マーケット動向「VC」

それにしてもインフレはチョッとマシになりつつあるとは言え、2022年からの利上げ措置でマーケットの様相は一転。2021年はキミ悪いほどM&Aやファンド投資が好調で、資産価値も青天井だったんで、2022年後半からコントラスト的により低迷感がある。長期的なトレンドを見ると2021年が突出してて異常だったんだけどね。 とは言え、調子よくやってたら急激に空模様のかげんが悪くなり(Charみたい!)、VCに投資してもらってるスタートアップなんか「Down Round(前回のRoundよりValuationが下がる資金調達)」になるとAnti-Dilutionとかいろいろ面倒だし、何よりも若干不名誉感があるんで、Roundを先延ばししたり、VC Debtで資金調達したり、投資を受けざる得ないケースでは何とかせめて見た目「Flat Round」にしたい、みたいな対応に奔走中。

PEファンドの投資先は安定的なCash Flowもある確立済みのOperating Companyだけど、VCファンドに投資してもらうスタートアップはEarlyステージだと売り上げはなく、独創的なアイディアとやる気っていうのが唯一の資産で、Operationを継続するため定期的に「Round」で様々な条件を持つPreferred Stockを発行して資金調達していく。RoundはAngelから始まり、Seed、A、B、C、Dって続いていくけど、その中間にSAFEがあったり、シャドーRoundやConvertibleがあったりする。昔はアルファベット聞くとだいたいEarly、Expansion、Lateのどのステージにあるか分かったけど、今ではRunawayが長いケースもあり、アルファベット自体にはあまり意味はなくなってる感じ。

で、Roundは 回を重ねる毎にA、A+、Bとか異なるPreferredが発行される一方、オーナーとか創立メンバーはCommon Stockを持つ。従業員向けにはOption Poolもあるし、SAFE、Convertible、ワラントとかあったり、同じPreferred StockでもRound毎に条件が異なったり、Liquidation Preferenceも必ずしも常に1Xとか限らないし、PIKがあったりすることもある。結果、Cap Table、特にFull Dilution後のTableは複雑怪奇。また、Cap Tableだけ見て各Securitiesの真の権利関係や持分を判断するのは実は難しいというか不正確。なんで何がFlat Roundなのかも半分感覚的な問題だ。PEじゃないけど各Securitiesの権利毎に、どんなExitをすればどんなリターンになるのか、Cap Tableと同時にWaterfallをRunしないと全体像がつかめない。例えばCap TableみてPre-moneyが800で、Roundで200出資してPostが1,000です、っていう時に全部Commonだったら確かにCap Table通り20%の持分を取得したことになるけど、Preferredの場合、前のRoundのPreferredの権利との比較、Liquidation Preference、Warrant、Conversionとかの複雑な権利関係の優先順位をExit時の価値を複数想定して考えてみないと、直近Roundの200を結局のところ何%相当と考えるべきか答えは出ない。算数というよりPerspective的な結論となる。

ここ20年強の間に、米国市場には複数のピンチが訪れたけど、今回のマーケットコンディションはVCの世界的には、2008年金融危機や2020年パンデミックより、なんか2001年頃のネットバブル崩壊時に似てるかもね。あの時は最初Public Marketがヒットされ、徐々にLate Stageに飛び火、その後Early Stateにボディーブローのように来て、結局2002年が一番の氷河期だったような感じ。となるとまだまだこれからでしょうか。何かあるたんびに新たなファイナンス・テクノロジーが生み出されるんで、Private IndustryやVCを取り巻くエコシステムの復元力に期待。

ちなみにこれらの復元力って、民間の力や創意工夫によるもので、官僚やポリティシャンたちに支えてもらってるものではない。日本でVentureを盛り上げようっていう話しの一環で、「省庁に働きかけて米国のこんな制度を導入させたい」とかいう話しをたまに聞くことがある。QSBSとかだったらまだ分かんなくもないけど、米国のエグゼクティブが受け取るコンプパッケージに含まれる「非適格繰延報酬」に対して懲罰的かつドラコニアンな課税を規定している悪法409Aとかを日本にも導入させようとか「わざわざなんで~?」みたいな話しを聞くこともある。

別に409AがあってCap Tableとか管理するようになったりVentureのエコシステムができた訳でもなく、増してや409AでVentureが迷惑することはあっても恩典を受けることなどもちろんない。409Aが制定された2004年よりズ~っと前からVentureのエコシステムは存在し、409Aっていう罠のような法律ができた際には、NQのストックオプションが409Aの対象にならないよう仕方なくそれように時価評価するようになった。もともとCap TableやRound毎のSecuritiesの権利関係を管理してるエコシステムがあり、409Aが制定された際、追加で仕方なくリスク管理的にVentureのコンプライアンスをアシストしているに過ぎない。またこのエコシステム、もちろんCap Tableだけの話ではなく、Legal、Accounting、Finance、を含む総合的なものだ。シリコンバレーや南カリフォルニア、ニューヨーク・ボストンの北東部はもちろん、最近ではフィラデルフィア、テキサス、マイアミ(!)もどんどん充実してきてて、オーナーやファウンダーは奇想天外な発想作りにフォーカスできるような体制が整っている。

米国の制度は当然米国の環境に基づき制定されてるんで、米国と異なる制度やカルチャーを持つ日本にそのまま輸入しても役に立つとは限らない。税法改正時の国民や企業の反応度合・スピードもカルチャー的に違うし。なんで、制度を取り入れる際には「笛吹けども踊らず」にならないように、日本の制度や環境下でどれだけの効果が期待されるかよく検証した方がいい。国民性やカルチャーの違いは、例えばコロナ後の反応や対応を見ても180度異なることが分かるだろう。

米国マーケット動向「PEとSub Line」

低金利が長期間続いたため、その間にPEファンドレベルのSub Line借り入れがすっかり定着・長期化。本来Capital CallのブリッジだったはずのSub Lineは重要なレバレッジとなり、見た目のIRRをブーストするツールとなって久しい。LBOとかでポートフォリオレベルのレバレッジはBarbarians at the Gateとかの古くから最大限化されてたけど、ファンドレベルのレバレッジは、非課税団体にUBTIを生み出す問題とかもあり、以前は存在しない、っていうLPAのTermが普通だった。今ではLPAやPPMに「借ります!(笑)」って書いてある。

Sub LineってPEファンドのUncalledのCapital Commitmentを担保にしたファシリティで、Borrowingベースはもちろん100じゃないから原則貸し倒れのリスクはかなり低い商品。Capital Commitmentを担保に、って言っても実はそのメカニズムは複雑で、Capital Commitmentばかりでなく、Capitalが入金される口座もPledgeするし、デフォルト時にはスポンサーに代わってレンダーがCapital Callできるような仕組みにもなってる。

また、PEファンドはLPから直接ではなくフィーダー経由でCapitalが入金されてくるケースが多い。となると、ファンドレベルでCapital Commitmentを担保にしても相手がフィーダーだと、その先のCommitmentをあてにすることになるんで、法的なDDや手法はかなりややこしい。BorrowingベースにどのLPを加味するか、とかLPの特性に応じてLTVが異なったりとか、実はレンダー側のリスク管理も思ったより複雑な商品だ。Sovereign Wealth FundとかがLPだと理論的にはCapital Callに応じない際の主権免除とかのリスクも考えないといけないし、High Net Worthの個人とかその下のSMAなんかは裕福でもRatingとかないので、ベースからKickoutされたりする。また、以前と異なり2008年以降特にLP持分をSecondary Fundとかに移管したり、GP-LedのContinuation Fundが投資継続するケースも多いから、LPが途中で変わっちゃう時の処理とかにも対応しないといけないケースが多くなってきてるかもね。

ファンドのWaterfallってLPに出資金だけじゃなくて、8%のリターンを優先分配するのが一般的だけど、Sub Lineのコストが2%とかだったら、LPに支払う8%リターンより相当低いんでスポンサー側に慌ててLPにCapital Callするインセンティブはない。IRRは単純にCash In、Cash Outで計算するんで、Capital Callを最大限遅らせ、途中でLeveraged Recapとかで分配をAccelerateできると、IRRを相当Juice Upできることになる。ファンドのPPMに過去の投資実績が誇示されている場合、それがLeverなのか、Unleverなのか良く見て比較するようにね。HedgeファンドはLeverがもとから当たり前だけど、PEのLeverはここ10~15年程度の現象だ。

で、なんでこんな話しになってるか、っていうとSub Lineのコストが8%レベルに近づきつつある今日、IRRをブーストする目的は達成できなくなり、単純なレバレッジになるんで、ファンドではSub Lineの是非を再検討中。ただ、必ずしも8%優先リターンとの比較だけで決める話しでもないんで今後メジャーなファンドがどう出るか興味深い。

米国マーケット動向「PEとNAVローン」

Capital Callを担保にする借り入れとは別に、ファンドが所有するポートフォリオのネット価値を担保にしたNAV(Net Asset Value)ローンも拡大中。もともとSecondaryやCreditファンドで利用が多かった商品だけど、パンデミックを機に通常のPEファンドにも波及。いろいろなテクノロジーで進化中だ。Secondaryに比べてPE NAVは担保にするポートフォリオの数も少ない傾向にあり、その分リスクが高くLTVは低い。また概念的にはポートフォリオのネット価値を担保にした借り入れなんだけど、ポートフォリオの株式、またSecondaryの場合はLP持分を直接担保に入れるのはShareholder Agreement、ポートフォリオレベルのシニアレンダーによる制限、LPA制限とかで難しい。そこでSPVを組成してSPVのEquityを担保にしたりすることもあるけど、SPVのEquityを差し押さえても実際のところすぐにその下層に位置するポートフォリオを換金できるわけでもなく、結局Unsecuredに近いこともある。その場合はこちらも進化中のPrefに近い。

SecondaryやCreditファンドに続いてPEの世界でNAVが一般化し始めたのは、2020年春のパンデミック初期。ポートフォリオの中にLiquidity問題が発生した際に、PEオーナーだとPPPローンの取得に不利で、LPがCapital Callに応じるのがインフラ的に難しい時期があり、またはそもそもファンド後期でDry Powderない状態におかれているファンドももちろんあるから、そんな際に他のポートフォリオでネット価値があるところの持分を担保にファンドが資金調達するようになった。で、ここに来て金利が上昇し、ポートフォリオレベルでのRefinanceリスクとかも顕著化するような傾向もあり、更にNAVのニーズが高まってるという訳。ファンド傘下のSPVが借りたり、ポートフォリオに直接レバレッジを入れるケースもあるけど、それをファンドが保証、またはECLを入れることでファンドが他に所有するポートフォリオの価値をUnlockしたりする。だったら、良質のポートフォリオを売ったらいいじゃん、って思うかもしれないけど、今のマーケットでは売れないところがつらいところ。調子の悪いポートフォリオにNAVローンを供与する場合、もともと調子悪いんでデフォルトの確率は低くない。LBO時にポートフォリオが借りているローンに当然Subordinateする訳だし。レンダーはファンドの保証やECLを取り付けてるけど、他の好調なポートフォリオが売られてその代金全部がLPに分配されないよう、譲渡対価の一部をEscrowして「Cash Trap」したり工夫している。

パンデミック時との比較で、今はGPそのものやLPサイドのLiquidityも問題になることが多く、NAVローンを原資にLeveraged Recapを試みたり、こちらも復元力旺盛で、多様なテクノロジーが進化していく。NAVはかなり個別対応で条件が決まるのでClosingには時間掛かるよね。ちなみにNAVローンは想定してないファンドLPAも未だに多く、LPやLPACの承認とかの手続きで頓挫することもある。

ということでいろんな分野の進化の話はきりがないけど、この辺にしとくね。それでは今年もよろしくお願いします。次回は新春ガイダンスシリーズ。