前回のポスティングでは外国子会社からの配当非課税案の規則の詳細に触れた。ようやく米国もテリトリアル化か、とトンネルの先に光が見えてきたように思わせながらも、制度変更時点で強制的に外国に眠る剰余金をみなし配当扱いするという恐ろしい移行措置が規定されている点にも触れた。
余談だが、夜にラスベガスにフリーウェイ(FWY)で向かって、やっとベガスの光が見えるあの瞬間、まさしくトンネルの先にようやく光が見えたとう状況を具体的に体感できる。ロサンゼルスからFWY15で向かっていくとフラットな感じでベガスの光が見えてくるので角度的にいまいちだが、逆にZion方面というかユタ方面からFWY15を南下していき闇の中に突然浮かび上がるベガスの光の海は、上から見下ろす感じでかなりきれいだ。特に冬の空気が透明な夜は絶景だ。またFWYではないがルート160でDeath Valley方面からベガスに近づいてくる時に見えてくる夜景も、FWY15の南下よりチョッと落ちるが、それでもきれいだ。香港のVictoria Peak、59th St BridgeのQueens側から臨むマンハッタンEast Sideも、NJ側リンカーントンネルの裏から見るマンハッタンのWest Sideも夜景としてはきれいだが、ベガスのあののっぺりとした光が急に暗闇に浮かんでくる姿は「自然と人工」の対比という意味でもインパクトがある景色だ。
で、移行措置だが、W&M委員会によると他の方法も検討したが、消去法で今回の案が残ったということだ。例えば、そのまま移行措置を取らずに、改正前に溜まった外国子会社の所得は従来通り課税、改正後の所得には非課税措置というようなことも理論的には考えられるが、どの配当が改正前からのもので、どの部分が改正後とレコードキーピングが大変で実務的ではない。米国には日本のように過去の所得も全て非課税にするという発想はないようだ。その理由はおそらく、最初のポスティングでも触れた通り、米国のテリトリアル課税は基本的に「Revenue Neutral」すなわち、税収が減ってはいけない規定となるからだろう。すなわち、将来の外国子会社からの配当にフルに課税できないことで予想される税収減をどこかで補わなくてはいけないという事情がある。
一説によると今回の移行措置は議会で求められる今後10年間の財政均衡を念頭に計算されていることから、それ以降の影響(配当非課税で税収減)を加味するとそもそもRevenue Neutralではないという話しもある。
また、10/50法人の米国株主がE&Pの金額を正確に把握できるのかどうかという問題もあるし、場合によっては10/50法人の株主が株式を取得する前に累積したE&Pが課税所得になってしまう可能性もあり、みなし配当金額の定義に関してもう少し突っ込んで規定するように求める声もある。
また、移行措置はあくまでも「みなし配当」として外国の所得を課税するので、実際に資金が米国に還流する必要はない。この点に関してはどうせ課税するのであれば、実際に米国に資金が戻り、米国経済に投資が行なわれるような規定にして欲しいというコメントも出ているようだ。
次回はテリトリル化シリーズの最終回として、外国からの配当非課税とするに当り国外への所得流出に網を掛ける規定案が発表されているがその点に関して触れてみたい。