Monday, August 1, 2011

2011年米国タックスの行方(7)- Sch. UTP(続4)

前回までのポスティングでSch. UTP誕生の経緯、適用対象者、開示が求められるポジションの決定法等に触れてきた。今回は開示が必要とされるポジションに関して、具体的にどのような情報をどこまで開示する必要があるのか、に関して触れてみたい。

*不確実ポジションの何を開示するか?

基本的には不確実性のある税務ポジションの「存在」を開示する。したがって決算書上計上されているFIN 48の引当金の金額そのものを開示する必要はない。Sch. UTPが提案された初期段階では、不確実ポジション各々の「Maximum Exposure」、すなわち最悪のシナリオに基づく追徴額の開示が求められるという内容だったが(FIN 48の引当金額は50%基準なのでMaximum Exposureではない)、さすがのIRSもこの提案は引き下げ、最終的には下で触れる「ランキング」に取って代わられている。

開示対象となるポジションには納税者自らが1からナンバーを付ける。ポジション1、2、3のような感じだ。このナンバーは単なるID番号なので、どのような順番で付けても良い。「1から始めて、数字は整数のみ、番号は飛ばさないで付けて下さい」と1億ドルの資産規模を誇る大会社に対する説明というよりも、中学生の教科書レベルに丁寧な説明が記載されている点も米国っぽい。

各ポジションに税法の条文のうち最も関係が深い条文番号(Section Number)を開示する。次に「Timing Code」と呼ばれる「一時差異のTemporary」を意味する「T」、「永久差異のPermanent」を意味する「P」のアルファコードを選択する。
法人がパススルー事業主体のパートナーになっていて、開示対象となる税務ポジションがパススルーされてきている場合には、その大元のポジションを取っているパススルー主体の納税者番号(EIN)を開示する必要がある。

*順序付け(ランキング)

最初にSch. UTPが発表された時点では、開示されるポジションに関して各々に関して最高でいくらの追徴対象となり得るか(「Maximum Exposure」)の記載が求められるとされていた。この開示要求は大反対にあい、さすがのIRSもドロップせざるを得なかった。その代わりに導入されたのが、ランキング制度で、開示する各ポジションの引当金額の大きいものから順位を付けて開示することになっている。

このランキングをする際に参照するべき金額だが、決算書で各ポジションに関して引き当てられている金額を基とする。ペナルティーとか金利が各ポジション別に分かるのであれば、その金額も含めると個人的には理解している。一方でペナルティーとか金利が各ポジションに関して特定されていない場合には含まないでランキングをするようだ。

また、ランキングとは直接関係はないが、引当金ベースで全ポジションの10%以上の金額をひとつのポジションで占める場合には、そのポジションを「Major Tax Position」と呼び、どのポジションがそれに当るかを表示する必要がある。もちろん複数のMajor Tax Positionが存在する場合もあり得る。

そして、各ポジションの内容の「簡単な説明」が求められる。どのような説明が必要かという点は次回のポスティングで触れたい。