公私共に多忙を極めている間に(簡単に言うとバタバタとしている間に)いつの間に最後のポスティングから長~い時が経ってしまい本当に失礼致しました。あのビートルズですらツアーの合間を縫って(少なくともツアーをしていたRevolverの頃までは・・・)EMIとの過酷な契約(当初は人気が長続きしないのではないかという懸念に基づき売れてる間にできるだけ沢山のリリースをしようという目的で)に基づき半年に一度、完璧なクオリティーのアルバムをレコーディングしていたことを思うとたかがブログの執筆にこんなに期間を空けてはいけないのは明らか。気を取り直して頑張ります。
さて、そんなこんなしている間にAGIのボーナス騒動も沈静化し、新型フルーが到来し、といろいろとあった。しかし国際税務業界を震撼させたのは他でもない2009年5月4日にオバマ大統領自らがプレス・カンファレンスで披露した「米国国際税制の大改定」プランだろう。だいたいからして、米国の大統領自らがカンファレンスで国際課税の規定そのものにかなり具体的に言及して税法改定を提案したこと自体がショッキングというか、以外というか、気合を感じさせてくれるものであった。
当然内容もこの気合に見合ったものである。日本のタックスヘイブン税制に類似する(というか基となる)CFC/Subpart F規定を導入したケネディー政権による改定依頼の大改革だ。
そこで取りあえず、復活第一弾ではこのオバマ政権による国際税務の大改定に関してポスティングしてみたい。内容は一部ショッキングではあるがこれらはあくまでも「案」であってまだまだ法律ではない。これから長い審理プロセスでいろいろな変更が出てくることは十分に予想される。
*5月4日のプレス・カンファレンス
5月4日時点では「海外に留保されている所得に係る費用の損金算入繰延」、そしてナント「Check-the-Box規定の撤廃(ウソでしょう~!!)」、「外国税額控除の乱用禁止」と言った漠然とした内容しか分からなかったので余計にショックが大きかったと言える。
戦費、景気刺激策、減税の乱発で米国の財政はもちろん壊滅状況にあり、その穴埋めは並み大抵の増税では達成できない。国際課税分野でも実に今後10年で2,100億ドル(100円の単純計算で21兆円)も歳入増を見込んでいるということなので、生半可な改定ではないことは分かっていた。が、それにしても・・・。
カンファレンスでチョッと気に掛かったのが、オバマ政権による「大企業が国際取引に関して税法の抜け道(Loophole)を利用して適正な税金を支払っていない」という決め付けだ。個人的にオバマ政権は応援しているのだが、ここの部分は何だかチョッと違うような・・・。現在の国際取引に係る税法の規定は一朝一夕でできたものではなく、熟考された上で議会が制定しているものだ。その規定通りに税金を計算してきた多国籍企業にしてみれば「今更Loophole呼ばわりはないのでは?」と言いたいだろう。場合によっては他の取り扱いをすると法律違反になるようなケースもあり、別に裏をかいて得をしているという訳でもないことが多い。税法の恩典を最大限化してきたことは間違いないがそれはLoopholeではなく、税法で意図された通りの取り扱いに基づくものだ。
また、「現状の国際税務の規定は米国から外国に投資する方が有利なので、悪い多国籍企業が米国外に雇用の機会を持ち去っている」という部分もどうかな、と思ってしまう。多国籍企業として成長が見込まれる海外市場に進出するのは当然で、その際に少なくとも米国企業は(日本企業は必ずしもそうでないのが逆に興味深い?)税務的に最も効率のよい形態を取る。米国企業の国際取引に対する課税を強化すると、当然実効税率が上がるか、会計上の税率はそのままでも、税金をより早いタイミングで支払うこととなりキャッシュフローが悪化する。タダでさえ不景気で収益力が低下しているところにこのような改定が実行されるとますます業績が悪くなり、株価への悪影響も考えられる。単純に考えて今回提案されている税法改定で米国の雇用が増えるとはとても思えない。
それにしても、日本とか英国とかの他諸国が一同に海外で得られた所得の非課税化(Territorial課税制度)に移行している最中に、同所得に対する課税強化を打ち出した米国政権は世界の潮流に真っ向から対立していると言える。
*5月11日「Green Book」公表
そんな懸念を漠然と抱いていた矢先の5月11日には早速、税法改定の具体的な内容を説明した「Green Book」が公表された。この本全体で130ページに亘る実に分厚いマテリアルだが、その中で国際税務の改定に言及している部分は約13ページある。しかも「Loophole Closers(抜け道封じ策)」というタイトルの下に規定されている。
次回ポスティングではGreen Bookに記されている具体的な改定の内容について触れる。