前回は期せずして抜き打ちで公表されたFIRPTA関係のIRSのLegal Memoに結構な紙面を割いた。上場株式に適用される5%(REITは10%)持分のFIRPTA課税例外規定の適用時に、マスターファンド等のパートナーシップが上場株式を所有する際、どのレベルで5%を判断するのか、っていう不確実性をクラリして欲しい、って言う希望は長年に亘りヘッジファンドとかがIRSに要請してた。念願叶って(?)Legal Memoっていう法源としては微妙な位置づけのクラリらしきものが公表されたことになるけど、もちろんヘッジファンドスポンサーにしてみたら単にクラリして欲しかったんじゃなくて、Look-throughしてブロッカーのケイマンフィーダーとかパートナーレベルの判断していいですよ、っていう点をクラリして欲しかった、ってことなんで同じクラリでもチョッと英語で言うところのMixed Feelingかもね。
FIRPTA自由化急ブレーキ
モビリティの高い世界のお金を米国不動産に投資してもらうため、ここ何年も自由化のトレンドが続いてたFIRPTAだけど、ここに来て急に締め付け方向に振れてる感はあるよね。後述する本題のDC REITの件にも関係する興味深いトレンド。不動産業界的にはFIRPTA自由化ではなくFIRPTA全面廃案が長年の悲願。REITに複数の特別な恩典が付与されている点からも計り知れる通り、不動産業界は議会には結構な影響力を持ってるんでPATH Actとかで立法的には連勝だったけど、行政府によるRegulatory対応でTKO、とまではいかないまでも軽いジャブを打たれてる感じ。
行政府のRegulatory規定の合法性
Regulatoryでどこまで法律を補完、場合によっては一部実質Overrideできるか、っていう争点は税法に限らず、全ての法律に関して常に存在する。民主党政権になると党是的に当然DCの省庁による規制強化台頭が激しい。バイデン政権も例外ではなく、というかおそらく史上最もアクティブにSEC、FTC、EPAその他、時には法の限界を試すような規制強化策を乱発している。結果として当然、訴訟が増えるし、最近は最高裁判所がRegulatory規制の違憲・違法行為としてStrike Downするケースが増えてる。
そんな判決を読む際の最重要ポイントは、最高裁判所は決して行政府のRegulatory行為の内容がポリシーとして好ましいかどうか、という判断している訳ではないという点。その手のポリシーマターはPeopleに選挙で選ばれた立法府、議会の責任。じゃあ、最高裁判所は何してんの?、って言うと憲法に規定される三権分立、議会が可決した行政府への権限付与、等に照らし合わせて行政府によるRegulatory規制が越権行為かどうか、っていう点の「Check of Balance」を司る役割。
最高裁判所の判決が出るたびに、多くのメディアが判決の対象となるポリシーに対して最高裁判所が賛成・反対を表明したと位置付けて大騒ぎになったり、最高裁判所の役割を無視したほぼ中傷に近い報道を繰り返すんで、判決の意味や意図が歪曲される傾向にあるんで注意。もちろん自分が好むポリシーを推し進めてるRegulatory規制が違憲、となったら嬉しくはないだろうけど、米国が法的支配の国、民主主義の国であり続けるには、三権分立は言論の自由と並んで守らないといけない最重要な憲法の規定だ。Regulatory規制に関してChevron原則っていう行政府に多くの裁量を認めている1984年の最高裁判所判例があるけど、時に行き過ぎるRegulatory規制に反応する形でChevron原則はここ数年徐々に浸食されてきてる感がある。近々に全面Overturnされる可能性もあるという噂だし。三権分立の今後の動向からは目を離せない状況だ。
IRSのLegal Memoやこの手の三権分立の話しはLed Zeppelinの話しじゃないんで個人的には本題からの脱線じゃないよね、って納得してるんだけど、とは言えそろそろDC REITに漕ぎつけたいのは事実。何と言ってももうMemorial Day Weekendも終わってしまったし。NYCはMemorial Dayの前から異例に過ごしやすい日々が続いてて、そのままMemorial Day前後のBreakもNYCでも良かったんだけど、またしてもマイアミビーチにGetawayする予定を入れてたんで、後ろ髪を引かれる感じ(?)でLGAから繰り出した。着いたら当然もっと熱くてよかったけどね。Vibrantなマイアミでキューバサンドイッチやキューバコーヒーを片手にタックスの勉強も捗ったし。Memorial DayってことでSouth BeachでAir Showやってて、その昔福生の米軍基地がカーニバルという基地をオープンするイベントに行ったりした頃を思い出したりしてたけど、マイアミのAir ShowはFighter JetsだけでなくStealthとかも飛んでて迫力満点だった。ただ、最初の一時間くらいは良かったんだけど、その後はBeachでリラックスするにはジェットの凄い音が鳴り響き過ぎだった感じ。まあしょうがないね。
REITはブロッカー
で、REITの話しに戻るけど、REITは米国税務上Corporation扱いされる主体じゃないといけない、っていう条件だけに触れてたと思う。この点は当たり前なんだけど重要。以前にも触れた通りCorporationなんで、それ自体がブロッカーになり得る。ただ、REIT自体が米国不動産持分を譲渡する場合、その年度のREIT分配は譲渡益に帰する部分がFIRPTA課税の対象になる。じゃあ、申告しないといけないから本当のブロッカーじゃないじゃん、って思うかもしれないけど、SWFとか大手のLPだったらExitは「REITによる米国不動産持分の譲渡じゃなくて、REITの持分譲渡で実行するように」ってSide LetterとかでREITやファンドに確約させたりすることは珍しくない。でもREIT持分の譲渡自体、FIRPTA課税の対象じゃん、って直ぐに反応できた方には座布団5枚。そんな弊害をオーバーカムできるのがDC REITの存在で、今回の特集と深い関係がある。DC REITは後述するから待っててね。でもそんな交渉レバレッジがない場合は確かにREITに直刀、またはよくあるストラクチャーだけどREITを所有するファンドにに直刀すると課税年度によっては申告義務が生じるんで、Upper Tierに自分のブロッカーを組成するか、またはファンドが用意してくれるフィーダーとかAIVがあれば、そこ経由での投資になる。とにかくLP側で申告義務が生じないようにストラクチャーするのがベター。
で、REITの他の要件は複雑で、各々の要件にDeepな検討がつきまとうんで他の要件は代表的なものを限定的にザックリ触れておく。REIT適格かどうかは組成時に必ずLegal Opinionを取るようにね。REIT持分を後年譲渡したり、M&Aに関与する場合、買い手から必ずREITのStatusにかかわるLegal LetterやRepの提出が求められるんで、その時点で「あれ、あの要件ミスしてるじゃん」とかならないように。
IncomeテストとAssetテスト
REITは不動産関係の投資Vehicleなんで、その活動は言うまでもなく不動産関連でないといけない。これを検証するのがIncomeテストとAssetテスト。Incomeテストは大別して2つあって、まず賃貸等の不動産所得に加えて配当や金利等のPassiveな所得がGross Income全体の95%を占めないといけない、っていう95%テスト。2つ目は不動産関係の所得、これにはモーゲージ債権からの利子所得も含まれるけど、がGross Incomeの75%を占めてること、っていう75%テストだ。
でAssetサイドに関しては、毎四半期末で全資産時価に占める不動産、現預金、国債が75%以上っていうテスト。この75%テストには、TRS(REITが直接従事できない取引を行う課税主体、例えばREITに所有されるアパートの管理サービス業務)の持分が時価ベースで20%超を占めてはいけないとか複数の追加要件がある。その中に一人のIssuerが交付するSecuritiesが全体の5%を超えてはいけない、っていう5%テストがある。ここでいうSecuritiesの定義はTitle 26の税法ではなくTitle 15の「Investment Company Act of 1940」 を参照するように規定されている。40年投資法だ。40年投資法に関しては泣く子も黙る(?)複雑な検討を強いられることが多い。UP-Cのパススルー主体Opcoの経営権をPubcoに与え、PubcoがHigh Vote株式で旧Opcoのオーナーに実質間接的に経営権を与えたりする複雑なストラクチャーも証券法専門の友人の話しだと40年投資法と関係があるらしい。AssetテストのSubsetの5%テストの対象となる40年投資法のSecuritiesの定義は極めて広範。
ザックリとか言ってて、なんで複数の追加要件のうちこの5%テストだけやたら深堀りしてんの?って釈然としない読者もいると思うけど、最近の金利急上昇でこのテストに抵触リスクが増えてるからだ。金利と5%テストとどう関係あんの?って、まるで風が吹いて桶屋が儲かるみたいな話しに聞こえるかもしれないけど、そこには深い訳がある。不動産投資に当然レバレッジはつきもの。で借り入れコストのリスク管理としてデリバティブとかでヘッジするのは以前から当然なんだけど、金利急上昇でヘッジサイドの価値が急上昇しているケースが多い。借り入れサイドと相殺が認められれば結局全体としては得したことにはならないんだけど、AssetテストはあくまでもAssetサイドだけで行う。そうするとDerivativeに結構な価値が出てしまい、しかもCounter-Partyが一社だったりするケースも多い。これってSecurities?って投資法専門家に照会すると「Securitiesです」っていう見解が返ってくる。え~、ヘッジ目的のDerivativeの価値が高くなって5%テストにFailしてAssetテストに抵触?っていう状況が散見される。ヘッジに関してはIncomeテストにも潜在的に同じような問題があり得るけど、こちらは一定要件下でヘッジされる取引との相殺が認められる条文が足されているんでOK。Assetテストに関してはなぜか同様の規定がないんだよね。思い当たる方は必ずアドバイザーと相談するようにね。きっとクリエーティブに解決を図ってくれるだろう。
株主100人要件
前回触れた通り、REITはリスク分散・プロのマネージメントに基づく不動産投資を広く一般にオファーしよう、っていうのが趣旨。SWFとかHNW個人のファミリーオフィスとかだったら独自でできるからね。だけどREITの優位性、特にブロッカーだけど分配控除で二重課税にならない、っていう特殊なフィーチャー、しかもRIC(BDC含む)みたいに40年投資法(また出たね)登録主体じゃないといけないっていう要件もないんで所謂Private REITもOK、とか弾力的なんで、不動産ファンド投資時のストラクチャリングに組み入れられるようになって久しい。
とは言え元々のREIT制度の導入背景から、REITには最低100人の株主が居ること、っていう要件がある。え~、米国のファンド経由でREIT投資してて、てっきりファンドがREITを100%所有してると思ってたけどファンドの他に99人も株主がいたの~、ってことはREITから受け取る分配はまさか1/100~???、ってビックリする読者もいるかもしれない。そうなんだよね。ビックリだよね。
だけど実はこの100人株主要件はチョッと骨抜きで、各株主の持分大小にかかわる制限もなければ、Common StockでなくPreferred Stockだけ所有してても株主としてカウントされる。ただ、当然だけど株主は株式の「Beneficial Owner」じゃなくてはいけない。Beneficial Ownerっていう概念は条約適用時にも頻繁に出てくるけど、Beneficial Ownerが誰かっていう判断は米国税務の原則に基づいて行われる。ハイブリッド主体にかかわる条約の恩典有無、特に源泉税低減条項の適用時には米国税務原則のBeneficial Ownerがオーバーライドされることがあるけど、これは超例外。この部分は決め事で、Beneficial Ownerのオーバーライドって考えるか、条約の文言の誰が所得を「Derive」してるか、っていう部分を条約居住者側の法令で判断する、って考えるか、言い回し的っていうか、学術的には双方の見方があり得る。REIT株主100人規定は条約とか関係ないんで、誰がBeneficial Ownerは米国税務の原則で判断され、結果としてNominee、Custodian、Conduit、等の名義人は無視される。パートナーシップとかはパススルーだけど名義人じゃなくて立派なBeneficial Ownerだからね。
で、面白いのは株主をどこで判断するか、っていう点。REIT税法の構成的にREITを定義しているSection 856で定義されていない用語は40年投資法(また登場)で判断するように、って規定されてて株主の定義もSection 856にはないんで40年投資法に基づくことになる。40年投資法や33年や34年の証券法ってザックリと大枠は理解しているものの、もちろん僕たちが専門に取り扱う法律じゃないんで、腰が引けるんだけど40年投資法の株主の単位となる「者」は単純に個人と団体と定義されてて、団体にはCorporationばかりでなく、パートナーシップ、信託、ファンドその他が広範に含まれるとされる。実際、40年投資法のこの定義に基づきIRSも100人株主の判断時には信託は一人と数えて受益者の数でカウントしないというルーリングをその昔出したりしてる。え~、じゃあファンド(=デラウェア州LPS)に100人LPが居ても株主は一人なの~?ってことになる。Look-throughしないということ。前回のIRSのLegal Memo、Portfolio Exemption、これから話すDC REIT、いろんな局面でいつパススルー主体をLook-throughして、いつしないのか、っていう点は複雑。パートナーシップ税制下、パートナーシップをいつAggregateと取り扱い、いつEntityとみるか、っていう概念的な基本構造に見られるテンションの一環だ。
で、ファンドが投資したり組成するPrivate REITは、実はファンドがCommon Stockの100%を持つことが多い。え~、じゃ100人どころか1人だからREITじゃないじゃん、って思うかもしれないけど、そこは心配無用。金額の大小は問われないし優先株でもいいんで、少額の優先株式を99人に交付して、Common Stock株主のファンドと足して100人になる。優先株式の金額がいくらならいいか、っていう点は法律に安全ガイドラインとかないんで、さすがに1ドルとか憚れて、マーケット標準は$1,000じゃないかな。しかもスポンサーが個別に99人探してくる、っていうよりも「REIT preferred investor service provider」っていう業者が居て、そこが99人ピッタリでは心もとないんで、大概125人とかの適格株主を提供してくれる。優先株だから固定配当で、マーケット標準は12%のリターン。何事も分業が確立されてて効率よくできてるよね。
同族持分(Closely Held)禁止要件
100人株主要件とチョッと似てるけど、別の要件にClosely Heldを禁止する要件もある。チョッと長くなってきたんで、ここからは次回。
Sunday, June 4, 2023
Wednesday, May 24, 2023
FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (5))
今回もREITの話しを続けて最終的にはDC REITにかかわる規則案にたどり着きたいんだけど、その前に一点FIRPTA課税目的の米国不動産持分の定義に関してInterstate 29ドライブ中に思い出したことがあるんでチョッとだけ再度FIRPTAの米国不動産持分にフラッシュバック。広大な自然、またはOmahaで賢人の知恵に触れたせいか、FIRPTAの想いが果てしなく広がる(なにそれ?)
日米租税条約とFIRPTA
今の日米租税条約は2003年バージョンだけど、日本居住者(LOB満たす者)が米国不動産譲渡益を認識する際に米国に課税権を認めている13条(もちろん条約なんで逆方向のケースにも同様に適用があるけど、FIRPTAの話しなんで米国不動産にかかわる方向にフォーカス)のもともとの文言は、米国法人の株式譲渡にかかわる米国課税権を「資産価値の50%以上が米国不動産により直接・間接に構成される法人に限る」という趣旨のものだった。え~、何コレって当時はビックリ。この定義はFIRPTA課税の適用を受ける米国法人の株式と微妙に異なるからだ。
すなわち前回のポスティングで延々と話したように、米国不動産持分の定義に見られる過去5年間のLook-Backがないし、また条約の50%以上計算時に分母として使う資産、英語では「Its assets」だけど、に特に事業資産に限定するっていう文言はない。つまり2003年の条約は米国法人株式の譲渡に対するFIRPTA課税を、米国不動産持分ではなく神話のひとつだった米国不動産所有法人に似てるけどそれとも違う第三の変な定義に基づいて適用してた。なんで、前日まで法人資産の50%以上を米国不動産持分が占めてても、翌日目が覚めて49%になってたら、そんな米国法人の株式譲渡益は条約ポジションでFIRPTA課税免除になってた。しかも、これは決してCarelessなドラフティング結果じゃなくて、当時の条約批准時の上院ヒアリングで問題が指摘されたりした上で特別に認められている。米国の多くの条約でも日米租税条約以外にはほぼなくて、他には言葉は変だけどマイナーな条約に1~2あるだけだったと記憶している。
っていう訳で余り注目されてなかったものの、かなりの特典だった。でもこの定義は2013年の議定書で改定され、今では米国内法の米国不動産持分の定義を参照する形にアップデートされてしまった。2013年の議定書っていうとあたかも2013年から発効しているような錯覚を覚えるかもしれないけど、米国側の批准に長年かかって2019年8月末からようやく発効した。つまりそれまでは日本居住者に対するFIRPTA課税はかなり緩かったってことになるね。タイムマシーンで戻りたい?
衝撃のIRS内部Legal Memo
で、Interstate 29でふと思い出した2019年までの日米租税条約の特典に触れることもできたんで、いよいよ満を持してREIT続行って思った矢先に、絶妙のタイミングでIRS内法務部に当たるChief Counsel OfficeがFIRPTA関係の衝撃的な内部Legal Memoを公表したんで急遽そっちにも触れざるを得なくなった。余りにExcitingな毎日だ。
前回のポスティングで触れた通り、米国法人の株式(正確には持分だけど分かりやすい株式って言っておく)は納税者側で反証できない限り、自動的に米国不動産持分になる。まさかこんなタイミングでLegal Memoが出るとはつゆ知らずだんたんで、その時点では「株式市場で流通している株式に関しては5%以下の株式は米国不動産持分にならない」っていう有利な例外があるってサラッと触れただけだった。この例外がないとリテール投資家を含むNRAや外国法人が米国株式市場で僅かな%の株式を売るたびに反証するのは非現実的だから、全て申告書提出して譲渡損益を報告しないといけなくなる。なんでまあ当然の例外規定。ちなみに株式市場で流通しているREIT持分に関しては5%の代わりに10%まで例外条件が引き上げられている。複数あるREITのみに認められる特典の一つだ。
5%ルールや10%ルールの例外が適用されるのは普通の法人株式にしても、REITにしても公認株式市場(「Established Market」)で流通(「regularly traded」)している株式。なんで、証券法や投資法に基づいて持分がSECに登録されてても「RegularlyにTrade」されてないと当例外の適用はない。例えばExitが償還(Redemption)っていう形で想定されてて持分譲渡が自由にできないタイプのREITとかは、持分がSECに登録されててもTradeされてることにならないんでこの例外は使えない。またTradeが可能でも「Regularly」にTradeされてないといけない。何をもってTradeがRegularかっていう点に関しては1980年代から財務省規則に紆余曲折があって、規則に定義が現れたり、それが撤回されて最終規則(Final Regulations)では「Reserved」、すなわち今後の規則策定に期待、みたいな状況になったと同時に暫定規則(Temporary Regulations)に定義が移動して現在に至る。暫定規則は規則案(Proposed Regulations)と異なり法的効果を持つ点はFinal Regulationsと同等。定義そのものを詳解するスペースはとてもないけど、四半期毎のテストとか本気でやると結構大変、とだけ言っとくね。
で、株式市場で流通している米国法人の株式(チョッと面倒なんで誤解覚悟でここでは上場株式って言っておく)をパートナーシップが所有してるケースで、この5%をどのレベルで判断するべきか、っていう点は長年明確じゃなかった。例えばケイマンフィーダー(当然CTBで法人課税選択)とデラウェア州LPSが各々50%づつマスターファンドを所有するストラクチャーのヘッジファンドがあるとする。で、そんなマスターファンドが上場株式を8%所有してるとする。デラウェア州LPSのDomesticフィーダーに投資するLPは米国個人、米国法人、または州のペンションファンドとかのSuper-Exemptとすると、FIRPTA課税の検討が必要となるのは外国法人のケイマンフィーダーのみで、Domestic Feeder経由で投資してるLPの視点からは、持分が5%以下かどうか、すなわち株式が米国不動産持分になるかっていう検討は一切課税関係に影響がない。じゃ、ケイマンフィーダーが上場株式の何%を持っているのか、って部分だけど、マスターファンドが8%持ってて、マスターファンドに対するケイマンフィーダーの持分が50%だから4%と違うの?ってなるところ。パートナーシップは法人と違ってLook-throughだし、別の規定だけど利子所得の源泉税が免除されるPortfolio Exemption適用時の10%制限もパートナーレベルで判断って明確な規則もあるし、上場株式の例外もパートナーレベルで判断するべきって密かに確信してるアドバイザーは多かっただろう(既に「過去形」になってて怖い?)。でも間違ってFIRPTA課税になったりすると面倒なんで、君子危うきに近寄らずだから保守的に5%や10%をパートナーシップレベルで判断せざるを得ない状況が続いていた。
ちなみにマスターファンドを使わずにピュアにパラレルファンドにすればこの問題は少ない。今でもたまにパラレルのヘッジファンドとか見ることがあるけど、ケイマンフィーダーに当たる外国人LPおよびDebt-Finance UBTIを嫌う普通の(つまりSuper-Exemptじゃない)Tax-Exemptが投資する側のファンドと米国LPサイドのファンドが各々別々に4%づつ株式を持ってて、変なAttribution規定とかに抵触しなければ、ケイマンフィーダー側の4%上場株式譲渡はFIRPTA課税免除なはず。マスターファンドのストラクチャーでも一部のヘッジファンドがやってるみたいにマスターとケイマンフィーダーの間にもう一つサブパートナーシップがあるようなケースとかでうまくマネージできることもあるかもしれないけど、Tradeを別のVehicleでパラレルでやってバランスさせるのは実務的に大変だろうし、また各Vehicleが全てのサービスプロバイダー、例えばPrime Brokerとか、と各々契約しないといけないんでやっぱりマスターファンドの活用が便利だよね。
で、ここまで書いたらIRSのLegal Memoがどんな見解かだいたい予想が付いたと思うけど、なんとパートナーシップレベルで判断するべき、とのこと。え~、パートナーシップだからLook-throughじゃないの?って思うけど、パートナーシップは「Person」であり(それは本当にそう)、パートナーがUSTOBに従事してるかどうかもパートナーシップレベルで決めるんで云々、とかいくつかパートナーシップそのものをEntityとして取り扱う正当性が記載されてた。で、何をいつLook-throughするのかって論点は本題のDC REITの規則案の神髄部分なんで、DC REITにかかわるルールを後述する際、Legal Memoの上場株式の取り扱いと対比してみて欲しい。
ちなみにLegal Memoって法律じゃないんで拘束力とかないけど、Private Letter Rulingとか個別の納税者に対する見解との比較で、一般的なコメントなんで反って怖い。もちろん納税者有利なLegal Memoだったら喜んで活用するんだけどね。
という訳で今回は結局REITそのものの話しに至らなかったけど、FIRPTA課税にかかわる面白い話しだったんでお許しを。
日米租税条約とFIRPTA
今の日米租税条約は2003年バージョンだけど、日本居住者(LOB満たす者)が米国不動産譲渡益を認識する際に米国に課税権を認めている13条(もちろん条約なんで逆方向のケースにも同様に適用があるけど、FIRPTAの話しなんで米国不動産にかかわる方向にフォーカス)のもともとの文言は、米国法人の株式譲渡にかかわる米国課税権を「資産価値の50%以上が米国不動産により直接・間接に構成される法人に限る」という趣旨のものだった。え~、何コレって当時はビックリ。この定義はFIRPTA課税の適用を受ける米国法人の株式と微妙に異なるからだ。
すなわち前回のポスティングで延々と話したように、米国不動産持分の定義に見られる過去5年間のLook-Backがないし、また条約の50%以上計算時に分母として使う資産、英語では「Its assets」だけど、に特に事業資産に限定するっていう文言はない。つまり2003年の条約は米国法人株式の譲渡に対するFIRPTA課税を、米国不動産持分ではなく神話のひとつだった米国不動産所有法人に似てるけどそれとも違う第三の変な定義に基づいて適用してた。なんで、前日まで法人資産の50%以上を米国不動産持分が占めてても、翌日目が覚めて49%になってたら、そんな米国法人の株式譲渡益は条約ポジションでFIRPTA課税免除になってた。しかも、これは決してCarelessなドラフティング結果じゃなくて、当時の条約批准時の上院ヒアリングで問題が指摘されたりした上で特別に認められている。米国の多くの条約でも日米租税条約以外にはほぼなくて、他には言葉は変だけどマイナーな条約に1~2あるだけだったと記憶している。
っていう訳で余り注目されてなかったものの、かなりの特典だった。でもこの定義は2013年の議定書で改定され、今では米国内法の米国不動産持分の定義を参照する形にアップデートされてしまった。2013年の議定書っていうとあたかも2013年から発効しているような錯覚を覚えるかもしれないけど、米国側の批准に長年かかって2019年8月末からようやく発効した。つまりそれまでは日本居住者に対するFIRPTA課税はかなり緩かったってことになるね。タイムマシーンで戻りたい?
衝撃のIRS内部Legal Memo
で、Interstate 29でふと思い出した2019年までの日米租税条約の特典に触れることもできたんで、いよいよ満を持してREIT続行って思った矢先に、絶妙のタイミングでIRS内法務部に当たるChief Counsel OfficeがFIRPTA関係の衝撃的な内部Legal Memoを公表したんで急遽そっちにも触れざるを得なくなった。余りにExcitingな毎日だ。
前回のポスティングで触れた通り、米国法人の株式(正確には持分だけど分かりやすい株式って言っておく)は納税者側で反証できない限り、自動的に米国不動産持分になる。まさかこんなタイミングでLegal Memoが出るとはつゆ知らずだんたんで、その時点では「株式市場で流通している株式に関しては5%以下の株式は米国不動産持分にならない」っていう有利な例外があるってサラッと触れただけだった。この例外がないとリテール投資家を含むNRAや外国法人が米国株式市場で僅かな%の株式を売るたびに反証するのは非現実的だから、全て申告書提出して譲渡損益を報告しないといけなくなる。なんでまあ当然の例外規定。ちなみに株式市場で流通しているREIT持分に関しては5%の代わりに10%まで例外条件が引き上げられている。複数あるREITのみに認められる特典の一つだ。
5%ルールや10%ルールの例外が適用されるのは普通の法人株式にしても、REITにしても公認株式市場(「Established Market」)で流通(「regularly traded」)している株式。なんで、証券法や投資法に基づいて持分がSECに登録されてても「RegularlyにTrade」されてないと当例外の適用はない。例えばExitが償還(Redemption)っていう形で想定されてて持分譲渡が自由にできないタイプのREITとかは、持分がSECに登録されててもTradeされてることにならないんでこの例外は使えない。またTradeが可能でも「Regularly」にTradeされてないといけない。何をもってTradeがRegularかっていう点に関しては1980年代から財務省規則に紆余曲折があって、規則に定義が現れたり、それが撤回されて最終規則(Final Regulations)では「Reserved」、すなわち今後の規則策定に期待、みたいな状況になったと同時に暫定規則(Temporary Regulations)に定義が移動して現在に至る。暫定規則は規則案(Proposed Regulations)と異なり法的効果を持つ点はFinal Regulationsと同等。定義そのものを詳解するスペースはとてもないけど、四半期毎のテストとか本気でやると結構大変、とだけ言っとくね。
で、株式市場で流通している米国法人の株式(チョッと面倒なんで誤解覚悟でここでは上場株式って言っておく)をパートナーシップが所有してるケースで、この5%をどのレベルで判断するべきか、っていう点は長年明確じゃなかった。例えばケイマンフィーダー(当然CTBで法人課税選択)とデラウェア州LPSが各々50%づつマスターファンドを所有するストラクチャーのヘッジファンドがあるとする。で、そんなマスターファンドが上場株式を8%所有してるとする。デラウェア州LPSのDomesticフィーダーに投資するLPは米国個人、米国法人、または州のペンションファンドとかのSuper-Exemptとすると、FIRPTA課税の検討が必要となるのは外国法人のケイマンフィーダーのみで、Domestic Feeder経由で投資してるLPの視点からは、持分が5%以下かどうか、すなわち株式が米国不動産持分になるかっていう検討は一切課税関係に影響がない。じゃ、ケイマンフィーダーが上場株式の何%を持っているのか、って部分だけど、マスターファンドが8%持ってて、マスターファンドに対するケイマンフィーダーの持分が50%だから4%と違うの?ってなるところ。パートナーシップは法人と違ってLook-throughだし、別の規定だけど利子所得の源泉税が免除されるPortfolio Exemption適用時の10%制限もパートナーレベルで判断って明確な規則もあるし、上場株式の例外もパートナーレベルで判断するべきって密かに確信してるアドバイザーは多かっただろう(既に「過去形」になってて怖い?)。でも間違ってFIRPTA課税になったりすると面倒なんで、君子危うきに近寄らずだから保守的に5%や10%をパートナーシップレベルで判断せざるを得ない状況が続いていた。
ちなみにマスターファンドを使わずにピュアにパラレルファンドにすればこの問題は少ない。今でもたまにパラレルのヘッジファンドとか見ることがあるけど、ケイマンフィーダーに当たる外国人LPおよびDebt-Finance UBTIを嫌う普通の(つまりSuper-Exemptじゃない)Tax-Exemptが投資する側のファンドと米国LPサイドのファンドが各々別々に4%づつ株式を持ってて、変なAttribution規定とかに抵触しなければ、ケイマンフィーダー側の4%上場株式譲渡はFIRPTA課税免除なはず。マスターファンドのストラクチャーでも一部のヘッジファンドがやってるみたいにマスターとケイマンフィーダーの間にもう一つサブパートナーシップがあるようなケースとかでうまくマネージできることもあるかもしれないけど、Tradeを別のVehicleでパラレルでやってバランスさせるのは実務的に大変だろうし、また各Vehicleが全てのサービスプロバイダー、例えばPrime Brokerとか、と各々契約しないといけないんでやっぱりマスターファンドの活用が便利だよね。
で、ここまで書いたらIRSのLegal Memoがどんな見解かだいたい予想が付いたと思うけど、なんとパートナーシップレベルで判断するべき、とのこと。え~、パートナーシップだからLook-throughじゃないの?って思うけど、パートナーシップは「Person」であり(それは本当にそう)、パートナーがUSTOBに従事してるかどうかもパートナーシップレベルで決めるんで云々、とかいくつかパートナーシップそのものをEntityとして取り扱う正当性が記載されてた。で、何をいつLook-throughするのかって論点は本題のDC REITの規則案の神髄部分なんで、DC REITにかかわるルールを後述する際、Legal Memoの上場株式の取り扱いと対比してみて欲しい。
ちなみにLegal Memoって法律じゃないんで拘束力とかないけど、Private Letter Rulingとか個別の納税者に対する見解との比較で、一般的なコメントなんで反って怖い。もちろん納税者有利なLegal Memoだったら喜んで活用するんだけどね。
という訳で今回は結局REITそのものの話しに至らなかったけど、FIRPTA課税にかかわる面白い話しだったんでお許しを。
Saturday, May 20, 2023
FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (4))
前回まで、新たに公表されたFIRPTA課税系の規則草案の話しをするためのお膳立てとして、インバウンド課税およびFIRPTA課税の大基本に触れた。5月はNebraska州滞在で始まったんだけど早くも月後半に突入。5月前半にNebraskaって言えば何しに行ったかすぐに分かるね(特に5大商社の方がいらしたら)?米国MidwestでもシカゴやPeoriaがあるIllinoisより西に行くのは実は久しぶり。なんだかんだ結局1年ぶりだったんでたまたま気候も良くて大満喫。Destinationは他でもないOmahaだからNebraskaとは言え実際にはほとんどIowa州。Interstate 29で北に向かうとSioux Cityを超えてSioux Falls。憧れのSouth Dakotaだ。Interstateの大きな横断標識に北に行くと「Sioux City」とか出てくるとそれだけで盛り上がる。大きなSUVでのんびりドライブ、って言ってもトラフィックないんで気が付くと90マイルくらいのスピードでそれでもバックしているとまでは言わないけど止まっているみたいな感覚で、普段の喧騒を忘れさせてくれた。地平線見ながらFIRPTA課税の基本を考えたりしてたけど(せっかくのドライブが台無し?)、基本部分だけでもまだまだ触れたいトピックは多い。でも既に5月も後半に差し掛かってきてるっていうこのタイミングだし、ここは断腸の思いで(大げさ~)規則案に移る。
2022年末公表のFIRPTA課税規則パッケージ
2022年末ギリギリにいきなり公表されたFIRPTA課税関係の規則のうち、QFPFに関しては2019年に規則案が出てたんでそれを最終化したもの。QFPFの規則最終化はタイミングやその内容は別として、最終化自体は近々起こるだろう、って予測されてたんパッケージにこれが含まれてたこと自体に驚きはない。ただ、CAMTとか自社株買いのルールとか2023年が始まる前に何とかして押し込んでおきたかったガイダンスとの対比で、QFPFの規則最終化を敢えてにみんながマイアミビーチでリラックスしてる12月29日に公表しないといけなかったどうかは評価の割れるところ。おかげで年末年始のReading Assignmentが増えたよね。
で、そんなFIRPTA課税パッケージに含まれてた規則で一番唐突っていうか意外だったのがDC REITの持分に関するもの。DCは以前のポスティングで定義してるんで、またスペルアウトしたりするのは個人哲学的に容認し難いところなんだけど、時間が経ってるんで禁じ手で再度言っておくと、DCは米国の首都で州政府ではなく連邦政府が直轄する唯一の領土(正確には内務省その他が管理するNational Parkを含む「Federal Land」に加えて)「District of Columbia」のこと。じゃもちろんなくて「Domestically Controlled」のこと。何をもってDCになるか、っていう点に触れ始めると規則案の神髄をいきなく直撃することになるんで、そんな衝動はグッと抑えてまずはDC REITを理解するのに最低限必要なREITとインバウンド課税基本編。基本編って言っても、2~3回のポスティングでは到底カバーできる内容じゃないんで必ず個別のケース毎にFee払って(?)アドバイスを受けるように。
REIT
REITは、プロによる管理・リスク分散が可能な不動産投資にリテール投資家がアクセスできるように、っていう趣旨で1960年に誕生したありがたい制度。
REIT適格になるには多くの条件があるけど、まず、REITは米国税務上、米国Corporationと取り扱われる主体でないといけない。米国の憲法というか、米国税務を語る際の大基本だけど、主体というのは常にデラウェア州等の州法で組成される。一方、連邦税務上これらの主体をどのように区分するか、は州法に束縛されることなく、連邦税法の視点から自由に判断・決定する。なんで、法的な主体が州や外国法で認知されているにもかかわらず支店扱い(Disregard)されたり、法的な主体を組成したつもりがないJV契約やCollaboration契約がそのTerms次第でパートナーシップという「主体」になったりする。また州の会社法上、GP, LP, LLP, LLCとかいろんなタイプの主体が存在しても、税務上はCorporationとして組成されていない限り、Corporationとして課税されるかパススルーとして課税されるかを納税者側で任意に選択することができる。LLC税法とか存在しないからね。
なんでREITも州法上の区分は必ずしもCorporationである必要はなく、LLCでもLPでも税務上Corporation課税を選択してればいい。実際、REIT、特に上場REITの大多数はMaryland州のTrustっていう形で組成される。上場企業がDelaware州で設立される点との対比で面白い。DelawareがCorporateマターに明るくCutting Edgeなのと同様、MarylandはREITに関するトップの座を維持するため継続して州法をアップデートしてるし、REITにかかわる州の造詣が深い。MarylandにはREITに特化したTrust法があり、多くはガバナンス系の観点だけど、対価を受け取ることなくREIT持分を交付できたりする。REITの持分要件の充足に便利でREITフレンドリー。
もちろんだけど、MarylandのTrustがREITになるには、税務上、Corporationとして取り扱われる必要がある。ということはTrustがCheck-the-Boxすることになるけど、どんな時にTrustがCheck-the-Boxできるか、すなわち信託に対する課税を規定しているSub Jの対象でなくなるか、Massachusettsの信託や最高裁判所判例とかそれはそれは深淵な世界なんで機会があればそのうちね。TrustがLLCみたいにいつでもCheck-the-Boxできるって誤解をしてるケースや、日本の信託の米国税務上の区分を検討することなくいきなり米国投資ストラクチャーを語ったりするケースを見ることがあるけど、他の主体と違ってTrustは特別だからね。TrustのCheck-the-Box神話とでも言っておこうか。
でも、REITが不動産を税務上パートナーシップに区分される主体を介して所有しているのを見ることがあるけど、って言う方が居たら、それはある程度REITに関与したことがある読者だろう。REIT自体はCorporation課税される主体である必要があるけど、その下のいわゆるOp-Coはパートナーシップでもいい。特に後から不動産ポートフォリオをREITに出資するケースでは、Corporation扱いされているREITそのものに出資すると大概のケースで課税取引になるんで、傘下のパートナーシップに入れてREIT持分と等価交換できるオプション付きのパートナーシップ持分を対価として受け取るストラクチャーを取るのが一般的。UP-REITだ。このUP-REIT、もともとその名の通りREITに関してパートナーシップ税制のAnti-Abuse規定には抵触しません、っていうお墨付きをもらってるけど、これがもとでUP-Cが発展したんだね。UP-Cに関してAnti-Abuseに引っかからないていう規則はないって理解しているけど、ひとつのテクノロジーが徐々に他のストラクチャーに展開していくいい例。米国の専門家や投資銀行のクリエイティビティにはいつも感心させられる。
また、REITはCorporation扱いなんでクロスボーダー局面では原則ブロッカーとして機能し得る。そんなこと言うと、え~、REIT投資するためにケイマンとかのブロッカー経由にしたけどダブルだったの~?、ってショックを受ける方もいるかもね。まあ、REITは損失とかパススルーしないんでパートナーシップみたいなパススルーじゃないけど、所得を分配すると課税所得から除外されるんで、二重課税がないっていう点ではパススルーもどき。REITのパススルー神話。また、この点は次回以降に深く触れるけど、分配の原資がREITによる米国不動産持分譲渡に帰す部分は、分配とは言え通常の配当所得ではなく、FIRPTA課税目的で国外投資家は譲渡損益の性格がそのまま温存されるんで、REITが米国不動産持分を譲渡するような投資戦略を取る場合には、Upper Tierのブロッカーが必要になる。この点はDC REITの話しとも深い関係にあるんで次回以降に再度触れたい。
で、米国Corporation扱いってことは、前回のFIRPTA課税基本編で触れた通り、REIT持分の譲渡はFIRPTA課税の対象となる。もちろん米国不動産持分じゃない、っていう反証ができればFIRPTA課税対象じゃなくなる。でも、REITだから米国不動産所有法人になるに決まってて反証できる訳ないじゃん、って思う人はあわてんぼうのサンタクロースさんだ。FIRPTA課税基本で触れたけど、ピュアに債権者として所有している持分や債権は米国不動産持分にはならない。一方、REITの適格資産には不動産を担保としたモーゲージ債権が含まれるんでモーゲージREITはREITだけどFIRPTA課税目的では不動産持分にはならない。さらにREITが所有する不動産は必ずしも米国に所在する不動産とは限んないんで、米国外不動産投資を戦略としているようなREITがあれば、それでもREITだけど米国不動産持分にはならない。
REITの適格要件、それも米国Corporation扱いされること、っていう大基本ステップで早くも時間を使い過ぎたんでここからは次回。Led Zeppelinの話しとかしてないのに長くなったね。
2022年末公表のFIRPTA課税規則パッケージ
2022年末ギリギリにいきなり公表されたFIRPTA課税関係の規則のうち、QFPFに関しては2019年に規則案が出てたんでそれを最終化したもの。QFPFの規則最終化はタイミングやその内容は別として、最終化自体は近々起こるだろう、って予測されてたんパッケージにこれが含まれてたこと自体に驚きはない。ただ、CAMTとか自社株買いのルールとか2023年が始まる前に何とかして押し込んでおきたかったガイダンスとの対比で、QFPFの規則最終化を敢えてにみんながマイアミビーチでリラックスしてる12月29日に公表しないといけなかったどうかは評価の割れるところ。おかげで年末年始のReading Assignmentが増えたよね。
で、そんなFIRPTA課税パッケージに含まれてた規則で一番唐突っていうか意外だったのがDC REITの持分に関するもの。DCは以前のポスティングで定義してるんで、またスペルアウトしたりするのは個人哲学的に容認し難いところなんだけど、時間が経ってるんで禁じ手で再度言っておくと、DCは米国の首都で州政府ではなく連邦政府が直轄する唯一の領土(正確には内務省その他が管理するNational Parkを含む「Federal Land」に加えて)「District of Columbia」のこと。じゃもちろんなくて「Domestically Controlled」のこと。何をもってDCになるか、っていう点に触れ始めると規則案の神髄をいきなく直撃することになるんで、そんな衝動はグッと抑えてまずはDC REITを理解するのに最低限必要なREITとインバウンド課税基本編。基本編って言っても、2~3回のポスティングでは到底カバーできる内容じゃないんで必ず個別のケース毎にFee払って(?)アドバイスを受けるように。
REIT
REITは、プロによる管理・リスク分散が可能な不動産投資にリテール投資家がアクセスできるように、っていう趣旨で1960年に誕生したありがたい制度。
REIT適格になるには多くの条件があるけど、まず、REITは米国税務上、米国Corporationと取り扱われる主体でないといけない。米国の憲法というか、米国税務を語る際の大基本だけど、主体というのは常にデラウェア州等の州法で組成される。一方、連邦税務上これらの主体をどのように区分するか、は州法に束縛されることなく、連邦税法の視点から自由に判断・決定する。なんで、法的な主体が州や外国法で認知されているにもかかわらず支店扱い(Disregard)されたり、法的な主体を組成したつもりがないJV契約やCollaboration契約がそのTerms次第でパートナーシップという「主体」になったりする。また州の会社法上、GP, LP, LLP, LLCとかいろんなタイプの主体が存在しても、税務上はCorporationとして組成されていない限り、Corporationとして課税されるかパススルーとして課税されるかを納税者側で任意に選択することができる。LLC税法とか存在しないからね。
なんでREITも州法上の区分は必ずしもCorporationである必要はなく、LLCでもLPでも税務上Corporation課税を選択してればいい。実際、REIT、特に上場REITの大多数はMaryland州のTrustっていう形で組成される。上場企業がDelaware州で設立される点との対比で面白い。DelawareがCorporateマターに明るくCutting Edgeなのと同様、MarylandはREITに関するトップの座を維持するため継続して州法をアップデートしてるし、REITにかかわる州の造詣が深い。MarylandにはREITに特化したTrust法があり、多くはガバナンス系の観点だけど、対価を受け取ることなくREIT持分を交付できたりする。REITの持分要件の充足に便利でREITフレンドリー。
もちろんだけど、MarylandのTrustがREITになるには、税務上、Corporationとして取り扱われる必要がある。ということはTrustがCheck-the-Boxすることになるけど、どんな時にTrustがCheck-the-Boxできるか、すなわち信託に対する課税を規定しているSub Jの対象でなくなるか、Massachusettsの信託や最高裁判所判例とかそれはそれは深淵な世界なんで機会があればそのうちね。TrustがLLCみたいにいつでもCheck-the-Boxできるって誤解をしてるケースや、日本の信託の米国税務上の区分を検討することなくいきなり米国投資ストラクチャーを語ったりするケースを見ることがあるけど、他の主体と違ってTrustは特別だからね。TrustのCheck-the-Box神話とでも言っておこうか。
でも、REITが不動産を税務上パートナーシップに区分される主体を介して所有しているのを見ることがあるけど、って言う方が居たら、それはある程度REITに関与したことがある読者だろう。REIT自体はCorporation課税される主体である必要があるけど、その下のいわゆるOp-Coはパートナーシップでもいい。特に後から不動産ポートフォリオをREITに出資するケースでは、Corporation扱いされているREITそのものに出資すると大概のケースで課税取引になるんで、傘下のパートナーシップに入れてREIT持分と等価交換できるオプション付きのパートナーシップ持分を対価として受け取るストラクチャーを取るのが一般的。UP-REITだ。このUP-REIT、もともとその名の通りREITに関してパートナーシップ税制のAnti-Abuse規定には抵触しません、っていうお墨付きをもらってるけど、これがもとでUP-Cが発展したんだね。UP-Cに関してAnti-Abuseに引っかからないていう規則はないって理解しているけど、ひとつのテクノロジーが徐々に他のストラクチャーに展開していくいい例。米国の専門家や投資銀行のクリエイティビティにはいつも感心させられる。
また、REITはCorporation扱いなんでクロスボーダー局面では原則ブロッカーとして機能し得る。そんなこと言うと、え~、REIT投資するためにケイマンとかのブロッカー経由にしたけどダブルだったの~?、ってショックを受ける方もいるかもね。まあ、REITは損失とかパススルーしないんでパートナーシップみたいなパススルーじゃないけど、所得を分配すると課税所得から除外されるんで、二重課税がないっていう点ではパススルーもどき。REITのパススルー神話。また、この点は次回以降に深く触れるけど、分配の原資がREITによる米国不動産持分譲渡に帰す部分は、分配とは言え通常の配当所得ではなく、FIRPTA課税目的で国外投資家は譲渡損益の性格がそのまま温存されるんで、REITが米国不動産持分を譲渡するような投資戦略を取る場合には、Upper Tierのブロッカーが必要になる。この点はDC REITの話しとも深い関係にあるんで次回以降に再度触れたい。
で、米国Corporation扱いってことは、前回のFIRPTA課税基本編で触れた通り、REIT持分の譲渡はFIRPTA課税の対象となる。もちろん米国不動産持分じゃない、っていう反証ができればFIRPTA課税対象じゃなくなる。でも、REITだから米国不動産所有法人になるに決まってて反証できる訳ないじゃん、って思う人はあわてんぼうのサンタクロースさんだ。FIRPTA課税基本で触れたけど、ピュアに債権者として所有している持分や債権は米国不動産持分にはならない。一方、REITの適格資産には不動産を担保としたモーゲージ債権が含まれるんでモーゲージREITはREITだけどFIRPTA課税目的では不動産持分にはならない。さらにREITが所有する不動産は必ずしも米国に所在する不動産とは限んないんで、米国外不動産投資を戦略としているようなREITがあれば、それでもREITだけど米国不動産持分にはならない。
REITの適格要件、それも米国Corporation扱いされること、っていう大基本ステップで早くも時間を使い過ぎたんでここからは次回。Led Zeppelinの話しとかしてないのに長くなったね。
Saturday, May 13, 2023
FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (3))
さて、前回は米国のインバウンド課税の大基本をおさらいして、FIRPTAがそのフレームワークの中でどのように機能してるか、ってとこまで触れることができた。この2つの検討も、本来は個々の事実関係に基づく詳細検討がMustな点はお忘れなく。
FIRPTAイコール源泉徴収神話
FIRPTAってNRAや外国法人に対する申告課税だけど、そうなるとその定義から言ってNRAや外国法人に申告書を出してもらわないといけない。でも、NRAや外国法人、特に個人のNRAや米国外のアドバイザーは、悪意はなくても米国税法の要件を良く理解してなかったりして、申告書を出し忘れたり、納税しないことも十分に想定される。米国内だったら資産差し押さえ等の法的措置に訴えることが可能でも、国外の納税者相手だとそうもいかない。
もともとFIRPTAが制定された1980年当時は、この点を米国不動産持分所有や外国人による譲渡にかかわる詳細かつ非実務的(?)なレポーティングシステムで捕捉・対応しようとしていた。元祖Section 6039Cレポーティング要件だ。このSection、今ではすっかり文言も変わり果ててDefunct状態。想像に難くないと思うけど、NRAや外国法人相手に6039Cレポーティングに基づくFIRPTA課税システムを強制しようとしても思ったように機能せず、最終的にはFIRPTAそのものの制定から遅れること4年、1984年にSection 1445が制定され、今の譲受人による源泉徴収システムで申告や納税を担保する手法に転換された。米国不動産持分をNRAや外国法人から取得する、すなわち対価を支払う譲受人側に多額の前納にかかわる責任を持たせ、資金がNRAや外国法人の手にわたる前に、グロス対価15%を源泉徴収してIRSに納付させる人質作戦。源泉徴収システム導入と同時にSection 6039Cは大幅に改正されて実質お蔵入りになってる。今のSection 6039Cは「財務省規則が出たら報告義務が…」って感じの文言で辛うじてCode上にその姿(残骸?)が残ってるけど、源泉徴収システムに転換してしまった後、もちろん財務省規則は出てないし、これからも出ることもないだろう。一層のこと条文をRepealしてしまえば良かったのにね。
外国人に対する米国課税は源泉システムの適用が他にも一般的だけど、源泉される金額そのものが最終税額となる「源泉税」と、最終税額は外国人が申告書を出してネット所得に対して計算するけど、予定納税同様、仮の金額で前納させる「源泉徴収」に大別される。前者はNon-ECI FDAP、配当、利子、ロイヤルティー等に対する30%源泉で、後者はECIにかかわるパートナーシップによる源泉や今回のテーマのFIRPTA等が典型的な例。
FIRPTAの源泉徴収額は「グロス」対価の15%だから、最終的な税額となるネット譲渡益の23.8%(NRA)や21%(外国法人)と余り関係がない。大げさに前納させることで、申告書を提出して還付申請する方向に持ち込むための人質だ。譲受人が源泉徴収義務を怠ると、本来FIRPTAは譲渡人側に課せられる税金にもかかわらず、譲受人が要徴収額に関して法的に納付義務を負い、IRSによる徴収対象となる。したがって、本来は譲渡人側の課税だけど、譲受人の方がセンシティブになる。それはそうだよね。不動産を100で買っただけで何の譲渡益もないのに、追加で15取られたんじゃ投資になんないもんね。
で、この源泉徴収部分こそがFIRPTAって勘違いされてるケースもあるんで、源泉徴収はFIRPTA課税による税金徴収、申告書提出を実質強要するために後から規定されたっていう点と、譲受人側の源泉義務や源泉からの免除規定は、必ずしも譲渡人側のFIRPTA課税またはFIRPTA免除ときれいにシンクロしていないので、密接な関係にあるとは言え、原則異なる規定と考える必要がある。FIRPTAイコール源泉徴収神話だ。もちろんだけど源泉徴収されてても、または源泉徴収漏れでも、譲渡人側のFIRPTA課税は変わらない。源泉徴収義務まわり、またその免除のためのペーパーワークは難を極める規定。米国法人がE&Pを超える分配を外国親会社や、他のNRAや外国法人株主に行う際にも源泉徴収義務が適用されたりして直観的にピンとこないケースも多く頭が痛い。FIRPTA源泉徴収に関しては、それだけで一年間は特集できるんで、この辺にしとくね。
米国不動産所有法人神話
REITその他にかかわる財務省規則案の話しに入る前のお膳立てのフェーズで多くの神話が登場し過ぎて、ギリシャで不死の神々を伝承する吟遊詩人になったような気分なんで、最後に米国不動産所有法人関係の神話で一旦ラップアップしてREIT等の話しに移るね。
前回のポスティングで触れた通り、FIRPTAは「NRAや外国法人による米国不動産持分の譲渡(Disposition)」に対する課税を規定する法律。NRAと外国法人が何かっていう点にはザックリだけど既に触れてるんで、後は何が米国不動産持分の譲渡に当たるか、っていう点がFIRPTAに抵触するかどうかの重要な判断基準になる。その際、どんな取引が「譲渡」か、っていう点にフォーカスしても別の本が書けそうだけど、ここでは譲渡は広範に定義されていて、課税・非課税にかかわらず所有権の移転を意味するとだけ言っておく。
で、何が「米国不動産持分」かっていう点だけど、大別して2つ。まずは実際の米国不動産に対する持分、すなわちFee Simple等の財産権は当然のことながら米国不動産持分となる。この点に関して驚きはないんだけど、この定義には伐採前の森林や、地下に眠る天然資源等が含まれる点に加え、通常は動産と考えられる資産が不動産使用に関連する際に不動産とみなされる等、FIRPTA独特のルールがあるんで注意が必要。動産がFIRPTA目的で不動産持分に含まれる教科書的な例はホテルなどの宿泊施設の家具だ。どこまでが不動産で、どこからは動産かっていう境界線に不変の真理はなく、線引きをする目的、例えば州の不動産税とか、毎に各法律の規定や定義に準じて決めるべきことで、FIRPTA目的と他の目的で不動産の定義が異なるのは不思議なことではない。「この資産はカリフォルニア州の不動産税の対象ではなく動産税対象なんでFIRPTA対象ではないのでは…」みたいな話しは「ふ~ん、で?」ってなるだけで的外れ。用語の字面に惑わされないように。
米国不動産持分となる2つ目のタイプの資産は米国法人に対する持分。すなわちFIRPTA目的では、原則、「米国法人」の株式に代表される持分は米国不動産持分になる。したがってNRAや外国法人が米国法人株式を譲渡する場合、FIRPTA課税および姉妹規定の譲受人側の源泉徴収規定に抵触することになる。グループ内再編やM&Aの際に面倒な議論になった経験をお持ちの読者も多いんでは?株式市場で流通している株式に関しては5%以下の株式は米国不動産持分にならないとか例外はいくつかあるけど、今日は一般論として何が米国不動産持分か、っていう点だけにフォーカスしておく。個々のケースで必ずアドバイザーの意見を入手するように。
で、全ての米国法人株式は米国不動産持分っていうのは推定事実認定で、この認定が嫌なら納税者は「そうではありません」って反証する必要がある。この反証義務を全うできない場合、実際に米国法人がどんな状況にあるかどうかにかかわらず、法的には株式が米国不動産持分になる。これは法執行の観点からは合理的な規定で、株式が不動産持分かどうか不明のままではFIRPTAどころではないんで、Presumption、すなわち推定事実認定をして、デフォルトの取り扱いを規定しているもの。
じゃあどうやって反証するの?っていう点が最重要課題になる。この判断は大別して米国法人に対する権利や持分を持っている側で判断できるケースと、米国法人そのものが判断して持分を所有している者、すなわち株主等に告知するべきケースの2通りがある。前者に属するものは、持分がピュアに債権者としての立場として財産権を有している場合。平たく言うとモーゲージを含む貸し付けにかかわる債権者が所有する貸付債権は債務者が米国法人でも米国不動産持分にはならない、ってこと。貸し付けにEquity Kickerみたいな部分があったり転換社債だったりするとピュアな債権者でなくなるので注意。この例外は正確には推定事実認定以前にテストされるんで、この段階で債権が米国不動産持分でなくなれば、法人側に反証義務は課されない。
ピュアな債権者以外の法的身分で米国法人の持分を所有する場合、最たる例は株式を所有してる例だけど、そのまま放っておくと持分はデフォルト的に米国不動産持分だから、納税者側で反証できるのであればしないといけない。株式等の持分が米国不動産持分ではなくなるのは、納税者側が「米国法人は過去5年間に一度も「米国不動産所有法人」ではなかった」と証明できるケース。米国不動産所有法人っていうのは法人が所有する資産のうち、「事業資産+米国不動産持分+米国外不動産持分」に占める「米国不動産持分」が「時価ベース」で50%以上(超ではない)の法人のこと。このテスト自体思ったほど単純ではなく、例えば現預金とか投資有価証券などが事業資産に当たるかどうかも含め争点は多い。単純にバランスシートで決められるものではない。時価ベースだしね。時価ではなくUS GAAPの簿価で代用するテストもあるけど、その場合は50%以上ではなく25%超ってより厳しい条件になる。
で、このテスト、過去5年に一度も米国不動産所有法人だったらいけません、っていう基準。分母の事業資産の時価とか毎日刻一刻と変化するから、5年間におよぶテストって、毎日計算し直して1825回テストすんの~?とか、いやいや流動資産は一日の中でも変化するから毎時間、仮に営業時間8時間に限定するとしても15,000回弱テスト?、とか、一時間内にも流動資産は変化するんで毎分ベースで90万回弱テスト?いやいや分の中でも動くでしょ、って毎秒ベースで5千2百万回テスト?とか、え~そんな~、みたいな状況になる。5千2百万回!さすがにこれはWorkableじゃないんで、「Determination Date」っていう概念があって、最低でも毎期末には計算することっていう規定になってる。フ~、これだと5回だから5千2百万回の5千万分の1で済むね。ただ、プラス、米国不動産持分の取得時点(分子増額)、米国外不動産持分の譲渡時点(分母減額)、また通常業務の範囲外の事業資産の譲渡時点(同じく分母減額)には毎回テストすること、ってされている。これらのテストは分数の結果が高くなるケースにフォーカスがある。
ここでまた吟遊詩人にならないといけないんで辛いところだけど、FIRPTA課税が適用されるのはあくまでも米国不動産持分(United States Real Property InterestすなわちUSRPI)を譲渡した場合。最重要ポイントは米国不動産持分イコール米国不動産所有法人(United States Real Property Holding CorporationすなわちUSRPHC)じゃないっていう点で、米国不動産所有法人を譲渡してもそれ自体をもってFIRPTA課税はトリガーされない。米国不動産所有法人神話だ。結構プロっぽい文献でも米国不動産所有法人の譲渡がFIRPTA課税対象、って表現されてて不幸なんだけど、それは普通のオーディエンスにはその区分を説明するのが面倒だから簡便的に不正確と知りつつ書いてるんだろう。
この差異を具体的な例で示すと、米国不動産持分は「米国法人」のみに適用される定義となる一方、米国不動産所有法人は法人の設立場所は問われない。例えばケイマン法人が米国不動産に投資している場合、当ケイマン法人は資産比率的に米国不動産所有法人になるとしても、米国法人じゃないから米国不動産持分にはなり得ない。NRAや外国法人が米国不動産持分を所有するケイマン法人を何百社と譲渡したところで株式を長期投資保有している限りにおいて米国で1ドルも課税は発生しない。
また、法人の「事業資産+米国不動産持分+米国外不動産持分」に占める「米国不動産持分」が「時価ベース」で50%未満になる場合、その時点で法人は米国不動産所有法人ではなくなる。でも、過去5年に一度でも米国不動産所有法人だった経緯がある米国法人の株式は、仮に法人が米国不動産所有法人でなくなったとしても引き続き米国不動産持分だから、NRAや外国法人による当株式の譲渡は5年待たない限り、そして5年間の待期期間において一度も再度米国不動産所有法人にならない前提で、ようやくFIRPTA課税の呪縛から解放されることになる。
じゃあ、なんで外国法人でもなり得る、そんな面倒な米国不動産所有法人っていう別の定義があるかっていうと、米国法人の株式が米国不動産持分になるかどうかの5年間テストの分数を算定する際に、分子・分母の双方に加味される「米国不動産持分」は、この分数テスト目的のみ米国内外を問わずに米国不動産所有法人の株式時価を合算する必要があるから。ただ、50%超の持分を持つ法人に関しては、下層法人内の資産をLook-throughする特別ルールがあるから注意が必要。
浄化(Cleansing)規定
上述の通り、米国法人株式が米国不動産持分かどうかは米国法人が過去5年に一度でも米国不動産所有法人だったかどうかで判断するのが原則だけど、有益な例外として浄化規定がある。この規定に基づくと、現時点で米国法人が米国不動産持分を全く所有しておらず(分子ゼロ)、過去5年間に米国不動産持分を少しでも所有してた経緯がある場合には、当持分は全て「課税取引」で譲渡された場合、そのような米国法人の株式は米国不動産持分には当たらないとされる。ただし、この例外はREITやRICには適用がない。
FIRPTAは実に複雑な規定なんできりがないんだけど、この辺でFIRPTA課税の一般編は終了し、次はいよいよ問題の財務省規則案に触れたい。
FIRPTAイコール源泉徴収神話
FIRPTAってNRAや外国法人に対する申告課税だけど、そうなるとその定義から言ってNRAや外国法人に申告書を出してもらわないといけない。でも、NRAや外国法人、特に個人のNRAや米国外のアドバイザーは、悪意はなくても米国税法の要件を良く理解してなかったりして、申告書を出し忘れたり、納税しないことも十分に想定される。米国内だったら資産差し押さえ等の法的措置に訴えることが可能でも、国外の納税者相手だとそうもいかない。
もともとFIRPTAが制定された1980年当時は、この点を米国不動産持分所有や外国人による譲渡にかかわる詳細かつ非実務的(?)なレポーティングシステムで捕捉・対応しようとしていた。元祖Section 6039Cレポーティング要件だ。このSection、今ではすっかり文言も変わり果ててDefunct状態。想像に難くないと思うけど、NRAや外国法人相手に6039Cレポーティングに基づくFIRPTA課税システムを強制しようとしても思ったように機能せず、最終的にはFIRPTAそのものの制定から遅れること4年、1984年にSection 1445が制定され、今の譲受人による源泉徴収システムで申告や納税を担保する手法に転換された。米国不動産持分をNRAや外国法人から取得する、すなわち対価を支払う譲受人側に多額の前納にかかわる責任を持たせ、資金がNRAや外国法人の手にわたる前に、グロス対価15%を源泉徴収してIRSに納付させる人質作戦。源泉徴収システム導入と同時にSection 6039Cは大幅に改正されて実質お蔵入りになってる。今のSection 6039Cは「財務省規則が出たら報告義務が…」って感じの文言で辛うじてCode上にその姿(残骸?)が残ってるけど、源泉徴収システムに転換してしまった後、もちろん財務省規則は出てないし、これからも出ることもないだろう。一層のこと条文をRepealしてしまえば良かったのにね。
外国人に対する米国課税は源泉システムの適用が他にも一般的だけど、源泉される金額そのものが最終税額となる「源泉税」と、最終税額は外国人が申告書を出してネット所得に対して計算するけど、予定納税同様、仮の金額で前納させる「源泉徴収」に大別される。前者はNon-ECI FDAP、配当、利子、ロイヤルティー等に対する30%源泉で、後者はECIにかかわるパートナーシップによる源泉や今回のテーマのFIRPTA等が典型的な例。
FIRPTAの源泉徴収額は「グロス」対価の15%だから、最終的な税額となるネット譲渡益の23.8%(NRA)や21%(外国法人)と余り関係がない。大げさに前納させることで、申告書を提出して還付申請する方向に持ち込むための人質だ。譲受人が源泉徴収義務を怠ると、本来FIRPTAは譲渡人側に課せられる税金にもかかわらず、譲受人が要徴収額に関して法的に納付義務を負い、IRSによる徴収対象となる。したがって、本来は譲渡人側の課税だけど、譲受人の方がセンシティブになる。それはそうだよね。不動産を100で買っただけで何の譲渡益もないのに、追加で15取られたんじゃ投資になんないもんね。
で、この源泉徴収部分こそがFIRPTAって勘違いされてるケースもあるんで、源泉徴収はFIRPTA課税による税金徴収、申告書提出を実質強要するために後から規定されたっていう点と、譲受人側の源泉義務や源泉からの免除規定は、必ずしも譲渡人側のFIRPTA課税またはFIRPTA免除ときれいにシンクロしていないので、密接な関係にあるとは言え、原則異なる規定と考える必要がある。FIRPTAイコール源泉徴収神話だ。もちろんだけど源泉徴収されてても、または源泉徴収漏れでも、譲渡人側のFIRPTA課税は変わらない。源泉徴収義務まわり、またその免除のためのペーパーワークは難を極める規定。米国法人がE&Pを超える分配を外国親会社や、他のNRAや外国法人株主に行う際にも源泉徴収義務が適用されたりして直観的にピンとこないケースも多く頭が痛い。FIRPTA源泉徴収に関しては、それだけで一年間は特集できるんで、この辺にしとくね。
米国不動産所有法人神話
REITその他にかかわる財務省規則案の話しに入る前のお膳立てのフェーズで多くの神話が登場し過ぎて、ギリシャで不死の神々を伝承する吟遊詩人になったような気分なんで、最後に米国不動産所有法人関係の神話で一旦ラップアップしてREIT等の話しに移るね。
前回のポスティングで触れた通り、FIRPTAは「NRAや外国法人による米国不動産持分の譲渡(Disposition)」に対する課税を規定する法律。NRAと外国法人が何かっていう点にはザックリだけど既に触れてるんで、後は何が米国不動産持分の譲渡に当たるか、っていう点がFIRPTAに抵触するかどうかの重要な判断基準になる。その際、どんな取引が「譲渡」か、っていう点にフォーカスしても別の本が書けそうだけど、ここでは譲渡は広範に定義されていて、課税・非課税にかかわらず所有権の移転を意味するとだけ言っておく。
で、何が「米国不動産持分」かっていう点だけど、大別して2つ。まずは実際の米国不動産に対する持分、すなわちFee Simple等の財産権は当然のことながら米国不動産持分となる。この点に関して驚きはないんだけど、この定義には伐採前の森林や、地下に眠る天然資源等が含まれる点に加え、通常は動産と考えられる資産が不動産使用に関連する際に不動産とみなされる等、FIRPTA独特のルールがあるんで注意が必要。動産がFIRPTA目的で不動産持分に含まれる教科書的な例はホテルなどの宿泊施設の家具だ。どこまでが不動産で、どこからは動産かっていう境界線に不変の真理はなく、線引きをする目的、例えば州の不動産税とか、毎に各法律の規定や定義に準じて決めるべきことで、FIRPTA目的と他の目的で不動産の定義が異なるのは不思議なことではない。「この資産はカリフォルニア州の不動産税の対象ではなく動産税対象なんでFIRPTA対象ではないのでは…」みたいな話しは「ふ~ん、で?」ってなるだけで的外れ。用語の字面に惑わされないように。
米国不動産持分となる2つ目のタイプの資産は米国法人に対する持分。すなわちFIRPTA目的では、原則、「米国法人」の株式に代表される持分は米国不動産持分になる。したがってNRAや外国法人が米国法人株式を譲渡する場合、FIRPTA課税および姉妹規定の譲受人側の源泉徴収規定に抵触することになる。グループ内再編やM&Aの際に面倒な議論になった経験をお持ちの読者も多いんでは?株式市場で流通している株式に関しては5%以下の株式は米国不動産持分にならないとか例外はいくつかあるけど、今日は一般論として何が米国不動産持分か、っていう点だけにフォーカスしておく。個々のケースで必ずアドバイザーの意見を入手するように。
で、全ての米国法人株式は米国不動産持分っていうのは推定事実認定で、この認定が嫌なら納税者は「そうではありません」って反証する必要がある。この反証義務を全うできない場合、実際に米国法人がどんな状況にあるかどうかにかかわらず、法的には株式が米国不動産持分になる。これは法執行の観点からは合理的な規定で、株式が不動産持分かどうか不明のままではFIRPTAどころではないんで、Presumption、すなわち推定事実認定をして、デフォルトの取り扱いを規定しているもの。
じゃあどうやって反証するの?っていう点が最重要課題になる。この判断は大別して米国法人に対する権利や持分を持っている側で判断できるケースと、米国法人そのものが判断して持分を所有している者、すなわち株主等に告知するべきケースの2通りがある。前者に属するものは、持分がピュアに債権者としての立場として財産権を有している場合。平たく言うとモーゲージを含む貸し付けにかかわる債権者が所有する貸付債権は債務者が米国法人でも米国不動産持分にはならない、ってこと。貸し付けにEquity Kickerみたいな部分があったり転換社債だったりするとピュアな債権者でなくなるので注意。この例外は正確には推定事実認定以前にテストされるんで、この段階で債権が米国不動産持分でなくなれば、法人側に反証義務は課されない。
ピュアな債権者以外の法的身分で米国法人の持分を所有する場合、最たる例は株式を所有してる例だけど、そのまま放っておくと持分はデフォルト的に米国不動産持分だから、納税者側で反証できるのであればしないといけない。株式等の持分が米国不動産持分ではなくなるのは、納税者側が「米国法人は過去5年間に一度も「米国不動産所有法人」ではなかった」と証明できるケース。米国不動産所有法人っていうのは法人が所有する資産のうち、「事業資産+米国不動産持分+米国外不動産持分」に占める「米国不動産持分」が「時価ベース」で50%以上(超ではない)の法人のこと。このテスト自体思ったほど単純ではなく、例えば現預金とか投資有価証券などが事業資産に当たるかどうかも含め争点は多い。単純にバランスシートで決められるものではない。時価ベースだしね。時価ではなくUS GAAPの簿価で代用するテストもあるけど、その場合は50%以上ではなく25%超ってより厳しい条件になる。
で、このテスト、過去5年に一度も米国不動産所有法人だったらいけません、っていう基準。分母の事業資産の時価とか毎日刻一刻と変化するから、5年間におよぶテストって、毎日計算し直して1825回テストすんの~?とか、いやいや流動資産は一日の中でも変化するから毎時間、仮に営業時間8時間に限定するとしても15,000回弱テスト?、とか、一時間内にも流動資産は変化するんで毎分ベースで90万回弱テスト?いやいや分の中でも動くでしょ、って毎秒ベースで5千2百万回テスト?とか、え~そんな~、みたいな状況になる。5千2百万回!さすがにこれはWorkableじゃないんで、「Determination Date」っていう概念があって、最低でも毎期末には計算することっていう規定になってる。フ~、これだと5回だから5千2百万回の5千万分の1で済むね。ただ、プラス、米国不動産持分の取得時点(分子増額)、米国外不動産持分の譲渡時点(分母減額)、また通常業務の範囲外の事業資産の譲渡時点(同じく分母減額)には毎回テストすること、ってされている。これらのテストは分数の結果が高くなるケースにフォーカスがある。
ここでまた吟遊詩人にならないといけないんで辛いところだけど、FIRPTA課税が適用されるのはあくまでも米国不動産持分(United States Real Property InterestすなわちUSRPI)を譲渡した場合。最重要ポイントは米国不動産持分イコール米国不動産所有法人(United States Real Property Holding CorporationすなわちUSRPHC)じゃないっていう点で、米国不動産所有法人を譲渡してもそれ自体をもってFIRPTA課税はトリガーされない。米国不動産所有法人神話だ。結構プロっぽい文献でも米国不動産所有法人の譲渡がFIRPTA課税対象、って表現されてて不幸なんだけど、それは普通のオーディエンスにはその区分を説明するのが面倒だから簡便的に不正確と知りつつ書いてるんだろう。
この差異を具体的な例で示すと、米国不動産持分は「米国法人」のみに適用される定義となる一方、米国不動産所有法人は法人の設立場所は問われない。例えばケイマン法人が米国不動産に投資している場合、当ケイマン法人は資産比率的に米国不動産所有法人になるとしても、米国法人じゃないから米国不動産持分にはなり得ない。NRAや外国法人が米国不動産持分を所有するケイマン法人を何百社と譲渡したところで株式を長期投資保有している限りにおいて米国で1ドルも課税は発生しない。
また、法人の「事業資産+米国不動産持分+米国外不動産持分」に占める「米国不動産持分」が「時価ベース」で50%未満になる場合、その時点で法人は米国不動産所有法人ではなくなる。でも、過去5年に一度でも米国不動産所有法人だった経緯がある米国法人の株式は、仮に法人が米国不動産所有法人でなくなったとしても引き続き米国不動産持分だから、NRAや外国法人による当株式の譲渡は5年待たない限り、そして5年間の待期期間において一度も再度米国不動産所有法人にならない前提で、ようやくFIRPTA課税の呪縛から解放されることになる。
じゃあ、なんで外国法人でもなり得る、そんな面倒な米国不動産所有法人っていう別の定義があるかっていうと、米国法人の株式が米国不動産持分になるかどうかの5年間テストの分数を算定する際に、分子・分母の双方に加味される「米国不動産持分」は、この分数テスト目的のみ米国内外を問わずに米国不動産所有法人の株式時価を合算する必要があるから。ただ、50%超の持分を持つ法人に関しては、下層法人内の資産をLook-throughする特別ルールがあるから注意が必要。
浄化(Cleansing)規定
上述の通り、米国法人株式が米国不動産持分かどうかは米国法人が過去5年に一度でも米国不動産所有法人だったかどうかで判断するのが原則だけど、有益な例外として浄化規定がある。この規定に基づくと、現時点で米国法人が米国不動産持分を全く所有しておらず(分子ゼロ)、過去5年間に米国不動産持分を少しでも所有してた経緯がある場合には、当持分は全て「課税取引」で譲渡された場合、そのような米国法人の株式は米国不動産持分には当たらないとされる。ただし、この例外はREITやRICには適用がない。
FIRPTAは実に複雑な規定なんできりがないんだけど、この辺でFIRPTA課税の一般編は終了し、次はいよいよ問題の財務省規則案に触れたい。
Friday, April 28, 2023
FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案 (2))
前回はCAMTをめでたく卒業し、FIRPTA財務省規則案のポスティングを開始した後に、ビーチバレーに繰り出した。レシーブし過ぎてチョッと手が痛かったけど、一日経って元に戻りました。
で、FIRPTAの規則案に関して主たるトピックとなるDC REIT、外国政府、QFPF、等の具体的な話しの予備知識として、前回はFIRPTAの対象となる納税者、すなわちNRAと外国法人に触れた。誰がFIRPTA対象になるか分かったんで、今日はFIRPTAが適用される際の米国課税関係に関して。特に普段から各方面の方と話したり、アドバイスしたりする際に感じる誤解、すなわち「FIRPTA神話」にフォーカスしてみたい、ってことだったよね。
米国インバウンド課税システム
FIRPTAって米国のインバウンド課税システムの一部を構成してるんで、FIRPTA課税を語るには超ハイレベルにインバウンド課税システムそのものに触れざるを得ない。これ、もちろん簡単に片付く話しじゃないんだけど、敢えてザックリ言うと、外国人が米国で連邦税金を支払う局面は2つ。
まず1つ目は、米国事業(USTOB)に関連する所得(ECI)を得てるケースで、その場合は申告書を出して費用を控除した後のネット所得に対して税金を支払う。2つ目はキャピタルゲインや動産譲渡益「以外の」米国源泉所得(FDAP)、語弊覚悟で言うと、キャピタルゲイン以外の米国源泉「投資」所得で、1つ目のカテゴリーに含まれない所得(Non-ECI FDAP)、に対する30%の源泉税。双方ともに条約の特典を得ることができる外国人には減免が適用されることが多い。
ECIに対する課税は、申告書を提出して、費用控除後のネット課税所得に米国法人や市民・居住者に適用される税率を乗じて税負担を算定する申告課税。仮にパートナーシップ経由でECIがあったりして源泉徴収された税金が存在しても、それはあくまでも外国人に変わって予定納税をしてくれているだけで、源泉税のように最終税額にはならず、申告書を提出して計算する必要がある。さらに外国法人には法人税引き後の所得に一定要件下で30%のBranch Profits Tax(BPT)が追加で課せられる。
ECIの課税関係を検討する際は、2つのステップでテストする。必ず2つのテストを律儀に順番を守って適用すること。第1ステップは外国人が米国でUSTOBに従事してるかどうか。何がUSTOBかは原則、判例や通達に基づく事実認定で機械的なテストはなく、必ずしも個々の判例や通達のテスト間に整合性があるとは限らず、多くのケースでグレー。この答えが「NO」だったら、申告課税はない。「YES」の場合のみ、そのUSTOBに関連する所得、すなわちECIがあるかどうかの検討に移る。USTOBがあっても、ECIがあるとは限らない。USTOBが存在してしまうと外国人の所得全てが米国で課税対象になるような懸念を持つケースがあるけど、そんなことはない。ECIがゼロな年もある。これってFIRPTAの話しじゃないんでFIRPTA神話にはなんないけど、ECI神話って言えるかもね。でも、USTOBがある限り、ECIがなくても申告書は出さないといけない。条約のPEプロテクションで課税免除となるケースも同じ。USTOBがあって提出する申告書は法律上提出が求められるんで、厳密には「Protective」Returnではない。すなわちオプションではないってことでこの点も神話のひとつ。Protective Return神話だ。Protective Returnっていうのは本来、納税者としてはUSTOBはないというポジションを合法的に取ってるけど、万一IRSと意見が割れて後日USTOBおよびECIを認定される場合に備えて防御的に提出するもの。申告書が出てないと、費用控除を取る権利を喪失する点、また時効の成立は申告書提出日から数えるんで出してないと永遠に時効が成立しない点、に対応するもの。ただ、1120FのInstructionsで、USTOBがあって提出が強制されるけどECIがないケースでも1120Fの1ページ目の「Protective」箱をチェックするように書かれていてチョッとConfusing。
細かいけどECIに関する重要なポイントとして、ECIは実際に外国人が認識するグロス所得ベースで判断する。AOAベースの条約に基づくPE帰属所得の認定と異なり、「本当に」外国人が認識するグロス所得がUSTOBに関連する場合にECIとなり、フィクションで本支店間でファントム所得や費用を認識することはない。どんなケースでグロス所得がECIになるかの判断は結構細かに規定されてて、所得のタイプ、源泉地に基づいてグロス所得毎に検討する。グロス所得ベースでECIがあれば、次に外国人が認識する費用のうちECIに帰する金額を配賦・案分してネットECIを計算する。最初からネットしてECIかどうか考えるんじゃないからね。これもECI神話のひとつ。
FIRPTA課税とScope神話
で、そんなインバウンド課税のフレームワークの中に登場するFIRPTAだけど、FIRPTAはNRAや外国法人による米国不動産持分の「譲渡(Disposition)」に適用される。REITを含む米国不動産への投資には、譲渡損益ばかりでなく、所有期間の課税関係も付きまとうけど、そっちは通常のインバウンド課税の規定に基づいて判断するもので、FIRPTAは一切登場しない。初級Scope神話だ。
米国不動産投資が通常のインバウンド課税ルールで1のテストに引っかからない場合、例えば不動産をPassiveに所有してるだけでトリプルネットリースに供しているとか、単に値上がりを期待して森を持ってるとか、更にマイアミハーバーを見下ろすコンドを自分用に持ってるとか、の場合、これらの活動はUSTOBではないと言えるのでECI課税はない。なんで米国の課税関係有無は2つめの源泉税有無を判断することになる。そんな状況で仮にトリプルネットリースで賃貸料を受け取る場合はNon-ECI FDAPだから30%の源泉「税」対象となる。この30%はECIに対する予定納税の源泉「徴収」じゃなくて最終税額。条約を適用しても30%源泉に対する減免は通常ない。もちろんグロス賃貸所得に30%持っていかれたんでは投資になんない。米国政府のために投資活動してるみたいな状況に陥るから、無理やりアクティブにしてECI化する、または国内法に規定されるECI選択をしてネット申告課税にする等の策が必要。
さらにこれらのUSTOBに供されていない米国不動産を譲渡する場合、USTOBに供されている資産ではないから譲渡損益がECIにはなり得ない。さらに2つ目のテストでもキャピタルゲインは源泉税対象ではないので、結果、1と2のテストを通過し米国では課税が無くなってしまう。この点を重く見て、米国内の投資家同様、米国不動産譲渡損益に対してUSTOB有無にかかわらず課税するのがFIRPTA。ようやくFIRPTAの課税関係に至ったね!で、FIRPTAは譲渡損益は通常の事実認定ではECIにならないケースでも、米国不動産持分の譲渡損益は「みなしで強制ECI」として取り扱う、っていうメカニズム。ECIとなるからには、本当のECI同様、申告課税対象になる。なんでもちろんだけど、損失でも譲渡日を含む課税年度は申告書を出さないといけない。通常のECI同様、多くのNRAや外国法人にとって、譲渡益課税は受け入れ可でも、申告書提出要件の方が嫌がられる。
で、このようにFIRPTAは実際にECIじゃない譲渡損益をECIとみなす、っていう規定に過ぎず、実際のECIに対する課税をオーバーライドする規定ではない。すなわち通常のステップ1のOverlayで共存関係にある。どっちにしてもECI課税なんでFIRPTAで課税されてんのか、通常のECIとして課税されてんのかは多くのケースで実務的な差異はないけど、QFPFみたいに何らかの理由でFIRPTAから免除されてても、だからと言って必ずしも譲渡益に米国で課税されないとは限らない。QFPFがFIRPTA免除だからって「やった~。米国で不動産買います」っていう場合、トリプルネットリース物件を一件とかPassiveな投資だったらいいかもしれないけど、派手に展開したり、複数の物件を運用してたりすると、不動産投資が本当の事実認定でUSTOBになって、FIRPTAによるみなしECI規定の登場を待つまでもなく、実際にECIとして譲渡損益が課税対象となることもなる。Scope神話ナンバー2だ。
で、FIRPTAと言えば譲受人による源泉徴収(源泉税ではないからね)が問題になるけど、もともとFIRPTAが導入された頃は源泉徴収義務は存在しなかった。このことからも分かる通り、FIRPTA課税と源泉徴収はもちろん密接な関係にあるけど、FIRPTAイコール源泉徴収ではない。チョッと長くなりそうなんで、次回はこのFIRPTAイコール源泉徴収神話に関して。
で、FIRPTAの規則案に関して主たるトピックとなるDC REIT、外国政府、QFPF、等の具体的な話しの予備知識として、前回はFIRPTAの対象となる納税者、すなわちNRAと外国法人に触れた。誰がFIRPTA対象になるか分かったんで、今日はFIRPTAが適用される際の米国課税関係に関して。特に普段から各方面の方と話したり、アドバイスしたりする際に感じる誤解、すなわち「FIRPTA神話」にフォーカスしてみたい、ってことだったよね。
米国インバウンド課税システム
FIRPTAって米国のインバウンド課税システムの一部を構成してるんで、FIRPTA課税を語るには超ハイレベルにインバウンド課税システムそのものに触れざるを得ない。これ、もちろん簡単に片付く話しじゃないんだけど、敢えてザックリ言うと、外国人が米国で連邦税金を支払う局面は2つ。
まず1つ目は、米国事業(USTOB)に関連する所得(ECI)を得てるケースで、その場合は申告書を出して費用を控除した後のネット所得に対して税金を支払う。2つ目はキャピタルゲインや動産譲渡益「以外の」米国源泉所得(FDAP)、語弊覚悟で言うと、キャピタルゲイン以外の米国源泉「投資」所得で、1つ目のカテゴリーに含まれない所得(Non-ECI FDAP)、に対する30%の源泉税。双方ともに条約の特典を得ることができる外国人には減免が適用されることが多い。
ECIに対する課税は、申告書を提出して、費用控除後のネット課税所得に米国法人や市民・居住者に適用される税率を乗じて税負担を算定する申告課税。仮にパートナーシップ経由でECIがあったりして源泉徴収された税金が存在しても、それはあくまでも外国人に変わって予定納税をしてくれているだけで、源泉税のように最終税額にはならず、申告書を提出して計算する必要がある。さらに外国法人には法人税引き後の所得に一定要件下で30%のBranch Profits Tax(BPT)が追加で課せられる。
ECIの課税関係を検討する際は、2つのステップでテストする。必ず2つのテストを律儀に順番を守って適用すること。第1ステップは外国人が米国でUSTOBに従事してるかどうか。何がUSTOBかは原則、判例や通達に基づく事実認定で機械的なテストはなく、必ずしも個々の判例や通達のテスト間に整合性があるとは限らず、多くのケースでグレー。この答えが「NO」だったら、申告課税はない。「YES」の場合のみ、そのUSTOBに関連する所得、すなわちECIがあるかどうかの検討に移る。USTOBがあっても、ECIがあるとは限らない。USTOBが存在してしまうと外国人の所得全てが米国で課税対象になるような懸念を持つケースがあるけど、そんなことはない。ECIがゼロな年もある。これってFIRPTAの話しじゃないんでFIRPTA神話にはなんないけど、ECI神話って言えるかもね。でも、USTOBがある限り、ECIがなくても申告書は出さないといけない。条約のPEプロテクションで課税免除となるケースも同じ。USTOBがあって提出する申告書は法律上提出が求められるんで、厳密には「Protective」Returnではない。すなわちオプションではないってことでこの点も神話のひとつ。Protective Return神話だ。Protective Returnっていうのは本来、納税者としてはUSTOBはないというポジションを合法的に取ってるけど、万一IRSと意見が割れて後日USTOBおよびECIを認定される場合に備えて防御的に提出するもの。申告書が出てないと、費用控除を取る権利を喪失する点、また時効の成立は申告書提出日から数えるんで出してないと永遠に時効が成立しない点、に対応するもの。ただ、1120FのInstructionsで、USTOBがあって提出が強制されるけどECIがないケースでも1120Fの1ページ目の「Protective」箱をチェックするように書かれていてチョッとConfusing。
細かいけどECIに関する重要なポイントとして、ECIは実際に外国人が認識するグロス所得ベースで判断する。AOAベースの条約に基づくPE帰属所得の認定と異なり、「本当に」外国人が認識するグロス所得がUSTOBに関連する場合にECIとなり、フィクションで本支店間でファントム所得や費用を認識することはない。どんなケースでグロス所得がECIになるかの判断は結構細かに規定されてて、所得のタイプ、源泉地に基づいてグロス所得毎に検討する。グロス所得ベースでECIがあれば、次に外国人が認識する費用のうちECIに帰する金額を配賦・案分してネットECIを計算する。最初からネットしてECIかどうか考えるんじゃないからね。これもECI神話のひとつ。
FIRPTA課税とScope神話
で、そんなインバウンド課税のフレームワークの中に登場するFIRPTAだけど、FIRPTAはNRAや外国法人による米国不動産持分の「譲渡(Disposition)」に適用される。REITを含む米国不動産への投資には、譲渡損益ばかりでなく、所有期間の課税関係も付きまとうけど、そっちは通常のインバウンド課税の規定に基づいて判断するもので、FIRPTAは一切登場しない。初級Scope神話だ。
米国不動産投資が通常のインバウンド課税ルールで1のテストに引っかからない場合、例えば不動産をPassiveに所有してるだけでトリプルネットリースに供しているとか、単に値上がりを期待して森を持ってるとか、更にマイアミハーバーを見下ろすコンドを自分用に持ってるとか、の場合、これらの活動はUSTOBではないと言えるのでECI課税はない。なんで米国の課税関係有無は2つめの源泉税有無を判断することになる。そんな状況で仮にトリプルネットリースで賃貸料を受け取る場合はNon-ECI FDAPだから30%の源泉「税」対象となる。この30%はECIに対する予定納税の源泉「徴収」じゃなくて最終税額。条約を適用しても30%源泉に対する減免は通常ない。もちろんグロス賃貸所得に30%持っていかれたんでは投資になんない。米国政府のために投資活動してるみたいな状況に陥るから、無理やりアクティブにしてECI化する、または国内法に規定されるECI選択をしてネット申告課税にする等の策が必要。
さらにこれらのUSTOBに供されていない米国不動産を譲渡する場合、USTOBに供されている資産ではないから譲渡損益がECIにはなり得ない。さらに2つ目のテストでもキャピタルゲインは源泉税対象ではないので、結果、1と2のテストを通過し米国では課税が無くなってしまう。この点を重く見て、米国内の投資家同様、米国不動産譲渡損益に対してUSTOB有無にかかわらず課税するのがFIRPTA。ようやくFIRPTAの課税関係に至ったね!で、FIRPTAは譲渡損益は通常の事実認定ではECIにならないケースでも、米国不動産持分の譲渡損益は「みなしで強制ECI」として取り扱う、っていうメカニズム。ECIとなるからには、本当のECI同様、申告課税対象になる。なんでもちろんだけど、損失でも譲渡日を含む課税年度は申告書を出さないといけない。通常のECI同様、多くのNRAや外国法人にとって、譲渡益課税は受け入れ可でも、申告書提出要件の方が嫌がられる。
で、このようにFIRPTAは実際にECIじゃない譲渡損益をECIとみなす、っていう規定に過ぎず、実際のECIに対する課税をオーバーライドする規定ではない。すなわち通常のステップ1のOverlayで共存関係にある。どっちにしてもECI課税なんでFIRPTAで課税されてんのか、通常のECIとして課税されてんのかは多くのケースで実務的な差異はないけど、QFPFみたいに何らかの理由でFIRPTAから免除されてても、だからと言って必ずしも譲渡益に米国で課税されないとは限らない。QFPFがFIRPTA免除だからって「やった~。米国で不動産買います」っていう場合、トリプルネットリース物件を一件とかPassiveな投資だったらいいかもしれないけど、派手に展開したり、複数の物件を運用してたりすると、不動産投資が本当の事実認定でUSTOBになって、FIRPTAによるみなしECI規定の登場を待つまでもなく、実際にECIとして譲渡損益が課税対象となることもなる。Scope神話ナンバー2だ。
で、FIRPTAと言えば譲受人による源泉徴収(源泉税ではないからね)が問題になるけど、もともとFIRPTAが導入された頃は源泉徴収義務は存在しなかった。このことからも分かる通り、FIRPTA課税と源泉徴収はもちろん密接な関係にあるけど、FIRPTAイコール源泉徴収ではない。チョッと長くなりそうなんで、次回はこのFIRPTAイコール源泉徴収神話に関して。
Saturday, April 22, 2023
FIRPTAアップデート(DC REIT、外国政府、外国ペンションファンド規則案)
前回のポスティングをもってやっとCAMTを一旦卒業することができたんだけど、時は既に4月後半。個人所得税のDue Dateだった4月18日も過ぎて、すっかり日も長くなり「Seasons in the Sun」の気分。NYCも冬が終わって、2日ほど春があった後すぐに夏になってたけど、ここにきて数日また肌寒い。MDRがある南カリフォルニアのCoast沿いは今年は寒くて4月前半なんてNYCより気温が低いくらいだった。朝起きて曇ってんのは午前中のマリーンレアーの典型だけど、11時半になっても雲が無くなんなくて一体いつになったら、って空模様のかげんを伺ってるうちに結局夕方になっちゃたりして、カリフォルニアってお天気が自慢の州なんで困るよね。だったら常夏自由の州フロリダ?って考えるけど、こちらはこちらでたまに日中暑すぎ。NYCから数日Getawayする程度の話しだったら、その日の天候によるんで難しいチョイスだけど涼しいMDRに戻った方がいいかもね、って思う日が何日かあった。NYCとの3時間時差を利用して早朝にFwy 405から5に抜けて(正確には一瞬90にのってそこから405だけど90は2分くらいなんで省略)San DiegoというかLa Jolla(オリジナルTop Gunの教官Charlieの家としてロケで使われた「Top Gun House」の少し南)のCaroline’sまで一気に飛ばしてトーストなしでShort Ribs Hash &Eggs食べながらProposed Regulations読んで、30年前に買ったミリタリーIDタグを首から下げて(笑)ビーチバレーでもして帰ってくるのがベストかもね。
FIRPTA規則案
で、Hash & Eggs読みながら食べるのは、じゃなくて、食べながら読むのはもちろんFIRPTA関係の財務省規則案。この規則案、CAMTのNoticeと同時に昨年末12月29日の昼過ぎに何の前触れもなくいきなり公表された。新春のポスティングで触れた通り、その週は年末だったんで、大きな案件も予想されず、マイアミビーチでSub Cの復習をする予定でリラックスしてたんだけど、いきなりハイテンションなガイダンス複数が禁じ手乱発気味に公表されて予定大狂いとなった。当時のPriority的にどうしてもCAMT、そして自社株買いに対する懲罰課税、の2つにまず目を通さざるを得ず、FIRPTA関係の規則案はついでに一応ななめ読みしておきましょう、って程度でザックリ目を通した。FIRPTAに関してはQualified Foreign Pension Fund(「QFPF」)の条件緩和が期待されてたんで、どうせその程度のScopeだろう、って軽く考えて目を通し始めたんだけど、実際にはBlow by Blowでナニコレ~、っていう内容で驚愕。
Domestically Controlled REIT(「DC REIT」)の規定なんて、今まで日本の投資家がREIT株式譲渡してもFIRPTAに抵触しないで非課税だよね、って当然のように信じられてたストラクチャーが、12月29日の午後3時以降、本当にそうなのかイチからストラクチャーを確認しないといけない羽目に。規則案なんでそれ自体に法的効果はないんだけど、後で触れるLook-Back期間や、規則案に従ってないストラクチャーは現時点の法解釈でもIRSはチャレンジするという趣旨の前文があり、実質過去訴求適用に近いんでビックリ。
いきなり確信に触れて一人で興奮しても、読者の皆さんは「何のこと言ってんの~?」って感じだろうからまずは背景から。
FIRPTA
今回公表されたFIRPTA財務省規則案の理解を進める際、もちろんだけどFIRPTAそのものの、すなわちSection 897、および外国人に対する米国の国際課税システム双方の、少なくとも概略くらいは理解しないと始まらない。FIRPTAはSection 897っていう一つの条文内に規定されるルールだけど、他の多くのSectionも結局はそうだけど、深淵極まりない規定で、当然今回のポスティング程度で語り尽くせる話しではない。規則草案に関係する範囲でハイレベルに触れとくけど、ほんの一部に過ぎない、っていう点強調しておくね。
FIRPTAって日本人的には「キャムティーちゃん」と異なり発音しにくいAcronymだけど、「the Foreign Investment in Real Property Tax Act of 1980」のことで「ファプタ」って言う。AFSIと違ってFIRPTAをBay City Rollersみたいに「エフ・アイ・アール・ピー・ティー・エイ」って言う人はいないから間違ってもそんな風に呼ばないように。「ピー・ティー・エイ?」「What?」ってなって話しが始まらないからね。
FIRPTA対象者
で、FIRPTAはその名の通り1980年に制定された法律で、米国外からの米国不動産投資、その中でも米国不動産持分の譲渡損益の取り扱いにかかわる規定。米国外からの投資って言うのは投資家がNonresident Alien Individual(「NRA」)と外国法人のケースのこと。ここで言うAlienは市民権を持たない、っていう意味で宇宙人ではない。Individualなんで自然人。またグリーンカード所有者や滞在日数テストに抵触する者はResidentなので、それ以外のNonresidentのこと。滞在日数テストは居住者開始、終了日の規定を理解していないプロフェッショナルも垣間見ることがあるんで、米国不動産を譲渡する場合、譲渡がClosingした「その日」の米国居住関係を判断すること。漠然と「その年は居住者でしたか」みたいな質問力に欠ける設定で事実認定しないように。
例えばグリーンカードも市民権のない個人が12月2日に初めて米国に到着してその後、米国に5年とか長期滞在する予定とする。米国連邦所得税「以外」の観点からは、もしかしたら12月2日から米国居住者って判断される局面もあるかもしれないけど、米国連邦所得税目的ではそうはならない。同年12月31日に米国不動産を譲渡する場合、12月31日の居住者Statusは、どう法律を駆使しても単独では米国居住者にはなれずNRAになるんで、物理的に米国に住んでいながらNRAとしてFIRPTA対象者となる。その年の滞在日数が31日間に満たないんで「First Year Election」も適用不可。国内法で非居住者となる個人を条約4条を使って居住者に転換することはできないし。条約のTie-Breakerは双方の国の国内税法で居住者と取り扱われる場合に、条約を適用してどちらか経済的な関係がより強固な一方の国の居住者のみというStatusを選択することができる、っていうもので双方の国で非居住者になっているケースでどちらか一方の国の居住者Statusを選択します、っていう規定ではない。一方、不動産持分譲渡が一日ズレて翌年の1月1日だったら居住者としての譲渡になるんでFIRPTAの適用はない。この状況で12月31日にNRAではなくなりFIRPTA不適用とするために唯一考えられるのは、既婚者のケース。
夫婦合算申告は原則、配偶者双方が暦年を通じて米国居住者・市民でないと選択ができない。例外として、夫婦一方が12月31日で米国市民または居住者(First Year Election等を駆使してもOK)で、他方が12月31日にNRAの場合、双方で選択をすれば合算申告が認められ、同時に双方とも年間を通じて米国居住者扱いとなる。(g)選択だ。ちなみにこの(g)選択は普段M&Aとかやっている者にはsection 338(g)選択にしか聞こえないと思うけど、夫婦合算申告を規定しているsection 6013(g)のこと。駐在員の方は、赴任年にCPAから送付されてくる1040の中に選択のStatementが紛れててサインさせられた記憶がある方も居るのでは(もしかして知らない間にサインしてて記憶もない?)。米国に単身赴任するケースで、赴任年の12月31日に居住者になっていれば(g)選択で留守宅を守っている国外の配偶者と合算申告ができる。でも合算申告選択して、双方年間を通じて居住者扱いされると国外配偶者の所得も米国で全世界所得課税の対象になるんで「なんでそんなことすんの?」って疑問に思われる読者が居たら50点プラス。その心は、夫婦「別」申告(結婚している限り独身者というStatusは認められない)との比較において合算申告は適用税率が結構低いから。したがって算数的に、所得が増えても税率が低いんで結果として支払い所得税が低くなることが多い。もちろん国外配偶者の所得がかなり高い場合には試算してどっちが得か検討要だけど、配偶者が日本の居住者の場合、日本は世界でも高税率国だから米国でFTCを利用する、またはFTCよりは不利なことが多いけど911の所得除外を検討する、等の策を駆使することで、結局は得することが多い。12月2日着の例に戻ると12月2日に渡米した者がたまたま12月31日現在で、米国市民または居住者と結婚してたら合算申告を選択し、年間を通じて居住者とするStatusを希望するのであれば、12月31日の米国不動産持分譲渡はFIRPTA対象にはならない。
NRAと並んでFIRPTAは外国法人にも適用がある。FIRPTA対象者にかかわる若干テクニカル目のコメントだけど、FIRPTAは対象を「Foreign Person」とはしてない。Foreign PersonはNRAと外国法人以外にも、外国で設立されるパートナーシップ、信託、遺産(Estate)等、より広範。クロスボーダー課税を規定する法律により、対象が誰なのか微妙に異なるケースがあるんで細心の注意を払って進むように。パートナーシップは課税はパススルーだけど立派なPersonだからね。特に源泉税の適用時に誰が源泉税納付義務を負うかとかの検討時にはパススルー課税の概念と源泉徴収義務者の関係がきれいにシンクロしないことがあるんで要注意。
で、FIRPTAはNRAと並び外国法人に適用があるけど、パートナーシップには直接的には適用がない。ただ、これはパートナーシップはパススルーだからで、米国・外国にかかわらずパートナーシップにNRAまたは外国法人のパートナーが存在し、パートナーシップが米国不動産持分を譲渡し、譲渡損益がNRAまたは外国法人に配賦(譲渡対価の分配ではなく)される場合、NRAや外国法人は直接不動産持分を譲渡したのと同様の取り扱いになるんで、結局は間接的にFIRPTA対象となる。直接不動産を所有してるケースと比較して、最終税負担は双方で変わらないとしても、予定納税的な源泉徴収の規定が異なり、直接不動産を譲渡するとグロス譲渡対価の15%を買い手が税金前払いとして天引きしてしまうのに対し、パートナーシップが譲渡する場合にはECIに対する源泉規定がキックインしてFIRPTA源泉をオーバーライドするんで前払い予定納税は「ネット」譲渡益の21%で済み、予定納税である源泉徴収が比較的最終税負担に近くなる傾向がある。グロスに対する15%FIRPTA源泉は多くのケースで過多な予定納税となり、還付にも時間が掛かるし不確実。前もってIRSに証明書を交付してもらうことで減額可能だけど、時間がかかるし面倒なので、この点一つとってもデラウェア州LPSとかを介して不動産投資するメリットがあり、個人的には局面次第だけどお勧めすることが多い、また、パートナーシップが米国不動産持分を譲渡する代わりに、NRAや外国法人がパートナーシップ持分を譲渡する際にパートナーシップが米国不動産持分を所有していると、NRAや外国法人のパートナーシップ持分に対応する米国不動産持分を間接譲渡した取り扱いとなりFIRPTA対象となる。これはパートナーシップがパススルーというよりは、パートナーシップはパートナーのAggregateだから、という概念に基づく。
なんか対象者を極簡単に触れるだけで相当長くなってきて、クロスボーダー個人所得税講座の様相を呈してきたんで、対象者はこの辺にして次回はFIRPTAが適用される際の米国課税関係に関して。特に普段から実際にアドバイスしたりする際に感じる誤解、「FIRPTA神話」にフォーカスしてみたい。それではミリタリーIDタグ首にかけてビーチバレー行ってきます!
FIRPTA規則案
で、Hash & Eggs読みながら食べるのは、じゃなくて、食べながら読むのはもちろんFIRPTA関係の財務省規則案。この規則案、CAMTのNoticeと同時に昨年末12月29日の昼過ぎに何の前触れもなくいきなり公表された。新春のポスティングで触れた通り、その週は年末だったんで、大きな案件も予想されず、マイアミビーチでSub Cの復習をする予定でリラックスしてたんだけど、いきなりハイテンションなガイダンス複数が禁じ手乱発気味に公表されて予定大狂いとなった。当時のPriority的にどうしてもCAMT、そして自社株買いに対する懲罰課税、の2つにまず目を通さざるを得ず、FIRPTA関係の規則案はついでに一応ななめ読みしておきましょう、って程度でザックリ目を通した。FIRPTAに関してはQualified Foreign Pension Fund(「QFPF」)の条件緩和が期待されてたんで、どうせその程度のScopeだろう、って軽く考えて目を通し始めたんだけど、実際にはBlow by Blowでナニコレ~、っていう内容で驚愕。
Domestically Controlled REIT(「DC REIT」)の規定なんて、今まで日本の投資家がREIT株式譲渡してもFIRPTAに抵触しないで非課税だよね、って当然のように信じられてたストラクチャーが、12月29日の午後3時以降、本当にそうなのかイチからストラクチャーを確認しないといけない羽目に。規則案なんでそれ自体に法的効果はないんだけど、後で触れるLook-Back期間や、規則案に従ってないストラクチャーは現時点の法解釈でもIRSはチャレンジするという趣旨の前文があり、実質過去訴求適用に近いんでビックリ。
いきなり確信に触れて一人で興奮しても、読者の皆さんは「何のこと言ってんの~?」って感じだろうからまずは背景から。
FIRPTA
今回公表されたFIRPTA財務省規則案の理解を進める際、もちろんだけどFIRPTAそのものの、すなわちSection 897、および外国人に対する米国の国際課税システム双方の、少なくとも概略くらいは理解しないと始まらない。FIRPTAはSection 897っていう一つの条文内に規定されるルールだけど、他の多くのSectionも結局はそうだけど、深淵極まりない規定で、当然今回のポスティング程度で語り尽くせる話しではない。規則草案に関係する範囲でハイレベルに触れとくけど、ほんの一部に過ぎない、っていう点強調しておくね。
FIRPTAって日本人的には「キャムティーちゃん」と異なり発音しにくいAcronymだけど、「the Foreign Investment in Real Property Tax Act of 1980」のことで「ファプタ」って言う。AFSIと違ってFIRPTAをBay City Rollersみたいに「エフ・アイ・アール・ピー・ティー・エイ」って言う人はいないから間違ってもそんな風に呼ばないように。「ピー・ティー・エイ?」「What?」ってなって話しが始まらないからね。
FIRPTA対象者
で、FIRPTAはその名の通り1980年に制定された法律で、米国外からの米国不動産投資、その中でも米国不動産持分の譲渡損益の取り扱いにかかわる規定。米国外からの投資って言うのは投資家がNonresident Alien Individual(「NRA」)と外国法人のケースのこと。ここで言うAlienは市民権を持たない、っていう意味で宇宙人ではない。Individualなんで自然人。またグリーンカード所有者や滞在日数テストに抵触する者はResidentなので、それ以外のNonresidentのこと。滞在日数テストは居住者開始、終了日の規定を理解していないプロフェッショナルも垣間見ることがあるんで、米国不動産を譲渡する場合、譲渡がClosingした「その日」の米国居住関係を判断すること。漠然と「その年は居住者でしたか」みたいな質問力に欠ける設定で事実認定しないように。
例えばグリーンカードも市民権のない個人が12月2日に初めて米国に到着してその後、米国に5年とか長期滞在する予定とする。米国連邦所得税「以外」の観点からは、もしかしたら12月2日から米国居住者って判断される局面もあるかもしれないけど、米国連邦所得税目的ではそうはならない。同年12月31日に米国不動産を譲渡する場合、12月31日の居住者Statusは、どう法律を駆使しても単独では米国居住者にはなれずNRAになるんで、物理的に米国に住んでいながらNRAとしてFIRPTA対象者となる。その年の滞在日数が31日間に満たないんで「First Year Election」も適用不可。国内法で非居住者となる個人を条約4条を使って居住者に転換することはできないし。条約のTie-Breakerは双方の国の国内税法で居住者と取り扱われる場合に、条約を適用してどちらか経済的な関係がより強固な一方の国の居住者のみというStatusを選択することができる、っていうもので双方の国で非居住者になっているケースでどちらか一方の国の居住者Statusを選択します、っていう規定ではない。一方、不動産持分譲渡が一日ズレて翌年の1月1日だったら居住者としての譲渡になるんでFIRPTAの適用はない。この状況で12月31日にNRAではなくなりFIRPTA不適用とするために唯一考えられるのは、既婚者のケース。
夫婦合算申告は原則、配偶者双方が暦年を通じて米国居住者・市民でないと選択ができない。例外として、夫婦一方が12月31日で米国市民または居住者(First Year Election等を駆使してもOK)で、他方が12月31日にNRAの場合、双方で選択をすれば合算申告が認められ、同時に双方とも年間を通じて米国居住者扱いとなる。(g)選択だ。ちなみにこの(g)選択は普段M&Aとかやっている者にはsection 338(g)選択にしか聞こえないと思うけど、夫婦合算申告を規定しているsection 6013(g)のこと。駐在員の方は、赴任年にCPAから送付されてくる1040の中に選択のStatementが紛れててサインさせられた記憶がある方も居るのでは(もしかして知らない間にサインしてて記憶もない?)。米国に単身赴任するケースで、赴任年の12月31日に居住者になっていれば(g)選択で留守宅を守っている国外の配偶者と合算申告ができる。でも合算申告選択して、双方年間を通じて居住者扱いされると国外配偶者の所得も米国で全世界所得課税の対象になるんで「なんでそんなことすんの?」って疑問に思われる読者が居たら50点プラス。その心は、夫婦「別」申告(結婚している限り独身者というStatusは認められない)との比較において合算申告は適用税率が結構低いから。したがって算数的に、所得が増えても税率が低いんで結果として支払い所得税が低くなることが多い。もちろん国外配偶者の所得がかなり高い場合には試算してどっちが得か検討要だけど、配偶者が日本の居住者の場合、日本は世界でも高税率国だから米国でFTCを利用する、またはFTCよりは不利なことが多いけど911の所得除外を検討する、等の策を駆使することで、結局は得することが多い。12月2日着の例に戻ると12月2日に渡米した者がたまたま12月31日現在で、米国市民または居住者と結婚してたら合算申告を選択し、年間を通じて居住者とするStatusを希望するのであれば、12月31日の米国不動産持分譲渡はFIRPTA対象にはならない。
NRAと並んでFIRPTAは外国法人にも適用がある。FIRPTA対象者にかかわる若干テクニカル目のコメントだけど、FIRPTAは対象を「Foreign Person」とはしてない。Foreign PersonはNRAと外国法人以外にも、外国で設立されるパートナーシップ、信託、遺産(Estate)等、より広範。クロスボーダー課税を規定する法律により、対象が誰なのか微妙に異なるケースがあるんで細心の注意を払って進むように。パートナーシップは課税はパススルーだけど立派なPersonだからね。特に源泉税の適用時に誰が源泉税納付義務を負うかとかの検討時にはパススルー課税の概念と源泉徴収義務者の関係がきれいにシンクロしないことがあるんで要注意。
で、FIRPTAはNRAと並び外国法人に適用があるけど、パートナーシップには直接的には適用がない。ただ、これはパートナーシップはパススルーだからで、米国・外国にかかわらずパートナーシップにNRAまたは外国法人のパートナーが存在し、パートナーシップが米国不動産持分を譲渡し、譲渡損益がNRAまたは外国法人に配賦(譲渡対価の分配ではなく)される場合、NRAや外国法人は直接不動産持分を譲渡したのと同様の取り扱いになるんで、結局は間接的にFIRPTA対象となる。直接不動産を所有してるケースと比較して、最終税負担は双方で変わらないとしても、予定納税的な源泉徴収の規定が異なり、直接不動産を譲渡するとグロス譲渡対価の15%を買い手が税金前払いとして天引きしてしまうのに対し、パートナーシップが譲渡する場合にはECIに対する源泉規定がキックインしてFIRPTA源泉をオーバーライドするんで前払い予定納税は「ネット」譲渡益の21%で済み、予定納税である源泉徴収が比較的最終税負担に近くなる傾向がある。グロスに対する15%FIRPTA源泉は多くのケースで過多な予定納税となり、還付にも時間が掛かるし不確実。前もってIRSに証明書を交付してもらうことで減額可能だけど、時間がかかるし面倒なので、この点一つとってもデラウェア州LPSとかを介して不動産投資するメリットがあり、個人的には局面次第だけどお勧めすることが多い、また、パートナーシップが米国不動産持分を譲渡する代わりに、NRAや外国法人がパートナーシップ持分を譲渡する際にパートナーシップが米国不動産持分を所有していると、NRAや外国法人のパートナーシップ持分に対応する米国不動産持分を間接譲渡した取り扱いとなりFIRPTA対象となる。これはパートナーシップがパススルーというよりは、パートナーシップはパートナーのAggregateだから、という概念に基づく。
なんか対象者を極簡単に触れるだけで相当長くなってきて、クロスボーダー個人所得税講座の様相を呈してきたんで、対象者はこの辺にして次回はFIRPTAが適用される際の米国課税関係に関して。特に普段から実際にアドバイスしたりする際に感じる誤解、「FIRPTA神話」にフォーカスしてみたい。それではミリタリーIDタグ首にかけてビーチバレー行ってきます!
Saturday, April 15, 2023
新春IRSガイダンス特集「CAMTのAFSIと減価償却・債務免除益」
前回はM&Aやスピンでグループのストラクチャーが変わったり、新規に法人がグループに参画する際、過去3年のAFSIをどうやって考えるか、っていう点に触れた。で、皆さんもCAMTの話しにはそろそろ飽きてきた頃では、って思うんで、今回のポスティングで一旦CAMTは終わりにして、次回から待望(?)のREITを含むクロスボーダー米国不動産投資、FIRPTA系に関して2022年暮れにCAMTのNoticeと同時公表された規則草案の話しに移りたい。え~、本気?みたいな規定が含まれてるんで乞うご期待!
CAMTは姑息な(?)バックドア課税
まずはCAMTと減価償却。たかが減価償却されど…、って感じでかなり面倒くさい。こんな調整を規定しないといけない背景に関してチラッと触れておく。
CAMTって制度を導入する際、ポリティシャンは「会計上利益が出てるにもかかわらず課税所得が低くてけしからん」って言ってたけど、その原因は実に単純で、何のことはない自分たち議会が政策的に会計原則とは異なる計算法で課税所得を算定するように法律を通しているから。企業としては法律に従うしかない訳だし、グローバルで競争している訳だから議会が通した恩典があれば最大限活用しようとするのは当然。もちろん合法的に、だ。それで「大企業は法人税をきちんと払ってない」っていう論調で議会の公聴会とかでしかられるって以前にも例えたことあるかもしれないけど、目の前にごちそうを振舞われて「今日は好きに食べて下さい!」って言われ、食べたら「食い逃げ泥棒」の濡れ衣を着せられる、みたいな状況。 そこで登場するのがCAMT。この制度、ポリティシャンたちが考えそうな姑息というか臆病な制度で、本来、GILTIの50%控除でも、R&Dクレジットでも、加速度償却でも、議会自ら法制化した恩典で企業に活用されて気に入らないものがあるんだったら、その恩典を廃案にするべきなんだけど、そんな勇気はないから、数えきれない恩典を規定し続ける一方、それを利用するとCAMTで取り上げる、っていう裏技に頼らざるを得ない。
で、減価償却は不況になると投資減税でボーナス償却とかが登場するし、その手の恩典のひとつ。米国の有形資産に対する償却法であるMACRSって用語を見ると「D」っていうアルファベットがない。え~、DepreciationなのにDないの、って感じ。MACRSはのMは「Modified」で、なんでModifiedかっていうともともとACRSだったのをModifyしてできたから。AはAcceleratedで加速してる、ってこと。CRSは「Cost Recovery System」の略で、会計原則みたいに資産の耐用年数に基づいて減価償却を計上するっていう経済的な利益メジャーの概念ではなく、恣意的に決められてる加速度算定式で取得コストをRecoverさせるっていうアプローチになる。この用語からも分かる通り、税法上の「償却」は会計上の償却とは基本的に相いれないものだ。
減価償却とAFSI
こんな背景だから、別に誰に何の邪な気持ちがなくても、毎期の税務上償却は会計上の償却との比較して、多かったり少なかったりするのは法的に必然。で、CAMTを法制化する審議の最後の最後になって、このままだとCAMTミニマム税を支払う企業はせっかくのMACRS、特に即時償却のボーナス償却の恩典がなくなってしまう、ってことでウォールストリートジャーナルとか製造業に従事する米国企業に「製造業回帰とか言ってんのに何考えてんの~」って指摘され、ポリティシャンもその不具合にようやく気が付き、最終修正で深く考えずに「米国で使用する有形資産は会計ではなくMACRSの償却を使ってよろしい」とお許しが出た、っていうかMACRSの使用が強制されることになった。でも、MACRSの適用が常に企業に有利とは限らないのは簿記をかじった人だったら誰でも直ぐにわかるよね。だって、結局個々の資産に関して生涯を通じて取れる償却の金額は同じなんだから、タイミング差異の話しで、税務上加速して前倒しで償却するってことは単年ベースで見ると、後年は反転して、税務上の償却が少なくなる。で、CAMTみたいに急に登場してきて、いきなり過去3年間AFSI平均を基に対象かどうか決めなさい、って言われて、4年前に何気なく議会に言われた通りボーナス償却取ってたりすると、その後の3年間会計上は粛々と償却取ってるのにMACRSベースのAFSIでは償却ゼロ、っていう不利な結果になる。この点、政策的に何か助け舟が差し出されるのでは、って期待してた企業もあるんだけど、結局NoticeではCAMT導入タイミングにかかわらずAFSIは常にMACRSベースなんで、4年前にボーナス償却取ってしまってたらアンラッキーでした、っていう取り扱いが確認されてしまった。
で、減価償却って一言でいっても製造原価とかCOGSに含まれているものもある。さらにややこしいことにCOGSへの計上、税務で言うところの棚卸資産への資産計上だけど、の考え方自体、会計と税務で同じとは限らない。で、AFSI計算目的で償却は税法ベースだから、COGSに含まれる会計上の償却は一旦消去し、税法でCOGSに含まれる償却に置き換える。
さらに当然と言えば当然だけど、税務ベースの償却を適用してAFSIを計算している資産を譲渡したり除却したりする際の譲渡損益も会計上の数字ではなく、税務ベースの金額に置き換えないといけない。で、ここからが議論を呼ぶところだと思うけど、3年間平均テストが始まる2020年課税年度以前にボーナス償却を含むMACRSの対象になっていた資産の譲渡損益も税法ベースの数字に直さないといけない、って規定されている。これって二重苦みたいで、例えば2019年に多額の資産を米国で事業用途に供してボーナスで即時償却したとする。2023年に急にCAMTができて、対象法人になるかどうかの判断のため、2020年~2022年3年の平均AFSIを算定する際、会計上取っている償却は一切取れないばかりか、その間にボーナス償却した資産の譲渡がある場合、譲渡損益も税務上の簿価を基に算定しないといけない。ボーナス償却取ってる場合、税務上の簿価はゼロだから会計上の譲渡益より、税務上の譲渡益が大きい、または損失が譲渡益に変わることもあり得る。ボーナス償却の恩典はAFSI目的で享受していないにもかかわらず、だ。
償却の調整の面倒さに気分が優れなくなってきた読者も多いと思うんだけど、最後に止めを刺して次のトピックに移るね。資産取得後に修理・修繕等を行うことは多いけど、会計と税務では何を資産計上するか、っていうルールが異なる。税務上は2013年だったかな、に最終化されて各企業対応に奔走した「Tangibles Regulations(当時は「TPR」って呼んでました)」に基づいて詳細な分析をした上で、この手の支出を期間費用部分と資産計上部分に区分する必要がある。会計はTPRは関係なく、独自の原則に基づいて区分される。税務上、TPRで期間費用として損金算入される場合、その分の資産コストはないのでMACRS対象じゃない。このことからTPRで費用化された支出が会計上は資産計上の上、償却されてる場合、この部分は税務ベースではなく、会計ベースの処理を反映したままAFSIを計算しないといけない。果てしないRecord KeepingやTrackingが必要だね。これらの調整はCAMTミニマム税の算定時ばかりでなく、CAMT対象になっていない法人は毎期対象にならない点を証明するために求められる。以前のポスティングで触れたSafe Harborの恩典の大きさが身に沁みた?
債務免除益とAFSI
債務免除益(CODI)は課税所得っていうのが大原則。ただ、株主が「Gratuitous」に債務免除してくれる取引は資本出資とみなすという財務省規則もある。日本企業が米国子会社に貸している債権を棒引きにする際、出資という形を取ろうとするのは良くある話し。子会社の財務状況が思わしくない際、または子会社譲渡のプレリュード的に免除することが多いけど、一番好ましいのは資本出資(Contribution to capital)で子会社が新株を発行しない取引。この形を取ることができれば、通常CODIが発生しないばかりか、後述の属性のReductionも不要。株式を発行してしまうと取り扱いが大きく異なり、通常は不利になる。また、そもそも貸し付ける段階で避けるべきストラクチャーは米国のCommon Parentをスキップした日本から見た米国孫会社への貸し付け。将来Workoutの際に不利益を被るので絶対にしてはいけないストラクチャーだ。例外は孫会社が米国税務上Disregardされてるケース。その場合はCommon Parentに貸し付けてるも同然なので通常のルールの範囲内。
CODIが課税所得から除外されるケースは資本出資以外にもいくつかあるけど、代表的なのは債務免除直前に借り手が時価ベースで債務超過の状態にあるケース。債務超過の範囲でCODIは課税所得から除外される。その代わりに除外額に関してNOLや資産の税務簿価を減額させられる。Noticeが言うところの「Section 108(b) Reduction Amount」だ。その心は、債務超過なんだから再起をサポートするため今は課税しないけど、将来のNOLや償却を取り上げることで実質非課税というよりは課税繰り延べしてあげるということ。
で、ここでも税務上のCODIの取り扱いは必ずしも会計の取り扱いとは一致しない。会計上、CODIが利益として認識されてる一方、税務上は上述の諸々の理由でCODIが所得から除外されるケースでは、税務上の除外額を上限にAFSI算定時に減額が認められる。で、AFSIからCODIが免除されるケースでは、通常の税務上の規定通り、Section 108(b) Reduction Amountに相当する金額を使って AFSI目的でもAFS計算時のCAMT NOLやAFSの資産簿価が減額される。あちこちで複数の数字をTrackingする必要があって、そろそろやってられない感じになってきたよね。
という訳でようやくCAMTはWrap-Up。次はもっとExcitingなクロスボーダー米国不動産投資にかかわる規則案に関して。
CAMTは姑息な(?)バックドア課税
まずはCAMTと減価償却。たかが減価償却されど…、って感じでかなり面倒くさい。こんな調整を規定しないといけない背景に関してチラッと触れておく。
CAMTって制度を導入する際、ポリティシャンは「会計上利益が出てるにもかかわらず課税所得が低くてけしからん」って言ってたけど、その原因は実に単純で、何のことはない自分たち議会が政策的に会計原則とは異なる計算法で課税所得を算定するように法律を通しているから。企業としては法律に従うしかない訳だし、グローバルで競争している訳だから議会が通した恩典があれば最大限活用しようとするのは当然。もちろん合法的に、だ。それで「大企業は法人税をきちんと払ってない」っていう論調で議会の公聴会とかでしかられるって以前にも例えたことあるかもしれないけど、目の前にごちそうを振舞われて「今日は好きに食べて下さい!」って言われ、食べたら「食い逃げ泥棒」の濡れ衣を着せられる、みたいな状況。 そこで登場するのがCAMT。この制度、ポリティシャンたちが考えそうな姑息というか臆病な制度で、本来、GILTIの50%控除でも、R&Dクレジットでも、加速度償却でも、議会自ら法制化した恩典で企業に活用されて気に入らないものがあるんだったら、その恩典を廃案にするべきなんだけど、そんな勇気はないから、数えきれない恩典を規定し続ける一方、それを利用するとCAMTで取り上げる、っていう裏技に頼らざるを得ない。
で、減価償却は不況になると投資減税でボーナス償却とかが登場するし、その手の恩典のひとつ。米国の有形資産に対する償却法であるMACRSって用語を見ると「D」っていうアルファベットがない。え~、DepreciationなのにDないの、って感じ。MACRSはのMは「Modified」で、なんでModifiedかっていうともともとACRSだったのをModifyしてできたから。AはAcceleratedで加速してる、ってこと。CRSは「Cost Recovery System」の略で、会計原則みたいに資産の耐用年数に基づいて減価償却を計上するっていう経済的な利益メジャーの概念ではなく、恣意的に決められてる加速度算定式で取得コストをRecoverさせるっていうアプローチになる。この用語からも分かる通り、税法上の「償却」は会計上の償却とは基本的に相いれないものだ。
減価償却とAFSI
こんな背景だから、別に誰に何の邪な気持ちがなくても、毎期の税務上償却は会計上の償却との比較して、多かったり少なかったりするのは法的に必然。で、CAMTを法制化する審議の最後の最後になって、このままだとCAMTミニマム税を支払う企業はせっかくのMACRS、特に即時償却のボーナス償却の恩典がなくなってしまう、ってことでウォールストリートジャーナルとか製造業に従事する米国企業に「製造業回帰とか言ってんのに何考えてんの~」って指摘され、ポリティシャンもその不具合にようやく気が付き、最終修正で深く考えずに「米国で使用する有形資産は会計ではなくMACRSの償却を使ってよろしい」とお許しが出た、っていうかMACRSの使用が強制されることになった。でも、MACRSの適用が常に企業に有利とは限らないのは簿記をかじった人だったら誰でも直ぐにわかるよね。だって、結局個々の資産に関して生涯を通じて取れる償却の金額は同じなんだから、タイミング差異の話しで、税務上加速して前倒しで償却するってことは単年ベースで見ると、後年は反転して、税務上の償却が少なくなる。で、CAMTみたいに急に登場してきて、いきなり過去3年間AFSI平均を基に対象かどうか決めなさい、って言われて、4年前に何気なく議会に言われた通りボーナス償却取ってたりすると、その後の3年間会計上は粛々と償却取ってるのにMACRSベースのAFSIでは償却ゼロ、っていう不利な結果になる。この点、政策的に何か助け舟が差し出されるのでは、って期待してた企業もあるんだけど、結局NoticeではCAMT導入タイミングにかかわらずAFSIは常にMACRSベースなんで、4年前にボーナス償却取ってしまってたらアンラッキーでした、っていう取り扱いが確認されてしまった。
で、減価償却って一言でいっても製造原価とかCOGSに含まれているものもある。さらにややこしいことにCOGSへの計上、税務で言うところの棚卸資産への資産計上だけど、の考え方自体、会計と税務で同じとは限らない。で、AFSI計算目的で償却は税法ベースだから、COGSに含まれる会計上の償却は一旦消去し、税法でCOGSに含まれる償却に置き換える。
さらに当然と言えば当然だけど、税務ベースの償却を適用してAFSIを計算している資産を譲渡したり除却したりする際の譲渡損益も会計上の数字ではなく、税務ベースの金額に置き換えないといけない。で、ここからが議論を呼ぶところだと思うけど、3年間平均テストが始まる2020年課税年度以前にボーナス償却を含むMACRSの対象になっていた資産の譲渡損益も税法ベースの数字に直さないといけない、って規定されている。これって二重苦みたいで、例えば2019年に多額の資産を米国で事業用途に供してボーナスで即時償却したとする。2023年に急にCAMTができて、対象法人になるかどうかの判断のため、2020年~2022年3年の平均AFSIを算定する際、会計上取っている償却は一切取れないばかりか、その間にボーナス償却した資産の譲渡がある場合、譲渡損益も税務上の簿価を基に算定しないといけない。ボーナス償却取ってる場合、税務上の簿価はゼロだから会計上の譲渡益より、税務上の譲渡益が大きい、または損失が譲渡益に変わることもあり得る。ボーナス償却の恩典はAFSI目的で享受していないにもかかわらず、だ。
償却の調整の面倒さに気分が優れなくなってきた読者も多いと思うんだけど、最後に止めを刺して次のトピックに移るね。資産取得後に修理・修繕等を行うことは多いけど、会計と税務では何を資産計上するか、っていうルールが異なる。税務上は2013年だったかな、に最終化されて各企業対応に奔走した「Tangibles Regulations(当時は「TPR」って呼んでました)」に基づいて詳細な分析をした上で、この手の支出を期間費用部分と資産計上部分に区分する必要がある。会計はTPRは関係なく、独自の原則に基づいて区分される。税務上、TPRで期間費用として損金算入される場合、その分の資産コストはないのでMACRS対象じゃない。このことからTPRで費用化された支出が会計上は資産計上の上、償却されてる場合、この部分は税務ベースではなく、会計ベースの処理を反映したままAFSIを計算しないといけない。果てしないRecord KeepingやTrackingが必要だね。これらの調整はCAMTミニマム税の算定時ばかりでなく、CAMT対象になっていない法人は毎期対象にならない点を証明するために求められる。以前のポスティングで触れたSafe Harborの恩典の大きさが身に沁みた?
債務免除益とAFSI
債務免除益(CODI)は課税所得っていうのが大原則。ただ、株主が「Gratuitous」に債務免除してくれる取引は資本出資とみなすという財務省規則もある。日本企業が米国子会社に貸している債権を棒引きにする際、出資という形を取ろうとするのは良くある話し。子会社の財務状況が思わしくない際、または子会社譲渡のプレリュード的に免除することが多いけど、一番好ましいのは資本出資(Contribution to capital)で子会社が新株を発行しない取引。この形を取ることができれば、通常CODIが発生しないばかりか、後述の属性のReductionも不要。株式を発行してしまうと取り扱いが大きく異なり、通常は不利になる。また、そもそも貸し付ける段階で避けるべきストラクチャーは米国のCommon Parentをスキップした日本から見た米国孫会社への貸し付け。将来Workoutの際に不利益を被るので絶対にしてはいけないストラクチャーだ。例外は孫会社が米国税務上Disregardされてるケース。その場合はCommon Parentに貸し付けてるも同然なので通常のルールの範囲内。
CODIが課税所得から除外されるケースは資本出資以外にもいくつかあるけど、代表的なのは債務免除直前に借り手が時価ベースで債務超過の状態にあるケース。債務超過の範囲でCODIは課税所得から除外される。その代わりに除外額に関してNOLや資産の税務簿価を減額させられる。Noticeが言うところの「Section 108(b) Reduction Amount」だ。その心は、債務超過なんだから再起をサポートするため今は課税しないけど、将来のNOLや償却を取り上げることで実質非課税というよりは課税繰り延べしてあげるということ。
で、ここでも税務上のCODIの取り扱いは必ずしも会計の取り扱いとは一致しない。会計上、CODIが利益として認識されてる一方、税務上は上述の諸々の理由でCODIが所得から除外されるケースでは、税務上の除外額を上限にAFSI算定時に減額が認められる。で、AFSIからCODIが免除されるケースでは、通常の税務上の規定通り、Section 108(b) Reduction Amountに相当する金額を使って AFSI目的でもAFS計算時のCAMT NOLやAFSの資産簿価が減額される。あちこちで複数の数字をTrackingする必要があって、そろそろやってられない感じになってきたよね。
という訳でようやくCAMTはWrap-Up。次はもっとExcitingなクロスボーダー米国不動産投資にかかわる規則案に関して。
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