Tuesday, July 2, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (3)

前回のポスティングでは、GILTIにかかわる財務省規則が最終化されたのを機に、見直しが行われている米国クロスボーダー課税を考える際の「米国パートナーシップ」の取り扱いに関して触れ始めた。クロスボーダー課税を考える際の米国パートナーシップの位置づけは、テクニカルには過去長い間、燻っていた問題そのものだけど、以前はSub F所得というCFCが国外で認識する所得の極一部のみにかかわる「些細」な問題だったと言え、テクニカル面で複雑な割に、実務的には重要性に欠けていたことから余り時間を掛けて検討したりするインセンティブに欠けていたと言える。もちろん、賢い米国MNCは米国パートナーシップのSub F上の取り扱いが特殊な点に目を付け、CFCの下に米国パートナーシップ組成してSub F所得の「ブロッカー」にしたり、またIRSがそのようなプラニングに網を掛けようとしてNoticeを公表したり、と一部マニアックな世界ではエキサイティングな世界を展開していた。とは言え、マイナーな分野だった事実は否めないだろう。

そんな呑気な状況は、CFCが国外で認識する所得を米国株主側で毎期合算するGILTI課税の税制改正による導入で一変する。GILTIは、Subpart F所得と異なり、米国株主側の属性なので、誰が米国株主としてTested Income等を取り込み、それをどう加工してGILTI計算を行うのか、という従来のSub F所得合算では存在しなかった検討もこの問題の重要性に拍車を掛けていると言える。CFCの所得を毎期全額取り込むという新しい概念のクロスボーダー課税制度が導入されたため、CFCの課税所得をどのように算定するのか、という根本的な問題が他にも浮き彫りになっている。CFCの課税所得は、基本的には米国税法に基づき、CFCをあたかも「米国法人」かのように取り扱って算定、というのが従来のSub F所得時代からのルールだけど、この点も米国パートナーシップの取り扱い同様、従来はそれ程真剣に考えられていた感じはなく、CFCの課税所得を米国で毎期全額合算する制度に移行した今、ガイダンス不足の実態が白日の下に晒されている感じ。実際には米国法人でないCFCをどのように米国法人かのように考えて、米国税法を適用して課税所得の算定をするのか、というベーシックな検討の重要性が飛躍的に高まっている。この点は別の機会に触れるけど、CFCを米国法人のように取り扱って課税所得を計算するのであれば、米国法人にしか認めないと明確に法律で規定されているFDII控除をCFCで取ってみようとか、クリエイティブだけど、「なるほど・・座布団10枚」みたいな常識では考えられないような議論も登場してくる。財務省は「明らかに本当の米国法人にしか適用がない規定は、CFCには適用することは認められない」と常識的には当たり前だけど、法律の適用としてはとても難しいアプローチで、反論し今後ルールを策定をするとしている。

で、米国パートナーシップだけど、財務省のポリシー的な選択肢は元々2つのはずだった。従来のSub F所得同様に、法文を文字通り適用し、米国パートナーシップを合算米国株主としてパートナーシップレベルでGILTI合算させてしまうアプローチが一つ。または、Sub F所得と異なり、GILTIは米国株主レベルで複数のCFCの属性を通算させて計算するという立法趣旨を尊重し、Sub F所得の取り扱いから乖離して、米国パートナーシップを外国パートナーシップ同様にLook-throughしてGILTI合算を考える、というアプローチがもうひとつだ。後者は合算株主を定義している法文を文字通り解釈するとサポートが難しいが、逆にGILTIの立法趣旨はより良く反映しているアプローチと言える。ただ、後者を選択すると、米国パートナーシップが保有するCFCに対して、間接・みなし持分を加味しても10%以上の持分保有に至らない米国人パートナーが、GILTI合算対象から除外されるというチョッとIRSにとっては悔しい結果にもなる。かと言って前者のアプローチ、すなわち米国パートナーシップを合算株主と取り扱う考え方、は米国パートナーシップの利用したストラクチャーを工夫して、プラニングに利用されるのではないか、という懸念もあっただろう。例えば、不都合な属性を米国株主側で他のCFCの属性と通算しないでもいいよう、その部分だけ内部で組成する米国パートナーシップに保有させてみたりとか、Subpart F所得に対するブロッカー・ストラクチャーの例を見ても、米国パートナーシップが悪の温床となる得るリスクは現実のものだ。

このような不整合・不都合をバランス良く解消するため、2018年9月に公表された規則案では、両オプションの双方を組み合わせるという高尚なハイブリッド・アプローチを採択していた。ハイブリッド・アプローチでは、米国パートナーシップの米国パートナーがみなし持分保有を通じてパートナーシップが保有するCFCの10%以上の持分を保有するケース、すなわちパートナーシップばかりでなくパートナー自らも米国株主となっているケースは、米国パートナーシップを合算株主とせずLook-throughと考え、GILTI計算はパートナーシップ・レベルでは行わず、Tested Income、Tested Loss、QBAI、外国法人税等のCFC属性をパートナーに配賦し、米国パートナーが保有するかもしれない他のCFCの属性と通算してGILTI計算をする。その場合、米国パートナーが米国法人だと、50%のGILTI控除が取れたり、GILTIバスケットの外国税額控除が取れる、という追加メリットもある。

それ以外のパートナー、すなわちみなし持分を加味しても10%未満の持分しか保有しないパートナーは自らだけの状況を見ると米国株主には当たらないので、その者に関しては米国パートナーシップ・レベルでGILTI計算を行い、GILTI合算額そのものをパートナーに配賦する、というものだ。オプション2つを併用し、組み合わせているのでハイブリッド。

規則案で提案されたこのハイブリッド・アプローチはポリシー的には、バランスが取れていて確かに一理あるものだった。でも、その適用は複雑で、1065とかK-1とか作成するのは大変だっただろうし、従来からのパートナーシップ税制との絡み、例えば704(b)のキャピタルアカウントの考え方とかへの影響も複雑だった。規則案公表直後から、ハイブリッド・アプローチに対しては喧々囂々の議論があり、財務省にも反対意見が寄せられたことだろう。規則案公表後の業界や法曹界のパネルディスカッションに登場していた財務省やIRSのChief Counsel Officeの方も、この件に関しては、若干ディフェンシブな印象を受けていたので、規則最終化の際に何らかの形で簡素化されるだろう、と考えていた。

という訳で、ハイブリッド・アプローチは、志こそ高いものだったけど、実務対応面での懸念は大きく、最終規則では予想通り撤回され、全てのパートナーに関して、合算株主を決定する際に米国パートナーシップをLook-throughするという「Aggregateアプローチ」で統一されることになった。Aggregateというのは、パートナーシップ税法を語る際に、Entityアプローチと対比的に使われる用語で、パートナーシップはパートナーの集合体(なのでAggregate)と扱い、各パートナーに帰属するパートナーシップ資産、属性はパートナーそのものに属するかのように考えるアプローチを意味する。1954年の税制改正でSub Kが導入されてから、法人課税との比較においてAggregate概念は一貫してパートナーシップ税制のコアな原則だ。Section 752のパートナーシップレベルの負債を、パートナーの投資簿価に加算するような面倒な計算もOutside簿価とInside簿価を可能な限りタンデムにしようとするAggregateアプローチの現れだ。ただ、今回の税制改正では、Sectiton 163(j)の支払利息損金算入制限をパートナーシップレベルで適用したり、特定の状況にはEntityアプローチを適用したりしている。Aggregateアプローチを全体のアーキテクチャーとして構築されているSub KにEntityアプローチを散りばめたりすると、適用時の複雑性が大きく増す。400ページを超えるSection 163(j)の財務省規則案も、CFCと並びパートナーシップへの適用をどのように考えるかで苦労している。

GILTI最終規則で採択されたAggregateアプローチも、テクニカル面の理解は決して容易ではない。というのも、前回のポスティングでも触れた通り、Sub FやGILTIを考えるステップは、米国株主の特定、CFCの特定、合算株主の特定、合算額の計算、という複数のものだけど、各ステップに適用される外国法人に対する持分の考え方が異なっていて、この分野のことを四六時中考えているオタッキーな輩でもない限り、なかなか直感的に理解できるものではないからだ。

ここからは面倒な「みなし保有」規定の話しにならざるを得ないので、次回。

Monday, July 1, 2019

GILTI最終規則遂に公表 (2)

前回のポスティングでは遂に最終化されたGILTI財務省規則の、HTE規定をメインに触れたけど、これだけ濃厚な規則や規則案が連発されると、全てを消化するのには一日48時間、週に8日(Eight Days a Week – 何か分かるね?)通して規定を読むばかりでなく、内容を良く考え、理解し続ける必要がある。規則や法律の一語一句が全てDeep。余りにDeepなので、規則の理解はEast Riverから朝日が昇ってくる前の早朝4時とかにDeep House聴きながらSpikeしたコーヒーを手に立ち向かうのがベスト。僕がその昔馴染んだ元祖シカゴのHouseはBPMがだいたい125強くらいのスピードでノンストップ系だった。その後House Musicも進化し、ProgressiveとかDeepとかいろいろなサブジャンルに細分化されているけど、BPM120くらいで若干スローなDeepは規則読む際のBGM(ここはBPMじゃないからね)にピッタリ。モーツァルト効果改めDeep House効果で記憶も鮮明(本当?)。TechnicsのDirect Driveターンテーブルを30年以上(40年?)愛用しているので体にBPM感が染みついちゃってる感じ。もし、そんな昔からSubchapter Nの規則とか読み続けてたら、クロスボーダー課税ももっと体に染みついてただろうに残念。でもNever too late。

もう昔と違ってBrooklynのTBAとか行く歳でもないし、HouseとかAcid Jazz系の曲は自宅で静かに聴くのがベスト。この手のジャンルは個人的にはNYC用。西海岸に居る時は、どちらかと言うともう少しJazzyな94.7Waveでエアされているようなタイプとか、下手するとTop 40系の気分。

ちなみにTech-Houseは・・、とかどうでもいい話しに脱線し過ぎる前に約束通り、米国パートナーシップとGILTI、更に米国クロスボーダー課税一般の話しに軌道修正します。

まずは「おさらい」だけど、米国「税務上」パートナーシップと取り扱われる主体に関して。この点は日本企業には未だによく理解されていないように感じることが多い。米国税務上のパートナーシップは広範だ。LLC、LP、LLP、LLLP、とか法的(税法ではなく会社法的)に組成されている主体はもとより、事業または投資目的と認定される信託、さらに事実関係に基づき複数の者がネット利益を協働して追い求めていると認定されるJVやコラボ契約、これらは税務上一派一絡げに「事業主体(Business Entity)」という位置づけとなる。事業主体と認定される主体は、次にパススルー課税または法人課税のいずれか一方の課税関係に区分されるけど、財務省規則に名指しで列挙されている「米国税務上Corporationとしてのみ取り扱いが認められる特定の主体(例、米国の州法で設立されるCorporation、日本だと株式会社)」を除き、区分は納税者側で任意に選択することが認められる。これが前代未聞、クロスボーダー課税のプラニングを一から書き直した1997年のCheck-the-Box規定と言う名のギネス級Inventionだ。それ以前の区分はRulingベースで、まあ実質任意に選択が可能な状態に近かったので、CTBはそれを制度化して面倒な手続きを廃止した「いよっ 財務省!」とでも言うべき画期的なもの。まさかここまでCTBがクロスボーダー課税のプラニングに利用され尽くされるっていうのは1997年当時では想定されていなかったのだろう。

上述した「Corporationにしか区分できな特定の主体」として列挙されていない限り、CTBの選択は米国内外の主体を問わずに適用される。何の選択も行わない場合には、デフォルトの取り扱いが規定されており、米国内の主体であれば通常パススルー、外国の主体はオーナーの有限・無限責任の法的位置づけに基づきデフォルトが変わる。

で、パススルーとなり複数のオーナーが存在する場合には米国税務上、全てパートナーシップとなる。その際、元々会社法上の主体のタイプがLLCでも、LPでも、契約に基づく事実関係に基づくアレンジでも、税務上は全く関係ない。もちろん、パートナーシップと取り扱う上でオーナーの権利関係は実際の法的アレンジに基づくので、所得や負債の配賦計算とかは主体のタイプ、個々の契約により異なるけど、ポイントは一旦事業主体と認定され、パススルー課税扱いになり、複数のオーナーが存在する場合には、全て無差別にパートナーシップ税法、Sub Kの管轄となるという点。

で、税務上のパートナーシップは米国会社法その他の米国法制度に基づき組成されている場合には米国パートナーシップになり、他は外国パートナーシップと区分される。LLCとかLPとか州の会社法に基づいて登記されているような主体はどこのパートナーシップか分かり易いけど、国外の法人が米国外でJV契約とかして、米国も含む複数の国で事業展開するようなアレンジが米国税務上のパートナーシップとなるケースは、米国パートナーシップなのか外国パートナーシップなのか、という区分は必ずしも容易ではない。まあ、グッドニュースがあるとすれば、米国パートナーシップでも、外国パートナーシップでも、レポーティング法とか除くと、最終的な課税関係は原則余り変わらないという点だろうか。すなわち、パートナーシップは課税主体ではないので、そこで認識される所得はオーナーに配賦(パススルー)され、オーナーが自分のタックスポジションと通算して米国の税金を支払う。パートナー自身が米国人(米国法人含む)であれば、米国パートナーシップでも外国パートナーシップでも、またどこから所得を得ていても、配賦される所得は基本全額課税対象。一方、パートナー自身が外国人(外国法人含む)であれば、パートナーシップが認識する所得のパートナーへの配賦額のうちECI部分に関してのみ米国での課税関係が発生する。この取り扱いもパートナーシップそのものが米国パートナーシップなのか外国パートナーシップは関係なく同じ。外国人パートナーが条約居住者で、適用しようとする条約に規定されているLOBを充足し、さらにHybrid規定に基づき条約の特典が与えられるケースでは、ECIではなくパートナーシップから配賦される所得の米国PE帰属部分に関して米国の課税関係が発生する。ECIがあるかないか、PEに帰属する所得があるかないか、はパートナーシップ側の米国事業、施設等を全てパートナーに帰して、米国税務風に言うとAttributeして、検討することになる。

なかなかDeepになってきてるけど、これらの処理だけでも一冊本になるほどDeeper。相変わらず米国タックスにはDeep Houseが良く似合う(?)。

で、このように米国パートナーシップなのか外国パートナーシップなのかっていうのは通常、余り大きなインパクトを持たないことが多いんだけど、米国のアウトバウンド系のクロスボーダー課税に関しては、この違いが大きくものを言うことになる。クロスボーダー課税適用時の、米国パートナーシップなのか外国パートナーシップなのかにより取り扱いの差異はチョッと恣意的だ。ここからはさらにDeeper and deeper。

従来のCFC課税で、Subpart F所得の合算が求められる者は「CFCの米国株主」と規定されている。双方とも税法上、定義されている用語で、米国株主とはまず「Person」で、そのPersonが米国Personであり、外国法人の議決権、価値のいずれかに関して最低10%の持分を保有している者をいう。CFCはこの定義に当てはまる米国株主が合わせて50%超の議決権または価値(この価値の部分は2017年の税制改正で追加された規定)を保有する外国法人のことを言う。なので、EYのNYC事務所のみんなには口酸っぱく言っているけど、まずCFCを決めてその後米国株主を決めるような本末転倒な分析をしないように。米国株主が決まらないと外国法人がCFCかどうかも決まらない。その後、実際にCFCからSubpart FやGILTIを誰が合算するのかは、必ずしも米国株主の定義そのものと同じではなく、米国株主のうち「合算持分」を持つInclusion株主を特定する必要がある。米国税法で言うところのSection 958(a)株主というカテゴリーだ。で誰が合算するか判明したら、次にいくら合算する必要があるかをPro-rata持分という難しいコンセプトを適用する。ここまで来て、ようやく合算に漕ぎつけることができる。

で、問題は従来のCFC課税制度のルール、すなわちGILTIにも流用される予定のルールでは、米国パートナーシップがCFCを保有している場合、パートナーシップは税法上「Person」と定義されることから、パートナーシップが米国パートナーシップの場合、米国Personになり、パートナーシップそのものが10%以上の持分を保有している場合には、「米国株主」と位置付けられ、外国法人がCFCの場合には、パートナーシップそのものがSubpart F所得を認識し、パートナーに合算課税対象額を配賦する仕組みとなっている点だ。一方で外国パートナーシップは基本Look-throughされるので、この点に関してパートナーシップが米国パートナーシップなのか外国パートナーシップなのか、という点に基づく取り扱いが大きく異なる。GITLI合算も、原則Subpart F所得の合算に係わる法的枠組みを踏襲して行うと規定されているので、そのままにしておくと、米国パートナーシップそのものがGILTI合算計算を行うことになってしまう。一方でGILTIはSubpart F所得のようにCFC側の属性がそのままPull-Upされるのではなく、Tested IncomeやTested Loss、QBAI等のCFC側で認識される属性を米国株主側で加工する米国側の属性となので、米国株主が保有する全CFCからの金額を通算してGILTI合算額を確定するという新たな法的フレームワークに基づく新コンセプト。さらにGILTI控除(税率を21%から10.5%とするための合算額の50%の想定控除)やGILTI間接税額控除は法的に米国法人のみに認められるため、パートナーシップが米国株主としてGILTI合算算定を行うと、GILTI控除も外国税額控除も認められず、GILTI合算額がそのまま米国法人パートナーに配賦されるという不都合が起こる。

この点を大胆かつ高尚な提案で解決しようとしたのが2018年9月に公表されていた財務省規則案のハイブリッドアプローチだった。さて、このような高尚なポリシーコールに最終規則ではどのような運命が待ち受けていたか?長くなってきたのでここからは次回。

Wednesday, June 26, 2019

GILTI最終規則遂に公表

前回と前々回のポスティングではFDIIの話しを中断して、ここ10年、米国上院が最終化できなかった条約批准手続きに動きがある、というスクープに触れた。批准の動きは活発なようで、今度こそ長いトンネルの先にようやく光、となるといいけどね。FIRPTA適用時の米国不動産法人の定義が現行の条約では世界一有利なので、再編等で条約を利用するんだったら急がないとね。

税制改正に戻るけど、2017年12月22日に税制改正が可決され、この6月22日で18カ月が経った。2019年6月22日までに最終化される財務省規則は、法律可決日に過去訴求して法的な効力を持たせることができるので、当初から重要な規則はこの日をターゲットに最終化を目指してきた。でも、さすがに規定が複雑過ぎ、かつポリシー的なコールに関しては賛否両論、喧喧囂囂となっている規定も少なくなく、22日までに最終化されるのはTransition Tax以外ではGILTI規則だけだろう、と言われていたけど、本当にGILTIは最終化された。しかもSubpart Fや245Aの取り扱いを規定する新規則案やAnti-Abuse系の暫定規則追加3つのパッケージと共に計4部作。総計505ページの超大作だ。財務省やIRSのChief Counsel Officeは本当に優秀。普段、税務調査で遭遇するIRSのAgentと同じAgencyに属するとは思えない(?)。

6月14日午後4時、金曜日ということもありNYCでは早々に仕事を切り上げマンハッタンからハンプトンに脱出するTrafficで、Midtownトンネルに向かうMidtown East辺りからLong IslandのQueens Midtown Expresswayは既に大渋滞に陥っている頃、またロサンゼルスでは未だ午後1時だというのに、いつも通り何の意味もなく時間にも上下線にも関係なく405が大渋滞になっている頃、何の前触れもなくGILTI最終規則が公表された。DCでは金曜日の午後も後半を迎え、しかもFather’s Dayの直前ということで、「出るとしても月曜日だろう・・」とすっかり油断していた矢先の出来事だった。

このパッケージは凄い。2017年の税制改正はGILTIに始まりGILTIに終わると言っても過言ではないけど、GILTIそのものに留まらず、派生的に影響を受ける100%配当控除や従来からのSub Fへの影響など、を一気にパッケージで複数提示しているところに感動。テリトリアル課税の100%配当控除を規定している245Aの使用にかかわるAnti-Abuseは説明が難しいけど、日本企業にもSituation次第では影響がありそう。FDIIのポスティングを続けないといけないとは知りつつ、今回のポスティングでは「旬」の話題としてGILTIの最終規則に簡単に触れざるを得ない状況。

GILTI最終規則の多くの規則の中でいくつかヘッドライン的なものを挙げるとすると、High-Tax Exception、米国パートナーシップの取り扱い、Tested Lossを他のCFCに使用されたCFCの株式簿価の調整メカニズムの撤回、の3つだろうか。実際に申告書を作成する者には、何十年も遡ってADSに基づく償却を計算しなくてもいいかも、っていう明るいニュース部分が一番ハッピーだったかもね。

まずは、「High-Tax Exception(HTE)」。GILTIにかかわるHTEは最終規則には敢えて規定されていないので、最終規則のポスティングとしては変わったキックオフになるけど、同時公表された新らたな規則「案」で提案されている。HTEはGILTIの法文そのものには規定されていないにも関わらず、既存のSub Fに規定される限定的なHTEを利用した財務省の(かなり)Creativeな理論で規則策定の権限を正当化した上での英断。これは超ビッグディール。三権分立的には行政府の規則策定権限の範囲内かどうか疑義が残るが、納税者に有利な規定なので訴訟に持ち込まれることも考え難いし、おそらくいHill(議会立法府)のメンバーとはすり合わせをした上での策定だろうから、実務的にこの点が問題となるリスクは低い。

以前から触れている通り、GILTI合算のベースとなるTested Incomeは、CFCでどれだけ高税率に晒されていても、原則関係なく合算対象となる。これはGILTIの「Low-Taxed Income」という名称から受ける印象と大きく異なる取り扱いだ。GILTI法に明確に規定されているCFC側の高税率にかかわる唯一の例外は、既存のCFC課税に基づきSub Fになるけど、Sub Fに規定されているHTEで所得がSub Fからキックアウトする選択を納税者が行っている場合、Sub Fから除外されるとは言え、それをもってGILTI目的のTested Incomeにはならない、と言う規定。回りくどいけど、すなわちSub FでないCFCの所得は原則Tested Incomeになるけど、HTEでSub Fではないと選択する所得はTested Incomeからも除外してあげましょう、という規定だ。

GILTIが立法される過程の両院Conference Repotの一部に「CFCが米国外で少なくとも13.125%の法人税を支払っていればFTCを通じてGILTI合算に基づく追加税負担は米国で発生しない」と言い切っている部分がある。FTCがきちんとGILTI合算額マイナスGILTI控除の10.5全額教科書通り取れればそうなんだけど、FTCを勉強した人は初日に習うベーシックとして、FTCの枠は米国株主側で計上される費用を外国源泉所得に配賦して制限枠を減額しないといけないので、現実には、米国株主側の支払利息を代表とする「米国の」費用が控除制限枠を圧縮する。簡単に言うと、外国源泉所得に配賦されてしまう費用は21%で課税される、または費用控除が実質否認されているのと同様の効果をもたらす。なんで米国MNCにとって、費用配賦法を規定しているSection 861は最重要規定のひとつと位置付けられるし、FTC規則パッケージ、Transition TaxやGILTI規則でも大きな話題となる。税制改正ではGILTIと100%配当控除対象となる二つの大きな新カテゴリーが外国源泉所得に加えられたので、FTCおよび費用配賦の計算時にこれらの新カテゴリーをどう処理するかは複雑かつ重要な検討となる。100%配当控除に関しては法律でどのように費用処理を考えると簡単に触れられているが、GILTIに関しては特に新規定は設けられていない。ここは財務省がFTC規則案を公表した際に、結構Creativeに既存のExempt Assetに準じる規定をGILTIバスケットに適用し、GILTIは通常の税率の半分の税率で課税されることから、支払利息のように資産ベースで費用配賦計算を行う場合には、GILTI資産として取り扱われるCFC株式簿価の半分を「非課税資産」として取り扱うとしている。この英断のおかげで、GILTIバスケットへの費用配賦額は低くなるけど、それでも費用配賦が存在する限り、CFCの米国外での税負担がどんなに高くても一切関係なく米国で追加の法人税が発生することになる。

上で触れた、従来から存在するSub FのHTEでは、米国法人税率の90%超の法人税率の対象となっている所得は合算課税の対象外とする、っていうもの。以前は法人税率が35%だったので、その90%は31.5%で、そんな高税率の国はもはや世の中に存在しないに近かったので、あんまり役にたつ除外規定とは言えなかった。税制改正で法人税率が21%に下がり、それに準じて90%も18.9%というそれらしい税率に引き下がったのでHTEがにわかに息を吹き返したような状況になっている。

とは言え、先々週の金曜日までは、これはあくまでSub Fの世界の話しでGILTI目的では、原則CFCが認識するTested Incomeが何%の税率に晒されていても関係ない話しだった。数週間前からDCでは、今回の最終規則でTested Incomeが米国外で18.9%等の一定以上の高税率で課税されている場合、GILTI合算計算から除外するような広範なHTEの導入が噂されていたけど、結局は最終規則そのものには盛り込まれなかった。その意味では米国MNC側の落胆は大きいかも。ただ、HTEを常に選択するのがベストとは限らないので、かりにHTEが規定された後も納税者各々が置かれている個々の状況を基に詳細なモデリングを行って選択のメリット・デメリットを見極める必要がある。

で、なんで最終規則に盛りこまれなかったのに、最終規則のポスティングの冒頭にこの話しをしているかと言うと、上述の通り、最終規則と同時に「新たな」規則案が公表され、そこで従来のSub Fに対するHTEと同様のHTEが提案されているからだ。同様とは言え、Sub FとTested Incomeはその性格が大きく異なるので、実際の適用は結構異なる。また、新規則草案が最終規則となるまでは、規則案で提案されてるHTEは使用してはいけない旨が最終規則、規則案の双方に明記されているので、あくまでも案として提案されている状況。過去訴求はないと明記されているので、規則案が正式に公告された後に開始する課税年度からの適用となり、暦年ベースの場合は早くてCFC課税年度の2020年からの適用となる。これだけ明確に未だ使っちゃダメと書いてあるのに、米国MNCや弁護士事務所は2018年の申告書に適用する法的確証度合いはあるか、とか分析しているところが面白い。もちろんMLTNどころかFiling Positionすら怪しいだろう。

次回はGILTIと米国パートナーシップに関して。

日米租税条約「議定書」本当に批准間近?(2)

前回、「日米租税条約「議定書」いよいよ批准間近??」でDC・NYC界隈でのスクープに触れたけど、具体的に進展があり、つい一カ月前までは遠い夢だと思われていた日米租税条約の議定書の批准も、米国上院の急な動きでにわかに現実味を帯びてきた。

昨日、DCで開催された「Senate Foreign Relations Committee(上院外交委員会)」で日本、スイス、ルクセンブルグ、スペイン4か国との議定書が発声投票という形で可決された。Rand Paulはスペインの議定書に関して、修正を求めたようだけど却下されたと言われている。

これで残るは上院本会議での可決。前回のポスティングで触れた通り、Rand Paul先生がいる限り全会一致の決議書という手法が不可能なので、実際に議場で審議して発声投票に持ち込む予定らしい。上院は夏は閉会で議員たちもDCにいないから、実際の審議がいつのことになるか分からないけど2019年中には批准が完了する可能性が高い。

ちなみに昨日の上院外交委員会では4カ国の議定書、すなわち既存の条約に対するマイナーな修正、のみを取り扱っている。ハンガリー、チリ、ポーランドとの条約の批准プロセスは開始されていないことになるけど、これはマイナー修正の議定書と異なり、本当の条約改正となる部分は前回のポスティングでも触れている「後法優先」と「2017年の米国税制改正」の絡み、特にBEAT規定に関して、後法の条約が影響しないよう、何らかの修正文言を加えることを検討している理由ではないか、と言われている。さっさの批准しないからそういう面倒なことになるね。米国側の自業自得だけど、アクションを引き延ばしてもロクなことはないという、人生や一般生活にも当てはまるいいレッスン(?)。

Sunday, May 26, 2019

日米租税条約「議定書」いよいよ批准間近??

チョッとスクープみたいな話しがDCやNYCの法曹界で噂になっているのでFDIIの話しの真っ最中だけど、租税条約の批准に関して特番。

米国が他国と締結する条約は、憲法のArticle 2 Section 2の更にSubsection 2(2-2-2で覚えやすいね)に規定されている通り、行政府に締結の権限があり、したがって租税条約は具体的には財務省が当事者他国と交渉・締結する。条約の米国法体系における位置付けは、連邦憲法および連邦法と並ぶ最高の法規と憲法に規定されているので、かなりのステータス。Internal Revenue Codeとかの内国法と同列の立場にあり、条約が内国法を必ずしもオーバライドしないことから、後法優先という日本ではチョッと分かり難い優先順位に基づく判断が必要となる。

更に憲法の2.2.2(もう覚えた?)に規定される通り、条約が正式に効力を持つためには上院の3分の2多数で批准される必要がある。内国法が下院からスタートして法制化されるのに対し、条約に関して下院に物言う権利がないので、下院からしてみると少し悔しい存在。

ちなみに日本語では上院っていうけど、英語ではSenateで、これはもちろん古代ローマのSenetusから来ているけど、なぜか同じSenateでもローマバージョンは「元老院」。米国が名称を借用したくなるような統治制度を2000年前に確立させていた古代ローマは凄い。都市国家から領土を拡大し、帝政となり、その後崩壊していく過程は現在の国家のライフサイクルにも通じるものがありとても勉強になるし興味深い。テクノロジーがどれだけ進歩しても、所詮、人間のサガは今も昔も大差ないということなんだろうか。

米国憲法は、「We the People of the United States…」が「more perfect Union」を形成するために、賢人が過去の歴史・過ちから学び、知力を結集して策定した法律だ。洞察力に富む至上の法律と言えるけど、立派な憲法があっても「法の支配」がなければ、宝の持ち腐れ。独裁国家でも、聞こえのいい憲法を存在させること自体は可能で、それを法的に執行するメカニズムがなければ全く意味がない。法の支配の中でも特に重要なのが「三権分立(Separation of Power)」。立法府(議会)と行政府(Executive Branch)のSeparationはロシア疑惑関連でWilliam Barrとか良く争点となり、最近特に考えさせられることが多いけど、実は司法府、すなわち裁判所の動向も目が離せない。近年、大統領令が出ると訴訟になることが多いけど、本来、裁判所は立法府でも行政府でもない訳だから、大統領が大統領令を出す権限を逸脱していないかどうか、すなわち憲法上、大統領府に対して認められている権限内の行為であるか、という法的な検討にフォーカスするべきで、大統領令の内容そのものが賢いかどうか、という判断を加味する立場にはないはず。なぜかと言えば、賢いかどうかはそれを判断する者の考え方により異なるからで、本来、司法府はそのような視点を盛り込む立場にはないはず。

オバマ政権もトランプ政権も大統領令を乱発気味だけど、最近の司法府は、内容そのものが気に入らないとか、オバマ政策やトランプ政策が嫌い、というイデオロギー的な理由で大統領令を無効とするような判例が多く、しかも地方裁判所が全米有効のInjunctionを言い渡したり、Standingを未だ確立していない、よって訴訟を起こす立場にない、と思われる州が訴えを起こして、それが認められたり、所詮三権分立もそれを担当する判事たちの憲法順守にかかわる見解に左右されることが多く、せっかくの制度も最後はそれを司る人次第、という意味で限界を感じることが多い。この手の話しをし出すと本が一冊書けるので、いずれそのうちに。

で、租税条約だけど、ご存知の通り、上院議員の一人であるRand Paulが情報交換規定が違憲であるというような理想論で、反対し続けていることから、2009年以降10年間にも亘り、米国では租税条約はひとつも批准されていない。塩漬けになっている条約のひとつはもちろん2010年に二国間で合意済みの日米租税条約の議定書だ。なぜ、たった一人の上院議員が3分の2で可決できる条約批准をブロックし続けることができるのかは2016年に「日米租税条約改正は一体いつ発効?」という3回特集を組んでいるので、詳細はぜひそちらを参照して欲しい。要は他に切羽詰まった議題が多く存在する中、また上院議員はいつもDCに居る訳ではない中、各条約を議場で議論して3分の2の多数決で可決させる時間は到底なく、この手の承認は通常、「全員一致」の決議書で行うという点に問題がある。

で、ここに来て急展開があり得る状況になったのは、面白いことにRand Paulと同じケンタッキー上院議員で、上院多数党院内総務、というと堅苦しいけど要は「Majority Leader」のMitch McConnellが条約の批准が10年間滞っている点を問題視し始めたからだ。McConnellはどちらかと言うと無表情かつ冷徹にことを進めるタイプで、Cliff Simsの書物の表現を借りるならば「Viper」ということになるけど、地元ケンタッキー州民の利益のためには努力を惜しまないDCの実力者だ。ケンタッキー農民のためにFarm Billを通したり頑張ってる中、ケンタッキー州のとある酒造会社が「米国とスペインの租税条約の議定書が塩漬けになっていて不利益を被っているが、何とかならないものか」というような話しをMcConnellに持ち込んだらしい。McConnellがその話しを聞くまで条約批准がここまで滞っている状況を理解していたのかどうかは不明だけど、独力で条約批准を10年間も阻止し続けてきた張本人が同じケンタッキー州のもう一方の上院議員(上院議員は下院と異なり州の人口にかかわりなく、各州2名)だったという実態に唖然とした点は想像に難くない。

で、早速Paulに働きかけ、他の上院議員にもここ数週間、根回しを行ってるらしい。ただ、手順としてはSenate Foreign Relations Committee(上院外交委員会)というところがヒアリングを行い、そこで可決してから本当の上院の審理に回したり、と結構気の長い話。外交委員会はPaulの欠席時に一度可決を成功させてるけど、同じ年内に本院で可決されないと再度委員会に差し戻されるというルールがあり、もう一度、そこから始めないといけない。

条約の批准は当然、既に合意された条約に対して行うものだけど、批准の際に、条項を修正したり条件を付けることが認められる。Paulに賛成させるには、情報交換規定に関して何らかの条件を付けるというような奥の手もあり得るけど、条約だから米国が一方的に新たな条件を盛り込む訳にはいなかい。となると当然、条約締結相手国と再交渉の必要が生じる。しかも2009年当時から合意されてきた条約には、2017年の税制改正なんて全く想定されてない訳だから、そんな条約が後法優先で批准されてしまうことの影響も加味しないといけないだろう。時間が経てば経つほど面倒だね。CPA試験とかさっさと受からないと勉強しないといけない会計原則が増えるばかり、っていう悪循環みたい。う~ん、なんか時間掛かりそう。支払利息の源泉を0%にしたい方は利息の支払いをチョッと待ってみる?または逆に米国法人が米国不動産持分に当たるかどうかの判断が、今の条約が有利だったらさっさと再編とか売却とかしてみる?ここ10年で批准のモーメンタムは最高潮にあると言えるだろうから、価値はあるかもね。

Saturday, May 25, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案 (4)

早いもので前回FDII絡みのポスティングをしてから一カ月以上の月日が流れてしまった。連日連夜USタックスと格闘し続けても、余りにディープな規定の連発で、全てを良く理解するには全く時間が足りない。もともとこんな複雑な法律を一人で全て理解するのは到底不可能だけど、その際に決めてになるのが、米国のLaw FirmやBig-4、また米国財務省やIRSのChief Counsel Officeの弁護士チームとの情報交換の機会。経験豊かな賢人のコメントは各規定の理解に欠かせない。25年以上税法や判例読み続けても、読む度にその難解さを認識することが多い訳だから、納税者の皆さんが良く理解できないことが多いとしても、それは当り前。自社取引、ストラクチャーにおけるどういうところがSweet Spotsとなり得て、そして法律はとてつもなく複雑なので誰か優秀なアドバイザーが必要で、そして優秀なアドバイザーは高い(?)っていう点を認識していれば十分。 僕がパートナーを務めるEY US Firmは元々米国における国際税務分野では業界No.1だと思うし、他のUS Firmに属してた頃はEYの米国国際税務部門は羨望の的だった。で、自社国際税務チーム内にはDCやNYCに層の厚い多くの有識者が居て、彼らと持つ何気ない会話の中で各規定の理解が一層深まることが多い。財務省やIRSのChief Counsel Officeにも多くのOB/OGが居たり、またその方たちがFirmにブーメランのように戻って来たりするので、裏話し的な情報ももらえて楽しい。

裏話と言えば、「GILTI」とか「BEAT」とかのアクロニム(頭字語)が余りにCatchy(規定内容ではなく名前だけだけどね・・)で出来過ぎているな、っていうのはみんなも感じてると思う。議会のセンスの良さと言うか、洒落が通じる感じが上院議員の重鎮たちのイメージとチョッと違ってて面白い。元々法律をドラフトしている段階で、これらの法文タイトルは略してGILTIやBEATとなるように敢えて命名されてたらしいけど、実はドラフトしている当人たちも未だ本当に税制改正が可決するとは思ってなかったようで、「どうせ廃案だったらよりCatchyな名称で(?)」っていう勢いでドラフトを進めていたところ、本当に数週間と言う前代未聞のスピード可決が実現してしまい、そのままの名称で立派な法律になってしまったという落ちがあるらしい。もちろん規定そのものは、相当前から存在した複数の提案やコンセプトに基づき、可決されることを想定して真剣に考え尽くされてるものだけど、名前はそのままでゴールインしてしまったので、2018年以降の米国税制を語る際の語彙がよりカラフルになった。

ちなみに法文の条文や法律の策定の際には各々の規定に「タイトル」が付いてるけど、条文解釈時にはタイトルは法律の一部ではないことから、その直後に始まる条文そのもののみが法的な効果を持ち、タイトルの内容は加味してはいけない。俗にBase Erostion Anti-Abuse Taxとか呼ばれるので、「僕はAbuseしてないから、BEATの対象になるのはおかしいのでは・・」とか、心情的には分かるんだけど、法的にはBEATミニマムタックス適用有無判断時に納税者側のAbuse意図の有無は一切条件となっていないことから、条文の要件に抵触する場合にはメカニカルにBEATが適用されてしまう。法律が可決して間もない頃、上院財政委員会の弁護士と直接意見交換するという夢のような機会があって、その際にBEATはAMTに代わるミニマムタックスの位置づけなのよ、という趣旨のことを言われ、その当時はこの点に関してなかなかピンとこなかったけど、考えれば考えるほど、そうなんだな~っていう今日この頃でした。

で、FDII。前回のポスティングでは、FDII適格と取り扱われる、すなわち13.125%っていうスーパーアトラクティブな税率の対象となる所得は、敢えてザックリと言ってしまえば、米国法人の課税所得の超過利益のうち外国の顧客(関連者含む)から得ている部分という説明までした。今回は、肝心の、どんな所得が外国の顧客からのものと取り扱われるか、っていうFDIIの神髄とでも言える検討に入りたい。

税制改正後の米国法人税フレームワークだけど、米国法人が認識する所得はPureに国内で終焉している取引と、国外取引に対するものに大別される。国内終焉所得は全て21%で課税され、国外所得は更にルーティン利益と超過利益に区分される。リーティン利益はValuationや経済分析を基に算定するのではなく、有形償却資産の税務簿価の10%と機械的に算定され、所得を認識する法人が所在する国の法人税率に基づいて法人税を支払えばそれで終わり。米国内で認識されるルーティン所得は国外取引にかかわるものでも21%で課税だし、米国外のCFCが認識するもの0%だったり20%だったり30%だったりするかもしれないけど、各々の国で適用法人税を支払えばそれまでとなる。

国外取引から生じる所得のうち、ルーティン利益を上回る部分があれば、それは自動的に超過利益となる。理論的な背景としては、超過利益が存在するということは、結局みなしで何らかのノウハウ、マーケット無形資産(デジタル課税を巡りホットだけど)とか、何らかの無形資産があるはずということだろう。このことから、GILTIの2番目の「I」やFDIIの最初の「I」がIntangibleの頭文字となる。国内終焉取引や国外ルーティン利益が21%課税されるのに対し、国外超過利益には最低13.125%の法人税を世界のどこかで支払ってもらおう、というのがツイン規定であるGILTIとFDIIの考え方。GILTIは米国法人が、米国外に所在するCFC経由で認識する所得に対して、GILTI合算、GILTI控除、FTCという3段階構造メカニズムを通じて「理論的」には、国外で13.125%以上の法人税を支払っていれば、米国での追加法人税はなし、国外の法人税が13.125%に満たない場合には、13.125%を上限として米国で差異(必ずしも13.125%との差異満額ではないが、13.125%が総額の最大値)をミニマム課税として支払って下さい、という規定となる。FTCの枠や控除制限の関係で実際には13.125%で終焉しないケースも多いのは以前のポスティングの通りだけど、フレームワークというか設計コンセプトとしては、13.125%が世界ミニマムタックスだ。

同じ概念を米国法人が認識する国外取引に適用しようとしているのがFDII。FDIIは米国法人自らが認識する米国外派生所得のうち超過利益に13.125%で課税するという仕組み。FDII対象となる取引は通常米国外では課税されないから、GILTIと異なり、合算だの控除だのFTCだのという面倒なステップはなく、単純にFDII適格となれば想定控除を通じて実効税率が13.125%となるようにできている。

ちなみに、米国外派生所得は、英語では「Foreign Derived Income」だけど、これはFTCを算定する際に従来から存在していた「Foreign Source Income」とは全く別のもの。FDII目的では所得の源泉地が米国か米国外か判断する必要は一切なく、派生先、すなわち、顧客が米国外なのかどうかが決め手となる。ロイヤルティを除く大概の国外派生所得は米国源泉所得だろう。

FDII適格所得は、資産の販売とサービス提供に大別される。資産販売は棚卸資産のような有形の資産を販売しているケースばかりでなく、無形資産の販売やロイヤルティの受け取りも含まれる。条文に規定される適格要件が、資産販売とサービス提供取引で微妙に異なる点がややこしい。

資産販売に関しては、「米国人でない顧客(not a United States person)」に販売され、かつ「資産使用場所が米国外」という二つの条件を充たす必要がある。一方、サービス提供に関しては、「米国外に所在する者(any person not located within the United States )」に対して、または「米国外に所在する資産(property not located within the United States)にかかわる」サービスを提供している必要がある。これは言うは易し。第三者に販売した商品がその先、買い手によりどこで使用されているか、なんて売り手側では捕捉できないケースも多い。そこで財務省規則案では資産やサービスのタイプ別にこの法文の要件を具体的にどのように充足するかを詳細に規定している。ペーパーワークは面倒だけど、規定としては熟考されていて評価するべきものだと感じている。

次回から取引タイプ別の判断法と取り揃えておくペーパーワークについて。

Sunday, April 7, 2019

FDII/GILTI控除財務省規則案 (3)

FDIIの財務省規則案が公表されたのを機に、FDIIについて書き始めてたんだけど、税制改正のインプリメンテーション等でとてつもなく多忙になってしまい、なかなかアップデートできず終いで今に至ってしまった。それにしても税制改正のコンプライアンスに与える負荷は凄まじい。2018年3月期は基本的に留保所得一括課税と即時償却の影響だけを考えればよかったけど、2019年3月期からは部分的に留保所得一括課税も残るケースもある上に、BEAT、GILTI、FDIIが「本当に」申告書に反映されることになるため迫力満点。

早くも一年前となる2018年3月の留保所得一括課税だって、実際に申告書に反映させようと思って規則を適用してみると、Cash v. non-cashの区分、期中の分配、FTCの計算やSection 78グロスアップに対するSection 245Aの適用可否、とか想像を絶する複雑さ。規則とか読んで全て分かったような錯覚を覚えていても、実務に申告書に落とし込んでみると理解が深まるというか、理解しているつもりでも実はアヤフヤにしか分かっていない部分が浮き彫りとなる。

ちなみに留保所得一括課税は「旧」税法の世界で処理されるため、FTCなんかは旧Section 960経由で今は亡きSection 902で処理しないといけない。つまり慣れ親しんだPoolingで分母と分子をどう考えるのか、とかをバスケット毎に詳細検討したり、1986年以降すっかり定着していたFTCの考え方に基づき、「昔こんなエクセル作ったな~」とか、Section 902的にはかなりの郷愁が漂う作業となり、最後の郷愁と言う意味ではビートルズのLet It Beのスタジオセッションを彷彿とさせてくれた。何言ってるか訳わかんないかもしれないけど、それだけ米国で国際税務にかかわってきた者にとって今回の税制改正がゲームチェンジャーだという一面を、FTCのSection 902引退をもって感じることができるということ。もっと訳わかんない?かもね。

Let It Beと言えば、ナンとApple(MACやiPhoneのAppleではなく、元祖ビートルズのApple Corpの方)が、Rooftopコンサートのちょうど50周年に当たる今年の1月30日に、Peter Jacksonの手によりLet It Beセッション(またはGet Backセッション)の未公開映像を編集して新Let It Be製作に着手するというとんでもない吉報を発表した。しかも、80年代に質の悪いビデオが限定的に公開されたきりPublic Domainから姿を消していた元祖Let It Beの方も、再マスターされて「正式」に再公開されるという「今日まで生きててよかった~」レベルの大ニュースも一緒だった。

Appleのプレスリリースによると、1969年1月2日~31日に録画された55時間に上る未公開映像、144時間に上る音源、を基に新たなLet It Beを制作するというもの。凄い!できれば55時間丸ごと55回に分けてでもストリーミングして欲しい。1969年1月2日と言えば、ホワイトアルバムの録音終了から僅か数カ月後に、Twickenham Film Studiosにグループが再集結した日そのものだし、その後、George Harrisonが脱退して(クラプトンを代わりにみたいな凄い話しがあった時期)3人でセッションしていた数日を挟み、和解後にSaville RowのAppleビル(今ではA+Fのお店になっているあのビル)に場所を移しセッションを続け、Rooftopでのランチタイムに予告なく始まった(グループ最後の)Public Apperanceの1月30日までの全てをカバーしていることになる。賢いみんなは、でもプレスリリースでは1月31日までのセッションとなってるけど、って一日の差異を疑問に思ったことだろう(誰も思ってない?)。この空白の一日は、実はオリジナルの映画ではあたかもRooftopコンサート前に行われたかのようにプレゼンされている「Two of Us」「Let It Be」「The Long and Winding Road」3曲の最後のスタジオセッションの日だ。次回、映画Let It Beを見る際には、実はこの部分はRooftopの翌日だったんだ~、って観察すると更に感慨深い鑑賞となるだろう。

1月2日から1月15日までのTwickenham Film Studiosそして1月21日~1月31日までのAppleビルのセッションの様子は数々の海賊版(懐かしい響き!)で流出しているので、内容的には大概想像がつく。Let It Beのアルバムに落ち着いたナンバーに加え、公表は先だけど実際にはその後にレコーディングされたAbbey Roadに収録されている曲、さらには解散後ソロになった後に発表されることになる曲がIncubateされて徐々に形作られている過程だ。

Twickenham Film Studiosって、Abbey RoadやAppleビルと異なり、ロンドン市内ではなくヒースロー空港とロンドンの中間みたいな場所に当たるSt Margaretsっていう実に英国っぽい名前・風貌の街にある。あんなところに新年早々朝から集合しないといけないとは有名アーティストの仕事も楽じゃない。映画見る限り屋内でも相当寒そうだし。実はLet It Beの映画が恋しい余りに(わざわざ)St Margaretsまで訪ねて行ったことがあって、もちろん外からビルディングだけ見てもなんてことはなかったんだけど、そこの空気吸えて、その場に行けただけでも大満足。小さいころ、どんな場所なんだろう・・って夢広がってたイメージとはチョッと違ったりはしたけど。Saville RowやAbbey Road行く人は多くてもTwickenhamまで足を延ばす変わり者は珍しいかもね。

その場に居たと言えば、実は僕はJohn LennonとPaul McCartneyの2人「本物」を、コンサートとかのセッティング以外で、実物を見たことがある。特にJohn Lennonに関してはかなりの自慢話し。1970年代後半、夏休みの一部を軽井沢で過ごしていた時期があり、その時にたまたまJohn LennonとYoko(そして生まれて間もないSean)が旧軽の万平ホテルに滞在しているという噂があったので、毎日(皇太子と美智子様の出会いで有名な)テニスコート付近でわざわざHangoutしていた。そしたら、本当にJohnとYokoが(ナント)自転車に乗って現れ(Seanは確か自転車の前に据え付けられたカゴにチョコンと乗ってた記憶がある)、テニスコートの横で休憩し始めたのだ。写真そのもののJohn Lennonの生の姿を至近距離(2メートルくらい)で拝む結果となり、余りにSurrealな状況に気絶寸前。ビートルズの歌詞以外は英語も今一つな時代だったし、余りのオーラに辺り一面圧倒され半径2メートルくらい円形に自然にスペースができていたりしたこともあり、声を掛けることができなかった。今だったら「一緒にバンドでもやりませんか?」位のジョークは言えただろうに一生の不覚。でも2人が立ち去ろうとしている際に勇気を出して近づこうと思ったら僕の自転車がYokoの自転車に触れてしまい、そしたらYokoが「Sorry」って一言話して(?)くれた。謝る時は「I am sorry」と教わっていたのに、「Sorry」だけでいいんだ~、みたいなとんでもなくイノセントな時代だった。

で、Paul McCartneyの方は、1966年の武道館コンサート以来初、ソロ活動を開始してからも初、しかもVenus and Marsが出てWingsがまあまあ商業的に成功しているっぽかった「Rock Show」での来日時の話し。時は1980年。ウドー音楽事務所から早速手に入れた整理券は順番が遅かったので、代わりに新宿の「プレイガイド」(こんな言葉今でもあるのかな)で4泊徹夜して武道館アリーナ最前線の席のチケットを4日間(確か)予定されていた全コンサート分入手した。いよいよ来日が近づき心臓が止まりそうなくらい楽しみにしてたんだけど、ナント1980年1月に成田に到着したPaul McCartneyは麻薬不法所持で空港で逮捕され、そのまま留置所に。コンサートは全て中止となり、チケットは「額面」で払い戻しとなった。当時一緒にコンサート行く予定だった友人と熟考の末、チケット2枚は記念にとっておいて、残りは当時は珍しかったカラーコピーを新宿紀伊国屋でしてもらい還付、双方共後生大事に宝箱に入れて取っておいた。でも、もちろん今ではどこにいったか不明。で、全くの想定外の展開に夜も寝れない状況だったんだけど、Paul McCartneyが新橋の警視庁に拘留されていて、取り調べが行われている中目黒との間を行ったり来たりしているという噂を聞きつけ、新橋の留置所の前で張っていた。同様の噂を聞きつけたファンが結構な数いて、警視庁の辺りを取り巻いてたんだけど、そしたらナント本当に警察の所有車っぽい黒塗りの車が堂々と新橋の警視庁正面玄関に乗り付け、Paul McCartney本人が車から降りて歩いて階段を上り、建物に入っていったのだ。その瞬間辺りは騒然となり、興奮に包まれた。実はその後、Paul McCartneyとは再会(?)があり、それは時は流れて、2005年。ロサンゼルスの西部、ちょうど2002年頃まで10年近く住んでいたWestwoodの家から徒歩数分の場所にあったBordersっていう本屋さんがまだアマゾンに駆逐される前で健在だったころに、Paul McCartneyの著書「High in the Clouds」刊行記念サイン会みたいなプロモーションを企画した際。またしても本屋の前で張ってたら本当に(というか今回は予定通りに)、Paul McCartneyが、当時何らかの契約関係にあったLexusのSUVに乗って現れた。っていうのが2回目のEncounter。

Section 902の最後の郷愁から話しが飛び過ぎたけど、税制改正と新Let It Beのどっちでより興奮するべきか、という究極の課題を突き付けられたことになる。

で、FDIIだけど、米国法人が認識する当期の単年課税所得のうち、「みなし動産リターン(ルーティン利益)」を差し引いた金額を機械的に「みなし無形資産リターン」とし、そのうち米国外の顧客から発生する取引に帰する部分を13.125%で課税するという仕組み。なので、別に無形資産を有しているとか、価値のある無形資産に基づくリターンを得ているとか、そんな自意識がゼロでも、「みなし」の無形資産リターンが存在する限り、FDII,すなわちForeign Derived 「Intangible Income」の恩典を享受することが可能だ。

FDII計算ステップを簡単にまとめると次の通り。まず、米国法人(連結納税している場合は連結納税グループ)に「みなし無形資産リターン」が存在しないとFDIIの恩典には一切あり着けない点は上述の通りで、まずはここに着眼せざるを得ない。この認定もフォーミュラとしては機械的。すなわち単年課税所得とルーティン利益を比べて、課税所得の方が大きければその部分が超過利益として「みなし無形資産リターン」となる一方、ルーティン利益の方が大きければ、超過利益は存在しないとみなされ、その場でFDIIの検討はお終いとなる。

では、この運命の分かれ道となるみなし無形資産リターンの算定時に使用される、ルーティン利益、すなわち「みなし動産リターン」をどのように算定するかだけど、これは単純に「有形償却資産ネット簿価年間平均額(Qualified Business Asset Investment 「QBAI」)」の 10%。ここでいうネット簿価は米国法人税ベースだけどMACRSではなく、ADSと呼ばれる定額法償却に基づくもの。ADSにはボーナス償却とか、定率法に基づく加速度償却とかが存在しないので、ADSベースの簿価はどちらかというと会計の簿価に近い。各四半期末の簿価を年間平均した金額がQBAIとなり、これに10%掛けた金額がルーティン利益扱いされ、当額と比較して、課税所得の方が大きければ一次試験合格。

ここでは話しを簡単にするため「課税所得」がルーティン利益を超えていれば、と書いてるけど、実はこの算定をする際の課税所得は、申告書上の課税所得全体からいくつかの項目を除外する必要がある。それらは、CFC合算所得(Subpart F所得)、GILTI合算所得、金融サービス所得、CFCからの配当所得(みなし配当含む)、FOGIの逆でDOGI(?)とでも言える米国内オイル・ガス所得、そして米国外支店所得だ。米国外支店に帰属する多くの所得は普通に考えればその大半が米国外のカスタマーからの売上となるはずだけにFDIIの計算から(米国外)支店に帰する所得がカーブアウトされてるのはかなり興味深い。支店に関しては、支店をQBUと定義して、FTCの際に別のバスケット化されたりしているので再注目されているけど、FDII目的では支店に所得が配賦されない方が有難い一方、FTCのことを考えると、Excess Creditの場合には支店により多くの所得を配賦する方が好ましくテンションがある。条約のリソーシングとの関係とか、時間があったら税制改正後の米国法人の海外支店・PEは深掘りしてみたいトピックのひとつだ

みなし無形資産リターンの存在が確認できたら、次はそのうちのどの部分が米国外派生となるかの確定。これも「みなし無形資産リターン」に 「米国外派生%」を掛けた金額なので、フォーミュラとしては機械的に算定され、この金額こそがFDIIだ。米国外派生% は、単純に言えば、上述の除外項目以外の課税所得(適格所得)に占める外国部分の%。外国部分は米国外カスタマーに対する売上(ライセンス含む)およびサービス提供から派生する課税所得。なので米国法人の取引のうち、何がFDII目的で「米国外カスタマー」に対する取引と認められるか、が最重要検討事項となる。この点から次回。