2月20日、24日、25日にSCOTUSの2025~2026年会期で審理しているケースのいくつかの判決を言い渡すってSCOTUSカレンダーで公表されてたんで、もしかしたらこのうちのどこかで「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」の判決も出るかもねって関心を集めてたけど、結局、冒頭の20日に含まれてました。SCOTUSの判決は大概午前10時に公表されるんで、一応20日の10時にスタンバイしてたけど、ほぼ定刻に公表された。
結果は6対3で連邦の条文法IEEPAは大統領に関税を課す権限は付与していないっていうもの。「だったらそれ以上書くこと余りないんじゃないの?」とか「そんな結果を公表するのにSCOTUSは3か月半も費やすの?」って思うかもしてないけどOpinionの背景やそれが意味することを考えると要検討事項は無限に広がるもの。でも僕のポスティングは紙幅の関係からもちろん有限。安心した?
Majority Opinion
前回のポスティングでアレコレ判決を占った際、主判事Robertsは何とか判決を6対3のクリーンな「Majority」Opinionにするための調整に時間を費やしているのかもって書いたけど結果としてその通りの微妙なバランスのMajority Opinionに仕上がっている。この仕上がりに関する個人的な観測は後述するけど、Force of Lawや判事間のコンセンサス表示的に判決がPlurality(Majorityのない4対3対2とかの多数ベース)じゃない形となる点に注力し慎重に時間を掛けて内部調整しドラフトしたであろう過程・努力が計り知れる。実はポスティングでは触れてないけど、1月にDCの経団連ビルでパネルに参加した際、判決は「ズバリ6対3」になるのではって予想したけどその通りになった。
Slip Opinion
会期中に五月雨に公開される判決の文書は「Slip Opinion」って言って速報。って言ってもフルの判決文なんだけど、米国の法律かじったことある読者だったら馴染みがあるはずのBlue BookのCitationで使う「607 U.S. xxx (2026)」(SCOTUSケースの場合)のレポートページ数とかがまだAssignできない等の意味でのCosmetics面で速報に当たる。Slip Opinionでも判決の重みや法的な位置づけは変わらない。
インデックス
今回のポスティングでは複雑な論点を整理しないといけないんでAll over the placeになり過ぎないよう自分のためにも内容を予め目次としてインデックスしておく。まずHoldingそのものを詳解した後、当Holdingに至るSCOTUSによる法的な論点整理、複数の判事がConcurringやDissentingで表明している主張とそれらがHoldingに与える意味、そしてRobertsが執筆しているMajorityおよび部分的にPluralityと考えられる Opinionの「Artistic」な構成に触れてみたい。これらの話しをする際には前回のモーツァルト/Robertsお誕生日特集「トランプ関税の最高裁判決はいつ?」で取り上げた複数の注目ポイントと必要に応じて比較もしてみたい。そしてその後、Holdingが「意味しない」点、またメディアでこれこそAll over the placeな感のある救済策の考え方、判決後の通商動向、等にも触れてみたい。
Opinionは170ページに上るんで相当端折って書かざる得ないし「有限」な紙幅っていう制限内でのポスティングになるけど、ある程度の長編は覚悟してね。SCOTUSによる条文解釈・憲法論だからね。Good Newsがあるとしたら皆さんの興味は異なるだろうから時間掛けて170ページのOpinionを何回も読んだりする必要ないし、大半の読者はもちろん読まないと思うけど、願いとしては(SCOTUSが気の毒なので?)今回のOpinionやHoldingをメディア報道のフィルターを介してのみ受け取らないようにっていう点。
SCOTUSのOpinionはArt
SCOTUSのOpinionのように良くできた文書って音楽と似てる。いいアルバムって最初に聴いて「これいいね」って思った後に何回も聴くとその度に新たな発見があってますます良さが分かる。「このギターソロの構成の前半にこのフレーズがきてるところがさすが」とか「同じリフでも2回目はミュートがより効いててカッコいい」とかアーティストによる細かい点の工夫に感心することになる。映画とかも名作はそうだよね。
SCOTUSのOpinionも同じ。何回も読み直すと最初見落としてた意味深な部分に「ハッとして!Good」(古~)になったりね。SCOTUSが取り上げるケースの多くは憲法解釈でこれは米国の国家統治、さらに言えば国を熟考する際に常に価値のある洞察になる。250年の歴史を通じて今でも市民の生活に多大なる影響を持つ連邦憲法、そしてそこから派生する法体系、三権分立やSCOTUSが司法府として果たす役割を、1778年当時のJames Madisonたち先達が考えたであろう理想の国家像を今日でもReal Timeに感じることができるからね。250 年に亘る時のテストに耐えてきた米国主権を支えるルール。国家主権を超えて各国市民に説明責任がない権威主義的な「Rule Based」グローバルオーダーの「Rule」が重宝されてきた近年のトップダウンモデルの「デモクラシー」との比較にも役立つ。憲法の議論を読むたびに「なぜ欧州から独立して個人の自由が侵害されない新しい国を作ろうとした際、こういう国家統治、憲法にしたんだろう」って温故知新的に考えさせてくれる。
SCOTUSによる条文解釈のケースは、僕らが毎日格闘し続けてるInternal Revenue Codeの条文解釈時の原則や法体系適用の考え方をシャープにしてくれるっていうもっと直接的な関わりがある。
判決「Holding」
まずは基本的かつ最重要な今回のHoldingそのものに関して。この点はメディア報道とかだけ見てるとニュアンスが伝わり難いと思う。
前回のポスティングで触れた通り、最高裁が審理していた「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」は正確には「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」の2社が原告の元祖「Learning Resources, Inc.」ケース(No. 24-1287)と「V.O.S. Selections, Inc.」「Plastic Services and Products, LLC (商号 Genova Pipe)」、「MicroKits, LLC」、「FishUSA Inc.」、そして「Terry Precision Cycling LLC」の5社が原告の「V.O.S. Selections, Inc.」ケース(No. 25-250)をConsolidateしたもの。ただし、元々異なる2つのケースを取り扱ってるっていう点は覚えておいてね。各々に対して異なるHoldingの適用結果が言い渡されてるんで。
で、SCOTUSがOpinionの中で明確にHoldingと定義してるのは「IEEPAは大統領に関税を課す権限を付与していない」という点。また「Learning Resources, Inc.ケースは第一審で判決を出した下級審「DCのDistrict Court(連邦地方裁)」に法的管轄権がないことから無効」、一方「V.O.S. Selections, Inc.ケースはSubstantiveなHoldingに基づき下級審の判決をAffirm(正しいと認める)」っていう具体的な処置も明確にされている。
HoldingのSubstantive部分とStare Decisis原則
これを少しUnpackすると、最初の「IEEPAは大統領に関税を課す権限を付与していない」っていう点が明確にSCOTUSのHoldingとなったことから下級審は今後当Holdingに不整合な判決を出すことは認められない。先例拘束原則(Stare Decisis原則)のVertical、すなわち上から下への適用だ。Holdingが持つこの法的効果はこれから下級審でIEEPAベースの関税は不法って提訴する場合に法的な争点がなく事実関係にも争点がなければ原告はSummary Judgment的に簡単に勝訴できることになる。
このStare Decisis原則、Law Schoolの1年生の頃はIssue PreclusionやCollateral Estoppelとの区別とか勉強するよね。Stare Decisis原則には上述のVerticalとは別にHorizontal、すなわち自分が過去に言い渡したHoldingは、将来同様の事実関係の係争が持ち込まれた場合には原則、過去の判例に従う、っていうのもある。Verticalが絶対なのと比較して、Horizontalは憲法的にどう考えてもおかしい等の強固な理由があれば「Overturn」(HorizontalなStare Decisisを覆すことは「Overrule」じゃなくて「Overturn」っていう用語を使う)することはできる。歴史的にSCOTUSは少なからずOverturn権は行使してる。最近ではChevron原則を撤廃したLoper Brightが記憶に新しい。
Loper Brightの税制に与える影響は今後何年も掛けて進化するだろうけど、既に2017年国外留保所得一括合算(テクニカルにはSubpart F所得)時のSection 78グロスアップと245Aの関係を争ったケースの納税者勝訴(控訴中)はLoper Bright原則があったからこそっていう解釈がある。個人的にはChevron原則の2ステップテストでも最初のステップを克服できないんでLoper Bright原則前でも納税者が勝つべきだと思うけどね。他にも潜在的に財務省規則や行政府のアプローチが条文に合致しているかってChevronよりシビアに問われるんで実務的に大きなインパクトがあり得る。憲法解釈でChevronとLoper Brightとかは学術的な話しに聞こえるかもしれないけど、一般市民や企業の権限・義務に大きな影響がある判例だ。
OpinionのうちHoldingに当たる部分はStare Decisis原則で、その後の同様の事実関係の係争解決時に「Force of law」を持つことから、当然Opinionのうちどの部分をHoldingと位置付けるかがとても重要。Opinionを読んでどうHoldingをフレーミングするかっていうのは弁護士、特に法廷弁護士に欠かせないスキル。自分の主張に不利な判例はHoldingを狭義に解釈し、「我々のケースにはそのHoldingはOn-Pointではない」みたいな主張が可能になることもあるし、逆に有利な判例は文字通り、またはOpinionで論じられている整理を含むよう広義に解釈して「こんな判例があるんで我々のケースにOn-Pointです」って言う主張ができるようになる。この理由で同じ判例を巡って原告と被告が正反対の主張をサポートしたりすることがあるんで面白い。
今回のIEEPAは大統領に関税を課す権限を付与していないっていうのはHoldingって明記されてるんでどんなに狭義にフレームしてもこの部分は異論の余地なくHoldingだけど、それをサポートする法解釈のどの部分まではHoldingなのかっていう解釈に機械的な境界線はない。今回のMajority Opinionとこのニュアンスの関係はしつこいけど後述する。また、このHoldingは変な用語だけどDeclaratory Judgment的に広範な影響があり得るけど、SCOTUSの判決はあくまで今回の係争の当事者、すなわちLearning Resources, Inc.の2社、V.O.S. Selections, Inc.の5社と連邦政府間の権限・義務を解決するものだ。
Learning Resources, Inc.ケース却下
2つ目のHoldingとなる「Learning Resources, Inc.ケースは一審で判決を出した下級審であるDCのDistrict Courtに法的管轄権がないことから無効」は、前回のポスティングで審理の争点のひとつとして触れたもの。V.O.S. Selections, Inc.ケースを審理した下級審が「the United States Court of International Trade (CIT)」だったのに対し、Learning Resources, Inc.ケースはD.C.のDistrict Court(地方裁)で審理された。その時点で既に被告の連邦政府側は「the Harmonized Tariff Schedule of the United States (HTSUS)」の改訂を起因とする争点なのだから「CITが独占法的管轄権持つので却下するように」と抗弁してたけど、District Courtは「IEEPAは関税を課す権限を付与していないから関税を扱うCITではなくうちの管轄」みたいな独自の理由を展開してJurisdictionを自ら認め控訴審もそのまま追随している。最高裁は関税の還付を求めるケースはIEEPAに基づく関税を課す権限そのものが争点でも関税に変わりないっていう分かり易い整理でバッサリ。
このJurisdiction、提訴時にどのForumを選択できるかにかかわる手続き的な最重要検討事項。Jurisdictionは「Personal」と「Subject-Matter」に大別されるけど(Law Schoolの「Civil Procedure」思い出した?Evidenceと並んで苦手な生徒が多いよね)、今回の争点はSubject-Matterの方。関税の係争っていうSubject-MatterはCITのみにJurisdictionがあり、District Courtには審理する法的な権限がないってうHolding結果。これも立派なHoldingなんで、Stare Decisis的に今後、同様の関税マターはCITでの審理、または審理に代わってU.S Customs and Boarder Protection (CBP)経由の還付請求が求められる。もっと正確に言えばそんな原告はいないと思うけど仮に関税の訴訟がDistrict Courtに持ち込まれた場合、裁判所はJurisdictionなしを理由に却下しないといけない。また、仮に現時点で輸入者のうちDistrict Courtに訴訟を起こしている者がいるとすると、それらは全てDistrict Courtに却下されることになるから、別途CITに訴訟を起こすか、上述のCBPに還付請求を行うような道を追求するしかない。
結果、「Learning Resources, Inc.」ケースの原告2社「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」の訴えは下級審に差し戻され、最高裁の指示に基づき下級審が却下することになる。え~この2社の訴訟はなかったも同然で、他の傍観者と同じ立場に置かれてしまうっていうことなんだね。ChevronやLoper Brightと肩を並べて歴史の1ページを飾る判例に社名が冠されているのに当人のケースは却下っていうチョッと皮肉。とは言え、IEEPAに基づいて大統領は関税を課すことはできないっていうSubstantiveなHoldingはもちろん「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」2社にも適用されるんで、他の輸入者同様、CITに再度訴訟を起こすか、CBP経由で還付の道があるんだったらそっちでトライするかだね。
それにしてもLearning Resources Inc.のLegal AdvisorはなぜCITではなく敢えてJurisdictionに疑義があり得るDistrict Courtを選んだんだろうか。僕が知る術もないけど、D.C.のDistrict Courtは反トランプの判事が多いんで勝ち目十分って読んでForum Shoppingしたのかな。結局、裏目に出てクライアントにどう説明するつもりでしょうか。アドバイザーの立場としてはチョッと同情…。D.C.のDistrict Courtも潔く自分にはJurisdictionはないって却下しておけば最高裁まで行かないで済んだだろうけど、大型案件だけに勇んで「とんでもない権限逸脱」とか糾弾したかったのかもね。ともかく不要にBackfireしてしまった感は否めない。
V.O.S. Selections, Inc.ケース
3つ目の「V.O.S. Selections, Inc.ケースは下級審の判決をAffirm(正しいと認める)」は最初のSubstantiveなHoldingから当然の結果。
Opinion: Holdingの法的整理
Robertsが執筆しているSCOTUSとしてのOpinionはPart I、Part II、Part IIIで構成される。Part Iは更にAとBに分けられ、Part IIにもAとBがありAの下に更に1と2がある。この複雑な構成は6-3のMajority Opinionを形成するためのArt。Part IIIは短い総まとめ。
6人のMajority Opinionその1
まずPart IのAとBではIEEPAの条文内容、連邦政府によるIEEPAを適用した関税、等の背景となる事実関係を整理し、次に下級裁の判決に触れている。これらは特に法的に物議を醸す内容ではなく、Majorityを形成する6人、すなわちRoberts当人、Gorsuch、BarretとLiberal派のKagan、Sotomayor、JacksonがOpinionに名を連ねている。Part IIのAの1も同じ6人が賛同していて、Majority OpinionとなるHoldingの骨子となる法的整理の一部。この部分をまとめるとまず憲法のArticle 1のSection 8では「関税を含む課税権は議会のみにある」とし、憲法起草時から「課税権」は他の権限との比較で、市民の財産から支払われるという特別権限と位置付けられると説明されている。課税権が特別なStatusを持つっていう点はJames Madisonがその昔言ってた通り「課税する権限は「Destroy」する権限」(McCulloch v. Maryland, 316, 431 (1819))であり、市民に選挙で選ばれ、次の選挙で落ちるかもしれないっていう意味でも市民に説明責任が付きまとう議会のみが制定可能としてる。Alexander Hamiltonは課税権は国家が持つ権限でも最も重要(センシティブという意味で)と位置付けている。こんな風に米国の行政府にも権限がないんだから、米国とは一切関係なく現地欧州でも選挙で選ばれていないEUの官僚やましては政府でもないOECDが税法を規定して米国に押し付けるっていうのが米国の国家統治的にどれだけ横暴に映るか理解できてSide-by-Sideが少しわかった気がする?
で、この課税権には過去の判例から関税が含まれることは疑いの余地はないとし、歴史的に課税権が行政府に付与されたことはないとしている。関税に関して明確に言及し一定の歯止めの範囲で大統領に権限を付与している法律は複数あり、それらは明確な権限付与で無制限ではないので正当としても、連邦政府の主張となるIEEPAが大統領に付与している「ImportをRegulateする」っていう文言には関税に何の言及もないまま無制限に関税を課す権限が内包されているっていうのが正当かどうかと問題提起している。
憲法厳格主義3人のみ賛同のOpinion
ここからがチョッと面白くてその後に続くPart IIのAの2は6人ではなく憲法厳格主義のRoberts、Gorsuch、Barrettの3名のみが賛同。この部分では、関税に言及もないIEEPAがあれだけ無制限の関税を課す権限を大統領に与えているっていう条文解釈は無理っていう理由のひとつに憲法解釈原則のひとつと考えられる「Major Questions」原則を挙げている。すなわち課税権のような重要性が高い権限・Questionsは議会による権限付与が明確でない限り権限付与はないというもの。Major Questions原則は得てして不明確な部分が残りがちな条文が曖昧っていう理由で無暗に行政府が自分の解釈で法執行するようなことがないようにという歯止め。したがってIEEPAの条文の「Regulate」にそのような大それた権限が示唆されているっていうのは認められないってことだ。
Major Questions原則に関してはBarretとGorsuchが各々Concurring Opinionを執筆している。GorsuchのConcurring Opinionは後述のLiberal派のMajor Questions原則無視に皮肉を交えて反論している。またトランプ政権が鉄火のごとく怒るのを予知して「別の大統領(つまり将来の民主党)」が将来、同じように議会を無視して広範な権限を行使するようなことに繋がりかねない変な判例は残すべきではないと牽制している。前回のポスティングで触れた「Ambivalence」的なダイナミクスだ。
Liberal派の別Opinion
じゃあ、IEEPAの条文的に関税を課す権限は大統領に付与されてないって部分に同意しているLiberal派の3人、Kagan、Sotomayor、JacksonはなぜMajor Questions原則に触れているPart IIのAの2に限って賛同していないのか。それは3人の別Opinionにある通り、Major Questions原則を持ち出すまでもなく、条文の文言そのものの解釈で片付くとしている。すなわち、関税に言及していない単なるRegulateっていう文言に関税を課す権限が含まれているっていう解釈はなり立たないっていうもの。
Liberal派の3人が今回のケースでMajor Questions原則に賛同していないのは、Major Questions原則は別のケース、West Virginia v. EPAの判決で見られる通り、バイデン政権等の大きな政府派が議会を無視して何でもかんでも大統領権限や行政府の決定で敢行しようとする権限付与問題に大きな足かせとなるから。前回のポスティングで「Ambivalence」って表現した通り、通常、議会が決めるべき法律を行政府や大統領の権限で代行しようとするのはLiberal派が指示する方向で、今回のIEEPAによる関税はたまたまトランプ政権による越権(?)行為なのでLiberal派は何の躊躇もなく不法ってしてるけど、その理由にIEEPAの文言を超えてMajor Questions原則に言及してしまうと他に広範な影響があり得る点に危惧しているからだ。みんないろいろ考えるねって思うかもしれないけどプロ中のプロ達だからね。
ちなみにこの「Liberal」っていう用語、文字だけ見るとまるで個人の自由(Liberty)を尊重するような印象を受けるけど、実際にはそうではなく憲法解釈の観点から言うと、ファウンダーによる起草時の意図に基づいて厳格に憲法解釈する厳格主義との対比で、時代と共に社会は変わるのだから憲法解釈も憲法を文字通り読んだり、起草時の意図に縛られることなく今憲法を書いたらどんなだったかって解釈をする派を言う。憲法に対するこの適用法は結果ベースで憲法をどうにでも解釈し得るのでScaliaが生きてた頃、憲法の意味がなくなるとして徹底的に反感を示していた。ちなみに現判事の一人Barretは1998年期に当時判事だったScaliaのClerkを勤めた経験があり彼女の法律観にはScaliaの影響が見てとれることも少なくない。
政党やメディアでLiberalっていうと民主党だけど、こちらも大きな政府で個人の自由とは真逆。増してや今の民主党はケネディやクリントン時代の政党とは異なる社会主義っぽい思想がメインになってるからますます個人のLibertyからは遠い政策を標榜していることになる。
いずれにしてもMajor Questions原則を論じているPart IIのAの2部分はMajority Opinionを構成していることにならず、Stare Decisis的な観点からこの部分に関しては拘束力が弱まることになる。それがLiberal派3人がこの部分には賛同していない意図となる。前回のポスティングでこの3人は憲法解釈ではなくピュアに条文解釈に基づいて原告指示するであろうって予測したけど、まさにそんな結果になっている。
6人のMajority Opinionその2
次にPart IIのBが来るけど、ここは再度6人が賛同し、Majority Opinionの最終法的整理部分に当たる。
ここではMajority OpinionでHoldingをサポートするためMajor Questions原則に言及することなく純粋な条文解釈を試みている。IEEPAでは大統領にImportを「investigate」、「block during the pendency of an investigation」、「regulate」、「direct and compel」、「nullify」、「void」、「prevent or prohibit」する権限を付与している。議会が9つの動詞を使って具体的に権限を明確化している中、関税という文言は見当たらない。わざわざ9つも動詞を使って具体的に権限を表現している中、関税という文言は不在なのはそのような権限を付与する意図はなかったと理解するのが正しい条文解釈と整理している。法解釈の原則のひとつに「Inclusio Unius est Exclusio Alterius」(Law Schoolで習ったの思い出した?)っていうのがあって、これは丁寧にいろいろ列挙している条文では、列挙されていない項目は含まないっていうのが意図と解されるっていうもので、まさにこの9つの動詞に適用されるタイプの原則だ。
また301とかを含む他の関税を課す権限を付与している条文には必ず明確に関税に触れているっていう点も重要だと整理している。連邦政府の言う「Regulate」に関税を課す権限が含まれるっていう主張だけど、Regulateの「fix, establish, or control」といった通常の用語の意味的にそのような解釈は無理があると同時に、Regulateがそこまで広範な権限を付与しているということになると、他の8つの動詞で明言されている行為の多くも含まれることになり、それらを列挙する意味がそもそもなくなってしまうのでおかしいともされた。また課税はRegulate効果を持つ点はその通りだとした上で、だからと言って逆、すなわちRegulateに課税権が含まれるという主張、は真ということにはならないとしている。
前回のポスティングで触れた「Running with the Devil」のVan Halenのギターソロの冒頭、キュイーンって多分二つの弦を一気にBendingさせた直後にペキペキぺキって謎の音がするけどあれは当時ライブみたところSomebody Get Me a DoctorのBreak後のリフ4回目の技と同じで弦をPulling Offしながら右手の裏をフレット上を軽くミュートしながら動かしてあんな音出すんだよね。じゃなくて「Trading with the Enemy」(TWEA)でニクソン大統領が70年代に課した関税が下級裁で認められたっていう点はそのようなマイナーな判決が判決後にTWEAの更新版として可決されたIEEPAに継承されたとは認められないとしている。これらからIEEPAが関税に言及することなく「Regulate」っていう文言で議会が大統領に無制限に関税を課すという課税権限を付与しているっていう主張は不合理という結論になっている。
Holdingは条文解釈
前回のポスティングで最高裁が解決しようとしている争点はまず「IEEPAで国家緊急時に大統領に付与されている権限に関税を課すという行為が含まれているか」っていう点がありこれは条文解釈って書いた。そして仮にIEEPA による大統領への権限付与に関税を課す権限が含まれている場合、法律のその部分は「立法行為を行政府に権限移譲することを禁じている連邦憲法に違反しているか」という点がありこれは憲法解釈って書いた。結局、最初の条文解釈で終わったことになる。条文解釈時にクロスオーバー的に憲法解釈の原則の範疇と言えるMajor Questions原則が議論されたけど、こちらはMajority Opinionにはランクインしていない。
チョッと長くなってるんで一旦ここでBreakしてDissenting Opinion、救済策、今後の展望、メディア報道、判事の役割とかは別のポスティングで余り時間差なくアップします。
Tuesday, February 24, 2026
Saturday, February 7, 2026
米国RedomicileとFIRPTA (2)
前回はRoberts主判事の誕生日を祝してIEEPAに基づく関税が条文解釈的、また憲法解釈的に不法かどうかっていう点に関する特別企画でした。主に11月の口頭弁論を聴いた印象を中心に。楽しんで頂けましたでしょうか。Inbound Fより馴染みがあっていいって?それはそうだよね。でも今回はRedomicile実行をInbound Fで実行する際のFIRPTA課税適用緩和に戻ります。関税はSCOTUSの判決が出たら個人的な口頭弁論からの印象と実際の判決の比較、Majority Opinionの構築から伺えるRobertsのバランシングアクト等に少なくとも一回は触れてみたいと思います。「また逢う日まで…」だね(何ソレ?)。
F型再編
適格組織再編のうちEとかFは複数の法人がくっ付いたりしない単独再編。そのうちF型再編は「単なる」法人身分、形式、組成州・国の変更、に適用される。これらの変更が法形式的にどんなステップを経て行われても結果としてこれらの変更を実現するためならF型再編になる。F型再編とは言え適格組織再編規則だから、組織再編に共通の原則フレームワークは同じ。すなわち組織再編に適格とならない場合には、資産移管や株式交換が時価課税取引となり課税が生じるケースで各タイプの組織再編に求められる条件を満たすとそれらが非課税になるっていうもの。非課税となる代償に当事者が受け取る資産・株式の簿価は従来の額を継承する。したがって税務用語で「Tax-Free Reorganization」って言うけど、正確には「Tax-Deferral」。未来永劫フリーなランチはなかなかない。
F型再編も、F型再編でなければ課税があり得る取引が対象って考えられるんで(でなければF型再編要らないし…)、転換、合併、資産移管を伴わずに同一のCorporate Solutionが維持されて単に社名を変えたりするだけの行為はF型再編にはならないって個人的には考えている。意外にもこの点に必ずしもコンセンサスはないようだけど、社名変えて法人内の含み益が課税されるって考えられないんで、F型再編は身分や組成地の変更を転換や合併法を適用して実行する取引に適用があるはずだ。その際、どんな実行法でも単に法人身分、形式、組成州・国の変更のためであれば潜在的にF型再編の候補になる。このことからF型再編を規定している財務省規則でも「譲渡法人」と「結果として誕生する法人(ここでは単に「新生法人」って言っておきます)」の2つの存在を前提としてルールが策定されている。ただ、ターゲット法人と取得側法人が独立して存在するっていうよりはF型再編の譲渡法人と新生法人はF型再編を整理する目的で語られるだけで、新生法人は譲渡法人と同一の法人が継続してるっていうのが税務上の取り扱いって言える。もちろん新生法人にF型再編前に譲渡法人資産以外の資産があったり独自の活動があってはいけないし、F型再編後に譲渡法人が存続し続けたりすることもできない。
で、例によってF型再編にも複数の要件が財務省規則に規定されてるけど、中でも重要で今回のNotice 2025-45にも関係するのが株主同一要件。すなわち、譲渡法人と新生法人の株主がF型再編の直前・直後で同一でないといけない。じゃないと「単なる」身分や組成地変更にならないからね。ただ、他のタイプの適格再編は「Step Transaction」等の法体系を適用して同じプラン下で行われるステップで適格要件をUnwindしたりする場合には要件を満たしていることにはならないけど、F型再編は特別でF型再編前後で他関連取引がプランされていてもF型再編を実行している取引のみにフォーカスして適格性を判断することができる。複雑かつ広範な取引プランの中でもF型再編は、前後の取引から隔離されて守られてるんで業界用語で「バブルの中のF(F in a bubble)」って言われる。Message in a Bottleみたいでクールだね。ポリスは1枚目と2枚目の頃はNew Waveっていうかチョッとパンクっぽさを装ってたけど、2枚目が出た直後(それはそれは昔です)にバルセロナの闘牛場で見たライブではMessage in a Bottleの「I’ll send an SOS to the world」って超8ビートになるところで闘牛場が壊れるんじゃないかっていうくらいの盛り上がりだったのを覚えてる。ちなみにその時のOpening Actは同じUKバンドの「Dr. Feelgood」でした。
で、結構なケースでF型再編はそれ以外の要素を含むより広範な取引の一環で行われる。したがって全体像を見ると「単なる」身分・組成地変更とは言えないケースも多い。例えばどこかの州会社法で組成された法人が上場する際に会社法の観点からデラウェア州やテキサス州法人に転換されることは珍しくない。組成地変更そのものはF型再編だけど、同じプラン下で新生法人が新規に株式を交付したり、既存の株式を償還したりすることもある。そんな時「バブルの中のF」原則はとても有益。F再編自体も複数のステップを経ることがあるけど、それらのステップはバブル内の取引だから、その中では株主同一要件を含むF型再編要件は継続して満たしてなくてはいけない。
Inbound F
このF型再編を利用して外国法人が米国法人にRedomicileすることができる。例えば、外国法人(F型再編の譲渡法人)が米国に自分の身代わりになる米国法人(F型再編の新生法人)を設立(その際に資本金は実質ない状態)、当米国法人に合併(または合併同様に全資産を移管し負債を継承しれもらう)することで外国法人の株主は株式を米国法人の株式と交換し外国法人は米国法人に変わる。または、同様に外国法人が米国に自分の身代わりになる米国法人を設立した後、米国法人がTransitoryのMerger Subを組成し、当Merger Subが外国法人にReverse Subsidiary Merge(その段階で外国法人の株主は株式を米国法人の株式と交換、外国法人は米国法人の100%子会社)、そして最後に外国法人はEntity Classification選択でDRE(税務上は清算)になるとする。このケースも蓋を開けてみると外国法人は組成地が米国法人に変更されている。Inbound Fだ。
Inbound FとFIRPTA
「でも、Inbound FにどうFIRPTA関係あんの?」って思うかもしれないけど、実は大あり。上で触れたInbound Fの最初の例を見ると、まず外国法人が資産を米国法人に移管するステップは税務上、資産は負債継承と米国法人の株式を対価に行われたって取り扱われる。この移管は組織再編適格の場合は原則非課税。ただし、移管対象資産にUSRPIがあると対価として受け取る米国法人株式もUSRPIじゃないとこの部分は課税取引になる。ここが前々回のポスティングで触れた「非課税取引とFIRPTA」部分の取り扱い。次に外国法人は資産移管対価として受け取った米国法人株式を自社の株主に清算分配したと取り扱われる。この分配も組織再編適格の場合は原則非課税だけど、適格組織再編の一環で行われる外国法人の分配に適用される規則に基づき、外国法人が株式を受け取った時点で米国法人がUSRPHCの場合(すなわち株式はUSRPI)、分配は課税取引となり前々回の「外国法人による分配とFIRPTA」の取り扱いが適用される(その際に触れたNotice 89-85およびNotice 2006-46の適用を含む)。
2025‐45のFIRPTA課税緩和策
で、これらのルールは不要にInbound Fを実行困難にしているとし、今回のテーマのNotice 2025-45では特定要件下で上述の課税ルールを緩和している。具体的な緩和に関しては次回。
F型再編
適格組織再編のうちEとかFは複数の法人がくっ付いたりしない単独再編。そのうちF型再編は「単なる」法人身分、形式、組成州・国の変更、に適用される。これらの変更が法形式的にどんなステップを経て行われても結果としてこれらの変更を実現するためならF型再編になる。F型再編とは言え適格組織再編規則だから、組織再編に共通の原則フレームワークは同じ。すなわち組織再編に適格とならない場合には、資産移管や株式交換が時価課税取引となり課税が生じるケースで各タイプの組織再編に求められる条件を満たすとそれらが非課税になるっていうもの。非課税となる代償に当事者が受け取る資産・株式の簿価は従来の額を継承する。したがって税務用語で「Tax-Free Reorganization」って言うけど、正確には「Tax-Deferral」。未来永劫フリーなランチはなかなかない。
F型再編も、F型再編でなければ課税があり得る取引が対象って考えられるんで(でなければF型再編要らないし…)、転換、合併、資産移管を伴わずに同一のCorporate Solutionが維持されて単に社名を変えたりするだけの行為はF型再編にはならないって個人的には考えている。意外にもこの点に必ずしもコンセンサスはないようだけど、社名変えて法人内の含み益が課税されるって考えられないんで、F型再編は身分や組成地の変更を転換や合併法を適用して実行する取引に適用があるはずだ。その際、どんな実行法でも単に法人身分、形式、組成州・国の変更のためであれば潜在的にF型再編の候補になる。このことからF型再編を規定している財務省規則でも「譲渡法人」と「結果として誕生する法人(ここでは単に「新生法人」って言っておきます)」の2つの存在を前提としてルールが策定されている。ただ、ターゲット法人と取得側法人が独立して存在するっていうよりはF型再編の譲渡法人と新生法人はF型再編を整理する目的で語られるだけで、新生法人は譲渡法人と同一の法人が継続してるっていうのが税務上の取り扱いって言える。もちろん新生法人にF型再編前に譲渡法人資産以外の資産があったり独自の活動があってはいけないし、F型再編後に譲渡法人が存続し続けたりすることもできない。
で、例によってF型再編にも複数の要件が財務省規則に規定されてるけど、中でも重要で今回のNotice 2025-45にも関係するのが株主同一要件。すなわち、譲渡法人と新生法人の株主がF型再編の直前・直後で同一でないといけない。じゃないと「単なる」身分や組成地変更にならないからね。ただ、他のタイプの適格再編は「Step Transaction」等の法体系を適用して同じプラン下で行われるステップで適格要件をUnwindしたりする場合には要件を満たしていることにはならないけど、F型再編は特別でF型再編前後で他関連取引がプランされていてもF型再編を実行している取引のみにフォーカスして適格性を判断することができる。複雑かつ広範な取引プランの中でもF型再編は、前後の取引から隔離されて守られてるんで業界用語で「バブルの中のF(F in a bubble)」って言われる。Message in a Bottleみたいでクールだね。ポリスは1枚目と2枚目の頃はNew Waveっていうかチョッとパンクっぽさを装ってたけど、2枚目が出た直後(それはそれは昔です)にバルセロナの闘牛場で見たライブではMessage in a Bottleの「I’ll send an SOS to the world」って超8ビートになるところで闘牛場が壊れるんじゃないかっていうくらいの盛り上がりだったのを覚えてる。ちなみにその時のOpening Actは同じUKバンドの「Dr. Feelgood」でした。
で、結構なケースでF型再編はそれ以外の要素を含むより広範な取引の一環で行われる。したがって全体像を見ると「単なる」身分・組成地変更とは言えないケースも多い。例えばどこかの州会社法で組成された法人が上場する際に会社法の観点からデラウェア州やテキサス州法人に転換されることは珍しくない。組成地変更そのものはF型再編だけど、同じプラン下で新生法人が新規に株式を交付したり、既存の株式を償還したりすることもある。そんな時「バブルの中のF」原則はとても有益。F再編自体も複数のステップを経ることがあるけど、それらのステップはバブル内の取引だから、その中では株主同一要件を含むF型再編要件は継続して満たしてなくてはいけない。
Inbound F
このF型再編を利用して外国法人が米国法人にRedomicileすることができる。例えば、外国法人(F型再編の譲渡法人)が米国に自分の身代わりになる米国法人(F型再編の新生法人)を設立(その際に資本金は実質ない状態)、当米国法人に合併(または合併同様に全資産を移管し負債を継承しれもらう)することで外国法人の株主は株式を米国法人の株式と交換し外国法人は米国法人に変わる。または、同様に外国法人が米国に自分の身代わりになる米国法人を設立した後、米国法人がTransitoryのMerger Subを組成し、当Merger Subが外国法人にReverse Subsidiary Merge(その段階で外国法人の株主は株式を米国法人の株式と交換、外国法人は米国法人の100%子会社)、そして最後に外国法人はEntity Classification選択でDRE(税務上は清算)になるとする。このケースも蓋を開けてみると外国法人は組成地が米国法人に変更されている。Inbound Fだ。
Inbound FとFIRPTA
「でも、Inbound FにどうFIRPTA関係あんの?」って思うかもしれないけど、実は大あり。上で触れたInbound Fの最初の例を見ると、まず外国法人が資産を米国法人に移管するステップは税務上、資産は負債継承と米国法人の株式を対価に行われたって取り扱われる。この移管は組織再編適格の場合は原則非課税。ただし、移管対象資産にUSRPIがあると対価として受け取る米国法人株式もUSRPIじゃないとこの部分は課税取引になる。ここが前々回のポスティングで触れた「非課税取引とFIRPTA」部分の取り扱い。次に外国法人は資産移管対価として受け取った米国法人株式を自社の株主に清算分配したと取り扱われる。この分配も組織再編適格の場合は原則非課税だけど、適格組織再編の一環で行われる外国法人の分配に適用される規則に基づき、外国法人が株式を受け取った時点で米国法人がUSRPHCの場合(すなわち株式はUSRPI)、分配は課税取引となり前々回の「外国法人による分配とFIRPTA」の取り扱いが適用される(その際に触れたNotice 89-85およびNotice 2006-46の適用を含む)。
2025‐45のFIRPTA課税緩和策
で、これらのルールは不要にInbound Fを実行困難にしているとし、今回のテーマのNotice 2025-45では特定要件下で上述の課税ルールを緩和している。具体的な緩和に関しては次回。
Sunday, February 1, 2026
トランプ関税の最高裁判決はいつ?
今日は連邦最高裁(SCOTUS)の主判事John Robertsの誕生日なんで敬意を表して(Inbound Fから脱線して)最高裁の話し!って勢いよく書き始めたのが1月27日だったんだけど、書き終わらなくてポスティングの今日には既に誕生日過ぎちゃいました。1月27日はモーツァルトの誕生日でもあるよね!フィガロの結婚聴いてフルーツタルトで時を超えて誕生日を祝いました。Robertsは1955年生まれだけど口頭弁論聞くと相変わらず頭脳明晰で議事進行も迫力満点で凄いね。トランプは1946年だから更に先輩だけど、彼らどんな遺伝子持って生まれたんだろうね。う~ん、Robertsは連邦憲法良く知ってるよね(SCOTUSの主判事だらか当たり前だね)。
で、この一か月ほど「最高裁はいつトランプ関税に関する判決を公表するの?」とか「私も還付もらえる?」系の質問が後を絶たなかった。メディアではなぜか1月9日とか、1月14日に判決が出る、とか根拠のない怪情報が出回ったりしてたんで余計に混乱するよね。
「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」
この関税のケース、正確には「LEARNING RESOURCES, INC., ET AL., Petitioners, v. DONALD J. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL., Respondents. 」と「DONALD J. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL., Petitioners, v. V.O.S. SELECTIONS, INC., ET AL., Respondents」の2つのケース(No. 24-1287とNo. 25-250)を共同訴訟化(Consolidated)したものだけど一般には簡単に「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」って呼ばれる。昨年11月5日の口頭弁論もRobertsが今日の弁論は「Learning Resources v. Trump, and the consolidated case」に関してっていうオープニングで始まってた。「Et al」っていうのは「その他」っていうことで他にも当事者が居る際に用いられる。「LEARNING RESOURCES, INC.」は、もともとDC Circuit控訴院の判決を不服として連邦政府側がSCOTUSに上告しているもので、もう一つの「V.O.S. SELECTIONS, INC」はFederal Circuit控訴院の判決に上告しているもの。双方ともに一審、控訴審共に原告が勝利している。法的な争点は双方同じ(後述のSubject-Matter Jurisdictionの件を除く)。
登場人物
2つのケースがConsolidateされてたり、被告数が多いんで当事者が多くて登場人物がチョッとConfusingだけど、最初のケースの原告で上告を受けて立ってるのは「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」。この2社、教材等のサプライヤーで関税で仕入コストが大きく上がり取り返しのつかない経済的な被害を受けたということ。Common Lawの裁判は被害を受けたものが金銭的な存在賠償を求めて起こすのが原則だから、被害を受けない(Standingがない)と訴訟を持ち込むことはできない。もう一方の「V.O.S. SELECTIONS, INC」ケースの方の原告は「V.O.S. Selections, Inc.」「Plastic Services and Products, LLC (商号 Genova Pipe)」、「MicroKits, LLC」、「FishUSA Inc.」、そして「Terry Precision Cycling LLC」の5社。V.O.S.はニューヨークのワイン輸入者。さらにややこしいことに上告を受けて立つ者、すなわち裁判の対象となっている関税は不法と主張する側、にはオレゴン、アリゾナ、コロラド、コネチカット、デラウェア、イリノイ、メイン、ミネソタ、ネバダ、ニューメキシコ、ニューヨーク、バモントの12州が含まれてる。
元々の被告で上告しているのは主権としての「the United States of America」、トランプ大統領、Department of Homeland Security (DHS)、 Kristi Noem (DHS長官)、Customs and Border Protection (CBP)、Rodney S. Scott (CBP長官)、USTR、Jamieson Greer通商代表、Howard W. Lutnick (商務長官)、加えて訴訟の被告には 財務省、Scott Bessent (財務長官)、商務省も含まれていた。
訴訟の争点
最初の争点は「The International Emergency Economic Powers Act (IEEPA)で国家緊急時に大統領に付与されている権限に関税を課すという行為が含まれているか」っていう点。これは議会が立法したIEEPAっていう法律に含まれる条文解釈(Statute Interpretation)の問題と言え、僕たちが日常、Internal Revenue Codeの条文が意図している意味が何かって格闘しているの同じ検討になる。ちなみにIEEPAは「アイーパ」っていいます。次に仮にIEEPA による大統領への権限付与に関税を課す権利が含まれている場合、法律のその部分は「立法行為を行政府に権限移譲することを禁じている連邦憲法に違反しているか」という点。憲法解釈の争点で主に「Non-delegation条項」(これはその名の通り)やCommon Lawの「Major Questions原則」(Majorな立法Questionは明言がない限り権限移譲されないっていう趣旨の憲法論)の視点での検討になる。最後の争点は法的管轄権にかかわるテクニカルなもので「Learning Resources, Inc.」の一審だった地方裁に法的管轄権(Subject-Matter Jurisdiction)があったかどうか、すなわちそもそも審議をする権限を持っていたかっていう点。この最後の点はこの手の連邦政府を相手取っての訴訟はCourt of International Tradeに持ち込まないとダメで通常の地方裁には管轄権がないという連邦政府側の議論で、一般にはそれは正しいって理解されているけど争点になっているのはIEEPAでそもそも関税を課す権利がないという話しになると地方裁にも管轄があるのではないかっていようなポイント。この点は口頭弁論ではハイライトされてなかった印象があるんでこれ以上は触れない。
訴訟の「争点ではない」ポイント
最高裁は司法府だから、関税を課すという政策が賢明なものか、とか効果があるかというような点には口を出さない。これらは憲法で認められる範囲で立法府の議会や行政府・大統領が決定すること。最高裁に判断が求められているのはあくまでも純粋に法的なもので、最高裁の審議は関税という政策を支持する、またはしないという視点ではない。これは他の最高裁のメジャーな判例も同じで例えば、死刑、拳銃等の武器保持権、Abortionとかメディア報道はとかく「最高裁が死刑容認…」とか「Abortion禁止…」みたいにフレームされることが多いけど、そうではなくこれらの権利が憲法的にどのように解釈され、是非があるのであれば誰が(Abortionに関しては主権を持つ市民が州の選挙・立法を通じて決めるべき)という判断をしていることになる。
また最高裁で審議の対象となってるのはIEEPAに基づく大統領権限だけで、他の法律に基づく関税、例えば232とか301とかに基づく関税には一切影響はない。仮に別の訴訟でも起これば別だけど、232や301はIEEPAと異なり関税を課す権利を大統領に明確に付与しており、また一定の限定的な範囲での権利と考えられることから今回、IEEPAに関して審議されている争点は余りないと言える。
口頭弁論
去年の11月5日10時04分に始まった口頭弁論はスケジュールされた1時間20分(原告・被告各々40分)をもちろん大幅に超過して3時間近くを要した。9人の判事による多くの質問が双方に寄せられた。長いやり取りを詳細に説明するのは紙面の関係で不可能だけど、口頭弁論聞き終わった個人的なImpressionは次のような感じ。
最初の争点であるIEEPAの大統領に対する権限付与に関税が含まれるかっていう点は条文の文言の「regulate… importation」のRegulateに関税を課すという行為が含まれるかっていう点。連邦政府の弁護士(司法省のSolicitor GeneralであるJOHN SAUERが代表)は簡単に言ってしまえば輸入に対する「Regulate」の主たるツールは関税なのだから、この権利は含まれてないという解釈は不合理と言うもの。これに対して原告側の主張は関税を課す権利を与えている他の法律は明確に関税に触れており、関税に言及がないIEEPAでは関税を課す権利は付与されていないと解釈すべきというもの。IEEPAで認められる輸入の「Regulate」はQuota、Embargo、輸入Licenseなどという主張。IEEPAではこれらの権利を付与していると同時に最後に「or otherwise 」と記載されてて、条文解釈的にこのOtherwiseが意味する権限の範囲も議論されていた。またIEEPAを理由に関税を課した例はないという点も指摘していた。それに対して連邦政府はIEEPAの前身である1917年の「Trading with the Enemy Act (TWEA)」(法名がなまなましいね。Running with the Devilみたい)はIEEPA同様に「Regulate」っていう用語を使用してたけど、TWEAに基づき1971年にニクソン大統領が平時に課した関税をCCPA(Federal Circuitの前身みたいな裁判所)が権限の範囲内とした例を持ち出して防御していた。ちなみにこのニクソンのケースの原告は「Yoshida International Inc.」っていうジッパーを日本から輸入していた日本企業だ。1975年のケース。1971年と言えば前回触れたBretton Woodsが崩壊した頃で、この関税も米国のMonetaryシステムを外国の侵略から守るみたいな理由付けだったらしい。なんかいつも変わんないね。
原告のCollateral議論、すなわち仮にIEEPAで関税を課す権利が大統領に付与されているという条文解釈判断になる場合、その付与自体が憲法のNon-delegation条項違反という点もDeepに議論されていた。この憲法解釈にかかわる主たる争点となるのは上述の通り「Non-delegation」と「Major Question原則」だけど、これら2つはほぼ並行して議論されてたんでこの二つの個別な適用は正確には区分し難かった、連邦政府の言い分はNon-delegationは外交政策分野には適用はないというもの。一方、原告側は関税は課税権(Taxing Rights)であり、行政府に権限移譲は認められない立法府の権限の最たるものというもの。IEEPAに基づく関税が課税かどうかっていう点のやり取りは結構面白くて、連邦政府は「IEEPAを基に課している関税の目的は他国の通商や薬物にかかわる行動を制御」するもので「歳入はあくまで付随効果…」という苦しい抗弁。トランプは日ごろから関税でTrillion Dollarの歳入があるって豪語しているし、実際に関税で財政赤字(Deficit)は減っている。
判事の反応
リベラル派のSotomayer、Kagan、Jacksonは原告指示だろう。おそらくNon-delegationの複雑な連邦憲法違反という理由よりも条文解釈的にIEEPAのRegulateには関税は含まれてないっていうOpinionを書くんじゃないだろうか。他の憲法厳格主義派の6人だけど仮にThomasとAlitoが連邦政府の主張を支持とすると、他の4人のOpinionがどうなるかで決まる。この6人はLoper Bright(Chevron原則撤廃)やWest Virginia v. EPA(Major Questions原則を強固に)等でも表れている通り通常から行政府が大きくなるのを嫌う。口頭弁論でも連邦政府側のポジションに余り同調を示している様子はうかがえず残り4人のうち3人がIEEPAに基づく関税を支持するとはチョッと考え難かった。
この部分のダイナミクスは学術的な議論を超えて興味深く、トランプ政権はDOGE、De-Regulation等の政策で分かる通り、建国時の理想からかけ離れて肥大化したDCの官僚システム・行政府を小さくする派、また6人の憲法厳格主義派の判事も憲法の根幹にあたる三権分立を再確立しようとする傾向が強いから、この関税のケースは政権の立場がいつもと逆なんだよね。Alitoが原告側の弁護士Katyalに憲法解釈にかかわる質問をする際、「君(Katyal)からNon-delegationの主張を聴くことになるとはね…」(すなわち、オバマ政権のSolicitor Generalの一人だったKatyal系の弁護士は、通常、行政府に権限がDelegationされているという側の主張をすることが多かったと思われるため)と軽い(だけど深淵な)Jokeを飛ばして会場を沸かせていた。とっさのKatyalの反応も機知に富んでて「お互い、Non-delegation条項の意味を書き換えた憲法解釈の権威として歴史に名を残すようなことは考えたくないですね」(相当な意訳)と返していて、憲法議論の頂点に立つ者によるこのやり取りは口頭弁論の醍醐味そのものだった。
この辺のAmbivalenceのせいか、他のケースでは口頭弁論聴いて「ほぼ間違いなくこんな判決になるだろう」って図り知り易いこともあるけど、その手の確証度合いに比べると「多分こうなるのかな…」っていう程度の感触だった。また判決結果そのもの以上に、どんな風にOpinionを構築するんだろうかっていう好奇心が高まる。最終的な判断は当然、判決を読むまで分かんないけどOpinionを読むのが待ち遠しい。
救済法・Remedy
仮にIEEPAに基づく関税が認められない場合、次に原告にどんな救済が認められるかっていう点が見もの。ちなみに今回、最高裁で審議されてるこのケースはClass Actionじゃないから訴訟という手続きの性格から原則、原告2+5社(口頭弁論では原告は5社って言及されてた)に対する損害賠償の話し。最高裁が何らかの救済を認める場合、自動的に他の輸入者に同様の救済があるということでは必ずしもない。既に地方裁やCITにIEEPAに基づく関税が不法と言う訴訟を持ち込んでいる他の原告は、地方裁等は最高裁の判決に準じた判決を出す義務があるので最高裁で不法という判決となる場合には他のLower Courtsの訴訟に関してもSummary Judgment的に原告が勝利し、同様の救済があることになるだと思う。ただし、口頭弁論でも少し触れられてたけど原告以外の輸入者に関しては全く異なる法源に基づく込み入った手続きになり実務的に還付作業は困難ではないかって議論されていた。
主判事のRobertsは憲法厳格主義であると同時にPragmaticなところがあり、オバマケアを違憲とすると医療保険市場が大混乱すると予想されたので5対4のCasting Vote的にオバマケアは「Taxing Rights」だから議会による立法は憲法違反ではないという詭弁(?)でオバマケアを違憲判決から救った実績がある。今回も同様にIEEPAに基づく関税は不法というSubstantiveな判断に至った上で、救済策としては何らかの実務的に対応可能な方法を提示するんじゃないだろうか。もちろんそうなるかどうかは分かんないし、どんな対応策があり得るか検討もつかないけど、例えば議会の立法に委ねる、または不法という位置づけを判決後のProspectiveな適用にするっていう可能性もあるかもね。
判決はいつ?
最高裁の手続きとして、口頭弁論が終わるとケースは「Submit」済みStatusとなり、その後、いつSCOTUSが判決を言い渡すかは2025~26年の会期が終了するのが6月だからそれまでには言い渡されるはずっていう点を除いて誰にも分からない。明日かもしれないし5月かもしれない。ただひとつ言えるのは9人の判事でどんな風にMajority Opinionを構築するかっていうすり合わせに時間を要しているに違いないっていう点。このプロセスは結論そのもの(Holding)に合意する以上にデリケートで、Holdingには同調しても理由や何をDictaとして挿入するかに関して意見が割れることは多く、Robertsとしては少なくとも6人の判事がMajority Opinionに参加できるようなドラフティングを模索しているかも。税金関係の最高裁判決で話題だったMooreはMajority Opinionを読むとOpinionを構成する判事形成のためのバランシングアクトが素晴らしい。今回は特に救済策をどんなものにするかに頭を悩ませてる可能性はあるよね。
で、この一か月ほど「最高裁はいつトランプ関税に関する判決を公表するの?」とか「私も還付もらえる?」系の質問が後を絶たなかった。メディアではなぜか1月9日とか、1月14日に判決が出る、とか根拠のない怪情報が出回ったりしてたんで余計に混乱するよね。
「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」
この関税のケース、正確には「LEARNING RESOURCES, INC., ET AL., Petitioners, v. DONALD J. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL., Respondents. 」と「DONALD J. TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL., Petitioners, v. V.O.S. SELECTIONS, INC., ET AL., Respondents」の2つのケース(No. 24-1287とNo. 25-250)を共同訴訟化(Consolidated)したものだけど一般には簡単に「LEARNING RESOURCES, INC. v TRUMP」って呼ばれる。昨年11月5日の口頭弁論もRobertsが今日の弁論は「Learning Resources v. Trump, and the consolidated case」に関してっていうオープニングで始まってた。「Et al」っていうのは「その他」っていうことで他にも当事者が居る際に用いられる。「LEARNING RESOURCES, INC.」は、もともとDC Circuit控訴院の判決を不服として連邦政府側がSCOTUSに上告しているもので、もう一つの「V.O.S. SELECTIONS, INC」はFederal Circuit控訴院の判決に上告しているもの。双方ともに一審、控訴審共に原告が勝利している。法的な争点は双方同じ(後述のSubject-Matter Jurisdictionの件を除く)。
登場人物
2つのケースがConsolidateされてたり、被告数が多いんで当事者が多くて登場人物がチョッとConfusingだけど、最初のケースの原告で上告を受けて立ってるのは「Learning Resources, Inc.」と「hand2mind, Inc.」。この2社、教材等のサプライヤーで関税で仕入コストが大きく上がり取り返しのつかない経済的な被害を受けたということ。Common Lawの裁判は被害を受けたものが金銭的な存在賠償を求めて起こすのが原則だから、被害を受けない(Standingがない)と訴訟を持ち込むことはできない。もう一方の「V.O.S. SELECTIONS, INC」ケースの方の原告は「V.O.S. Selections, Inc.」「Plastic Services and Products, LLC (商号 Genova Pipe)」、「MicroKits, LLC」、「FishUSA Inc.」、そして「Terry Precision Cycling LLC」の5社。V.O.S.はニューヨークのワイン輸入者。さらにややこしいことに上告を受けて立つ者、すなわち裁判の対象となっている関税は不法と主張する側、にはオレゴン、アリゾナ、コロラド、コネチカット、デラウェア、イリノイ、メイン、ミネソタ、ネバダ、ニューメキシコ、ニューヨーク、バモントの12州が含まれてる。
元々の被告で上告しているのは主権としての「the United States of America」、トランプ大統領、Department of Homeland Security (DHS)、 Kristi Noem (DHS長官)、Customs and Border Protection (CBP)、Rodney S. Scott (CBP長官)、USTR、Jamieson Greer通商代表、Howard W. Lutnick (商務長官)、加えて訴訟の被告には 財務省、Scott Bessent (財務長官)、商務省も含まれていた。
訴訟の争点
最初の争点は「The International Emergency Economic Powers Act (IEEPA)で国家緊急時に大統領に付与されている権限に関税を課すという行為が含まれているか」っていう点。これは議会が立法したIEEPAっていう法律に含まれる条文解釈(Statute Interpretation)の問題と言え、僕たちが日常、Internal Revenue Codeの条文が意図している意味が何かって格闘しているの同じ検討になる。ちなみにIEEPAは「アイーパ」っていいます。次に仮にIEEPA による大統領への権限付与に関税を課す権利が含まれている場合、法律のその部分は「立法行為を行政府に権限移譲することを禁じている連邦憲法に違反しているか」という点。憲法解釈の争点で主に「Non-delegation条項」(これはその名の通り)やCommon Lawの「Major Questions原則」(Majorな立法Questionは明言がない限り権限移譲されないっていう趣旨の憲法論)の視点での検討になる。最後の争点は法的管轄権にかかわるテクニカルなもので「Learning Resources, Inc.」の一審だった地方裁に法的管轄権(Subject-Matter Jurisdiction)があったかどうか、すなわちそもそも審議をする権限を持っていたかっていう点。この最後の点はこの手の連邦政府を相手取っての訴訟はCourt of International Tradeに持ち込まないとダメで通常の地方裁には管轄権がないという連邦政府側の議論で、一般にはそれは正しいって理解されているけど争点になっているのはIEEPAでそもそも関税を課す権利がないという話しになると地方裁にも管轄があるのではないかっていようなポイント。この点は口頭弁論ではハイライトされてなかった印象があるんでこれ以上は触れない。
訴訟の「争点ではない」ポイント
最高裁は司法府だから、関税を課すという政策が賢明なものか、とか効果があるかというような点には口を出さない。これらは憲法で認められる範囲で立法府の議会や行政府・大統領が決定すること。最高裁に判断が求められているのはあくまでも純粋に法的なもので、最高裁の審議は関税という政策を支持する、またはしないという視点ではない。これは他の最高裁のメジャーな判例も同じで例えば、死刑、拳銃等の武器保持権、Abortionとかメディア報道はとかく「最高裁が死刑容認…」とか「Abortion禁止…」みたいにフレームされることが多いけど、そうではなくこれらの権利が憲法的にどのように解釈され、是非があるのであれば誰が(Abortionに関しては主権を持つ市民が州の選挙・立法を通じて決めるべき)という判断をしていることになる。
また最高裁で審議の対象となってるのはIEEPAに基づく大統領権限だけで、他の法律に基づく関税、例えば232とか301とかに基づく関税には一切影響はない。仮に別の訴訟でも起これば別だけど、232や301はIEEPAと異なり関税を課す権利を大統領に明確に付与しており、また一定の限定的な範囲での権利と考えられることから今回、IEEPAに関して審議されている争点は余りないと言える。
口頭弁論
去年の11月5日10時04分に始まった口頭弁論はスケジュールされた1時間20分(原告・被告各々40分)をもちろん大幅に超過して3時間近くを要した。9人の判事による多くの質問が双方に寄せられた。長いやり取りを詳細に説明するのは紙面の関係で不可能だけど、口頭弁論聞き終わった個人的なImpressionは次のような感じ。
最初の争点であるIEEPAの大統領に対する権限付与に関税が含まれるかっていう点は条文の文言の「regulate… importation」のRegulateに関税を課すという行為が含まれるかっていう点。連邦政府の弁護士(司法省のSolicitor GeneralであるJOHN SAUERが代表)は簡単に言ってしまえば輸入に対する「Regulate」の主たるツールは関税なのだから、この権利は含まれてないという解釈は不合理と言うもの。これに対して原告側の主張は関税を課す権利を与えている他の法律は明確に関税に触れており、関税に言及がないIEEPAでは関税を課す権利は付与されていないと解釈すべきというもの。IEEPAで認められる輸入の「Regulate」はQuota、Embargo、輸入Licenseなどという主張。IEEPAではこれらの権利を付与していると同時に最後に「or otherwise 」と記載されてて、条文解釈的にこのOtherwiseが意味する権限の範囲も議論されていた。またIEEPAを理由に関税を課した例はないという点も指摘していた。それに対して連邦政府はIEEPAの前身である1917年の「Trading with the Enemy Act (TWEA)」(法名がなまなましいね。Running with the Devilみたい)はIEEPA同様に「Regulate」っていう用語を使用してたけど、TWEAに基づき1971年にニクソン大統領が平時に課した関税をCCPA(Federal Circuitの前身みたいな裁判所)が権限の範囲内とした例を持ち出して防御していた。ちなみにこのニクソンのケースの原告は「Yoshida International Inc.」っていうジッパーを日本から輸入していた日本企業だ。1975年のケース。1971年と言えば前回触れたBretton Woodsが崩壊した頃で、この関税も米国のMonetaryシステムを外国の侵略から守るみたいな理由付けだったらしい。なんかいつも変わんないね。
原告のCollateral議論、すなわち仮にIEEPAで関税を課す権利が大統領に付与されているという条文解釈判断になる場合、その付与自体が憲法のNon-delegation条項違反という点もDeepに議論されていた。この憲法解釈にかかわる主たる争点となるのは上述の通り「Non-delegation」と「Major Question原則」だけど、これら2つはほぼ並行して議論されてたんでこの二つの個別な適用は正確には区分し難かった、連邦政府の言い分はNon-delegationは外交政策分野には適用はないというもの。一方、原告側は関税は課税権(Taxing Rights)であり、行政府に権限移譲は認められない立法府の権限の最たるものというもの。IEEPAに基づく関税が課税かどうかっていう点のやり取りは結構面白くて、連邦政府は「IEEPAを基に課している関税の目的は他国の通商や薬物にかかわる行動を制御」するもので「歳入はあくまで付随効果…」という苦しい抗弁。トランプは日ごろから関税でTrillion Dollarの歳入があるって豪語しているし、実際に関税で財政赤字(Deficit)は減っている。
判事の反応
リベラル派のSotomayer、Kagan、Jacksonは原告指示だろう。おそらくNon-delegationの複雑な連邦憲法違反という理由よりも条文解釈的にIEEPAのRegulateには関税は含まれてないっていうOpinionを書くんじゃないだろうか。他の憲法厳格主義派の6人だけど仮にThomasとAlitoが連邦政府の主張を支持とすると、他の4人のOpinionがどうなるかで決まる。この6人はLoper Bright(Chevron原則撤廃)やWest Virginia v. EPA(Major Questions原則を強固に)等でも表れている通り通常から行政府が大きくなるのを嫌う。口頭弁論でも連邦政府側のポジションに余り同調を示している様子はうかがえず残り4人のうち3人がIEEPAに基づく関税を支持するとはチョッと考え難かった。
この部分のダイナミクスは学術的な議論を超えて興味深く、トランプ政権はDOGE、De-Regulation等の政策で分かる通り、建国時の理想からかけ離れて肥大化したDCの官僚システム・行政府を小さくする派、また6人の憲法厳格主義派の判事も憲法の根幹にあたる三権分立を再確立しようとする傾向が強いから、この関税のケースは政権の立場がいつもと逆なんだよね。Alitoが原告側の弁護士Katyalに憲法解釈にかかわる質問をする際、「君(Katyal)からNon-delegationの主張を聴くことになるとはね…」(すなわち、オバマ政権のSolicitor Generalの一人だったKatyal系の弁護士は、通常、行政府に権限がDelegationされているという側の主張をすることが多かったと思われるため)と軽い(だけど深淵な)Jokeを飛ばして会場を沸かせていた。とっさのKatyalの反応も機知に富んでて「お互い、Non-delegation条項の意味を書き換えた憲法解釈の権威として歴史に名を残すようなことは考えたくないですね」(相当な意訳)と返していて、憲法議論の頂点に立つ者によるこのやり取りは口頭弁論の醍醐味そのものだった。
この辺のAmbivalenceのせいか、他のケースでは口頭弁論聴いて「ほぼ間違いなくこんな判決になるだろう」って図り知り易いこともあるけど、その手の確証度合いに比べると「多分こうなるのかな…」っていう程度の感触だった。また判決結果そのもの以上に、どんな風にOpinionを構築するんだろうかっていう好奇心が高まる。最終的な判断は当然、判決を読むまで分かんないけどOpinionを読むのが待ち遠しい。
救済法・Remedy
仮にIEEPAに基づく関税が認められない場合、次に原告にどんな救済が認められるかっていう点が見もの。ちなみに今回、最高裁で審議されてるこのケースはClass Actionじゃないから訴訟という手続きの性格から原則、原告2+5社(口頭弁論では原告は5社って言及されてた)に対する損害賠償の話し。最高裁が何らかの救済を認める場合、自動的に他の輸入者に同様の救済があるということでは必ずしもない。既に地方裁やCITにIEEPAに基づく関税が不法と言う訴訟を持ち込んでいる他の原告は、地方裁等は最高裁の判決に準じた判決を出す義務があるので最高裁で不法という判決となる場合には他のLower Courtsの訴訟に関してもSummary Judgment的に原告が勝利し、同様の救済があることになるだと思う。ただし、口頭弁論でも少し触れられてたけど原告以外の輸入者に関しては全く異なる法源に基づく込み入った手続きになり実務的に還付作業は困難ではないかって議論されていた。
主判事のRobertsは憲法厳格主義であると同時にPragmaticなところがあり、オバマケアを違憲とすると医療保険市場が大混乱すると予想されたので5対4のCasting Vote的にオバマケアは「Taxing Rights」だから議会による立法は憲法違反ではないという詭弁(?)でオバマケアを違憲判決から救った実績がある。今回も同様にIEEPAに基づく関税は不法というSubstantiveな判断に至った上で、救済策としては何らかの実務的に対応可能な方法を提示するんじゃないだろうか。もちろんそうなるかどうかは分かんないし、どんな対応策があり得るか検討もつかないけど、例えば議会の立法に委ねる、または不法という位置づけを判決後のProspectiveな適用にするっていう可能性もあるかもね。
判決はいつ?
最高裁の手続きとして、口頭弁論が終わるとケースは「Submit」済みStatusとなり、その後、いつSCOTUSが判決を言い渡すかは2025~26年の会期が終了するのが6月だからそれまでには言い渡されるはずっていう点を除いて誰にも分からない。明日かもしれないし5月かもしれない。ただひとつ言えるのは9人の判事でどんな風にMajority Opinionを構築するかっていうすり合わせに時間を要しているに違いないっていう点。このプロセスは結論そのもの(Holding)に合意する以上にデリケートで、Holdingには同調しても理由や何をDictaとして挿入するかに関して意見が割れることは多く、Robertsとしては少なくとも6人の判事がMajority Opinionに参加できるようなドラフティングを模索しているかも。税金関係の最高裁判決で話題だったMooreはMajority Opinionを読むとOpinionを構成する判事形成のためのバランシングアクトが素晴らしい。今回は特に救済策をどんなものにするかに頭を悩ませてる可能性はあるよね。
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