Friday, January 31, 2025

「America First Trade Policy」大統領令

前回はモーツァルトの誕生日に「Global Tax Deal」大統領令を語るっていう無粋な企画だったけど、最高裁主判事John Robertsの誕生日も1月27日。最高裁の口頭弁論で各判事が原告・被告の弁護士とやり取りする弁論、特に当事者のどちらかが「United States」の場合はSolicitor Generalとの弁論は連邦憲法を取り巻くLegal theoryが今が旬のトピックにどう適用されるかを考える際にCutting-Edgeな議論を満喫することができる。バイデン政権のSolicitor GeneralはElizabeth B. Prelogarでアイダホ出身だけど、MooreかLoper Brightか、もしかしたら他のメジャーなケースだったかもしれないけど、判事の一人(多分Gorsuchだった)がアイダホポテトのJokeを交えて議論した際に「私もアイダホポテトのことはよく知っている」とか言ってテンスな弁論中に一瞬法廷が和やかになるっていう一幕があった。

トランプ政権はJohn SauerをSolicitor Generalの候補に任命し上院の承認待ち。AGのPam Bondie(昔はフロリダ州のAG)と比較してメディアで語られることは少ないけど、最高裁でUnited Statesの代理人はSolicitor Generalだから最高裁で見ることができるのはSolicitor Generalの方だ。

ちなみに今では主判事のRobertsは、1980年台後半から90年代前半までDeputy Solicitor Generalだったことがあり(Rehnquistが主判事だった頃。ストライプの入ったローブなつかしいね!)U.S.Governmentに代わり「Cottage Savings」ケースをIRSの調査結果を最高裁で主張した歴史がある。Solicitor GeneralはUnited Statesに代わり最高裁で国側のポジションを主張するのが仕事だから当たり前じゃんって思うかもしれないけど、「Cottage Savings」ケースとRobertsには宿命(?)がある。90年代前半の米国不動産市況悪化で多くのS&L(この用語もなつかしい…)がピンチに陥ってたけど(昔から変わんないね~)、Cottage Savingsもその一つ。Mortgage Swapが1001のExchnageに当たるかどうかが争われた。簡単に言うとRobertsはIRSに代わりMortgage SwapはRealizationイベントじゃないんで損失は認められないって主張し、最高裁はSwap取引には「Realization」はあったとしてIRSが敗訴したんだけど、「Realization」がなければ課税なしっていうのは双方の主張の大前提。「Realization」ね...。ここで宿命というか後日のサガにピンときた人は偉い!全然きてないって?それはそうだよね。2024年にRobertsが主判事として最高裁で判決を出したMooreケース。965のMRTに関して、課税にRealizationが必要かっていう点が争われた(結果的にRealizationはMacomberっていう古い最高裁判例で既に求められるっていう前提で議論が進み、RealizationがあったかどうかっていうCottage Savings的な話しになり、最後はAttributionのケースになっちゃったけどね)。Mooreの口頭弁論ではRobertsは余り口を挟まず他の8人、特にThomasとGorsuch、がPrelogerとLivelyな弁論を交わしたけど、Robertsが静かだったのはCottage SavingsでRealizationが求められる点を既に体感してたからかもね。

う~ん、最高裁判決はDeep。最高裁傍聴席が一部オンライン予約になったんで早朝とか2日前から陣取って並ばないでも(オンラインでチケットが当たれば)傍聴可能になった。日によってはDCの朝寒いし、早朝4時に行けばいいのか前日、下手したら前々日から並ばないといけないかな、とかアレコレ予想しなくていいんでWelcomeなシステム。列に並ぶのと同じで、メジャーなケースは申請が殺到するだろうからライブで見ることができるケースはどちらかって言うと注目度合いが低め(って言っても最高裁まで行くんであくまで相対的な話しだけどね)のものかな~。4月のDocketのオンライン予約始まったら直ぐに申し込まないとね。ちなみに1月20日の大統領就任式には9人の判事が全員参加だったね。

で、今回のポスティングではGlobal Tax Deal大統領令とは別の大統領令でGlobal Tax Dealを含む弊害税制に触れている「America First Trade Policy」大統領令に関して。Global Tax Dealが直接・間接に2つの異なる大統領令でカバーされてる点も、先日触れた優先順位の高さを物語る。

「America First Trade Policy」大統領令

Trade Policyを統括する全体像的なテーマとして冒頭Section 1の一部に「通商は国家安全保障の重大な構成要素。他国への依存度を低下させることで安全保障に貢献する」としている。

その上、大統領令には多くのアクションプランが盛り込まれてるけど、大別すると「不公平・不均等な通商問題対応(Section 2)」、「中国との経済・通商関係(Section 3)」、「経済的国家安全保障(Section 4)」の3項目で構成される。 Section 2は更に(a)~(k)まで11項目(11で数合ってる?)のアクションが規定されてて、その名の通り外国の不公平な通商政策特定、USMCAを含む通商協定の再評価、為替操作、その他通商関連問題を広範にカバーしてる。

Section 3は中国に特化した(a)~(e)まで5項目のアクション。具体的には俗に「the U.S.-China Phase One Trade Deal」って言われる「the Economic and Trade Agreement Between the Government of the United States of America and the Government of the People’s Republic of China」(正式名は長いね)の合意内容に中国が準拠しているか、2024年の中国に対する「Four-Year Review of Actions Taken in the Section 301 Investigation」の再評価、サプライチェーン再構築による対中国関税迂回策の実態把握、追加関税の必要性、不当・差別的な通商慣習調査、クリントン時代の「U.S.-China Relations Act of 2000」に基いて中国に付与された「Permanent Normal Trade Relations (PNTR)」Statusの撤回にかかわる2023年の法案評価、知的財産プロテクション、等々。

中国って言えば、Deepseekが開発したR1 Chatbotの出来の良さに米国AI業界が強い衝撃を受けてたけど、実はDeepseekがシンガポール経由で不法に入手したNvidiaの半導体を使用してR1をトレーニングしたっていう疑惑が頭をもたげてる。Nvidia半導体の中でもH800は中国への輸出規制対象。最近Nvidiaのシンガポール向け出荷が急激に拡大したっていう話しもあり、今後の調査結果次第では対中国通商政策に更なる精査が加えられるだろう。AI合戦は宇宙開発合戦と同時に国の生死を分ける(?)とも言われてるんで、ただでさえ強硬派が揃ってる現政権による対応は迅速かつ強力なものになる可能性が高い。

宇宙開発は米国はStarship/StarlinkのSpace Xがあるけど東西陣営で競う姿は1950年~60年代のソ連(スプートニクス)v. 米国(アポロ)を思い出させてくれる。宇宙開発の広範なインダストリーに与える可能性、それらを実現させるテクノロジーはSpace X等のPrivateセクターの活躍で劇的に進化してるってPE、VCファンドスポンサーが言ってた。今日の宇宙開発競争相手は主に中国だけど、昔は何のプレゼンスもなかったにもかかわらず近年は米国同等、それ以上っていう見方もあるくらいだから安全保障面で相当なフォーカスになるだろう。月面基地とかは既に視野に入ってて、DeFiと並んで世界を変え得る超面白い分野。軍事面でのStakeの高さは、ロシアがウクライナに攻め入った際、最初にやったことはウクライナの衛星通信能力を除去したっていう点からも良く分かる。その際、Elon Muskは即座にStarlinkをウクライナ用にActivateしてウクライナの通信能力を復活させたけど、Starlinkがなければウクライナは即ロシアの手に落ちてただろう。戦術に全く無知の僕が考えても通信能力なしじゃ戦争になんないもんね。North Carolinaが強力なハリケーンで被害にあった際もElon Muskが即座にStarlinkで(無償で)通信能力を与えている。今年には携帯から直接Starlinkにアクセスできるようになるっていうことなんで(もうなってる?)、そうなったら使ってみようかな。今後、宇宙が主戦場になるんだったら今まで個人的にあまり注目してなかった1.863-8とか復習しないといけないかも。

Elon Muskはバイデン政権や民主党の計画経済的アプローチや過度な規制に批判的だったんで、この4年間FCC(Starlinkは過疎地のインターネット普及成果がないとか言われたり…)を含む複数の省庁から嫌がらせを受けてた観がある。その苦い経験がDOGEに活きるのかな。まあ、バイデンの再エネ補助金で政府が先導する経済と異なり、画期的かつ経済合理性のあるテクノロジーはリスクマネーで自力で勝ち抜かないと長期的にい生き残れない環境に置かれるPrivateインダストリーから生まれるよね。これが米国経済の強み。Apple、Tesla、Amazon、Uberその他、政府の指導とは関係ないところから世界中の市民が恩典を受けるテクノロジーが生まれてるもんね。NASAが巨額のコストOverrunでロケット生産するより、Space Xとか使ってどれだけ安くロケット作ったり、ランチできるか見るだけでも政府はMarket にParticipationしないでPrivateインダストリーに切磋琢磨させ資本マーケットにどこにお金を入れるか判断させる方が効率的で納税者の一般市民が帳尻を合わせる必要がないんで好ましいと思うけどね。

Section 4は安全保障面のフォーカスだけど、テクノロジー面の話しに加えカナダ、メキシコ、中国からの不法移民および薬物(Fentanyl)の流入の実態を調査し、通商・国家安全保障面からの対処提案を指示してる。Fentanylの流入は不法移民問題と同様にオープンボーダー化がもたらした米国にとって重大な問題で、元々中国が主たる供給源だったところ中国が直接Fentanyl生産を制限したことから、原材料をメキシコに輸出し、メキシコのカルテルがFentanylを製造、オープンボーダーを介して大量に米国に流入っていうモデルになってるらしい。この4年でFentanyl関係の米国における死者は30万人近くに上り、CDCレポートによると米国の心臓麻痺死亡者の数は年間16万人っていうことだからFentanylが死因のケースは相対的に決して少なくない。トランプ政権がカルテルをテロリスト認定したりしている理由が分かる。

America First Trade Policyと税金

で、AI、宇宙開発、薬物密輸とかで長くなったけど、前回2回に亘りポスティングした「Global Tax Deal」大統領令と並び、America First Trade Policy大統領令でもSection 2にタックスにかかわる項目がある。関税に関してはもちろん大統領令を通してのフォーカスだけど(この週末のメキシコ、カナダ25%関税はどうなることでしょうか)、内国歳入庁(Internal Revenue Service「IRS」)との対比で外国から関税で歳入を集めるって言う意味合いから「External Revenue Service」略はズバリ「ERS」(笑)の設立検討がいきなり2つ目の令として登場する。え~省庁とか公務員の数減らすんじゃなかったの?って思うけどIRSからの転籍なのかな。

そして次にSection 2の(j)だけど、ここにも「Discriminatory or extraterritorial tax」の話しが登場する。この部分は比較的簡素に既存の税法Section 891で認められている権限に基づき、米国市民または米国企業に差別的または域外課税を行使する国を調査するように命じている。Section 891は1934年から存在する税法でその背景は「「Global Tax Deal」大統領令」で触れてるんで参照して欲しい。Section 891はそんな税法を米国市民や米国企業に適用してると、大統領権限でその国の市民や法人には所得税、法人税、源泉税を倍にすることができる規定だ。

潜在的な立法による対抗・報復措置としてはSection 891の他にも、似たような趣旨のSection 896が既に存在するし、法案として既に提出されてるものとして「the Defending American Jobs and Investment Act」および「the Unfair Tax Prevention Act」がある。次回はこれらの条文、議会による対抗・報復に関して。

Tuesday, January 28, 2025

「Global Tax Deal」大統領令 (2)

今日(1月27日)はモーツァルトの誕生日。Happy Birthday!たまたま先週数日Salzburgに行かないといけない用があり、無理やり日曜日にHeathrow経由になるように、しかも単なるLayoverではなくUKに一回入国するんで2025年1月8日発効のUK ETAも準備して行ってきたけど(ロンドンでSunday Roast食べるためって直ぐにバレるね)、Salzburgって今日でも未だモーツァルトが居た18世紀の面影が残るよね。実は40年近く前に行ったきりだったんだけど、Uberとかで断然便利にはなってはいるものの街全体の雰囲気は余り変わっていない。川岸から山頂のFortressやモーツァルトのResidence辺りの風景を薄目で見ると、まるで今でもモーツァルトが地元のArchibishopと揉めたり、Viennaに引っ越すまでこの街で活動してるような気がする。

モーツァルトが活躍した1770年~80年台って米国だったらちょうど米国が英国から独立を勝ち取り、フィラデルフィアで連邦憲法が起草されたりしてた頃。連邦憲法起草とフィガロの結婚が同じ時期って考えると、そんな時代に起草された連邦憲法に基づき引き続き21世紀の米国が統治されてるって凄いことだよね。フィガロの結婚だって今日でもあちこちで演奏されてるしね。結果としてどっちも単なるFaddishなものではなく時代の流れに耐えうるQualityを持ってたってことだろう。モーツァルトは今後も演奏され続けるだろうけど、連邦憲法に基づく統治が今後も続く保証はなくこれは米国市民次第。

Global Tax Dealを巡る欧州と米国の関係を単なる税金の世界ではなく、チョッとStep Backして広範なトレンド的に観測してみると、グローバルエリートと従来からの各国市民のことを考える国単位の民主主義の攻防のひとつに見える。すなわち、各国の選挙で選ばれてない、したがって各国市民に直接説明責任のないエリートが先導するグローバル的に美徳なグローバル統治が従来の西洋文明や民主主義よりも優れていると考える派と、旧来からの国家主権、各国の憲法、自国の有権者との社会契約に基づく国家統治制度派のテンションのひとつだろう。この辺りのポリティクスやイデオロギーの戦い・トレンドは単なる学術的な話しではなく、一般市民の毎日の生活や果ては今後の世界に大きな影響があるよね。トランプの「Make America Great Again(「MAGA」)」や「America First Policy」はその用語の意味からして直接的にグローバル統治との対比において後者の主権国家派。どっちの統治がいいって考えるかはもちろん各自のイデオロギーや自分が置かれている立場次第だけど、2024年の米国選挙では米国市民は後者を選択したんでGlobal Tax Deal大統領令となる。

米国新政権発足タイミングで、欧州にてローマ帝国、中世、ルネサンス、西洋文明とかに思索にふけるっていうかランダムに想いを巡らせたりしてたんでチョッと大袈裟な話しになっちゃったけど、背景にあるトレンドを頭の片隅に置いて今後の進展を見守るとより興味深いだろう。前回のポスティングで触れた通り、Global Tax Dealの大統領令が初日の大御所メニューに含まれてたっていう点からも「たかがGlobal Tax Dealされど」だ。

前回のポスティングではSection 2に突入した後、Hungry Like 「the」 Wolfとかで興奮し過ぎて途中で終わっちゃったけど、今日はSection 2の後半戦。

大統領令Section 2「Discriminatory and Extraterritorial Tax対抗オプション」

Section 2のテーマは「Options for Protection」なんで米国防衛手段対処にかかわる令で2ステップで構成されている。まず財務省長官にUSTRと協議しながら「米国との租税条約に違反している、(米国の所得に)域外課税したり米国企業に不均等な負担を強いる税法を持っている、またはそのような税法の導入可能性が高い(「Likely」)国がどこか調査する」よう命じている。

何が域外課税や米国に不均等な負担を強いる税法かは明文化されてないけど、大統領令のタイトルがOECD Global Tax Dealだからピラー2はもちろん含まれる。中でもUTPR。業界では見方によってはQDMTも、みたいな話しもチラついてるけどQDMTは各国独自で導入できるんでフォーカスじゃない気がする。またOECDって名指ししている大統領令のタイトルとは異なるけど、不均等な負担を強いる税法には当然DSTも含まれるだろう。ここで言うDSTは広義に考えておくべきでDSTっていう名前が付いてなくても同様の効果を持つ税制、例えばUKのDPTなんかも含まれるかも。Scope的にはピラー1のデジタル課税も含まれ得るけど、こっちは既に1年以上前にゾンビ化してるんで、その意味でAmount Aを今更蒸し返して議論することはないって考えられる。ピラー1でもAmount B・SSAはバイデン政権が駆け込みで規則草案を出してるけど、米国移転価格規則のALPと取り扱われる限り米国主権を侵害してるとは言えず、議論を醸し出す余地は少ない。となると長年議論してきて着地は結局のところAmount Bだけ?Amount Bとか概念的に反対の余地が少ない論点でも世界で合意するのは大変なことだし。せめてAmount Bで本当に移転価格コンプライアンスがSimplifiedされるといいね。

大統領令のこの部分でもう一つ興味深いのはこの手の法律を可決している国ばかりでなく、可決させる可能性が高い(「likely to put tax rules in place」)国も調査対象にしている点。「まだ審議中なんで…」っていう言い訳は通じず、いきなり25%とかの関税対象国になったりする可能性がある。

で、条約違反や差別的な税制を持つ(または導入可能性の高い)国を特定した後、次は米国の利益を守るまたは対抗するための措置のオプションリストを完成させ、60日以内に経済政策担当大統領補佐官経由で大統領に提示するよう求めている。大統領令は1月20日だからレポート提出期限は3月21日だ。結構Short Noticeだよね。財務省長官のScott Bessentは今日(1月27日)上院でConfirmation(68対29)されたばかりだし、USTR候補の Jamieson Greerは公聴会が1月29日に予定されているっていう状況。これらの状況から3月21日が厳守されるかどうかは不明。経済政策担当大統領補佐官は決まっててお馴染みKevin Hassett。大統領補佐官はホワイトハウスの職員っていう位置づけなんで上院のConfirmationは不要で大統領の一存で任命することができる。Hassetは第一次トランプ政権時にはthe Council of Economic Advisers (CEA)の議長の職にあり、TCJA可決に尽力した者の一人。Hassettは自社株式買いは健全な資本政策で何も後ろめたいことはないって昔言ってたから1%の懲罰課税はなくなるかもね。なくなると言えば、CAMTはそのコンプライアンス負荷が不可(洒落じゃないけど)に近く、企業には超評判悪いし、歳入も大してないんで撤廃可能性ありだよね。

大統領令が命じてるのは「防衛・対抗オプション」のリストアップ。その際、Section 1に明記されてる通り、法的に有する権限の範囲内で可能なオプションは全て列挙されるだろう。その上でこれらを発動するかどうかはトランプが決めるけど、挑発的なオプションでも平気で今日の午後5時から発動とか言い出し兼ねない。諸外国は自国への対抗策をTruth Socialで知ることになったり。想像の域を出ないけど、例えば条約適用停止、高い関税、政府要人ビザ発給停止、とかリスト化されたらそれだけで結構怖い。前回のポスティングで触れたKissinger外交論。

っていうことで1月27日に敬意を表し、今晩はVan Halenの代わりにモーツァルト聴いて寝ます。次回はもう一つの大統領令「America First Trade Policy」に関して。

Saturday, January 25, 2025

「Global Tax Deal」大統領令

前回のポスティングでは就任初日に発令された多くの大統領令に触れた。って言ってもタイトルの意訳程度だったけど、大統領令のカバレッジの広さは伝わったと思う。大統領令の数、Scopeには国中で(世界も)仰天だったけど、同時に多くの記者会見、イベント、3つの夕食、その後も引き続きアクティブでハリケーンの被害が大きかったNorth Carolina、山火事のCaliforniaに飛んで現地視察。North CarolinaからL.A.って米国内移動だけど、通常、飛行機で5時間くらい掛かるから東京からバンコック行くのと同じだからね。で、California視察後はその足でNevadaに行き夜のイベント、と心身ともにどうやったらあのレベルのエネルギーを維持し続けられるのかな~ってそっちも知りたいよね。食品オタクのRFK Jr.が「選挙活動で目が回るようなスケジュールの中、ジェットの機内でKFCやMcDonnald食べたりしてる」って驚いてた。トランプはTeetotalerで一切お酒を飲まないけどそれで健康維持してるのかな。単に遺伝子のおかげ?または信念みたいなメンタルなのかな?

で、大統領令に関して、タックスの観点からは、IRSの新規雇用フリーズや財務省規則の見直し・新規公表一旦停止、等に加え、OECD「Global Tax Deal」拒絶が含まれている。また同時に公表された別の大統領令「America First Trade Policy」にもGlobal Tax Dealに対する厳しい省庁への指示が含まれている。

優先順位の高さと議会とのコーディネートにビックリ

Global Tax Dealにかかわる大統領令の内容そのものは選挙で共和党が勝利するとこんなことが想定されるって前から書いてた通りなんで、大枠は想定の範囲内って言えるけど、驚くべき点はOECDのGlobal Tax Dealに対する大統領令が就任初日に他の超大御所令と肩を並べて発令されてる点。Southern Borderの国境警備と同列ってことは相当な優先順位の高さを物語ってる。別の大統領令でSouthern Border(カナダとのNorthern Borderもだけど)のオープンボーダーは国家主権に対する物理的な侵略と位置付けられてるけど、国外の団体が先導して米国所得に本来法的管轄権がないであろう他国が課税するのは法的な侵略って考えれば同列なのかもね。America First Policyは多面的に国家主権復活を目指す政策と考えれば優先順位の高さの理由も分かる。

またGlobal Tax Dealにかかわる大統領令が発令された就任初日の翌日1月21日には下院歳入委員会が報復法案(Defending American Jobs and Investment Act。Section 899新設)を再提出してる。このタイミングも興味深い。大統領令とほぼ同時に法案が出るっていうことは、Global Tax Deal対抗策に関して議会と行政府間のコーディネートが徹底してることが計り知れる。さらに財務長官候補のScott Bessentも1月20日直前に行われた公聴会でGlobal Tax Dealにかかわる質問を受け、新政権誕生前に急いで既成事実を作ろうとしたり、法律を導入したりする国は重大な過ちをおかしている、と一刀両断だったもんね。米国議会・行政府が一枚岩になって反対してる点がよく分かる。

Global Tax Deal大統領令

「The Organization for Economic Co-operation and Development (OECD) Global Tax Deal (Global Tax Deal)」シンプルに略して「Global Tax Deal」と題された大統領令は財務省長官(もうすぐ承認されるはずのScott Bessent)、USTR(こちらも承認待ちのJamieson Greer)宛て。内容は他の大統領令同様に単刀直入。全ての大統領令に共通だけど歯に衣着せぬ表現で何を目指しているか分かり易い。

で、まずは前文と言うか総合的な宣言。「前政権(バイデン・イエレン)がサポートしていたOECDのGlobal Tax Dealは米国の所得に諸外国が域外課税するばかりでなく、米国議会が自国ビジネスや一般市民の利益を念頭に税制を立法化する権利を侵害している。諸外国の政策目的に米国が同調しないからという理由で、Global Tax Dealおよびその他の差別的な税法習慣により、米国企業が報復課税を受ける可能性があり、当大統領令はGlobal Tax Dealは米国においては何の法的効果も影響もない点を明確にし、米国の国家主権および経済的な競争力を取り戻す。」と。

で、その後に具体的なアクションが来る。Section 1だ。

財務省長官およびOECD米国代表はOECDに「前政権が表明していたGlobal Tax Dealへのコミットメントは議会の立法化なくして効力・効果は一切持たない」と告知するよう指示。この点は告知するまでもなく連邦憲法の三権分立で最初から明らかだし、そんな初歩的なことはOECDも当然知っているはずなんで、ここまで米国議会の承認を得ることなく事を進めてしまった点はBEPS 2.0手続き上の失態。世界で時間の無駄っていうか、既成事実を作り上げた上でUTPRとかで世界規模で脅迫すれば米国議会も降参するだろうっていう前提だったのかな。そうならない可能性も当然ある訳だからリスク管理的にそのアプローチはどうなんだろうか。やっぱりParliamentary制度とCongress制度の違いは頭では理解されてても体感できてなかったっていうことなのかな。う~ん、そんなことは連邦憲法101だからおかしいよね。バイデン政権・イエレン長官も議会のバックアップなく空約束してしまったんで米国側の落ち度も大。っていろいろ言ってもこの期に及んでは後の祭り。でSection 1は「財務省長官、USTRは当大統領令の措置を法的に有する権限を使い施行すること」と指示している。

で、具体的な対処法オプションが「Options for Protection from Discriminatory and Extraterritorial Tax Measures 」というタイトルのSection 2。

この「Discriminatory and Extraterritorial Tax Measures」っていう用語だけど、タイトルの「and」は一見Misleadingに見えるかも。ここの意味は「or」が近く、大統領令本文では「or」になってる。ただ、本文は特定の国が「Discriminatory」または「Extraterritorial」な法律を可決または用意しているかっていう判断をする文脈で「or」が使用され、タイトルは「Discriminatory」および「Extraterritorial」のどちらにしても、そんな法律を可決または用意している国への対処オプションっていう文脈で「and」となっているんだろう。

英語を外国語として勉強する際、例えば字数の多い単語(「Pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis」がいつも出てくるよね!)を覚えたり、時制の一致を間違えないようにとか、単数・複数とかいろいろチャレンジがあるけど、実はこの一見Innocuousな「and」と「or」の解釈とかが日常一つのチャレンジ。特に法文解釈時にはね。もう一つInnocuous-ishなチャレンジは何と言っても「a」と「the」の違い。これはNative Speakerだと何も考えずに自然に(おそらくグラマーとかの理論は知らないでも)ほぼ本能的に使い分けてるように見えるけど、外国語として英語を習う際の最大ポイントのひとつ。こちらも特に法律の世界では雲泥の差になるからね。古いけどDuran Duranの「Hungry Like the Wolf」がなぜ「the Wolf」で「a Wolf」じゃないんだろう、とか昔ずいぶんと考えたもの。そんなのどっちでもいいじゃんって思うかもしれないけど最初に聞いた時、当然文脈的に「a」だろうと思ってたんだけど「the」に聞こえるんで、FMから録音したカセット(笑)巻き戻して(「再生」ボタン押したまま「巻き戻し」も押すと数秒戻るんだよね。中学の頃宝物だったアクタスFU使ってギターソロコピーする際にこの技使い過ぎてついにこわれてしまった(あんなに大事にしてたのに~。どうしよう~(大笑))何回か聞き直したけど「the」にしか聞こえない。もちろんインターネットでLyricsを検索するなんてことは更に15年とか待たないとあり得ない利便だしね。で、the Wolfってことは単にランダムなWolf(すなわちa Wolf)じゃなくて最も強い伝説に出てくるような「あの」Wolf、またはDuran Duran本人たちが醸し出したいイメージ、すなわち俺たちはその辺のWolfたちとは違い最も「危ない奴」なんだぞっていうニュアンスを出すためなんだろうって個人的に結論づけてた。実際にはDuran Duranに聞かないと分かんないんでどうなんでしょうか。単にゴロがいいからかもね。こうやって冷静になって書いてみると皆さんの言う通り本当にどっちでもいいじゃんって感じでした。

The Beatlesの「A Day in the Life」は短いタイトルに「a」と「the」が入っていて使い分けのお手本みたい。Duran Duranとかの話しだったらどっちでも害はないけど、法律はそれで意味が大きく変わるから要注意。

で、New Horizonの世界はこの辺にして、「Discriminatory」や「Extraterritorial」 Taxっていう用語そのものだけど、これらはDSTとかピラー2のように近年出てきた法律を意味する新しいものではなく、1934年(100年近く昔の昭和9年!)に制定されているsection 891(「Doubling of Rates of Tax on Citizens and Corporations of Certain Foreign Countries」)で既に使用されているもの。まさしく大統領令や下院法案section 899そのものの報復措置だ。う~ん、昔からそんなことの繰り返しだったのかって感無量だけど、実はSection 891は実際に発動されたためしはない。1934年当時の懸念は当然DSTとかピラー2ではなく、世界恐慌の混沌とした経済環境で国家間の利害の対立が生じやすく、各国が自国経済保護のため差別的な税制を導入しがちな状況にありこれらにPreemptive的に釘をさすもの。「アンフェアな国際税制習慣から米国を守る」っていう趣旨。え~それって2025年のことじゃん、って感じだよね。

実際に発動されないでもそれが法律にあるだけで抑止効果はあるだろう。Kissingerが昔、効果的な外交は力の均衡(Balance of Power)に基づくって言ってた。すなわち凄みのある軍事力を持ち、その行使を躊躇しない(または実際にたまに行使するとも言ってたような気がする)状況にない限り効果的な外交はできないといういうもの。その経済バージョンがsection 891であり、トランプの関税なんだろう。凄い関税を課す準備があり、その行使を躊躇しない、また実際に実行するっていう状況で外交に臨むって考えるとKissingerのBalance of Powerそのものだよね。

だったら今回は単純にsection 891を史上初で発動させたらいいじゃんって思うかもしれないし、もちろんそのオプションは常にあるんだけど、下院で新たな報復法案「Defending American Jobs and Investment Act」、新設section 899が検討されてる点には重要なポイントがある。この点は後述の「Defending American Jobs and Investment Act」部分で触れる。

Hungry Like 「the」 Wolfとかで興奮し過ぎてチョッと長くなってきたんでSection 2の後半は次回。その後は「America First Trade Policy」大統領令、「Defending American Jobs and Investment Act」、そして上院で以前に提出されていた別の報復法案にもチラッと触れてみたい。

Tuesday, January 21, 2025

トランプ大統領就任式・大統領令「OECD BEPS 2.0交渉打ち切り?・関税は?」

1月20日の正午の就任式でトランプが正式に大統領に就任して新政権が発足した。下院・上院は先行して119会期が開始してるんでこれで正式に共和党のTrifectaが正式に整ったことになる。

就任式はラリー(集会)とは異なるんでスピーチのトーンは比較的穏やか(?)だったけど、その内容はバイデン、オバマ、クリントンが背後に見守る中、ストレートなものだった。政府や社会にCommon Senseを取り戻しAmerica Firstポリシーを徹底し米国を未だかつて見たことない程の繁栄に導くっていうもの。少なくとも就任式ではスピーチが過激になり過ぎないように周りの取り巻きがControlしたんだろうね。Susie Wilesとか?彼女は裏方に徹してたけど選挙活動中から沈着冷静にチームを管理していたからね。

就任式前日の日曜日は東海岸は雪だったけど当日は青空。とは言え気温は低かったんで急遽、屋外からCapitol(議事堂)内の屋内イベントに転換。屋内の就任式は1909年、1985年(こちらはレーガン)以降歴史上3回目っていうことなんで結構珍しいんだね。Secret Serviceは屋内の方が断然警備が容易なんで喜んでたらしいけど外で歴史的なComebackを一目見ようとDCに集まっていた一般市民はガッカリ。でもNYCでも摂氏で言うとマイナス10度とかだからDCも似たような感じだろうから屋外イベントは厳しいよね。就任式後にバイデンとJillがヘリコプターで去っていく恒例の別れは外で寒そう。ヘリコプターって風を巻き起こすからなおさらね。特にMelaniaとJillは寒そう。

ちなみにJill Bidenの装いはパープルのコート。パープルっていうのは赤(共和党)と青(民主党)を混ぜるとできる色。Jillは11月5日の選挙には赤いコートで投票所に登場し、トランプに投票したに違いないって話題になったけど、今回はどちらでもないパープルだった。中立ってこと?ハリスや元下院議長のペロシとの確執が伝えられる中、苦渋の選択結果でパープルだったのかもね。

大統領令(Executive Order)

就任式後に数多くの大統領令が署名された。就任と同時に大統領府のウェブサイトも更新され、「White House President Donald J. Trump」の名の下に大きく「AMERICA IS BACK」のバナー。トランプは就任式からおそらくランチ前に一旦ホワイトハウスに戻り、政府機能を問題なく継続させるため各省の仮長官等を任命。これらの者は正式な長官が上院承認を得るまでの期間、省庁を司ることになる。

Capital One Arena DCラリー

で、その足でまるでLed Zeppelinが熱狂的ファンが待つMadison Square Gardenに登場したみたいに、Capital One Arena DCに到着。そこでは就任式とはうって変わっていつものトランプ通り毒舌乱発。選挙運動中のラリーのノリで絶好調のスピーチ後は複数の大統領令に署名。ライブ・ストリーミングで見れた範囲で次のような大統領令が含まれてた。

パリ協定脱退およびその旨のUNへの通知。この大統領令にはUNの「Framework Convention on Climate Change」関係に米国の不関与、資金拠出停止、米国の「International Climate Finance Plan」廃案が含まれる。 連邦政府の機能や目的が明確になるまで連邦政府の雇用フリーズ(軍は除く)。 連邦職員の週5日オフィス出勤命令(リモートワーク禁止)。バイデンによる大統領令の78令を弊害として無効化・撤回。不法移民の米国誕生子女に対する市民権付与停止(これは訴訟で実効性未定)。DEIポリシー撤廃・禁止、能力主義の徹底。 生物学に基づく男女2つの性別のみ認知。 国外カルテル・ギャングのテロリスト認定、など広範な領域に亘る。

で署名する大統領令各々に関して簡単な説明があるんだけど、その度に群衆から大喝さいを浴び、署名っていうRock Showになった。

熱狂するファンに昔、Rod Stewartがコンサートのアンコールでサッカーボールをステージから観客にキックしてたみたいに、Capital One Arena DCのイベントでは大統領令に署名したペンを観客に投げ込んで終了。おそらくトランプのサインと「47th President」が刻まれた「Commemorative Pen」だったんだろう。こんな大統領令署名式は歴史始まって以来に違いない。芸人のトランプに好都合なことに、今後4年間はハイプロファイルなイベントが満載。2026年は米国建国250周年祭、1994年以降2度目のFIFA World Cup、そして2028年には1932年、1984年以降3度目のLos Angelesオリンピックがある。Showmanshipに最適な4年間でトランプShowはRock On。

Back to Oval Office

Capital One Arenaのラリー後はまたホワイトハウスに戻り、夜に控える3つの祝賀会ディナーイベント前にさらに大統領令に署名。ここでは記者団に囲まれ、質問に答えながらの署名となった。

正確にここでいくつの大統領令に署名したかはYouTubeの映像からは確実じゃないけど、ホワイトハウスのウェブサイトに記載されているもので先のホワイトハウスおよびCapital One Arenaで署名されたもの以外のはずなんで、次のような内容のはず。形容は非公式に意訳してるんで正式な名称や内容は原文を見てみて欲しい。Capital One Arenaで署名されたものも含め大統領令をカテゴリー分けすると、「国境警備」、「America First」、「エネジー政策」、「規制緩和」、「社会・カルチャー問題」。

国境警備周りはメキシコとの国境Southern Borderのオープンボーダーを撤回、Southern Borderからの移民流入を国家侵略と位置付け国家安全保障対応、国外テロリスト対抗策、難民受け入れポリシー見直し、軍が国境警備に果たす役割再評価、など。

America First系は国務長官にAmerica First実行命令、OECDのGlobal Tax交渉打ち切り・不適用・対抗措置、National Security Councilの機能定義、外国援助の見直し、WHO脱退。

エネジー政策はアラスカ資源開発、連邦管轄の領海外大陸棚の風力発電目的の使用禁止、エネジー国家危機宣言、米国内エネジー生産最大限化。

規制緩和・行政府の肥大化措置系はDOGE設立、上級官僚の説明責任復活、新規則策定フリーズ、規則草案の最終化禁止、各省庁による国民生活費の高騰対策検討。

社会問題・カルチャー系は米国歴史上人物の名前を冠した地名の復活。連邦建設物の美化、公共安全の徹底と死刑復活、カリフォルニア州の火災防止措置徹底、大統領就任日は国旗の半旗禁止、TikTok禁止令適用延期、J6関係者恩赦、連邦省庁の兵器化(政敵を狙って法律を悪用すること)禁止、言論の自由復活、連邦政府によるセンサーシップ禁止。

Pillar 2にトドメ?

上述の通り、OECDのGlobal Tax交渉打ち切り・不適用・対抗措置が初日に明確にされた。その内容は以前から共和党がTrifectaになったらこんなことになるかもって言ってたものなんで、それ自体に驚きはないはず。この部分は次回もう少し詳しく触れる。

関税は?

う~ん沢山の大統領令で選挙活動中に言っていたことは網羅してるね~って思ってもう一度落ち着いて見てみると「あれ関税がないじゃん」って気づく。Oval Officeで署名しながら記者とやり取りしている映像があるけど、その中でFoxのPeter Doocyと思われる声の記者が「関税はどうなっちゃたの?」みたいな質問をした際、トランプは「2月1日に披露する」って回答してたと思うんで2月1日までお預け。え~一番のトリのはずだったのにね。

という訳で目が回りそうな初日の大統領令だったけど、その中でもタックスに関係するOECD Global Taxからの完全撤退宣言に関しては次回もう少し。

Saturday, January 4, 2025

トランプとバイデン「最初」と「最後」の戦い

トランプ最初の戦い

昨日のポスティングで触れた通り、1月3日に昨年11月選挙で当選した議員たちが宣誓就任し、議会の119会期が正式に始まった。注目の下院議長は何とか共和党がJohnsonをサポートするっていうことで、Thomas Massie(R-Ky)一名を除き一枚岩になり、Johnsonが多数票を獲得して議長に就任した。ただ、最初、Massieと並んで、Ralph Norman (R-SC)とKeith Self (R-Fla)の2名も抗議投票でJohnsonではない者に票を投じるっていうドラマがあり、トランプ自らがその場で2名に電話をして直接説得に当たり、修正投票で選出が確定している。

この経緯にはプラスとマイナスの双方の見方がある。プラスはトランプの影響力もあり「市民が望んでいる国境警備や減税延長、等の法案を早期に可決するため党内でいがみ合ってる場合ではない」っていう共通の目的を認識できた点。一方マイナスは僅差でハラハラし続ける実態や少数の議員のレバレッジが大きく、今後の予算調整法可決、Two-Trackなのかどうかも含め予断を許さないっていう現実が露呈された点。いずれにしても119会期の新議会におけるトランプ「最初の戦い」になった。

バイデン最後の戦い

一方のバイデンは最後の戦い。最後の戦いって言うとどうしてもLed Zeppelinの「アキレス最後の戦い」を思い出すよね。っていうかZeppelinのアキレス最後の戦いをしってるからこんなフレーズが直ぐに出てくるって言った方が正確。Zeppelinの「Achilles Last Stand」はJimmy Pageのアルペジオで始まり、直後に入るバックのリズムが恰好いい。 Headley Grangのくら~い雰囲気がZeppelinぽくていいね。前も書いたけど、個人的にZeppelinのアルバムは名前がないI~IVまでの方が出来がいいと思ってるけど、Achilles Last Standは7枚目の「Presence」の一曲目。アルバムとしてはまあまあってレベルだけどこの曲はいいよね。

で、存在感が薄くなって久しいバイデンはアキレスとはかけ離れてるけど、この期に及んでNippon SteelによるUS Steel買収を「国家安全保障」懸念からブロックすると公表。数日前からそうなるだろうって報道されてたけど本当にそうなった。CFIUSが自分たちでは決められないんでバイデンの判断に委ねてたけど、バイデン本人が判断してるっていうよりは周りの取り巻きが決めたんだろう。WSJの記事によると、国務長官のBlinkenや国家安全保障担当補佐官(漢字10文字以上連なると厳しいんで「National Security Advisor」の方が分かり易いね)のSullivanは買収に反対しなかったそう。すなわち国家安全保障面の懸念は実際には少ないことが分かる。一方で国内政策っていうか、バイデンが後世に残す遺物のひとつとして労組に慮っての対処とすべきっていう最後までいかにもバイデン政権らしい国内派のアドバイザーの意見が通ったとのこと。

法的にアピールする機会はあるんでDeal自体は未だTBCかもしれない。ただ、結構な条件を飲んだにもかかわらず「Dealの条件に安全保障面の配慮が見られない」って。ポリティカルにしょうがなかったっていう状況は分かるけど、US Steelの買収も認めてくれないとなると例えば日本有事の対処とか、米国政府としてもっと大きな決断が迫られる際、どれだけ頼りにしていいやら「同盟国」日本としてはチョッと心配だよね。

また選挙結果にもかかわらず、新政権のエネジー政策にできるだけ支障があるような大統領令を出すっていう報道もある。1953年の「the Outer Continental Shelf Lands Act (OCSLA)」に基づき連邦管轄下のオフショア海域におけるエネジー開発を禁じ、こちらもバイデンが後世に残す遺物のひとつとする。そう言えばオバマも政権末期に同じようにOCSLAに基づく大統領令を出してたね。

このOCSLAっていう法律、大統領にエネジー開発を禁じる権限を与えている一方、禁止を解除する権限は付与されていないって解釈したアラスカ地裁の判例(League of Conservation Voters v. Trump, 363 F. Supp. 3d 1013 (D. Alaska 2019))があり、新政権が行政府として、議会のOCSLA改正なしでバイデン大統領令を撤回できるかどうかは法的に疑問が残る。

ということで今日はZeppelinの話しに深く入り込まないよう我慢しながらトランプとバイデン各々の最初と最後の戦いでした。

Friday, January 3, 2025

2025年謹賀新年「119会期米国議会」

2025年明けましておめでとうございます!

米国選挙で明け暮れた2024年がようやく終わり、新政権が発足する2025年。振り返ってみると2023年末のポスティングで「来年2024年11月の選挙で大統領府、両院の構成がどうなるか次第でタックスにかかわらずアメリカばかりでなく世界の近未来が大きく変わる」って書いたけど、結局、共和党のTrifectaとなった。この選挙結果の背景はレガシーメディアを含む多くの専門家がいろいろと分析してるけど、あくまで現地肌感覚で敢えてラフに言うと国境、経済、カルチャー問題に関する民主党プラットフォームが米国の一般市民のCommon Senseからかけ離れて受け入れ難い方向にシフトして、Noが突きつけられたってことじゃないかなって思うけどね。共和党もTrifectaになったとは言え下院は僅差なんで、前回、前々回のポスティングで増れた通り、党内調整でもめた結果思ったような法律をデリバーできないリスクをどう管理するかが課題。

Center of Gravity

そんな中、年末年始は例によってFloridaのマイアミビーチ!コロナ禍で各州政策や統治スタンスの差異が白日の下に晒され、それを機に多くの市民がFederalismにおける州政府のインパクトを直接体感することになった点は先日のポスティングでチラッと触れた。その頃から自ずと個人の自由を尊重してくれる州に滞在する機会が増えたけど、さすがにSouth Dakotaとかは冬寒いんでTexas、Georgia、特に解放感溢れるFloridaの南に頻繁に来るようになった。それを機に自然にFlorida州やマイアミビーチが属するMiami-Dade Countyのポリティクスをフォローし始めることになったんだけど、期せずして4年後の2024年の選挙でFloridaは米国ポリティクスの重心、Center of Gravityになった。もちろんFloridaの中でも真のCenter of GravityはPalm Beachだけど、その南に位置するマイアミでも今年の年末年始はそんなVibeを感じることができた(気のせいの可能性大?)。

で、今回は年末年始に掛けてお天気も良く、心身ともにLiberateされるようJet SkiでBiscayne Bayを一周しながらNew Year Resolutionを整理する機会に恵まれた。Liberateされる前に転落して怪我とかにならないよう30mphを超えないよう慎重にね。

で、1月1日午前0時には例によってSouth Beach等で花火があったけど、今年は(こちらも気のせい?)例年より派手だった気がする。たまたま270度見渡せるところから見たせいかもしれないけど、Bayfront ParkやSouth BeachのOcean Driveとかのいつもの場所からだけじゃなくて、Coconut Glove方面、Collins Parkとか、後は正確な場所どこだったか不明だけどNorth Beach方面、もしかしてSunny IslesまたはHallandale BeachかHollywood Beach?みたいな比較的北の方とかからも上がってて「パノラマ」。

PTEP

で、お陰様ですっかりLiberateされてCuban Coffeeと共にPTEPの規則案の解読に勢いが付いたんだけどアレ難しいよね。っていうかあの規則に準拠する側のMNCは大変だよね。古くからPTEPってCFC側の属性なのかUS株主側の属性なのか、パススルー経由でCFC持ってる米国株主のパススルー投資簿価の増減有無、とかかなり基本的な概念のところで整理し難いものがあったけど、その辺り、学術的には良く整理されている。さすが4年間出る出るって言い続けて政権交代直前滑り込みで草案に漕ぎつけただけのことはある。

昨年は年始からいきなりハードコアのKiller QueenじゃなくてKiller B(Triangular Reorganizationを利用したRepatriationプラン)Regだったけど、今年の前半は税制改正動向と並行してPTEP Reg三昧のポスティングになる可能性大なんで皆さん覚悟しておいて下さい。PTEPはKiller Bより汎用性はあるね。

119会期

米国議会の会期は2年で必ず奇数の暦年1月3日から始まる。連邦憲法の20th Amendmentで強制される日程だ。え~ってことは今日じゃん。2025年(奇数)の1月3日だからね。日本だったら未だお正月三が日だよね。米国はThanksgivingから年末まではHolidayムードで楽しいけど、新年は元旦のみお休みで2日から何事もなかったかのように普通になるから怖い。とは言え今年は2日、3日が木曜、金曜なんで全体に本番は6日からっていう感じはある。だったら日本と同じスタートじゃんってなるね。確かに。だけど米国連邦法人税申告書は延長後の提出期限が期末から10か月後の15日なんで、3月決算の日本企業子会社の連邦法人税申告は1月15日。これが理由でBig 4や企業の税務部に勤務されている方の中には年末年始必ずしもゆっくりできないケースも多い。Remoteでいろんなことができる今日この頃はそんな中でもフレキシビリティは増えててありがたい。

で、1月3日から第119会期の議会が2024年11月の選挙で当選した議員により開始される。この会期番号は1789年に連邦憲法が批准されて最初の議会が招集された時から続いてるから凄いよね。米国の独立は1789年の憲法批准から13年遡る1776年7月4日。なんで、2026年7月4日は「the Semiquincentennial」祭、すなわち独立250周年に当たる。DOGEとかが2026年7月4日までに市民が体感できるような不要な規則削減を含む改革を実現したいって言っているのは250年祭っていうマイルストーンに合わせるSymbolicな理由がある。ちなみに20th Amendmentは1933年でそれまでは3月から新会期だったらしいけど、選挙(前年11月)~新会期(3月)までの所謂「Lame Duck」期間が長すぎて不効率っていうことで現在の1月3日、正確には3日東時間正午が会期開始となった。これ書いてるのが午前10時28分だから後1時間32分!大統領就任は1月20日の正午だ。

1月3日に何が起こるかって言うと、下院議長(正確には「Speaker of the House」)の選出と119会期の議員の宣誓就任。

下院議長選出

下院議長の選出だけど、手続きとしては各党が各々候補者を決めるけど、もちろん多数議席を有する党の候補者が議長になる。不在票は認められず実際に出席している議員の多数決で決まる。従来、下院議長の選出は儀式的な手続きだったんだけど、近年は共和党内で候補者が決まらない、または決まっても多数一致で選任できない、などの問題が多く、それ自体ドラマというか注目を集める手続きになってる。共和党が予算調整法を活用して云々の話しをした際に党内で意見調整できるかっていう話しを散々してるけど、最初のチャレンジだ。下院議長も一致団結して選べないようでは先が思いやられるもんね。

共和党Mike Johnson以外に候補者はいないけど、議席数が僅差かつThomas Massie (R-Ky)が反対を表明してるんで共和党は実質他全員一致してJohnsonに投票しないと多数決で勝てない。Chip Roy(R-Texas)とかがどう出るか見もの。Johnsonは先日のContinuing Resolution(3月14日まで米国政府をFundingする臨時法案)で一部の共和党議員から信用できないと顰蹙を買っている。Johnsonが可決に持ち込もうとしたCRは民主党の意向も組み入れて法案化し、投票前日に1,500ページを超える法案を始めて公表、その中にはCRだけでなく多くの追加の歳出(議員の昇給含む)が盛り込まれていたことからDOGEのMusk等からCRの名を借りた「Give Away」として叱責を受ける結果となった。確かにあれだけの歳出を盛り込んで1,500ページじゃCRも入った立派なOmnimus Billだよね(苦笑)。IRAとかもそうだけど、複雑な法案を投票直前に公表して議会に承認させることから議員が本当にInformed Decisionする時間がない。結局、Musk等の反対意見を反映し本来のCRに不可欠な部分が中心に僅か(?)118ページに大幅簡素化されて可決されている。そんな訳でJohnson不信は根強く残るけど、数日前にトランプが無条件信任を発表してるんで若干勢い付いた感はある。ボトムライン他に候補いないしね。しかも今日選出できないと6日の大統領選挙結果の最終認定も遅れる?どうなることでしょうか。

ということで2025年もよろしくお願いします。次回はPTEPに行く前に1月の政局等に関してもう少しだけ追加でポスティングしてみたい。