Sunday, July 21, 2024

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (3)

ええ~、つい数時間前に反乱を起こしてる民主党議員とバイデン推進一派との確執でバイデンが持ちこたえるかどうかはここ数日が勝負ってポスティングしたけど、その間にバイデンやっぱりDrop-OutっていうBreaking Newsが入ってきた。数時間の勝負だったんだね。

で、後任に注目が集まるけどテクニカルには白紙撤回。バイデンは副大統領のハリスを支援表明。ただ副大統領だからって自動的にバイデンの後任になる訳ではない。他にも以前から噂されてた左翼州知事たち、ミシガンのウィトマー、イリノイのプリツカー、カリフォルニアのニューサムとか。バイデンが集めた選挙資金はバイデン・ハリスチケットで集めたものなんで、ハリスであれば全額自由に使えるとのこと。他の候補者になる場合にはそうはいかない。下手すると返金?

税務面では誰になってもバイデンと大差ないだろう。取り急ぎ。

2024年11月米国選挙と2025年TCJAクリフ (2)

前回のポスティングで触れた通り、天の神様の言う通りシュシュシュのシュで今回から2024年米国選挙とその後の税制やM&A動向に関して軽く特集することにしたんだけど、夏になったのをいいことにNYC、中西部、フロリダ、西海岸、日本とか各地でかまけてたらあっという間に1か月経ってしまった。

その間、6月27日にはアトランタでトランプとバイデンの大統領ライブ討論会があったけど、皆様もご存じの通りバイデンは支離滅裂。テレプロンプターで側近が書いた台本を読まないとまともな話しができない実態を世界中の人々に露呈してしまった。実際にはテレプロンプターがあっても棒読みしてるだけなんで、台詞を読むばかりでなく「演出その他の説明」もそのまま読んじゃったりする。これは冗談ではなく「ここでチョッと休止(Pause)」、「ここで引用終わり(End of Quote)」「人物の姓(Last Name)」とかをそのまま読むんで痛々しいというか聴いてる方が苦しい。

NATOサミットに至ってはウクライナのゼレンスキー大統領を紹介する際に「それでは皆様、強固な意志を持って勇敢に戦うウクライナ大統領、「プーチン大統領」をお迎えしましょう(「 I want to hand it over to the President of Ukraine, who has as much courage as he has determination, ladies and gentlemen, President Putin!」)」(苦笑)となってしまった。その後の会見ではハリス副大統領にかかわる質問に「私はトランプ副大統領にはいつ大統領になっても任務を遂行できるという完全な信頼を置いているからこそ副大統領に選んだのだ(I wouldn’t have picked Vice-President Trump to be vice-president if she was not qualified to be president)」とかもう無茶苦茶。人間、誰でも間違えはあるけど、ウクライナの大統領を戦争相手ロシアのプーチンって呼んじゃったり、自分の副大統領を対戦相手のトランプって間違えちゃったりするのは間違いの鉄人領域。Deep PurpleのギタリストをJimmy Pageとか余りに違い過ぎて間違いたくても間違えられないもんね。

で、散々な結果に終わったライブ討論会直後から民主党内にはバイデンでは不味いのではないかっていう声がちらほら出てきた。この展開に関して逆に不思議なのは、そんなことは前から分かってたことで大統領選候補を正式に任命する民主党全国大会やオハイオ州のルールの関係でその前にオンラインで指名するタイミング間近のこの期におよんで急にパニックになってる点。日頃からバイデンと接してるホワイトハウス側近、民主党幹部や党OB重鎮達は日常のやり取りその他からバイデンの支離滅裂ぶりは既に百も承知のはず。バイデンと接した外国の首脳からも懸念は漏れ伝わってきてた。にもかかわらず4年間に亘りその実態を国民にひた隠しにし、ホワイトハウスのプレス担当のKJPは討論会前まで「バイデンは機転が利き過ぎてて私でも付いていくのが大変なくらい…」とか記者に回答してた。KJPは50歳くらいで頭の回転も早いんで彼女が付いてけないはずはなく記者対策のスピンなんだろうけど。トランプ政権時代のケイリーとかもそうだけどプレスに吊るしあげられるからあのポジションも大変だよね。もちろんケイリーを責めるのはCNNやMSNBCで、KJPを責めるのはFox。分かり易いね!

で、ここ数週間の民主党の動きを見ていると、じゃあ討論会で実態が露呈されなかったらそのまま党一致でバイデンを大統領候補に指名してたってことになる。バレなきゃよかったってことなのかな?国民主権はどこに?

でも民主党はテレプロンプターがないと話しができないような人物をなぜ大統領にしたがってたんだろうか。副大統領、左翼州の知事数名、他に能力のある候補はいるだろうに。一般市民ではそんな真相は知る術もないけど、バイデン本人に判断能力がない方が反って裏から操り続け易くて、それを利用して利を得ることができる一派がいるって考えるのが自然だよね。それが奥さんのジルや妹のバル、息子のハンターとかのファミリー系なのか、オバマ時代からのブレーンのアニタやロン、議会対策のスティーブ(リチェティ)、Chief of Staffのジェフなのか、はたまた思った以上に過激な急進派政権になった点を評価し今後も同路線で行ってくれることを期待してるであろうマルクス・社会主義のバーニー一派なんだろうか。

失態が国民にバレて自分たちが選挙でとばっちりを食らっては溜まんないって心配し始めたSwing Stateの民主党議員とバイデン推進一派との確執が浮き彫りになる中、バイデンが持ちこたえるかどうかはここ数日が勝負だろう。民主党は自分たちが勝たないと「民主主義が終わる」って黙示録のように主張するけど、選挙で負けたらそれはそれで国民の判断なんで単に民主党のポリシーに国民が賛同していないってことで民主主義そのものは機能していることになるはず。それとも国民は良く分かってないからより優れた自分たちが一党支配的に権力の座に付いてないと民主主義じゃなくなるってことなのかな?何だかチョッと変だよね。

僕の周りを見ても両党や両候補者に嫌気がさしている中庸な一般市民は結構多く、第三の党(No Label)の立ち上げに期待してた向きもあったけど、これもつぶされてしまった。国民主権はどこに(Reprise)?

民主党がバタバタしてると思ったら7月13日にはトランプ暗殺未遂。屋外ラリーで演説中に130メートル離れた屋外会場の近くにある平屋建て倉庫みたいな建物の屋根からライフルで撃たれ、たまたま不法移民の数の説明をしてて会場のスクリーンに投影されたチャートの方を見るため横を向いた瞬間だったので弾は右耳上部を貫通したけど、頭を動かさなかったら頭蓋骨を直撃だっただろう。犯人はその場で別の建物の屋根に居たSecret Serviceに射殺されたけど、トランプが話しているステージの僅か130メートル先の建物のビルがなぜ無防備だったのか謎は多い。例によって「票稼ぎのやらせだったんでは」とか「Secret Serviceもグルだったんでは」とか根も葉もない陰謀説が流布中。

トランプ暗殺に関しては元Foxのタッカーが以前からそのリスクに警鐘を鳴らしてた。タッカー曰くトランプの存在自体を許せない一派は「今ではでっちあげだったとされるロシア疑惑、弾劾裁判2回、多くの訴訟、刑事罰確定」とこれでもかこれでもかと総力を結してトランプ潰しにかかったけど、その都度Surviveするばかりか国民の支持は高くなるばかりで、「残された手段は…」というような話し。未遂とは言えまさか本当にそんなことが起こるとはね。

過去にもリンカーン、JFK、未遂ではレーガン、とか米国には暗い過去があるけど、今回の事件は「起こってもおかしくない」って前から噂されてた点が米国の国としての質の低下を反映してる気がする。僕が最初に米国に来た頃(相当昔でブッシュシニアの末期・ビルクリントンの幕開けの頃)「この国は凄い」と思った理由の一つに「国民が意見を戦わせてDisagreeしても共存している大人の国」っていう点がある。時間はかかるかもしれないけど国民が良しと思う政策を実行してくれる議員(特に州レベル)を選挙で選び州や国の方向を決定していくっていう本当の民主主義だ。 有名なところではイデオロギー的には真逆なレーガン(80年代の大統領で共和党)とオニール(その当時の下院議長で民主党)とか、最高裁判事で憲法解釈に対するアプローチが逆のスカリアとギンズバーグが好例。喧喧囂囂の議論の後は貴重なFriendship関係にあったっていうからね。トランプとバイデンとかでは考えられない。日常生活でも意見が合わないからといって直ぐに相手の人格を否定したり、増してや暴力に訴えるなんて奴は「Civility」に欠ける幼稚で最低っていう雰囲気が漲っていた。

今の米国はだいぶちがっちゃってるよね。意見が合わない相手は力や暴力を使ってもやっつけないといけないみたいなアプローチが是認されてる感じ。しかもそんなアプローチはフリンジなOutlaw一派が提唱している訳ではなく、ポリティシャン、メディア、エリート大学を含む広範な支配階級にも蔓延している感がある。ポリティシャンのここ数年の言動は冷静な議論を奨励しているようには見えず、むしろ過激になる一方。反対意見が通ると「民主主義が終わってしまう」ので、手段は問わずに押さえつけるみたいな怖い雰囲気だ。30年前に感じた米国、イデオロギーや意見が違っても相手をRespectするカルチャーはどこに?

この現状は民主主義のリーダーだった国としてはとても嘆かわしいことだ。どんな意見が正しいかっていう点に必ずしも確固たる答えはなく、民主主義である限り全会一致はあり得ない。選挙を通じて選ばれた議員が議論を尽くした結果法律ができてるんだったら例えその内容に賛成できなくても納得感があるはず。それが民主主義、Civilityだったはず。歴史が証明するようにCivilityを失った人・社会はもろい。国としてこの点を是正しないと米国も先が危ない。そんな時はまずは国のリーダーがお手本を示すべき場面。特に年齢を重ねてるんであればそれをメリットとして若造にはマネができない高尚なレベルで戦ってもらいたいところ。それがバイデンとトランプじゃね~。

で、暗殺未遂から2日後の7月15日には共和党大会で副大統領候補にJDバンスが任命された。JDバンスの名前は初めて聞いた読者の皆さんも多いのではって思うけど、彼はオハイオ州の小さな街に生まれ貧困その他の恵まれない環境で育ったそう。高校卒業後、米国海兵隊でイラクに行った後、オハイオ州立大学卒。フル奨学金でYaleのLaw Schoolに行き、政治活動、Law Firm、そしてVenture Capitalで一旗揚げてシリコンバレーの大御所、Peter Thiel, Eric Schmidt, そしてネットスケープ(!)のMarc Andreessen等と関係を築く。2022年には上院議員にオハイオから出馬し当選。っていうアメリカンドリームを地で行く人物。生い立ち的にSwing Stateの中西部州一般市民とコネクトできるのは強み。彼の生い立ちや苦境は自叙伝「Hillbilly Elegy - A Memoir of a Family and Culture in Crisis」で知ることができるんで興味があったら軽く読んでみると面白い。

ただ、JDバンスは税制や規制緩和面からは疑問が残る人選。個人的にはトランプ独特の規律が欠けるっていうかランダムな意思決定を露呈してるように感じてしまった。経済界からは経験豊富なNorth Dakota知事のバーガム、国家統治面からはWest Virginia知事のヤンキンとか、トランプにはない「大人」感のある監督・監視ができる人物の登用を期待してたと思うんだけどね。同じ経済界でもテックと金融では受け止め方が異なるかもね。JDバンスの税制感は後日。

前置きでこの一か月を軽く振り返るつもりだったけど余りに多くのことがあり長くなってしまいました。まだまだ11月までFake Newsを含む多くの出来事があるだろう。毎日の生活に影響がある政策論以外は余り知ったりかかわりたくないって感じてる一般市民も多い。

本題の税制動向だけど、バイデンのポリシーは予算教書とかで分かる通り増税。MMTとか言ってとんでもない額のお金を使ってしまいインフレ・金利高を招き、今や国の借金に対する利払いが国防予算より多いというお粗末な状況で歳入はいくらあっても足りない。一方のトランプは?っていうと例によって「Who Knows...」的な世界だけどここから次回。