Saturday, April 8, 2023

新春IRSガイダンス特集「M&AとCAMT適用対象法人」(2)

前回はSVB銀行スピード破綻、また直後に破綻したSignature BankにDodd-Frank法を起草したBarney Frank(紫の恐竜(?)のBarneyじゃないからね)が経営に携わってたという驚愕のウラ話しでチョッと脱線しながらも、何とかCAMT目的で計算されるAFSIと税務上非課税となるM&A系の取引の関係に触れた。

で、今日はM&A系の話しでも非課税・課税を問わず、グループのストラクチャーが変わったり、新規に法人がグループに参画する際、過去3年のAFSIをどうやって見るか、みたいな話し。

買収とAFSI

M&Aは少なくとも2つの法人が関与するけど、多くのケースで各々の法人は他の法人とグループを構成してることが多い。NoticeではM&Aの結果、50%超の資本関係で結ばれる法人グループ、またはインバウンド企業の場合はAFSIの定義にあるインバウンド多国籍企業グループを「Testグループ」って定義している。で、買収側AFSグループがターゲットAFSグループを買収し両グループでTestグループを構成する場合、仮にターゲットAFSグループがM&A前にCAMT適用対象だったとしても、適用対象の汚名は返上されるとしている。って言うと親切な規則に聞こえるかもしれないけど、実はそんなことなくて、買収側AFSグループがCAMT適用法人に当たるかどうかを判断する際の過去3年のAFSIに、ターゲットAFSグループのAFSIが合算される。もともとターゲットAFSグループがCAMT適用対象だったとすると、それを合算する買収側AFSグループも適用対象になるリスクは高い。また、そんなターゲット法人を買収する側のグループも既にCAMT対象法人になってるケースも多いだろう。

次にM&Aの買収ターゲットが単体法人でターゲット側AFSグループではないケースで、買収後にターゲット法人が買収側AFSグループとTestグループを構成する場合、AFSグループ買収時と同様に、仮にターゲット法人がM&A前にCAMT適用対象だったとしても、適用対象の汚名は返上されるとしている。また仮にターゲット法人が旧ターゲットAFSグループに属してた場合、ターゲット単体のAFSIは旧AFSグループからターゲットに合理的な方法で切り出される部分のみで構成される。M&A後は旧グループと関係ない場合、切り出し自体は当然。Noticeの段階では合理的な手法で切り出しが認められるが、Noticeが正式に規則草案となる時点で特定の計算法が規定される可能性があるとのこと。そして想像に難くないけど、ターゲット法人に帰するAFSIとして切り出された数字は買収側AFSグループのAFSIと合算され、過去3年テストが適用される。

ここまでは直観的にそうだよね、って納得できるんだけど、この先は議論を醸すところ。すなわち、Noticeではターゲット法人のAFSIは買収側AFSグループのAFSIに過去訴求して合算するよう規定すると同時に、ターゲット法人が属していたターゲット法人AFSグループのAFSIから切り出されたターゲット法人のAFSIをマイナスしてはいけない、と規定している。すなわち、3年間にわたりターゲット法人のAFSIはターゲットAFSおよび買収側AFSの双方でダブルカウントされることになる。まあ、決め事だからいろんな決め方があるし、もともとターゲットAFSグループがCAMT適用対象になっている限り、ホテルカリフォルニア規定で、ターゲット法人の切り出しAFSIを抜きだして急に3年テストを満たさなくても関係ないんで、あんまり大きな問題じゃないかもね。ターゲット法人AFSグループが既に対象になってるんだったら、その後、テスト自体しても意味ないしね。

スピンとAFSI

で、米国でCorporate Transactionと言えばなんと言ってもスピンオフ。金利が上がってマーケット全体が不調な時にスピンオフが流行るのは、RMTとかMergerがセットになってるケースを除き、スピンオフには相手方がいないんで会社が一人で決めてExecutionリスクなく実行することができる、っていう安心感によるところが大きい。アクティビストによるスピンオフして各事業部の真の価値を「Unlock」するようにみたいなプレッシャーは常に強いしね。で、事業を切り出す作業自体の手間は大変なものがあるけど、いったん切り出したらMergerとちがって、会社法上は単純に現物配当決議をすればそれで終わり。株主承認も不要だし、テンダーオファーみたいに株主個々に決定権もない。株主から見るとスピンされる法人の株式をPassiveに受け取るだけの取引だ。ただし、スピン後にスピンされた法人の株式を所有し続けたいかどうか、等は株主側のチョイスだから、スピン後の市場株価は注目に値する。

一方、同じスピンでもSplit-Offと呼ばれるSeparation取引は若干異なり、全株主に均等にスピンされる法人の株式を分配する代わりに、各株主にスピンされる法人の株式を既存の株式と交換させるExchange Offerの形態を取る。Exchangeするかどうかは株主のチョイスなので通常のスピンと異なり取引時に株主に決定権があることになる。このことから、スピンされる法人の株式時価の決定、すなわち、既存の株式に対してどれだけのスピンされる法人の株式が交換されるのかという比率が最重要検討課題になる。そのため、大概のケースでSplit-Offは、最初にミニIPOでスピンされる法人の株式が上場されてマーケットメカニズムで時価を決める。非課税スピンとするため、IPOされる株式はスピンされる法人株式の20%以内に限定される。

適格スピンの話しはこの辺にしておいてCAMTだけど、スピンする側の分配法人AFSグループがCAMT適用対象となってる場合、スピンされる法人は一旦その汚名は返上される。ただし、その上でスピンされる法人AFSグループがCAMT対象になるかどうかを、スピンされる法人AFSグループに合理的に配賦される過去3年のAFSIを基に判断する。単体法人の買収と同様、スピンする側の分配法人AFSグループのスピン前のAFSIはスピンされる法人に配賦されるAFSIにかかわる減額はない、ということだそうだ。

そろそろREITとかクロスボーダーの話しに移りたくてうずうずしてきたけど、次回もう一回だけCAMTのAFSI絡みの話し、償却とか債務免除益とかに関して触れたい。その後直ぐにREITに行くから不動産ファンドとかにクロスボーダー投資している皆さんは楽しみにしててね。